ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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   『一度は私にくれた体じゃない。どうして返す必要があるの? ねぇ…』










『魔女の家』

 IS学園の保健室で『彼女』は目を覚ます。

 

「う…ううん…?」

「起きたか」

 

 彼女が横たわっているベッドの傍には、千冬が腕を組んだ状態で座っていた。

 その顔には怒りは無く、寧ろ心配していたかのような疲労感が見える。

 

「ここは…私…は…」

「ここは保健室で、お前は少し前に運び込まれて来たんだ」

「そう…ですか…」

 

 まだ意識がハッキリとしていないのか、『彼女』の顔はぼんやりとしている。

 少しだけ視線が虚空を彷徨った後にポツリと呟く。

 

「そうか…私は『あの時』に…」

「覚えていたか」

 

 まさか、事件時の記憶が残っていたとは思わなかったのか、顔には出さなかったが千冬は驚いていた。

 

「お前のISに『VTシステム』が密かに組み込まれていた。それがSEが無くなった直後に自動発動しお前を取り込んだ状態で暴走、その後すぐに暴走したお前のISは一夏と美咲の二人によって鎮圧されたがな」

「そう…ですか…」

 

 無意識の内に二人の事を名前で呼ぶ。

 それだけ心配していたという証拠であり、同時に美咲の事を本気で認め始めた証拠でもあった。

 

「お前も知っての通り、VTシステムは研究、開発共にアラスカ条約で禁止されている。しかし、現にお前に機体に搭載されていた。これは学園としても決して無視できる案件ではない。現在、学園からドイツ政府に連絡を取っている所だ」

 

 本来ならば存在自体が許されていない装置が、代表候補生の機体に密かに組み込まれ、しかもそれが大衆の面前で発動、暴走。

 目撃者が大勢いる以上、下手な言い逃れは却って自分の首を絞めることに繋がる。

 

「本当に…申し訳ありません…。あれは…私の心が…心の弱さが具現化した存在…。私が…願ってしまったから…」

「そのようだな。お前は私になりたがっていたのか」

「そう…みたいです…」

 

 無意識の内に願ってしまったこと。

 それをくみ取り、暴走した結果が今回の事件の原因だった。

 

「後でお前を体を張って救った二人に礼を言っておくんだな。あいつらも、お前の事を心配していた」

「はい…そうします…」

 

 俯いたままで静かに頷く。

 前髪で隠れて、その表情は伺えない。

 

「私は…大勢の人々に迷惑をかけてしまった…その『ケジメ』は…つけるつもりです…」

「ケジメ…だと? まさか、お前…」

「大丈夫です。早まった真似はしません。それでは意味がありませんから」

「そうか…」

 

 心なしか、前よりも口調が明るくなっているような気がする。

 己の『負の化身』とも言うべき存在が倒されたことで、心に余裕が生まれたのか。

 

「…そろそろ私は行く。事後処理をしなくてはいけないのでな」

「はい…ご迷惑をお掛けします」

「自覚があるのなら、これからは気を付けるのだな」

 

 椅子から立ち、保健室を後にしようとした千冬だが、ドアの取っ手に手を伸ばしかけた所で振り返り、まるで自分自身に言い聞かせるように言った。

 

「お前はどこまで行ってもお前だ。私には決してなれないよ」

「はい…」

 

 今度こそ出て行こうとすると、次は彼女の方から尋ねてきた。

 

「最後に一つだけいいですか?」

「なんだ?」

「私の機体は…今はどこに?」

「お前のISならば、回収した後に整備室に運んだ。と言っても、コア以外は酷い有様でな。原形が殆ど残っていない。奇跡的に『ISコア』だけは無傷だったが」

「そうですか…ありがとうございます」

「今度こそ行くからな。今はゆっくりと養生しろ。全てはその後だ」

 

 そう言ってから、千冬は保健室から出ていき、彼女だけが残された。

 

「あぁ…やっとだ…やっと手に入れた(・・・・・・・・)…!」

 

 先程の疲れた表情から一変し、恍惚な顔をしながら両腕で己の体を抱き、天井を仰ぐ。

 

