ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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                ぽる










『臨海学校・二日目・昼~夜』

 臨海学校二日目のカリキュラムが開始され、各々に作業に入る。

 美咲と一夏も、他の生徒達が動き始めたのを見てから自分達の仕事をし始めた。

 

「さて…と。公社の方から一体何を送ってきたのやら」

「美咲には知らされていないのか?」

「一応、『開発中のファントム用の新装備や試験用の武装を送る』とは聞いているのですが、具体的には何も」

「ふーん…」

 

 ISを動かした身とはいえ、ついこの間までごく普通の一般人であり学生だった一夏には会社の都合なんて全く知らないので『そんなもんなのか』ぐらいにしか考えていなかった。

 実際には、単に会社側の美咲に対するサプライズなのだが。

 

「では、コンテナを開きましょうか。織斑先生、よろしいでしょうか?」

「あぁ。構わんぞ」

「ありがとうございます。一夏くん、少しだけ離れていてください」

「分かった」

 

 一夏が離れたのを見計らって、予め外面に設置してあった操作パネルを軽く触ってからコンテナを開ける。

 ウィーンという機械音と共にコンテナが開いていくと、中から幾つかの武装と思わしきものが現れた。

 

「これはまたなんとも…色々と持ってきましたね。あら? これは…」

 

 何かに気が付いた美咲が何かを手に取る。

 それは、緑と白のコントラストが特徴的な、筒状の何かだった。

 

「『ミスティック・シールド』じゃありませんか。もう完成していたのですね」

「なんだそれ?」

 

 『シールド』と言う割には、全く盾っぽく見えないので、思わず一夏が横から質問した。

 

「簡単に言うと、ファントム専用の折り畳み式の盾です」

「折り畳み式の盾?」

「はい。基本的には、この状態で左腕を覆い隠すように装着されるのですが、戦闘時にはこのように…」

 

 美咲が少し弄ると、ミスティック・シールドが展開されて、縦長の盾に変化した。

 

「このように、防御用の兵装に変形するんです。これなら、取り回しも良いですしね。いざと言う時は、いつでも左腕からパージも出来ますし」

「そっか…そういや、ファントムには盾みたいのは無かったな」

「えぇ。ファントムは防御よりも機動力に特化しているので、『例えどんな強力な攻撃でも、当たらなければどうと言うことは無い』がコンセプトになってます。つまり、最初から敵に攻撃に被弾することを前提にしていないんですよ」

「当たらなければどうということはない…か。確かに、その通りだわな」

 

 一夏の専用機である『白式』の持つ必殺の一撃である『零落白夜』も、命中さえしなければ全く意味が無い。

 それどころか、発動中はリアルタイムでSEが減っていくので、完全な諸刃の刃と化している。

 

「ファントムライト発動中は、機体の周囲に『ビームの嵐』が発生するので、ありとあらゆる光学兵器に対して無敵の防御力を持ちますが、逆を言えば実弾兵器には弱いんですよね」

「それを補う為の『ミスティック・シールド』ってわけか」

「そうなります。ま、実際にはそれだけじゃないんですけど」

「と言うと?」

 

 展開した盾を折り畳みながら、美咲の解説が続いていく。

 千冬にとっても興味深い話なので、特に注意をする事は無かった。

 

「これ、実は実体の盾としてだけじゃなく、他にも『ビーム・シールド』も展開可能なんです」

「ビーム・シールドって…文字通り『ビームの盾』ってことか?」

「はい。今も色んな国や研究機関で開発が続いている最新技術で、本来は攻撃用に用いるビームを盾にする事で、実体系の武器だけでなく、光学系の武器にも大きな防御力を誇るんです。多少のエネルギーは消費しますが、盾をもビームにする事で機体の重量は大幅に軽減されますし、取り回しも良くなる。実体の盾よりも遥かにメリットが大きいんです。もし本格的な量産に成功すれば、これからのISの殆どにビームシールドが標準装備される可能性が高くなるでしょうね」

「「「「おぉ~…」」」」

 

 美咲の説明に、一夏だけではなく、千冬や他の生徒達も思わず手を止めて聞き入ってしまい、小さくパチパチパチと拍手をしてしまった。

 

「しかも、いざと言う時はビーム・シールド自体をビーム・サーベルのように使うことも可能ですし」

「攻防一体の盾…ってことか」

「そうなります。しかも、このミスティック・シールドって、この突起がある部分に牽制用のビーム・バルカンも内蔵しているんです」

「マジの万能武器かよ。なんか、木星公社の武器って、どれもこれもが複数の機能を持ってるのが多いよな」

「それはきっと『少ない武器で少しでも多い手数を』をモットーにしているからかもしれません。一つの武器に複数の機能を搭載すれば、その分だけ拡張領域に余裕が生まれますから」

「成る程な。確かにそうだ」

「その代わり、武器の扱いは難しくなりますが。そこはもう普通に努力あるのみですね」

「結局、最後は努力なのか…」

「そんなもんですよ」

 

