ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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                ペペ










『クラス対抗戦』

 時間はあっという間に過ぎ去り、今日は待ちに待った『クラス対抗戦』の日だ。

 この時に備え、学年問わず各クラスの代表が全員、腕を磨き続けてきた。

 と言っても、それが実際に適応されるのは二年や三年のみで、入学して来てまだ半年も経過していない一年生に、そこまで期待をしている人間は殆どいない。

 

「遂にこの日が来たな…クラス対抗戦…!」

「そうですね。こうして選手待機所で皆を見ているだけでも、その気合いの入りようが伺えます」

 

 もう既にISスーツに着替え終えた一夏と美咲の二人は、他のクラス代表たちと一緒に割り当てられた待機所(という名の更衣室)にて、モニターに映し出されている開会式の様子を眺めていた。

 

「うぅ…今更ながら緊張してきた…。今思えば、俺ってこれまでの人生の中で一度も、こんな風な大会に出場とかってしたことが無いんだよな…」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ…。あんまし興味が無かったってのもあるけど…。こんな事なら、どんな些細な大会でもいいから出場とかして、場慣れでもしておくんだった…」

 

 緊張性のストレスで胃が痛くなってきたのか、一夏は顔を青くしながら腹を抑える。

 

「こ…こーゆー時って確か…『人』って字を掌に三回書いて飲めばいいって聞いたことがあるような気が…」

「そう言う迷信があるのは事実ですが…一夏くん。今、君が掌に書いてるのは『人』じゃなくて『入』になってます。緊張のし過ぎで文字が逆になってますよ」

「ま…マジか…若手お笑い芸人みたいな事をしちまった…」

 

 改めて『人』を三回書いて飲み込む。

 勿論、こんな事で緊張が紛れたら誰も苦労なんてしない。

 単なる気休めだ。

 

「大丈夫ですよ…と言いたいですが、恐らく私達二人はかなり注目されているでしょうね」

「な…なんでだ?」

「『コレ』ですよ。コ・レ」

「あぁ…そっか…」

 

 美咲が自身の専用機『ファントム』の待機形態である眼鏡を指差す。

 それを見て一夏も、自分達が注視される理由を思い出す。

 

「そういや…そうだったな。俺達は一年でたった二人しかいない(・・・・・・・・・・・・・)専用機持ちだったな(・・・・・・・・・)

「その通りです。他の人たちが訓練機で参加する中、私たちだけが専用機で出場する。注目されない方がおかしいでしょう」

 

 専用機持ちと言っても、一夏も美咲も代表候補生や国家代表ではない。

 どちらも事情があって所有しているにすぎないのだ。

 

「…マジで胃薬とか持ってきておけばよかった」

「それこそ今更ですね」

「言わないでくれ…」

 

 記憶が正しければ、購買部に飲み薬一式が置いてあった筈。

 一回戦が終了したら休憩時間がある筈なので、その隙に購買部までダッシュで向かって胃薬を購入しようと心に決めた。

 

「このままでは辛そうですね…でしたら、こんなのはどうでしょうか」

「え? ちょ…ちょっ!?」

 

 何を思ったのか、美咲がいきなり一夏の腹を優しく撫で始めた。

 その手触りに、思わず一夏の顔が耳まで真っ赤に染まる。

 

「こうして人肌に触れれば、少しは具合が良くなると思ったのですが…どうですか?」

「だ…大丈夫! もう大丈夫だから! すっかり良くなったから!」

「そうですか? でも、念の為にもう少し…」

「う…うぅ…」

 

 恥ずかしくて、別の意味で胃が痛くなりそうだ。

 美咲が善意で行っている事なので無下には出来ないという負い目もあり、一夏の羞恥心は更に加速する。

 

 当然、それを見ていた他の女子達は案の定な反応をする訳で。

 

「誰かコーヒー持って来て! 思いっきりブラックなやつを!」

「かー! 卑しか女ばい!」

「分かっちゃいたけど…やっぱリア充にだけは負けられない!」

「デジたんがまた死んでおられるぞ」

 

 なんか余計なのが一人混じっていたが気にしない。

 

「お? 開会式が終了するみたいだぞ」

「ってことは、小休止という名の僅かな準備時間の後に試合開始ですね」

「そうなるな。第一回戦は三組と…」

「『一年二組』との対戦になります」

「そっか。ま、美咲なら大丈夫だろ。なんたって二組のクラス代表は(・・・・・・・・・)訓練機を使っている(・・・・・・・・・)子だか(・・・)らな(・・)

 

 精神的に余裕が出来たせいか、少し慢心が垣間見える発言をした一夏に対し、美咲が注意を促す発言をする。

 

「一夏くん。相手が訓練機だからと言って油断は禁物ですよ。機体の性能が勝敗を分ける決定的な要因には成り得ないんですから」

「そ…そうなのか?」

「そうなのです。どれだけ機体性能が優れていても、操縦するのは君自身は他の皆以上に色々と遅れているんです。寧ろ、その遅れを専用機の性能でカバーしているとさえ言える」

「それを言われるとグゥの音も出ない…」

「そうでしょう? それに、世の中には訓練機や量産機で専用機持ちを倒したという実例も数多く報告されています。要は、操縦者次第で幾らでも機体性能のハンデなんて覆せるって事です」

「成る程なぁ…」

 

 どれだけ凄い機体に乗っていても、操縦者がザコなら意味が無い。

 猫に小判。豚に真珠。

 自分も人間で、相手もまた人間。

 実際に相対すれば付け入る隙なんて、それこそ幾らでも存在する。

 

