ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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                わん










『買い物デート』②

 無事に学園を出た美咲と一夏のカップルは、そのままタイミングよく駅に到着していたモノレールに乗って、駅前にあるショッピングモール『レゾナンス』へと向かっていた。

 勿論、二人を背後から密かに見守っている『美咲ちゃん見守り隊』も一緒に。

 

「二人並んで一番前の席に座って…見事に二人だけの世界が出来上がってますな」

「もうなんつーか…あれだよね。二人の周囲に少女漫画でよく使われるフワフワなトーン背景が見えるもん」

「誰から見ても、めっちゃラブラブなカップルだもんね~。ほら、近くにいる他のお客さんも…」

 

 チラッと別の場所に目を移すと、そこでは無自覚の内にラブラブ空間を形成してしまっている一夏&美咲の二人を見ながらニコニコしている人々の姿が。

 

「若いっていいわねぇ~。本当に羨ましいわぁ~」

「美男美女のカップルって…本当にあったんだ…」

「二人揃って、ずっとニコニコしてて…いいなぁ~…」

 

 もうモノレールの中全体が幸せ空間になってしまったかのようだ。

 その証拠に、客席からでは見えないが、運転手のおじさんも優しい笑顔を浮かべながら運転をしていた。

 

「来たわね…二人の発する『幸せ固有結界』が!」

「皆…ちゃんと『アレ』は持って来てるわね?」

「「「もち!」」」

 

 因みに、彼女達の言っている『アレ』とはブラックコーヒーの事を指す。

 ブラックコーヒーの常備は美咲ちゃん見守り隊のメンバーには必須事項となっていて、これが無いとたちまち二人から発せられる幸せオーラを浴びて口から砂糖を吐くことになる。

 本人達曰く『ジョージアよりもボスの方が効果的』らしい。

 その違いは彼女達にしか分からない。

 

「途中、自販機とかで補給しないといけないわね…」

「今日一日だけで、一体どれだけのブラックコーヒーを飲む羽目になるのかしら…」

「カフェインの過剰摂取で今夜は眠れないかもしれない…」

 

 そんな危機感を感じている彼女達を乗せて、モノレールは一路レゾナンスへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

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「ここが…レゾナンス…」

 

 始めてきた駅前ショッピングモールを見上げながら、美咲は口をポカーンと空けていた。

 

「美咲って、もしかして始めて来たのか?」

「あ…はい。基本的に個人的な私物は持ってきた物で事足りていましたし、消耗品の類は全て購買部で買えましたし」

「学園の購買部って、そこらのコンビニ級に物が揃ってるから凄いよなぁ…」

 

 IS学園の購買部は他の高校の購買部とは商品のラインナップが桁違いに多い。

 と言うのも、学生寮があると言うことで各種食料品や調味料、食器や電化製品なども普通に売っているからだ。

 なので、生徒によっては外に買い物に行かずに購買部で全てを済ませる者も多い。

 美咲もその例に漏れず、これまでずっと購買部で済ませていた。

 

「まずは、一番の目的である水着を買いに行こうぜ。その後に、残った時間でゆっくりと見廻ればいいんだし」

「そうですね。今はまだ時間帯故に人は多くはありませんが、だからと言ってゆっくりとしていたら混み合って来て思うように身動きが取れなくなる可能性がありますからね」

 

 取り敢えずの予定を決めた二人は、そのままの足で水着売り場へと向かう事に。

 当然、二人を見守る者達も缶コーヒー片手に追跡を開始する。

 

「隊長。どうやら二人は水着売り場へと直行するようであります」

「成る程。まずは当初の目的を果たして、その後に二人でゆっくりとデートを楽しむ気ね」

「それじゃ、我々も…」

「行くわよ。水着売り場へ」

 

 そうして、目の前のカップルを追跡する謎の少女達の集団と言う謎の状況が形成された。

 その奇妙さに気が付いていないのは本人達だけで、他の客たちは普通に気が付いていた。

 

