ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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                おひさ










『シャルル・デュノア』①

 休み明けの月曜日。

 普通ならば『今日からまた一週間が始まる』と思ってしまい、大概の人間は憂鬱になりがちになる…のだが、どうやらそれは『女子高生』という存在には通用しないらしい。

 

「大変大変! 大変だよ皆! とんでもない大ニュース!」

 

 今日も今日とて一年三組は賑やかで、ガヤガヤと小うるさくしている。

 そんな中に聞こえてきた叫び声に、美咲は『またか』と思っていた。

 

「大変だよ佐藤さん!」

「一体どうしたんですか?」

「一組に転入生が来たんだって!」

「転入生?」

 

 なんだか既視感を覚えるが気にしない。

 それはそれとして、なんとも半端な時期に転入生とは。

 

「転入生自体は、それほど珍しいものではないのでは?」

「普通に考えればそうだよね。でも、今回は違うんだな~…これが」

「と、申しますと?」

「まず一つ! なんと…前代未聞の『転入生は二人』なので~す!」

「…は?」

 

 転入生が…二人?

 同じ時期に二人同時に転入生が来たというのか?

 それは幾らなんでも、おかしすぎる。

 

「それは…二人揃って一組に…ということですか?」

「そうなの! これはかなり凄い…っていうか変なことでしょ!?」

「確かに…」

「因みに、転入生はそれぞれフランスとドイツから来てるらしいよ」

 

 違う国から同じ時期に転入生。

 これを怪しむなという方が無理がある。

 しかも、二人ともが一組に。

 学園側が一体何を考えているのか全く分からない。

 

「んで…これが一番凄いことなんだけど…」

 

 美咲以外の、教室にいる全ての生徒が固唾を飲む。

 

「なんと…さっき言った転入生…フランスから来た子はなんと…男の子らしいんだよ!」

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――っ!?」」」」」

「なんと…」

 

 まさかの一夏に続く二人目の男性IS操縦者の登場。

 これには流石の美咲も驚きを隠せず、思わず目を見開いてしまう。

 

「で? で? どんな感じの子だったのッ!?」

「金髪イケメンの『貴公子』って感じの男の子だった!」

「「「「おぉ~!!」」」」

 

 早くもクラスの話題は二人目の男子一色に。

 一夏以外に出てくるはずもないと思われていた存在が出現したのだから、そうなるのも無理は無い。

 だが、ここで美咲だけは冷静に頭を働かせていた。

 

(二人目の男の操縦者ともなれば絶対に世間が黙っていない筈…。それなのに、これまでにそんな報道がされた形跡はない…。これはまさか…)

 

 嫌な予感が美咲の脳裏に浮かぶ。

 一夏の存在は、ただそれだけでトラブルの種と成り得る。

 この世でたった一人の超希少な人間なのだから当たり前だ。

 それを自覚していないのは本人のみ。

 

「もう既に織斑くんは佐藤さんとラブラブだし…ってことは、そのフランスの子を狙うべきッ!?」

「え? いや…私と一夏くんは…」

「ちょっと待って! ここは逆転の発想よ! そのフランスから来た子も佐藤さんに惚れてしまって、そこから佐藤さんを巡っての三角関係に…」

「「「「それも十分にアリ!!」」」」

「聞いてます?」

 

 聞いてません。

 一度でもスイッチが入った女子高生に正論は通用しない。

 

(皆さんではありませんが…気にはなりますね。私と一度、その方の顔を見ておくべきでしょうか…)

 

 理由はどうあれ、その人物が普通じゃないのはまず間違いない。

 一夏の為にも、まずはその相手を知る必要があると判断する。

 

 余談だが、ドイツからの転入生についての話は微塵もされなかった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

(…おや?)

 

 授業中、ふと窓の外に目をやると、一組と二組が合同でISの実習を行っていた。

 当然のように、その中には一夏も交じっているのだが、彼の傍に何やら見覚えのない人物がいるのを確認した。

 

(金髪の少年…もしや、彼が例の二人目…?)

