ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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                 ぼふ









『シャルロット・デュノア』

 フランス パリ

 デュノア社 本社ビル 社長室

 

 薄暗くなった室内で、一組の夫婦が冷や汗を流しながら会話をしていた。

 

「シャルロットは…大丈夫だろうか…」

「きっと大丈夫よ…あなた。あそこまでしたんですもの。『奴等』とて油断している筈よ」

「そう…だな。それに、流石の『奴等』も日本のIS学園にまで、その手を伸ばす事はしないだろう…」

「あの学園は一種の治外法権の地。どのような理由が有れ、一度でも敷地内に入ってしまえば、そう簡単に手は出せなくなる…」

「後は、事情を知り我々を『悪』と認識した心ある者達によって保護されていれば…」

「もう二度と会う事は出来ないし、あの子には未来永劫に渡って恨まれ続けるでしょうけど…」

「それで、愛する我が子と会社と社員達の未来を紡げるのならば…恐れる物は何もない…!」

 

 覚悟は決めた。決意も固めた。

 後は自分達が踏み出すだけ。

 自分達の身に何かがあった時は、信頼できる人間に会社を託せるように手配もしてある。

 

「会社は守る。娘も守る。どっちもしなくちゃいけないってのが…父親と社長を兼任している男の辛い所だな…」

「アナタは一人じゃないわ。私も、同じ業を背負うから…」

「済まない…ロベルタ…」

 

 時計の針が動く音だけが室内に響く。

 心臓の鼓動すらも聞こえてくるような緊張感。

 

 その時、徐に社長室の扉が開いた。

 

「来たか…!」

 

 夫婦は咄嗟に身構えるが、扉の向こうから現れたのは予想外の相手だった。

 

「…お父さん…お義母さん…」

「シャ…シャルロットっ!? どうして、お前がここにいるッ!?」

「アナタは日本のIS学園にいる筈じゃ…」

「そんな事は、今はどうでもいいよ」

 

 IS学園の男子用制服を着た自分達の娘。

 俯いているのか、その目元は前髪に隠れて影になっている。

 本来ならばいない筈の人間が目の前に立っている事に動揺を隠せない。

 

「それよりも…二人にどうしても聞きたい事があるんだ…」

「聞きたい事…だと…?」

 

 夫婦が疑問を感じていると、シャルロットの背後から何か重い物が床に何個も落ちるような音が聞こえてきた。

 

「ご安心ください。この通り、アナタ達の邪魔をする物はどこにもありませんから」

「そ…それは…!」

「『奴等』が会社中に設置した小型の監視カメラと盗聴器…」

 

 声は聞こえるが影で姿は見えず。

 声の主は前に進んできたが、それでも見えたのは足元だけで、顔は見えず仕舞いだった。

 

「あ…あなたは…?」

「彼女は日本で出来た僕の大切な『友達』だよ。彼女が僕を此処まで連れて来てくれたんだ」

「なん…だと…?」

 

 どのような相手であれ、この会社に誰かが訪れた場合は基本的に社長室に連絡が入るようになっている。

 それなのに、そんな様子は一切見受けられなかった。

 一体どうやって、誰にも見られずに二人はここまでやって来たのか。

 夫婦には皆目見当がつかない。

 

「実はね、彼女に僕の正体がバレてしまったんだ」

「なんだと!?」

「けど、この子は僕を決して責めなかった。それどころか、親身になって話を聞いてくれたんだよ」

「そ…そう…」

 

 正体がバレたと聞かされた時は心臓が止まるかと思ったが、それでも夫婦の望み通り、心ある者と出会った事は不幸中の幸いだった。

 

「彼女と色々と話している内に、沢山の疑問が湧いてきたんだ」

「疑問…?」

「どうして、二人は僕を態と引き離すような真似をしたのか。適当な男装までさせて。実用性がお世辞にも高いと言えない『男性仕様のISのデータ』を取りに行かせたのか。他にも色々…考え出したらキリがなくなってきた。だから知りたいんだ…全てを」

「シャルロット…お前は…」

 

 何も知らないままでいてくれたら、それが一番だっだ。

 この子は何も悪くは無い。

 全ては自分達の弱さが原因。

 本当は巻き込みたくなんて無かった。

 

「御二方には、娘さんに全てを言う義務があると思います。本当に彼女を愛しているのなら尚更」

「だが…しかし…!」

「監視の目は全て排除したと言いました。それに、会社内にいた『スパイ』も全て取り除いていますので大丈夫です」

 

 無駄に用意周到な『奴等』は、機械だけでなく、人の目による監視すらも周囲に置いた。

 だからこその『最後の手段』だったのだが…。

 