「あ。あのマンガ…新刊出てたのか」

「後で寄りますか?」

「そうだな。美咲は何処か寄りたい場所ってあるのか?」

「そうですね…」

 

 自覚は無いようだが、会話の内容がもう完全に恋人を通り越して夫婦になっている。

 だからなのか、追跡班の少女達の脳裏には美咲と一夏が夫婦で仲良く夕飯の買い物に来ているように見えた。

 

「子供は男の子が一人…女の子が一人…」

「中央区の住宅街に一戸建てを購入して…」

「日曜日にはお義姉さんである織斑先生が遊びに来て…」

「あぁ…時が見える…」

 

 本人達を無視して将来設計をし始める面々。

 そんな事をしている間にも美咲たちは水着売り場へと進んでいた。

 

「到着…っと。やっぱ、ちゃんと男と女で水着売り場は分かれてるんだな」

「みたいですね」

「それじゃ、ここで一先ずは分かれて、水着を買ってから合流するって事でって…ん?」

 

 男性水着売り場へと移動しようとした一夏の服の裾を照れながら摘まんで離そうとしない美咲。

 その顔だけで一夏の心臓がドキッと高鳴った。

 

「あの…ですね…もしよろしかったら…その…一夏くんに私の水着を選んでほしいと言いますか…」

「えっ!?」

「ダメ…ですか…?」

 

 頬を赤くして、目を潤ませながらの上目遣いをする美咲の顔に抗えるほど、今の一夏の鈍感力は強くは無い。

 と言うことは勿論…。

 

「は…恥ずかしいけど…俺でいいのなら…喜んで…」

「ありがとうございます…♡」

 

 こうなる。

 

 そして、そんな二人見ていた見守り隊は全員揃って物陰でガッツポーズをしていた。

 

「「「「「よく言った美咲ちゃん!!!!!」」」」」

 

 まさか、普段から大人しく清楚なイメージの強い美咲が、この状況でこんなにも大胆な行動に打って出るとは思わなかった。

 これも偏に『好きな男の子に可愛い自分を見せたい』という少女らしい気持ちの現れなのかもしれない。

 

「うぅ…私は今…猛烈に感動しているわ…!」

「日本の夜明けね…!」

「もう私達が見守る必要は無さそうね…ん?」

「あれは…?」

 

 これでもう一安心かと思われた時、ふと視界の端に怪しげな人物が映った。

 スーツを着た大人の女性が男性店員にクレームを言っているようで、店員の方も凄く困っている様子だった。

 

「本当に使えないわね!! これだから男はダメなのよ!!」

「申し訳ありません…」

 

 会話の内容だけで、女性が『女尊男卑思考』の持ち主であることが分かる。

 しかも、良く見たら女性がいるのは美咲たちがさっき入って行った水着売り場の近くではないか。

 このままでは美咲たちを鉢合せをしてしまい、まず間違いなく男である一夏に対しても何かを言うに違いない。

 そうなれば、確実に今の良い雰囲気が台無しだ。

 それだけは何があっても絶対に避けなければいけない。

 

「「「「「うん!」」」」」

 

 見守り隊は顔を見合わせながら頷き、行動を開始する。

 あの女が水着売り場に行く前にどうにかしなくては。

 

 

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

 

 先程のクレーム女がイライラしながら水着売り場へと近づこうとした瞬間、突如として複数の少女達が目の前に現れて道を塞いだ。

 要は見守り隊の面々なのだが。

 

「はいはーい。そこのお姉さん。ちょっといいですかー?」

「あん? いきなり何よあんた達」

「すいませんねー。すこーしだけこっちに来てくれませんかー?」

「はぁ? なんで、この私がそんな事をしなくちゃいけないのよ。そこ邪魔よ。とっととどいて」

「まぁまぁ。そう言わずに」

「ちょ…離しなさいよ!!」

 