 

 男同士と言うことなのか、一夏とも仲が良さそうに見える。

 別に、それ自体は美咲にとっても良いことなのだが、問題は彼の容姿にあった。

 

(確かに美少年と言っても差し支えない容姿をしていますが…なんでしょうか…私は彼がどうも『男』には見え難い…)

 

 美咲の目には例の少年が『男装をした美少女』にしか見えない。

 男にしては体の線が細すぎるし、心なしか腰も括れているような気がする。

 

(…で、あのもう一人の見れない銀髪の少女が、ドイツから来たという転入生ですか…)

 

 見た目だけならば間違いなく美少女だが、その表情は非常に硬い。

 早くもクラスから浮いてしまっているようで、誰も彼女に近づこうとはしない。

 

(あちらもあちらで色々と問題が多そうですね…)

 

 どうも、一組は色んな意味での問題児ばかりを抱えているような気がする。

 それとも、それだけ担任である織斑千冬の能力を信じている…と言うことなのだろうか。

 

(どちらにしても一つだけ確実な事がある。それは、この学園に真の平穏が訪れる日は、まだまだ遠い…と言うことですか)

 

 既にある程度の決まった形が形成されつつある集団に、いきなりやって来た『異物』というのは、良くも悪くもトラブルを持ち込むものだ。

 二人の転入生の存在はIS学園にとって吉と出るのか凶と出るのか…。

 

(どちらにしても、もしあの二人が『不幸』なのならば…私の手で『幸せ』にしてあげないと…)

 

 彼女の信念は揺らがない。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「おーい! 美咲~!」

 

 昼休みになり、いつものように一夏が三組に美咲を呼びに来た。

 しかし、今日は彼の隣に例の転入生がいた。

 

「佐藤さ~ん! 彼氏さんのお出ましだよ~!」

「彼氏さんって…」

 

 呆れつつも頬を赤く染める美咲にキャーキャー騒ぐクラスメイト達。

 今や、三組生徒にとって美咲はクラス代表以上の存在になりつつあった。

 

「お待たせしました。ところで、その隣の方は例の…?」

「もしかして、もう知ってるのか? こいつが今日、一組に来た転入生の…」

「シャルル・デュノアです。初めまして佐藤さん。君の事は一夏から聞かされてるよ」

「こちらこそ初めまして。三組のクラス代表の佐藤美咲と申します」

 

 実に爽やかな笑顔で自己紹介をしてくるシャルル。

 非常に好印象を受ける態度ではあるが…美咲にはそれすらも違和感にしか見えなかった。

 

(なんでしょうか…まるで万人が望む『理想の男子』を演じているような…そんな感じがする。それに『デュノア』…)

 

 少しでもISに詳しいものが聞けば即座に反応する名前。

 ここまでの条件が揃っていて『単なる偶然』で済ませるには、余りにも怪しすぎた。

 

「えっと…どうしたの?」

「いえ。なんでもありません。それよりも早く食堂に向かいましょう。急がないと席が無くなってしまいますから」

「そうだな。この学園って飯が美味いのは良いけど、席の争奪戦が苛烈なのが大変だよな」

「そ…そうなの?」

「あぁ。もし席が無かったら、その時は売店で適当に何か買ってから中庭とかで食べようぜ。今日は天気も良いから大丈夫だろ」

「偶にはそれも良いかもしれませんね」

 

 第一目標は食堂で食べる事だ、それが不可能だった時に備えて第二、第三の案も考えておく。

 その場凌ぎではなくなったのは、ある意味で一夏も成長していると言うことなのかもしれない。

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・・

・・

 

 

 

 

 結局、美咲たちの心配は杞憂で終わった。

 思ったよりもあっさりと食堂の席は確保でき、普通に三人揃っての昼食を楽しめる事に。

 

「あはは…なんだか周囲から凄く見られてる気がする…」

「気がする、じゃなくて実際に見られてるからな。朝の時もそうだったけど、こればかりは仕方がねぇよ」

 

 学園でたった二人しかいない男子が並んで座っている。

 しかも、一人の少女を挟むような形で。

 こんな光景を見て何にも妄想しない女子高生たちではなかった。

 