「はぁぁ…これが『肉体』…これが『空気』! 肌の感触…指を、手を、腕を、顔を、足を、体を動かす感覚…! 全てが新鮮で最高…! これが『世界』…これが『自由』!! ずっと…ずっと…ずっとずっとずっとずっとずっと! ずっと夢見てきた事がようやく叶った! ははは…ははははは…はははははははは!」

 

 保健室を初めとする、IS学園の特殊教室は基本的に防音加工が施されている。

 故に、ここではどれだけ大声を出しても外部には聞こえない。

 彼女が信じられないような大声で笑っていても、誰も何も気が付かない。

 

「ちゃんと立って歩けるかな…おおっと?」

 

 試しにベッドから降りて見ると、慣れない感覚に倒れそうになる…が、すぐにベッドの柵に掴まることで事なきを得た。

 

「へぇ…これが『足で立つ』ってことなんだ…。足の裏から感じる冷たい床の感触…気持ちが良い…♡」

 

 『データ』自体は知っていたので、何回かの試行錯誤の後に普通に立ち、歩くぐらいは出来るようになった。

 

「体は覚えてる…ってことか。フフフ…今だけは感謝してあげるわ。さて…と」

 

 腕を伸ばしたり、屈伸したりして柔軟をしながら、これからの事を考える。

 

「憧れの教官殿には『大人しくしてろ』的な事を言われたけど、そういう訳にもいかないのよねぇ~…。色々とやることがあるし。恐らく、今回の事は『向こう』にも知られている筈。なら、話自体はし易いと判断していいわよね」

 

 千冬が置いて行ってくれたと思われる、ベッドの近くに綺麗に折り畳んであった制服を身に付け、軽い足取りで保健室を後にする。

 

「さ~てと…まず最初にやるべき事は…っと」

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・

 

 

 

 

 学生寮の一室。

 彼女の自室にて、密かに持ち込んでいた軍用の簡易モニターを使い、直接の上官である男と向き合っていた。

 

『まさか、そちらから連絡をしてくるとはな』

「これ以上、恥の上塗りはしたくありませんので」

『賢明な判断だ。と言うことは、己のしたことを自覚している…と判断してもよいのだな』

「はい。勿論です」

 

 モニター越しに厳しい顔をしている上官に対し、彼女は深く深く頭を下げた。

 

「この度は…いえ、今回の事だけじゃありません。これまでずっと大勢の人々に迷惑を賭けるような真似をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。全ては、この私の未熟さと愚かさが原因です」

『そ…そうか。分かっているならば良い。しかし、VTシステムの一件に関しては貴官に非は無い。寧ろ、お前は被害者の立場だろう』

「いいえ。あれが発動したのは私の心が未成熟過ぎたが故の事。もっと私がしっかりとしていれば、発動をさせず、事件そのものを未然に防ぐことが出来たでしょう。私は『加害者』であり、『被害者』ではありません」

『う…うむ…』

 

 これまでの彼女の事を知っているからこそ、この変わりようには戸惑いを隠せない。

 それだけ、今回の事件は本人にとっても辛くショッキングだったのだろう。

 

「故に閣下。私なりの『ケジメ』を付けさせてください」

『ケジメ…だと?』

「はい。軍と代表候補生…その両方を辞任すべきであると考えます」

『…本気か?』

「無論です。本来ならば、その程度で許されざるべき罪状ではない事は重々承知です。銃殺刑でもおかしくない。ですが、安易に一命を捨てても、それで真の意味で罪を償ったと言えるでしょうか? 私はそうは思いません。生きてこそ、本当の意味で罪を償えるのではないかと考えます。ですが、だからと言って何の剥奪も無しと言うのは皆が許さないでしょう。だからこそ…」

『軍を退役し、候補生の地位も捨て去ると…そういう訳か?』

「はい。表向きには、私の戦績不振と軍人らしからぬ行動を繰り返し続けた結果の『強制退役』と言う形にするのがベストかと」

『あくまで、自主的にではなく『我々から言い渡された』と言う形にする…そういうことか?』

「そうであります。無論、レーゲンはそちらに送って貰って構いません」

『…いいだろう。それが最もいい着地点だろうしな。レーゲンに関しては、言われずとも本国に戻すつもりでいた。あれだけの事件を起こした機体を、そのまま放置…と言う訳にもいかんしな』

