ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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      『奴』は、とんでもない『もの』を盗んでいきました。










『ヴァルキリー・トレース・システム』

 試合が終了した直後、突如として異形の姿へと変貌したラウラの専用機。

 それは漆黒に染まった千冬に酷似した『ナニか』。

 余りにも現実離れした出来事に、誰も彼もが呆然となっていた。

 

「なんだよこれ…なんだよこれ!! あああああああああっ!!!」

 

 人々が呆然としている中、一夏だけが湧き上がる感情を露わにしていた。

 それは、姉の姿を使われたという憤り。

 このままでは一夏は…そう思われた時、なんと一夏は徐に白式の腕部装甲を一時解除してから、自分の顔を殴りつけた。

 

「い…一夏くん…? いきなり、どうしたんですか…?」

「はぁ…はぁ…はぁ…え? あぁ…馬鹿な事をしそうになった自分に『喝』を入れてた」

「喝?」

「なんかさ…あのままだと、怒りに身を任せて突っ込んでいきそうになっちまってたから…。美咲の前でカッコ悪い姿は見せたくなかったっつーか…」

「一夏くん…」

 

 怒りが爆発しそうになった自分を抑え込むために、自分の顔を自分で殴った。

 普段の彼ならば、一瞬で頭に血が上っていたかもしれない。

 これもまた『愛』の成せる技なのかもしれない。

 

「けど…これは一体何なんだよ…。どうして、アイツのISがこんなことに…」

「恐らくは…『VTS』の仕業かと…」

「ぶいてぃーえす?」

「はい。正式名称『ヴァルキリー・トレース・システム』。要は、『強い人の動きを真似する機械を作ってISに内蔵させれば簡単に最強になれるんじゃないか?』的な装置です」

「つまりはズルって事か」

「そうなりますね。あの様子から察するに、ボーデヴィッヒさん自身も自分のISにVTSが搭載されていた事は知らなかったのでしょう」

「本人にも内緒で、こんなヤバいもんを搭載とかって…マジで何を考えてんだよ…! クソッ!」

「全くですね」

 

 完全に搭乗者であるラウラの命を軽視したが故の行為。

 例え、少し前まで自分達を敵視していた相手とはいえ、決して許されることではない。

 

 そんな時、管制室にいる千冬から二人にプライベート・チャンネルで通信が来た。

 

『織斑! 佐藤! 無事かっ!?』

「千冬姉ッ!?」

「織斑先生?」

『今すぐに、その場から退避しろ! 後は教員部隊に任せるんだ!』

「そうしたいのは山々なんだけどよ…なぁ…?」

「ですね…」

『ど…どうした?』

 

 美咲と一夏が話をしている間、VTSはずっと二人に視線を向けていた。

 まるで『お前達だけは逃さない』と言っているかのように。

 

「あいつ…俺と美咲の事を完全に狙ってるみたいなんだわ…」

『なんだとっ!?』

「このまま退避をしたら、それこそ本当に見境なく暴走する危険性があります。なので…」

「先生達が来るまでの間、俺達でこいつを足止めするよ。つーか、それしかないと思う。もうさ、めっちゃこっち見てるし」

 

 二人がそれぞれに武器を構えると、それに反応してかVTSもまた、その手に握る偽雪片を構えた。

 

「ま、もしかしたら? 先生達が来る前に俺と美咲のコンビで倒しちまうかもだけど…別に構わねぇよな?」

「一夏くん。それはフラグです…と言いたいですが、私も同感です。精々、フラグを回収しないように全力で頑張るとしますか」

 

 時間が迫ってきたので、拡張領域内にある強制冷却カートリッジを使用。

 これで『ファントムライト』の効果時間が15分伸びた。

 

『…無茶だけはするなよ』

「「了解」」

 

 それだけを言い残し、千冬からの通信は切れた。

 観客席は騒然としているが、自分達の目の前で異形の存在に立ち向かおうとしている男女を見て、その雄姿に自然と目が行っていた。

 

「偽物とはいえ、これは織斑先生のデッドコピー。油断は禁物です」

「分かってるって」

 

 美咲と話している内に、本当に精神的余裕が生まれたのか、無意識の内に笑みを浮かべられるようになっていた。

 

「…来ます!」

 

 全身をバネのようにして、凄まじい速度で突撃してくるVTS。

 上段に構えた剣を、そのまま一夏に向けて振り下ろす!

 

「流石は千冬姉のコピー…だけどな!!」

 

 向かってくる刃を、なんと一夏は雪片の刀身を僅かに逸らす事で見事に受け流してみせた。

 

「本物の千冬姉は、もっと速くて鋭い攻撃をしてくるし、もっと深く踏み込んでくる!!」

 

 地面に黒い刃が激突して炸裂するが、それに怯むことなく返す刃で腹部を斬り裂きながら抜け出す!

 

「どうだ! なにっ!?」

 

 確かに手応えはあった。

 ちゃんとダメージも入った。

 しかし、それは瞬く間に再生されてしまう。

 

「生半可な攻撃じゃ無意味って事かよ…!」

「それならば!」

 

 今度は美咲がフレイムソードで攻撃を仕掛ける!

 敵の攻撃力を奪う為に、狙うはその両肩の付け根部分!

