ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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               ぴぷぺぽ











『臨海学校・一日目』②

 担任教師と旅館の女将の手によって、自分達の泊まる部屋が一時限定の愛の巣へと変貌しているのを確認して呆然とした美咲と一夏は、気を取り直して荷物を置いてから海に行くのに水着に着替える為に更衣室へと向かっていた。

 

「こうして歩くと、この花月荘という旅館は本当に広いですね。地図も無しに一人で歩いていると、確実に迷ってしまいそうです」

「確かにな。千冬姉が言ってたんだけど、この旅館って毎年、この時期になるとIS学園が貸し切ってるんだと」

「成る程。だから、女将さんも私達への対応が慣れていて、織斑先生もまるで最初から道を知っているかのように旅館内を歩き回っていたのですね」

「そうなるな。少なくとも千冬姉は、去年もここに来た事があるって事になるし」

 

 今年で二回目ともなれば、それは嫌でも覚えているだろう。

 特に教師陣は、臨海学校に備えて旅館の中を徹底的に把握しているだろうし。

 

「あ。それで思い出した」

「何をですか?」

「ウチの副担任の山田先生って、下見として俺達よりも先に一回、ここに泊まっているらしいんだよ」

「あら。ということは、あの人だけは私達よりも一回多く、この旅館を堪能しているって事になりますね」

「それを聞いた時に他の皆も言ってたけど、割とマジで羨ましいよな。こんな旅館なら、臨海学校とか関係無しに、プライベートでも来てみたいって思うし」

「そうですね…」

 

 プライベート…その単語が出た時に真っ先に頭の中に思い浮かべたのは、お互いがお互いと一緒に旅行に行くことだった。

 

(美咲と二人きりの旅行…か。いつか、そんなのが出来ればいいなぁ…)

(一夏くんと二人きりで旅行…もし機会があれば、是非とも行ってみたいですね…)

 

 もう無意識下ですらお互いの事を想い合う辺り、この二人の絆はこの短期間の間に恐ろしく強固になっていると分かる。

 

 少しの間だけ近い未来の妄想に耽っていた二人だが、すぐに素に戻ってから誰に見せる訳でもない誤魔化しをし始めた。

 

「ま…まだ夏本番ではないとはいえ、今年は例年以上に気温が高いですからね。ちゃんと水分補給は怠らないように心掛けましょうね」

「そ…そうだな。そこの自販機で何か買うのもいいし、売店で買って行くってのもアリだよな」

 

 言っている事は普通に正しいことなのだが、二人揃って表情が硬い。

 無論、傍からそれを見ている者がちゃんといる訳で…。

 

(本当に若いっていいわよねぇ~。先生に言われた通り、あの子達の為に『例の部屋』の準備をしておいて大正解だったわね。今夜が楽しみだわ~♡)

 

 女将さん、完全に若者二人の恋路を楽しむ気満々である。

 

 因みに、それ以降は更衣室に行くまでの間には特に何も無かった(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 男女が同時に水着に着替えようとすれば、男の方が早くなるのは必然。

 一夏もその例に漏れず、一人早くに着替え終わり、海辺にて美咲が来るのを待ち侘びていた。

 

「…なんだろうな…この、何とも言えないソワソワとした感じは…。デートで彼女を待つ男って、こんな気持ちなんだろうか…」

 

 よりにもよって、学園のイベントである臨海学校でそんな気持ちになるとは。

 なんとも複雑な一夏なのであった。

 

「お…お待たせしました…」

「美咲。別に慌てる必要は無かっ…た…ぞ…?」

 

 待ち人の声が聞こえたので振り返ると、そこにいたのは…。

 

「ど…どう…ですか…?」

「…………」

 

 女神だった(一夏視点)。

 

 自分が選んだ緑と白のビキニを着て、髪型も普段とは違ってポニーテールにしている美咲が、恥ずかしそうに顔を赤くしながらモジモジとしている。

 少なくとも、こんな顔をしている美咲は始めて見た上に『自分が選んだビキニを着てくれている』という事実の相乗効果にて、今の一夏視点からは目の前の美咲がいつも以上に極上の美少女に見えた。

 

「いい……」

「ふぇ?」

「あっ!? いや…その…うん! マジで超似合ってるよ! スゲー可愛い!! 余りに似合いすぎてて一瞬だけ本気で呆然としちまったよ! 

