ポケットモンスター another story   作:黒雲涼夜

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タケシ戦の前編にあたります。


第8話 初めてのジム戦 スミレvsタケシ

 ニビシティ。そこはスミレとヒマワリにとって1つのターニングポイントだ。初めてとなるジム戦。カントーポケモンリーグ出場の為にはジムバッジが8つ以上必要で、トキワシティジムのジムリーダーが不在だった為、今回が初めてとなる。カントー地方は実力主義的な風潮が強く、ジムはいくつもある。通常は8箇所なのだが、実力さえ認められれば誰でも公認のジムとして創業できるので、他地方に比べてジムがかなり多い。よってジムの選択はそれぞれで出来るのだ。

 早朝から出発したスミレとヒマワリがニビシティに到着する直前、ムノーと名乗る怪しげな男に声を掛けられた。何やらニビシティのジムリーダー、タケシについて知っているようだが、あまりに怪しい見た目の男だったので、スミレは関わりを避けることにした。どの道、ポケモンセンターに行き、ポケモンリーグのネットで探せばタケシの簡単なプロフィールと使用するタイプくらいは出てくるので、わざわざあからさまに怪しい風貌の男を信用して情報を集めなければならないほど切羽詰まっているわけじゃないし、初対面の人間を簡単に信用する義理もない。

 ニビシティは石の街。石と共に発展してきた町である。ポケモンの進化に関わる石や、ポケモンの化石などを多く産出する石の一大産地。よくホウエンチャンピオンのダイゴが出没することでも有名な町である。

 ニビジムのジムリーダー、タケシは石の町にあるジムなだけにいわタイプの使い手だ。スミレの手持ちはバタフリーにフシギダネ。ヒマワリはポッポとヒトカゲ。ヒマワリの手持ちに些か不安が残るが、さっさと勝ってもらいたい。

 

 ジム戦の予約は、ポケモンセンターで行う。ジムリーダーとて人間なので、常にジムをやっている訳ではない。幸い、すぐに挑戦できるようなのでニビジムに連絡をしてもらい、トレーナーカード情報をデータで送信、挑戦の手続きを行う。この際、挑戦費を払わねばならず、勝てば倍になって帰ってくるが、負けるか引き分けなら戻ってこないので、割とシビアなのである。故にベテラントレーナーなどの称号持ちはそんなシビアな世界で生き残った証であり、尊敬の対象となる。

 

閑話休題

 

 スミレとヒマワリは連れ立ってニビジムに向かう。挑戦の順番はスミレ、ヒマワリの順だ。この順番はヒマワリたっての希望であり、スミレの手本を見たいとのことだ。スミレ自身、ヒマワリに拘りがなければ先に挑戦したかったので、利害が一致したものとなる。

なお、利害が一致したとヒマワリに告げたところ、返ってきた言葉は

 

「りがい?ってなぁに???」

 

だった。スミレは脱力した。

 

 

⬛️⬛️⬛️⬛️

 

 「いらっしゃい、挑戦者よ。」

石でできた薄暗いジムに入ると、男の声がする。そしてスポットライトが灯り、その男の姿を照らした。浅黒い肌に、糸目の男。

 

「あなたが・・・ニビジムのジムリーダー、タケシさん・・・。」

スミレが呟く。

 

 

「その通り。そして君が、マサラタウンのスミレだね?マサラタウン出身の挑戦者は君で2人目だ。」

呟きを拾ったらしいタケシが返す。

 

「そのちょーせんしゃって誰ですか?」

ヒマワリが教師に質問する小学生のように手を挙げて質問した。

 

「なるほど、君がスミレの後に挑戦する、マサラタウンのヒマワリだな?・・・そうだな、彼はゼニガメを使うトレーナーで確か、シゲルと名乗っていた。」

 

やはりそうか、と得心がいった。会わないと思ったらもう先に進んでいたらしい。ヒマワリは隣でほへーっと口を広げて感心している。

 

「さて、同郷の者の事は気になるだろうが、まずは君のジム戦だ、スミレ。」

 

タケシが指を鳴らすとジム全体が揺れ、ゴツゴツとした岩が乱立するバトルコートが展開された。リーグ戦などでも使用される、岩のフィールドだ。タケシとスミレはコートの外に立って向かい合い、ヒマワリは応援のためジムを上から眺められる場所へ移動する。

 

「スミちゃーーーん!!がんばってーーーーー!!!!」

ヒマワリの声援に凪いだ表情で小さく頷くと、ボールを構える。

 

「さぁ、バトル開始だ!行けぇ、イシツブテ‼︎」

「ヘイラッシャ‼︎」

タケシがボールを投げ、飛び出したのは岩石に顔が付き、腕が生えたような見た目のポケモン、イシツブテだ。

 

「仕事だ、バタフリー。」

「フリィィィィ‼︎」

 

こちらが出すのはバタフリー。遠距離攻撃では発展途上のバタフリーでは不安が残るが、機動力ではこちらが勝る。

 

「バタフリー、【かぜおこし】を地面に叩きつけて飛び上がれ。」

「フリィィィィ‼︎」

バタフリーは地面に向かって【かぜおこし】を放ち、急激に上昇する。

 