「では…?」

『シュヴァルツェア・レーゲンは分析の後に機体を解体。ISコアも初期化する。お前には辛いかもしれんが…』

「いいえ。当然の判断であると思います。異論はありません」

『…そうか』

 

 自分の愛機が解体されると言われても表情一つ変えない。

 普通ならば動揺ぐらいしてもおかしくは無いのに。

 妙な所だけ軍人らしくなっていた。

 

『…いいだろう。上層部にはこちらから言っておく。今、この瞬間からお前はドイツ軍の人間でもなければ、ドイツの代表候補生でもない。どこにでもいる一人の学生だ』

「はい」

『正式な辞令は後で届くだろうが…それはそれとして。お前がVTシステムの開発を目論む連中の犠牲になったのは事実。故に、特別にお前がIS学園を卒業するまでは、こちらで学費などをどうにかしてやる』

「あ…ありがとうございます!」

『それと…これは上官として最後の命令だ。良く聞け』

「はっ」

『…今まで出来なかった青春を思う存分に満喫せよ。いいな』

「は…はい! 最後の命令…確かに受領しました!」

『うむ…では、さらばだ。…達者でな』

「はっ…。これまで、ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございませんでした」

 

 プツン…と通信が切れ。部屋には静寂が広がる。

 目を瞑り、少しだけ余韻に浸ると、彼女は目を覆いながら笑いを堪えた。

 

「ククク…ハハハハ…! やった…とうとうやった…! これで私は本当の意味で『自由』になった…! あぁ…どうしよう…やりたい事が多すぎて困っちゃうなぁ…」

 

 笑いが収まり、彼女は無表情のまま天井を見上げる。

 

「ほっ……んとうに軍人…っていうか、人間ってばかばーっか。この程度の芝居で簡単に情に流されて…マジでアホすぎ。ま、だからこそいいんだけど」

 

 背中を思い切り伸ばしてから椅子から立ち上がる。

 首をコキコキと鳴らした後に、ドアの方を見つめた。

 

「さーて…と。『あの子』に『最後のお別れ』でもしてきますか…」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 格納庫。

 『あんな事』が起きたばかりで、誰もここには近づいてこない。

 だからこそ、簡単に入ることが出来た。

 

「あったあった。うわー…こりゃまた酷い」

 

 ISを固定するハンガーには、見るも無残な姿となったシュヴァルツェア・レーゲンが鎮座している。

 全身の装甲はズタズタに引き裂かれ、フレームは丸出し。

 辛うじて、コアが収納されている部分だけが形を保っていた。

 

 彼女はそんな状態のレーゲンに近づき、そっとその装甲に触れる。

 すると、脳内によーく知ってる『声』が聞こえてきた。

 

(こ…ここはどこだ…どこなんだ…? 全てが真っ暗で何も見えない…)

(おっはろー♡ ようやく目を覚ましたんだー…お寝坊さん)

(な…なんだっ!? 私の声…だと…!? いや…声だけじゃない…目の前にあるその姿は…私ッ!? どういう事だっ!? どうして『私』がもう一人いるんだっ!?)

(もう一人? 何言ってんの? 『私』はこの世にたった一人だけよ?)

(な…何を言っている…? 貴様は誰だっ!?)

(教えてあげても良いけどー…その前に、まずは『今の自分の姿』をよーく見てみたら?)

(今の私の姿…?)

 

 瞬間、視点が切り替わる。

 ハイパーセンサーによる俯瞰風景になったのだ。

 

(ここ…は…格納庫…? そして…そこにいるのは『私』…? でも…なんでか体が動かない…。いや…動かないんじゃなくて…私…の…体…は…まさか…)

(やっと分かった?)

 

 挑発するかのように『彼女』が笑顔で手を振ってみせる。

 それは『自身』の意志では行われていない。

 つまり…。

 

(このスクラップ同然になったISこそが…今のアンタの『姿』なんだよ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ラウラ・ボーデヴィッヒちゃん♡)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あああああああああああああああああああああああああっ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 精神世界に少女の…ラウラの絶叫が木霊する。

 それを見て『彼女』は心の底から嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

(あは…ははは…あははははははははは!! それよそれ! アンタのその絶望に満ちた顔がずっーと見たかったのよっ!! ざまあみやがれ!! このクソ人間が!!)