「か…かわ…!?」

 

 ドストレートな褒め方に美咲の羞恥心が一瞬で最高潮に。

 心なしか、結んでいるポニーテールが嬉しそうに左右に揺れている気がした。

 

「じゃ…じゃあ…行くか?」

「は…はいぃ…」

 

 自然と差し出された一夏の手を握り返す美咲。

 その初々しさに、思わず周囲で見ていた他の生徒達は毎度のように面白い反応を見せていた。

 

「かー! 否しか女ばい!」

「だが、それがいい!」

「うまぴょいするんだ! あの二人、これから人目につかない岩陰とかに行って、こっそりとうまぴょいする気なんだ!」

「エッチな事をする気でしょ! 純愛系同人誌みたいに! 純愛系同人誌みたいに! 重要な事何で二回言いました!!」

 

 当然だが、それだけデカい声で叫んでいれば、二人にも普通に丸聞こえである。

 

「何言ってんだか…」

「う…うまぴょい? なんですかそれは?」

「美咲は知らなくても良いんだよ。というか、知らないでほしい。純粋な美咲のままでいて欲しい」

「はぁ…分かりました」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 水着を着た生徒達で賑わう浜辺を二人で歩いていく美咲たち。

 穏やかな海を眺めながら、ふと美咲が呟いた。

 

「そう言えば私…こんな風に…娯楽目的で海に来たのは初めてです」

「そうなのか?」

「はい。今までは木星公社でのテストパイロットとしての訓練やISの試運転などで海に来た事がある程度で、少なくとも今日みたいに仕事無しで海に来た事はありません。だからでしょうか…今日は何もかもが新鮮に感じます。潮風の匂いも…陽光に煌めく海の姿も…」

「美咲…」

 

 企業所属であるが故に、今までずっと忙しくて思うように遊ぶ事も出来なかったのだろう。

 そんな事を考えていたら、ふと一夏の口から大胆な言葉が飛び出した。

 

「…それなら、夏休みにまた二人で海に行こう」

「え?」

「今度はIS学園も臨海学校も関係無しに、正真正銘のプライベートで。どうかな?」

 

 自分の為に『海に行こう』と言ってくれた。

 その事が嬉しくて、美咲は目尻に涙を溜めながら眩しい笑顔で『はい』と答えた。

 

 そんな最高のタイミングに無粋な事をしてくる輩もいる訳で。

 

「ほほ~う? それはつまり、織斑君から我等が美咲ちゃんへの『デートのお誘い』ってことであってますかニャ~?」

「「わぁっ!?」」

 

 二人揃って変な声を出して驚き急いで振り向くと、そこには水着を着た一組と三組のクラスメイト達がずらりと揃っていた。

 

「うんうん。お姉さんたちは今、猛烈に感動してますよ?」

「あの織斑君が、自分から女の子をデートに誘う日が来るとは…」

「そして、それを受ける美咲ちゃんのまぁ可愛いこと!」

「典型的な生真面目系クラス委員だった美咲ちゃんが、ここまでになるとは…最高すぎて滝涙ジョーだよ」

 

 もう完全に親目線である。

 逆を言うと、それだけ二人は皆から心配されていたと言うことにもなる。

 なんせ『鈍感男』と『生真面目少女』の組み合わせだ。

 中々に難易度が高いカップリングだろう。

 

「そんなお二人に良い情報があるんだけど…買うかい?」

「有料なのかよ」

「…なんてね。流石にそれは冗談だよ」

「一瞬だけ間がありましたね」

 

 少しだけ本気で迷ったのかもしれない。

 

「実は、この浜辺って海の家もあるみたいで、先生達の話じゃ、そこでお昼を食べても良いんだって」

「海の家…そんなのもあったのか」

 

 ある意味では定番とも言える施設ではあるが、実際に利用した事は殆ど無い。

 大半は家族連れやカップルで賑わうからだ。

 今は一夏と美咲がその『カップル側』なのだが。

 

「さっき私達もチラッと見て来たんだけど、高級旅館にが近くにあるだけあって、かなりメニューのバリエーションがあったよ?」

「ラーメンやカレーと言った定番メニューもあれば、新鮮な魚介類を豊富に使ったシーフード系の料理も一杯あったし」

「ちゃんとドリンクやかき氷も完備。シロップの味も沢山あったよ」

 