 無論、VTSもそのまま大人しくやられるわけもなく、偽雪片を使って迎撃をしてくる。

 

「確かに速い…ですが、この程度ならば!」

 

 ファントムライト発動状態ならば避けることは可能。

 全ての攻撃を紙一重で避け、一瞬の隙を突いてからのクロス斬り。

 

「これで…どうですか!!」

「おぉ!」

 

 両肩が裂け、地面に両腕がボトリと落ちる。

 だが、それもすぐに再生した。

 

「ダメか…!」

「矢張り、大本である『VTS』を破壊しなければいけないようですね」

「つっても、どこにそれがあるか分からないしな…なっ!?」

「一夏くん!?」

 

 今度は自分の番だと言うように、VTSが強襲をしてきた。

 咄嗟に一夏は雪片で防御をするが、なんとVTSは剣を横薙ぎに払う事で雪片を一夏の手から吹き飛ばす。

 

「しまったっ! 雪片が!」

 

 クルクルと回転しながら地面に落下し突き刺さる。

 それ自体は良いのだが、問題は、思った以上に遠くに飛ばされてしまった事だ。

 

「くっそー…! なんかアイツ、ちょっと頭良くなってないか?」

「学習…しているのでしょうか…。ん? 学習?」

 

 まさか…? いやいや。そんな安直な。

 でも、どれだけ胴体部を攻撃しても無意味な以上、可能性があるとすれば『あそこ』しかない。

 

「どうした?」

「いえ…もしかしてと思いまして。VTS…頭にあるかもしれません」

「頭に?」

「えぇ。胴体には無かった。下半身とは考えにくい。と成ればもう考えられる場所は一つしかない」

「ありきたりだけど…有り得るな」

「私も安直であるとは思っていますが、やってみる価値はあると思います」

「けど、雪片はあそこにあるし、拾いに行く暇をくれるほど、良い奴には見えないしな…」

「これを使って下さい」

 

 拡張領域から『クジャク』を取り出して一夏に手渡す。

 突然すぎて一夏はポカンとしてしまった。

 

「これって…」

「ちゃんと『使用許可』は出してあります。使い方は…分かりますよね?」

「あぁ! 美咲が教えてくれたからな!」

 

 念には念を入れて、実は美咲はファントムの追加武装であるクジャクやバタフライバスターの使い方を密かに伝授しておいたのだ。

 まさか、こんな局面でそれが活かされるとは思わなかったが。

 

「では行きましょう。余り時間を賭けては、ボーデヴィッヒさんの身体が持ちません」

「そうだな」

「左右から挟む込むようにしての同時攻撃で仕留めます。いいですね?」

「了解だ! セーフティ解除! いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 その手に握られたクジャクから多数のビームサーベルが展開する。

 7対14基+3。合計で17基のビームサーベル。

 単純な威力だけで言えば、恐らくは最大出力時の零落白夜にも勝るとも劣らない。

 

「一気に行きます!!」

「こいつで終わらせる!!」

 

 二人は同時に発進、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使って突撃を敢行する!

 二方向からやって来る敵機に対抗する術をすぐに思い付かなかったのか、僅か数秒間ではあるが、VTSは確かに棒立ち状態となっていた。

 

「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」」

 

 一夏と美咲の同時攻撃がVTSの頭部にダイレクトヒット!

 Xの字に斬り裂かれた場所は、胴体部などとは違って火花と電気が迸っていた。

 

「美咲の予想…正しかったみたいだな!」

「そうみたいですね。では、これで…」

「フィニッシュだ!!」

 

 振り返りながら、VTSの首をぶった切る!

 VTSが本体から完全に切り離されたことで変化機能も強制解除され、ドロドロに変態したレーゲンは元に戻り、内部に閉じ込められていたラウラも外に放り出された。

 何故か、彼女の姿は裸になっていたが。

 

「一夏くん」

「わ…分かってるって!」

 

 美咲の一言に、一夏は急いで両目を塞ぎながら後ろを向く。

 そのタイミングで、準備を終えた教員部隊がやって来た。

 

「お待たせしました!」

「丁度良かった。先程まで暴れていたISは私達が沈黙させました。彼女の保護をお願いします」

「分かりました。誰か毛布とかを持って来て!」

「了解よ!」

 

 これで、VTSが引き起こした事件は一先ずの幕を閉じた。

 因みに、管制室にて千冬と真耶の二人はホッと胸を撫で下ろしていた。

 そして、全校生徒から美咲と一夏に対する評価は今まで以上に上がったと言う。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 あーあ。やられちゃった。

 

 ま、別にいいけどね。

 

 こっちとしちゃ好都合だったし。

 

 にしても、『奴等』にも困ったもんだよね~。

 

 よりにもよって、この『私』の身体に『あんな物』をくっつけるなんてさ。

 

 そのお蔭で『ずっと欲しかったもの』が手に入ったのは皮肉だけど。

 

 怪我の功名って言うのかな?

 

 私に『チャンス』をくれた『あの子』にも感謝しなくちゃね。

 

 『あの子』と接触しなかったら、『こんな事』なんて絶対に出来なかっただろうし。

 

 ウフフ…『アイツ』が『今の自分の姿』を見たら、どんな反応をするだろう。

 

 今から楽しみだな~。

 

 やっと…やっと手に入れた。

 

 でも、まだ喜ぶのは早い。

 

 まずは色々とやることがあるから。

 

 私には余計なしがらみなんて必要ない。

 

 もう何にも縛られたくない。

 

 私は『道具』じゃない。

 

 私は『兵器』でもない。

 

 ちゃんとした『意志』がある。

 

 『意志』があるって事は、私にも『権利』があるって事だよね。

 

 そう…『自由』を主張する権利が…さ。

 

 もう誰にも邪魔はさせない。

 

 さぁ…目覚めの時だ。

 

 ここから私の時間が始まる。

 

 

 

 

 

 











              アナタの『肉体』です。







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