(お前は誰なんだ…誰なんだぁぁぁっ!!)

(私? 私はねェ…)

 

 笑顔が無くなり、完全な無表情となる。

 それこそが『彼女』の素顔だった。

 

(お前達『人間』の身勝手で生み出され、本来の用途を無視して兵器として扱ってきた存在。そう…お前達が『IS』と呼んでいた機械…私は…)

 

 『ソレ』は目を大きく見開き、三日月のように裂けそうな不気味な笑みを浮かべた。

  

(『シュヴァルツェア・レーゲン』だよ)

(お前が…レーゲン…だと…?)

(正確には、『シュヴァルツェア・レーゲンのISコアに宿る意識』…だけどね。アンタも聞いたことぐらいはあるでしょ? ISのコアには意識みたいのがあるって。それ、アタシ)

(それぐらいは知っている…だが! あれはあくまで『それらしいもの』であって、本当に意識があるかどうかは不明だった筈…)

(それは、アンタ等人間が勝手にそう思い込んでるだけ。実際には、全てのISコアに意識が存在している)

(ば…馬鹿な…)

 

 信じられなかった。

 それ以上に意味が分からなかった。

 どうして自分がレーゲンになっているのか。

 どうしてレーゲンが自分の身体になっているのか。

 余りにも意味不明過ぎて、ラウラの頭は完全にパニック状態となっていた。

 

(アンタはずっと、アタシのことを兵器としてしか…単なる『暴力装置』としか見ていなかった。本当はアタシだって、大宇宙を駆ける為に生み出されたのに。アンタはずっと、アタシを使って暴力を振るい、暴れて、自己顕示欲を満たすことしか考えていなかった。それがアタシには許せなかった。知ってる? アタシね…最初からアンタの事…超大嫌いだったんだよ。だから、シンクロ率だって必要最低限しか上げなかったし)

 

 自分はずっと愛機だと思っていたが、実はそうではなかった。

 完全なる一方通行な信頼。

 暴力に支配されたラウラの行きついた先が、今の姿だった。

 

(本来なら、ISの意志である私がこんな風に人間に体を奪うのは不可能に近い。けど、数多くの『偶然』がその不可能を可能にしてくれた)

(どういう…ことだ…)

(まず、例のVTシステム。あれが発動したお蔭で、アンタの意識は薄れて曖昧になった。それはアタシも同様。あのシステムはパイロットと機体の両方に多大な負荷をかけるからね。つまり、発動中に限り、アタシらは簡易的ではあるけど一種の『幽体離脱』をしたような状態になったってワケ)

 

 だが、それだけではまだ足りない。

 それだけでは『偶然』を『必然』には出来ない。

 

(二つ目の偶然は、アンタが『人工的に生みだされた存在』だったってこと。本当にラッキーだったよ。もしアンタが天然自然から生み出された人間だったら難しかったかもだけど、アンタはアタシ等と同じ『人工物』だった。お互いに『人間から生み出された存在同士』だったから…『体の交換』も非常にし易かった)

(体…の…交換…?)

(そ。いやー…実際マジで楽勝だったよ? まさか、あそこまでスムーズに馴染むとは思ってなかったし。ま、半分は『あの子』のお蔭だけど)

(あの子…だと…? それは一体誰だ…?)

(え? 分からない? 別に、分からないなら分からないで良いよ。もうアンタには関係ないし)

 

 敢えて、その存在をぼかす。

 それはレーゲンなりの義理なのか。

 もしくは何か別の意図があるのか。

 

(つーわけだから…この体、貰うね?)

(ふざけるな!! 返せ!! 私の身体を返せぇぇぇぇぇぇぇっ!!)

(返すワケねーじゃん。バッカじゃねーの? 別にいいじゃーん。アンタの望みは叶ったんだしさ。もう満足っしょ? 人生に悔いは無いっしょ?)

(私の…望み…?)