「なるほど、ひこうタイプの技でいわタイプに有効打を与える事は難しい。ならば【かぜおこし】を攻撃ではなく移動に使おうということか。虫ポケモンは鳥ポケモンと比べて、羽の強度は脆い。その代わり、小さな風をも逃さず捉えることができる。その上【かぜおこし】は攻撃技、効果は薄いがイシツブテへの牽制にもなるというわけか。ポケモンの特徴と技の特徴をよく理解した戦法だ、考えたな。」

 

タケシはそう分析する。悔しいが当たりだ。有効打となるのは【たいあたり】。キャタピー時代に培った、【いとをはく】との組み合わせによるによる空中戦法をベースに、羽があることにより得られるアドバンテージを利用している。わざわざ技を使って飛んだ理由も、タケシの言う通りだ。しかし一回飛び上がっただけで見抜かれるということは・・・

 

(この男・・・出来るッ・・・・。)

 

スミレの前に立つ、このタケシという男が、確かな実力者である証だ。

 

「バタフリー。天井に【かぜおこし】で急降下、そのまま【かたくなる】をしながら【たいあたり】。」

「フリィィィィィィィィ‼︎」

 

「迎え撃て!イシツブテ、【高速スピン】‼︎」

「ヘイラッシャ‼︎」

 

バタフリーとイシツブテが真正面からぶつかり、両者弾かれた。バタフリーは本来遠距離攻撃型。【かたくなる】がなければ確実に押し負けていたのはバタフリーの方だ。

 

「バタフリー。イシツブテに【かぜおこし】。妨害しつつ離脱して。」

「フリィィィィ。」

 

ひこうタイプの技をいわタイプに撃つと、効果が薄くとも少しはダメージが入る。そのため数秒の足止めにはなる。・・・しかし

 

「イシツブテ、【高速スピン】で突っ込め‼︎」

「ヘイラッシャ!」

イシツブテが風などないとばかりに高速で回転しながら突っ込んでくる。

 

「フリィィィィ⁉︎」

バタフリーは攻撃をまともに食らい、吹き飛ばされる。

 

「立て直せ、バタフリー。」

しかしジムのコートの中央から端まで飛ばされたバタフリーは、空中で体勢を整える。

 

「なるほど・・・今のは、【かたくなる】だな?イシツブテの攻撃が当たる直前、バタフリーは【かたくなる】を使った。何の指示も出さず、今も焦る素振りを見せなかった辺り、おそらく自己判断で使うように教えていた。違うか?」

タケシが再び分析する。本当に、何で悉く気がついてしまうのだ。ジムリーダーとはこれ程までに、大きな相手なのか。スミレの頬を、一筋の汗が伝う。

 

「その通りです。・・・本当、よく気づきますね。」

「俺もジムリーダーだからな。」

タケシはそう言って笑う。だがこちらとしては笑い事じゃない。この男、一度見ただけでこちらの戦法を何度も看破してしまっている。

 

「追撃だイシツブテ、【たいあたり】!」

「ヘイラッシャ‼︎」

イシツブテが【たいあたり】で追撃する。

「飛べ、バタフリー。」

「フリィィィィ」

それに対してバタフリーは再び【かぜおこし】を地面に撃ち、牽制しつつ飛翔する。

 

「バタフリー。【かたくなる】、【たいあたり】。もう一発行くよ。」

「迎え撃て!【高速スピン】‼︎」

急降下するバタフリーと高速で回転しながら迎撃せんと飛び上がる。

 

「・・・今、【いとをはく】で捕まえろ。」

「フリッ!」

 

「しまった、あれは罠だ、止まれイシツブテ!」

しかし急には止まれない。イシツブテにバタフリーの糸が絡みつき、イシツブテが回転を止めた時には、糸でグルグルに絡め取られてしまっていた。

 

糸は、普段糸巻きに巻き付けられているものだという事が記憶にある者は多いだろう。糸をモノに巻き付ける。それをポケモン相手にやったのだ。高速で回転するポケモンだろうが、器用で凝り性なスミレのバタフリーには簡単な事だった。スミレの戦術は、常識破りの無茶苦茶戦法ではない。ありとあらゆる常識を分析して相手の予想の裏をかき、ペースを握ってそのまま勝利するというもの。事前の準備で勝ちを手繰り寄せることこそ彼女の戦闘スタイル。能力があるポケモンがいて、それを扱う知識があって、決して妥協をしない根気がある。

その全てが、この瞬間の勝利を手繰り寄せた。

 

「バタフリー、【かぜおこし】で地面に叩きつけて、それから【かたくなる】からの【たいあたり】だ。」

「フリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ‼︎」

 

バタフリーの攻撃が炸裂し、イシツブテは戦闘不能。

 

「なるほど・・・なかなかやるな。だが俺にはもう1体いるぞ。出てこいッ、イワーク‼︎」

 

 

「イワァァァァァァァァァァァク!!!!!」

 

地響きを鳴らしながらボールから出された石の龍が、その巨体を露わにし、咆哮を響かせた。

 

vsタケシ。 ラウンド2の開幕だ。

 




ジム戦、初めて書きましたがいかがでしょうか?良い感じで書けてると嬉しいです。次回、イワーク戦です。



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3月3日21:48 一部修正しました
3月4日8:05 一部修正しました
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