「お願いだから…話してよ!! お父さん!!」

「……分かった」

「アナタ!?」

「ロベルタ…この子には知る権利がある。もう誤魔化しきれんよ…」

「でも…」

「フッ…全てを話した後は、この愚かな父を好きにするといい…シャルロット」

 

 そうして、父の口から『真実』が語られた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 『全て』を知って、シャルロットは大きむ目を見開いて固まった。

 

「そ…それじゃあ…僕を男装させて日本に行かせたのは…この会社を密かに狙っていた『女性権利団体』から守るために…?」

「えぇ…そうよ。奴らは前々からアナタを人質にしてから私達を脅迫し、このデュノア社を乗っ取ろうと計画していたの」

「その計画を知った我々は、まずはお前を引き取って匿おうと思った。だが、もう既に連中の魔の手は会社内部やその周辺にまで伸びていて、いつでもお前を捕まえられるにまでなっていた。だから…」

「私達は敢えて、貴女を嫌っているような真似をして、アイツ等にシャルロットに人質としての価値が無いと言うことを知らしめる必要性があった」

 

 話を聞くごとにシャルロットの目からハイライトが失われ、黒い涙が零れていく。

 

「しかし、それでも権利団体が強硬手段に訴えてくる可能性があった。だから、『男性IS操縦者のデータを盗んでくる』という、一見すると重要そうで、でも本職の人間からしたら全く無意味な仕事をさせるという名目で娘さんを日本へを向かわせた。念には念を入れて男装なんて真似までさせて」

 

 娘の『友人』の言葉にアルベールは強く頷く。

 

「その通りだ。権利団体はISの『力』しか見ていない、権力だけしか持たない素人集団だ。簡単に騙されてくれたよ。だからと言って油断は出来なかったのだが」

「じゃあ…お父さんも…お義母さんも…僕の事を嫌ってなんか…」

「嫌う筈がない…! お前は私達夫婦にとって掛け替えのない娘だ!」

「アナタのお母さんは私の大切な友人でもあった。その娘である貴方を、私は実の娘のように愛しているわ」

「う…うぅぅ……」

 

 『両親』の本心を聞き、シャルロットは歓喜の涙を流す。

 自分は嫌われてなどいなかった。

 それどころか愛されていた。

 自分の身を犠牲にしてまで守ろうとするほどに。

 

「ごめんなさい…僕のせいで…二人や…会社にまで迷惑を掛けて…」

「お前は悪くない! 悪いのは…!」

「女性権利団体…だよね…」

「シャ…シャルロット…?」

 

 突如として口調が豹変した娘に、先程とは別の意味で困惑するデュノア夫妻。

 全身から憤怒の炎が燃え盛っているかのように、シャルロットは歯を食いしばる。

 

「許せない…絶対に許せない!! 僕の大切なお父さんを…お義母さんを…会社の人達を苦しめて…僕は…僕は!!」

 

 踵を返したシャルロットは、走って社長室から出て行った。

 鬼気迫る娘の豹変振りに夫婦は何も出来ずに棒立ちになってしまった。

 

「私が行きます。お二人はここにいてください」

「あ…あぁ…娘を頼む…!」

「お任せください」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 女性権利団体 フランス支部

 

 今のここは、完全に血の海と化していた。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

「なんなのよ!! なんなのよぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 飛び散る腕。

 砕ける足。

 無数の銃弾が施設内を破壊する。

 

 あれからシャルロットは会社を出てから、この場所へと直行して、ISを纏った状態で大暴れしていた。

 ISのパワーアシストで得られる圧倒的な力で文字通り、権利団体の女達を蹂躙している。

 

「アハハハハハハ!! アーハッハッハッ!!!」

 

 橙色の鮮やかな装甲を鮮血に染め、爆笑しながら目の前にいる女の頭を握り潰す。

 鋼鉄の手から滴り落ちる大量の血を口まで持って行きペロリと舐める。

 

「…不味いね。やっぱり…ISの威を借ることしか出来ない蛆虫の血は…吐き気がする程に不味いねぇっ!!」

「た…助け…助けt…」

 

 尻餅をついて助けを乞う女に、近接ブレード『ブレッド・スライサー』を使って一刀両断する。

 真っ二つになった女は、切断面から脳漿や肺、心臓などを垂れ流して絶命した。

 それをまるで道端に落ちている犬の糞のような目で見たシャルロットは、ペッと唾を吐き捨ててから踏み潰した。

 

「お前達は『悪』なんだ。この世に生きている価値も、存在する価値も…いや、生まれてくる価値もない。生まれてきたこと自体が全て間違いだった糞虫なんだ。他人を苦しめる事しか出来ないような社会のゴミは…早く駆除しないとねぇっ!!」