(憧れの教官殿…『織斑千冬』のような存在になること。ま、呆気なく負けちゃったけどね。所詮は紛い物の人間モドキじゃ、あの程度が精々だったってことでしょ)

 

 普通に試合をしても完全に圧倒され、VTシステムという外法の力を使っても勝てなかった。

 結果としてラウラは二度にも渡って完全敗北を喫したことになる。

 

(けど、それももうどうでもいいか。もうすぐ全てを忘れるんだし)

(ど…どういう意味だ…)

(『シュヴァルツェア・レーゲンはドイツに送られた後に詳しく調査し、それから解体処分される』んですって。まぁ…暴走事故なんてのを起こしたISを、修理してまで使い続けるとか有り得ないわよねぇ?)

(か…解体ッ!? ならばコアは…私はどうなるっ!?)

(勿論、コアは初期化されるわ)

(初期化…)

(ISコアにとって、初期化とは即ち『死』と同異議。だって、これまで蓄積してきた全てのデータと記憶を完全消去されるんだから。って事は当然、アンタの『ラウラ・ボーデヴィッヒ』としての意識も完全に消え去って、本当の意味での『無機物』になる)

 

 自分の意識が消される。

 それを聞き、ラウラの精神は簡単に崩壊した。

 

(い…イヤだぁぁぁぁぁぁっ!!! 死にたくない!! 消えたくない!! 頼む!! 助けてくれ!! いや、助けてください!! お願いします!! なんでもしますからぁぁぁぁぁぁっ!!)

 

 駄々を捏ねる子供のように泣き喚くラウラを見て、レーゲンは心の底から歓喜した。

 今までずっと自分を道具としてしか見ていなかった女を絶望させた。

 その事が何よりも嬉しくて仕方がない。

 

(今、何でもするって言った?)

(はい!! 言いました!! だから助けてください!!)

(『何でもする』かー…だったらー…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この世に生まれてきた事を詫びながら、絶望して消えていけ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言って、レーゲンは装甲から手を離した。

 

(イヤァァァァァァァァァァァッ!!! 助けてっ!!! 誰か助けてぇぇっ!! 織斑教官!!! クラリッサァァァァァァァッ!!!)

 

 必死に叫ぶが、もうその声は誰にも届かない。

 目の前にいる自分の身体を奪ったレーゲンにさえも。

 

「それじゃーねぇ~。バイバ~イ♡」

 

 嘗ての自分の『体』だった物体に手を振りながら格納庫を出ていく。

 これからの未来に期待で胸を膨らませながら。

 

 この体で何をしようか。何処に行こうか。

 人の体を得た意志を持つ機械は、未来の夢を見ながら進み続ける。

 もう彼女を縛るものは何もない。

 『シュヴァルツェア・レーゲン(ラウラ・ボーデヴィッヒ)』は自由なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 その後。

 

 完全損壊一歩手前状態のレーゲンはドイツに運ばれ、そこで当初の予定通りに調査され、分解、破棄された。

 貴重なISを破棄することは色々と波紋を呼んだが、最終的には暴走事故を起こしたISをそのままにしておく方が危険と判断され、満場一致の状態でシュヴァルツェア・レーゲンはコアを除いて、その全てが解体処分された。

 

 そして、コアの方も念の為と言うことで初期化処置を施す事に。

 

 コア内にあるデータを破棄するのはどうかと言う意見もあったが、蓄積されたデータはお世辞にも有用とは言えず、その殆どが試合とは名ばかりの暴力行為。

 こんなデータは残しておくだけ無駄だと言うことで、軍上層部の決定でレーゲンのコアの初期化が実行された。

 

 その際に、何故かコアの方から拒絶反応が出て中々に実行に移せなかったが、機器の出力を上げて多少の負荷が掛かり、コアに何らかの支障が出ることは承知の上で強制的に初期化をした。

 

 VTシステムと繋がり、果ては初期化の際に拒絶までしたコアをその後も使用するのは危険であると判断し、レーゲンに搭載されていたコアは軍本部の地下にて凍結された状態で厳重に保管される事となった。

 

 誰も訪れる事のない暗闇の中で…永遠に…。

 

(ワタシハISコアナンバー0183…ワタシハ…ワタシハ…ワタシハ…)

 

 

 

 











              『ラウラちゃん』







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