 どうやら言うことは聞いてくれ無さそうなので、ここは強制連行することに。

 両腕をガシッと摑んでから、引きずるように人気が全く無い物陰へと運んで行く。

 候補生などではないが、それでも彼女達とてIS学園の立派な生徒。

 普段から全く鍛えてなどいない一般人女性程度を制圧する程度の実力は有していた。

 

「ここまで来れば大丈夫…かな?」

「多分ね。じゃあ、やりますか」

 

 掴んでいた女性を放り投げ、女性は思わず尻餅をついた。

 

「いったー…なにすんのよ! このガキども…が…?」

 

 そこで初めて女性は少女達が『普通』ではないと気が付く。

 ジリジリとにじり寄り、背筋に冷たいものが走る。

 顔が青くなり、恐怖で思わず体が震えた。

 

「あ…あんたら…なによ…私をどうする気よっ!?」

「別にぃ~? ただちょぉ~っと…」

 

 少女達の目が漆黒に染まり、その口が歪んだ笑顔に変わる。

 

「「「「「『幸せ』にしてあげようと思って」」」」」

「ひぃっ!?」

 

 雰囲気が変わる。

 周囲の空間が漆黒に染まり、女性は尻餅を付きながら後ずさりをするが、あっという間に壁にぶつかってしまい行き止まりになってしまう。

 

「く…来るな…近づくんじゃないわよ…!」

 

 全身をブルブルと震わせながら首を左右に振る。

 歯がガチガチと鳴り、涙を流して虚勢を張る。

 

「止めろ…止めなさいよ…同じ女でしょ…!? どうしてこんな事をするのよ!? どうしてっ!?」

「「「「「あははははははははははははは!!!!!」」」」」

 

 もう会話も成立しない。

 もう完全に詰み。

 

 どうして、こんな事になったのか女には全く理解出来ない。

 ISが生まれてからコッチ、ずっと好き放題にいけ好かない男達をこき使い、思うがままに生きてきた。

 それが終わってしまう。

 自分は何も悪いことなどしていないのに。

 少なくとも、女は本気でそう思っていた。

 その考えこそが最大の罪であるとも知らずに。

 

「い…いやぁ…来ないで…来ないで…来ないで…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・

 

 

 

 

「これで一件落着ね!」

「悪は去った!」

「正義は勝つ!!」

「愛の勝利ね!」

「今後も、邪魔しそうな要因があったら逐一排除していかないと。ん?」

 

 見守り隊が戻ってきた所で、美咲と一夏が水着売り場から出てきた。

 美咲の手には紙袋が握られていて、ちゃんと一夏セレクトの水着を購入できたようだ。

 どうしてそれが分かるのかと言うと、二人で俯きながら耳まで真っ赤になっていたから。

 男女揃っての非常に初々しい反応に、見守り隊は予め自販機で補給しておいたブラックコーヒーを一気飲みする。

 

「あま―――――――――い!!!」

「これがラブの力か――――!!!」

「ユニヴァ―――――――ス!!!」

「ゲッタ―――――――――!!!」

「ウリィィィィィィィィィィ!!!」

 

 それぞれに歓喜の雄叫びを上げる見守り隊。

 それは勝利の叫び。

 そして、二人の未来を祝福する雄叫びでもあった。

 

「もう思い残すことは無いわ…」

「感無量ね…」

「ふっ…これが若さか…」

「これならもう大丈夫ね…」

「見守り隊はクールに去るぜ…」

 

 ミッションコンプリート。

 それを確信しつつも、念の為に見守ることを続行する少女達。

 

 しかし、彼女達は知らない。

 一夏と美咲が水着売り場の中で、自分達の想像を遥かに超える甘酸っぱい青春をしていた事を。

 もし知ったら、余りの尊さに天に召されていただろう。

 

 

 











                ろぐ







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