 

 ズシン…ズシン…。

 IS特有の歩行音が、まるで死神の足音のように響く。

 

「あ…あんた…デュノア家の娘でしょ…? ど…どうしてここにいるのよぉッ!? 日本で愚かにもISを動かした男のデータを取って来る手筈になってるんじゃなかったのっ!?」

「お前らみたいな蛆虫が…一夏の事を『愚か』とか言うなぁぁぁっ!!!」

 

 両手に装備したアサルトライフル『ヴェント』を生身である女に向け、躊躇いなく引き金を引く。

 断末魔すら吐けずに女は無数の肉片となった。

 

「一夏も…美咲も…こんな僕に優しくしてくれた…手を差し伸べてくれたんだ…。お前らのようなゲロカス共とは…違うんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 少女の咆哮が轟く。

 それに合わせたかのように、奥から複数の大きな影がやって来た。

 

「そっちがISで来るのなら…こっちもISで対抗してやるわ!!」

「生意気な小娘が…私達の恐ろしさを思い知らせてやる!!」

「お前らみたいのが…リヴァイヴを使ってんじゃねぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 シャルロットの怒りが遂に頂点に達した。

 もう手段なんて選ばない。

 愛する両親がそうしたように、自分もまた禁忌を犯そう。

 

「おい…リヴァイヴ…。お前は僕のお父さんが生み出したISだろ…? お前の兄妹が、あんな蛆虫どもに良い様に利用されてて悔しくないのか…? もし、ほんの少しでも悔しいという気持ちがるのなら…」

 

 シャルロットのリヴァイヴから『黒い雷』が迸る。

 

余計な鎖は外してやるから(・・・・・・・・・・・・)もっと寄越せよ(・・・・・・・)リヴァイヴ(・・・・・)!!!」

 

 橙色の装甲が漆黒に染まり、ISスーツもまた黒く染まる。

 全身から黒い血を噴出し、血管が浮き出てくる。

 その美しい顔は悪鬼のような形相と化し、金色の髪もまた黒くなる。

 黒くなってしまった眼からも巨大な黒い雷がバチバチと放電し、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの全てに真紅の『線』が走った。

 

「こ…これってまさか…第二形態移行(セカンドシフト)ってのじゃ…」

「あ…あぁぁ…」

 

 見るだけでも分かってしまう圧倒的力を前にし、ISを纏った女達は涙を流しながら開いた口が塞がらなくなる。

 何をどうしても絶対に勝てない。

 本能でそれを察してしまったから。

 

「ご…ごめんなs…」

「お前達はもう…死んでいい…!」

 

 表向きだけの謝罪の言葉は、漆黒に染まり巨大化した『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』によって物理的に叩き潰された。

 

 歪んだ形で機体のリミッターが外れたリヴァイヴ・カスタムⅡは、その後も狂戦士の如く大暴れし、全てを破壊しつくした。

 

 この日、女性権利団体フランス支部は完全に壊滅した。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日の朝。

 寮の食堂にて一夏と美咲は朝食を食べながら、備え付けのテレビに流れるニュースを見ていた。

 

『今朝のニュースです。昨夜未明、何者かの襲撃により女性権利団体フランス支部が壊滅しました。施設は完全に崩壊、中にいた人間は全て死亡したと思われます』

 

 朝っぱらから嫌なニュースを見て、一夏はあからさまに辟易な顔をしていた。

 

「女性権利団体か…俺も奴等が悪いってのは知ってるんだけどさ…壊滅ってのを見ると流石にな…」

「余程、恨みのある人間がやったんでしょうね」

「そうかもな…。実際、アイツ等ってそうされてもおかしくないような事をやってるんだろ?」

「えぇ。冤罪。買収。脅迫。言い出したらキリがありません」

「嫌だよなぁ…ホント」

「全くですね」

 

 溜息を吐きながら、二人は同じタイミングで味噌汁を啜る。

 まるで本当の夫婦のような息の合いようだ。

 

 その後も、謎の存在による女性権利団体襲撃は止む事無く続き、世界中から着実に女尊男卑主義者が物理的に消えてなくなっていった。

 人々はその行為を湛え、『彼女』の事を『黒いジャンヌ・ダルク』と呼び崇め湛えたという。

 

 これから数年の後、この世から完全に女性権利団体は消滅した。

 その後の『彼女』の消息は不明であり、デュノア社がどうなった知る者も…またいない。

 少なくとも、ISの製造は続いている事から、倒産だけはしていないようだ。

 

 

 

 











                  ばあ






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