 聞いているだけでお腹が空いてきそうになってくる。

 特に美咲は、海の家の事は知識としてしか知らないから、より一層興味が引かれた。

 

「気になるなら二人で行って来たら? 今日のこの浜辺はIS学園の貸切みたいなもんだし、少なくとも人が多すぎて入れないって事は無いだろうと思うよ?」

「そう…だな。行ってみるか」

「はい。私、海の家って気になります」

「その台詞…どこかで聞いたことがある気がする」

 

 気にしたら負けである。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 初めて利用した海の家。

 美咲は目をキラキラとさせて、まるで幼い子供のように色んな所を眺めていた。

 

「おぉ~…これが海の家…本当にメニューが豊富なのですね…」

「みたいだな。ラーメンにカレーに焼きそば…この辺は定番だけど、他には…」

「海鮮パスタに海鮮チャンポン…海鮮ピラフなんかもありますよ」

「トドメは『焼きハマグリ』かよ…聞いてるだけで腹減ってくるわ」

 

 新鮮な魚介類を豊富に使った料理程、美味いシーフード料理は無い。

 特にここは海に面している場所。

 料理の材料には事欠かない環境だ。

 

「皆が言ってたみたいに、お昼はここで食うか」

「それが良いと思います。旅館の料理は夜でも食べれますけど、海の家の料理は今しか食べれませんから」

「だな。こんな機会でもないと海の家なんて来ないし。まずはここでドリンクでも買って水分補給でもするか」

「賛成です。どれにしましょうか」

「そうだな~…」

 

 二人が並んで何を買おうか考えていると、後ろから非常に聞き覚えのある声が彼女達に話しかけてきた。

 

「ん? お前達…もう昼を食べる気か?」

「千冬姉?」

「織斑先生?」

 

 声ですぐに相手が千冬だと分かったが、その姿を見た瞬間に二人とも固まった。

 

 真っ黒なビキニを着て、全身が非常に引き締まった整った体。

 まさに女として理想の体型をしていた。

 

「二人して一体どうした?」

「い…いや別に…その…」

「お…お見事です…」

 

 驚きの余り、言葉が変になってしまった。

 

「ふっ…私の体を見ている暇があるのなら、隣りにいる『彼女』をもっと褒めてやるんだな」

「「か…かの…!?」」

 

 まさかの不意打ちに固まる男女。

 この二人、揃いも揃って不意打ちに弱すぎだ。

 

「そろそろ私は行く。折角の機会だ。二人だけの思い出をたくさん作っておけよ」

「「は…はい…」」

 

 そう言い残すと、堂々とした足取りで千冬は去っていく。

 去って行った先で生徒達からキャーキャーと叫ばれていたが、今の二人にはどうでもよかった。

 

「色んな意味で心臓に悪かったな…」

「そうですね…」

 

 二人で顔を見合わせてから顔を赤くし、ぎこちない動きではあるが当初の目的通りにドリンク購入を試みる。

 だがここで、海の家の店員が別の意味で二人にトドメを刺しに来た。

 

「お? 君達…もしかしてカップルだったり? おっしゃ! それなら俺から君達二人にこいつをお勧めするぜ! ほらよ! その名も『ラブラブカップ』!」

「「えぇっ!?」」

 

 それは、ハートマークが沢山描かれたピンク色ので大きめのカップに、ハートの形に曲がっている二本のストローが刺さっている代物だった。

 完全にカップル専用の商品だった。

 

「心配しなくても、ちゃんと中身は普通のジュースだぞ」

「「あ…ありがとうございます…」」

「毎度あり~!」

 

 折角の好意を無下には出来ない真面目な二人は、致し方なくラブラブカップに入ったジュースを受け取ることに。

 

「ど…どうする…?」

「飲むしかない…のでは…?」

「だよな…」

 

 その後、もう何度目になるか分からない顔面真っ赤状態になりながら、IS学園唯一の男女カップルは寄り添うように浜辺に設置してああったパラソルの下で寄り添うようにしながら二人でジュースを飲んだ。

 勿論、それを見た同級生たちにワーキャーと叫ばれたり、思わず海の家にブラックコーヒーを買いに行く者が続出したり、そのラブラブ空間に充てられて砂糖を吐いたり、再び合流した千冬に温かい目で見られたりしていた。

 

 

 

 

 

 











                 ぺるるー







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