「…うん。ありがとな美咲。その言葉で気が引き締まった。最後まで油断をしないように頑張るよ」

「その意気です。…良い顔になりましたね」

「そ…そうかな…」

「そうですよ。うふふ…」

「あはは…」

 

 完全に二人の世界。

 あの場所だけキラキラした花の模様のトーンが張られているようだ。

 

「うぉぉぉぉ! 花のトーンなんてどっか行け! しっしっ!」

「戦う戦士に愛など不要じゃ~!」

「リア充爆発しろ~! リア充は消毒だ~!」

「あら」

 

 血の涙を流す少女達によって、美咲たちを覆っていたトーンが手を振りながらどこかに消えていった。

 

「なんか皆も気合が入ってるな~」

「「「「アンタ達のお蔭でね!」」」」

 

 一組と三組以外の生徒、一致団結。

 打倒リア充チームが結成された。

 

「美咲」

「なんですか?」

「決勝戦で会おうぜ」

「はい。それまで、お互いに頑張りましょう」

「おう」

「「「「くきぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」」」」

 

 力強い笑みを浮かべながら、二人は軽く拳をコツンとぶつけあう。

 それを見て、また女子達は発狂状態に。

 その光景はさながら昼食時の『ひろし』の如く。

 

 そんな彼女達を端の方から見つめている四組のクラス代表の少女が一言。

 

「ばかばっか」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 そして、なんやかんやあって一年生の部の決勝戦。

 

 試合会場である第三アリーナのステージにて相対しているのは、案の定な男女だった。

 

「約束通り、決勝戦まで来たな美咲」

「その台詞。そっくりそのまま一夏くんにお返ししますよ」

 

 白いIS『白式』を纏う一夏と、全身を緑に染めた『ファントム』を纏う美咲。

 お互いにほぼ単色のISを使っているせいか、なんとも対照的に映る。

 

 因みに、この結果を生み出す切っ掛けとなった敗者たちは…。

 

「「「「リア充に負けた~!!」」」」

 

 観客席にて、またもや血の涙を流しながらジュースを自棄飲みし、ポップコーンを自棄食いしていた。

 

「途中、何回も危なかったけど…なんとか、ここまで来れたよ」

「こちらもです。特に、準決勝で戦った四組のクラス代表の方…彼女はかなりの強敵でした。ファントムライトを使わなければ敗北していたかもしれません」

 

 油断をしていたわけではない。慢心もしていない。

 それでも、彼女達の気合いと技術が何度となく二人を追い詰めた。

 それらを乗り越え、彼女達はこの場に立っている。

 

「それじゃあ…そろそろ始めようぜ」

「そうですね。…最初から本気で行きます。しない理由がありませんから」

「それは、こっちの台詞だっつーの。最初から全力全開で行かなきゃ、勝負にすらならないだろ?」

「それはどうでしょうか? もしかしたら、もしかするかもしれませんよ?」

 

 一夏は姉の愛刀を模した『雪片弐式』を構え、美咲もまた二振りの『フレイムソード』を装備して構える。

 

 光の刃と炎の刃。

 

 その二つが今…激突する。

 

『それでは、クラス対抗戦一年生の部。決勝戦を開始します。選手はお互いに既定の位置まで移動してください』

 

 二人は指示に従い、スタート地点まで動くことに。

 後は試合開始の合図を待つだけだ。

 

『では………決勝戦…試合…開始!!』

 

 アリーナ内に戦いのゴングを告げるブザーが鳴り響く。

 それと同時に、二人は裂帛の気合いと共に剣を携え突っ込んでいく。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦終了後。

 すっかり夕方と成り、空は茜色に染まっている。

 

 疲れ切った出場者の面々は食堂にて休んでいて、それは決勝戦にて激闘を演じた一夏と美咲も同じだった。

 

「はぁ~…負けちまったかぁ~」

「確かに私の勝利でしたが、正直言ってかなりヒヤヒヤしました。まさか、あなたがあそこまで強くなっているだなんて」

「いやいや…ぶっちゃけ、殆どが無我夢中で動いてただけだからな? 途中からマジで記憶が飛んじまってるし」

「それだけ集中していたという証拠なんでしょう。ほら、優勝商品であるこの『学食デザートの半年間フリーパス券』で何か奢ってあげますから。ね?」

「そう…だな。んじゃ、遠慮なく奢られようかな。かなり情けないけど」

「そんなのは気にしたら負けですよ」

「そーゆーもんか」

「そーゆーもんです」

 

 二人並んで座ってイチャイチャしている決勝戦カップルを余所目に、他のクラスのクラス代表たちは哀愁に満ちた目で二人を遠くから眺めていた。

 

「…今度さ…他校の男の子たちと合コンをセッティングしようと思ってるんだけど…アンタ達…来る?」

「来る。つか、参加させて下さい」

「リア充には…勝てなかったよ…」

「これが愛の力なのか…恐るべし…」

 

 もう悔しさを通り越して虚無の領域にまで達してしまった彼女達。

 感情の無い渇いた笑いしか込み上げてこない。

 

「更識さんもどう? 合コン」

「いや…遠慮しとく。興味ないし…普通に忙しいし」

「うぅ…ここにもリア充が…」

「どうして『忙しい=リア充』になるの?」

 

 こうして、色々と騒がしかったクラス対抗戦は何事もなく(・・・・・)幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 












                そいれんと






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