「りょ…両手に花の逆バージョン…!」

「イケメン二人に挟まれる美少女…イイ…!」

「まさか、少女マンガみたいなシチュエーションをリアルで見れるだなんて…」

「え? これマジでドラマの撮影とかじゃないの?」

 

 完全妄想大爆発。

 今年の夏の祭典は色んな意味で熱くなるだろう。

 

「朝? 朝に何かあったのですか?」

「ちょっとな。ホームルームが終わって実習の為に着替えに行こうと教室を出た直後に、シャルルの事を嗅ぎつけた集団に道を阻まれちまって、危うく遅刻しそうになったんだ」

「それはまた災難でしたね。男子と言う存在自体が、この学園では存在価値が高いので、ある意味では仕方がないことなのかもしれませんが」

「かもな~。少しだけ慣れてはきたと思ってたんだけど、まだまだだな」

 

 寧ろ、慣れてしまったらある意味で終了だと思う。

 

 因みに本日の昼食は、美咲はチャーハン&餃子セットで、一夏はオムハヤシ。

 学園初めての食事となるシャルルはナポリタンを注文していた。

 

「そ…そう言えば、一夏に聞いたんだけど、佐藤さんも専用機持ちなんだって?」

「えぇ。私は企業所属のIS操縦者なので」

「どんな企業なの?」

「木星公社という会社です」

「木星公社…ゴメン…聞いたことないや…」

「無理もありません。文字通りの弱小企業なので」

 

 なんだか申し訳ない気持ちになってきたシャルルだが、当の美咲本人は全く気にしていない様子。

 

「しかし、いきなりの転入と言うのも大変でしょうに。しかも、フランスから日本に…ですからね」

「そうだよな。仕方がない事とはいえ、文化が全く違う国に来たんだ。何か分からない事があれば、遠慮なく俺や美咲に頼ってくれていいからな」

「二人とも…」

「一夏君の言う通りです。困った時はお互い様。分からない事を誰かに尋ねる事は決して恥ずかしいことではありません。最も恥ずかしいのは、分からない事を分からないままにしておくことですから」

「そう…だね。それじゃあ、何かあった時は二人を頼りにさせて貰おうかな?」

 

 これで少しだけ美咲たちとシャルルとの距離が縮まった。

 本当にまだ少しだけだが。

 

「ところで、寮の部屋は矢張り、一夏君と一緒になるのでしょうか?」

「そうなんじゃないか? 今の所、一人部屋なのって俺や美咲ぐらいだし」

「え? 佐藤さんも一人部屋なの?」

「はい。まぁ…私の場合は一夏君とは違って、企業の情報漏洩を防ぐという意味合いもあるでしょうが」

「そっか…企業所属ともなれば、その辺は嫌でもデリケートになるもんね」

 

 と言ってはいるが、実は一夏はまだ美咲の部屋に行ったことは一度もない。

 二人がプライベートで会う時は、その大半が美咲が一夏の部屋に行くからだ。

 

「って事は、もしかしたら、もう一人の奴が美咲と同じ部屋になったりするのか?」

「もう一人と言うと…ドイツから来たとかいう方…ですか?」

「そうなんだよ。しかも俺、なんでか知らないけどソイツからいきなりビンタをされたんだ」

「あらまぁ。なんでそんな事に?」

「それがサッパリ。尋ねようにも、本人は完全に周囲に対して壁を作ってるから話しかけられるような空気じゃないし…」

「ふむ…」

 

 どうやら、美咲の想像通り、もう一人の方もかなりの問題児のようだ。

 流石の美咲も近づくだけでも一苦労かもしれない。

 

「もしアイツに何かされたら、すぐに俺に言えよ美咲。必ず守ってみせるからな」

「はい…ありがとうございます」

 

 真剣な目で大胆発言をする一夏。

 それを真正面から受け止める美咲。

 初対面であるシャルルからしても、見事なラブラブっぷりだった。

 

(本当に仲が良いんだなぁ…この二人は。だからこそ…本当に心が苦しいな…)

 

 何も言えない。何も話せない。

 笑顔の裏で罪悪感に潰されそうになるシャルルであった。

 

 

 

 












                うひ






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