 美咲に言われたら誰も何も言えない。

 

「ミスティック・シールドは、通常時はビーム・シールドを展開して、ファントムライト発動時には実体の盾として使うのが良いでしょうね。ファントムライトの『嵐』は、自分のビームすらも大きく歪めてしまいますから」

「もしかして、フレイム・ソードの刀身が揺らめいてるのもそれが原因なのか?」

「はい。ビームライフルなんかも真っ直ぐには撃てないんですよ。ぐにゃぐにゃに曲がって真面に飛んで行きません。相手の意表を突くのには最適かもしれませんけど」

 

 どんな能力も一長一短。

 圧倒的機動力と防御力を誇ると思われたファントムライトにも、致命的な弱点が存在していた。

 だが、その弱点すらも利用できてこそ初めて真の一流と呼ばれるのかもしれない。

 

「後はー…『ピーコック・スマッシャー』に『ムラマサ・ブラスター』ですか。これは別にファントムの為に持ってきたんじゃないですね。本当に私に試しに使ってみて欲しいのでしょう」

「この二つって…もしかしてクジャクの元になった武器か?」

「正解です。クジャクは、この二つを一つに融合させると言うコンセプトの元に産み出されました。最初から複数の機能を持つムラマサ・ブラスターに、更に広範囲射撃兵装であるピーコック・スマッシャーまで合体させようっていうんですから、そりゃ開発費もIS一機分に匹敵するのも道理ってもんです」

 

 実際に一夏もクジャクを使った経験があるから分かるが、あの武器の万能感は本当に凄かった。

 剣として使えば一撃必殺の威力を持ち、銃として使えば一度に複数の相手に攻撃が出来る。

 素人である一夏ですら『強い』と思うほどなのだ。

 一流の操縦者が使えば、本当に一騎当千の活躍が出来るであろうことは誰にでも分かる。

 

「他には…ファントムライト時に使用する緊急冷却カートリッジの予備がありますね。これは普通に有り難いです。場合によっては湯水のように消費しますから」

 

 ある意味、ファントムにとって最大の生命線。

 これが無くなったが最後、ファントムライトの使用時間は最大で僅か15分になってしまうから。

 

「バスターランチャーにショットランサー。それから装着式のスネークハンド、おまけにABCマントまであるし…」

「ABCマント?」

「正式名称『アンチ・ビーム・コーティングマント』。略して『ABCマント』です」

「あぁ~…成る程な」

「何重にも重ねられた特殊素材がビームやレーザーを受けた時に蒸発して、光学兵器のエネルギーを相殺することが可能になるんです。理論上、ビームライフルの直撃にならば5発ぐらいは耐えられるそうです」

「普通に凄いな…見た目は普通のマントなのに」

「見た目は…ですね。実際には最新技術の塊ですが」

 

 こうして色んな物を見ていくと、改めて木星公社の凄さを思い知る。

 これほどに凄い物を生み出せる企業が、どうして無名のままなのか。

 まだ学生の身である一夏には全く分からなかった。

 

「中々に数が多いですけど、地道に頑張れば時間までには終わるでしょう。一夏君もいますしね」

「お…おう! 任せておいてくれ!」

 

 惚れた少女にそこまで言われたら、男として奮起しない訳にはいかない。

 美咲の一言でやる気を漲らせている弟を見て、千冬は青春の空気を感じていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「「ふぅ…」」

 

 特に何事も無く(・・・・・・・)二日目も終了し、生徒達は各々に夜の旅館を堪能している。

 何回も温泉に入る者もいれば、ゲームセンターで遊ぶ者、土産物屋で買い物をする者など様々だ。

 そんな中、一夏と美咲の二人は旅館の渡り廊下に設置してあったベンチに並んで座り、静かに星々の光る夜空を眺めていた。

 

「今日はちゃんと普通の飯が食えたな…」

「昨日は本当に散々でしたからね…」

 

 流石に二日目ともなると女将の方も自重して、皆と同じ新鮮な魚介類を堪能できる夕飯を出してくれた。

 結果的に二人の絆が確固たる物にはなったが、それでも酷い目に遭った事には違いが無いので、その詫びも兼ねてか今晩の料理は他の皆よりも少しだけ量が多くなっていた。

 昼間の作業で空腹気味だった一夏には非常に有り難かったが。

 

「明日にはもう臨海学校も終わって学園に帰るんだよな…」

「二泊三日という短期間であるにも拘らず、物凄く濃密で長い時間に感じましたね」

「その主な原因は、間違いなく一日目の夕飯だけどな」

「「アハハ…」」

 

 あの時の事を思い出すと乾いたら笑いしか出ない。

 良い意味でも悪い意味でも、間違いなく二人の黒歴史ランキングのトップに君臨することだろう。

 

「明日は確か…」

「今日の作業の後片付けをした後に、バスに乗って旅館を後にして、昼食は途中によるサービスエリアで取る…でしたね」

「お約束だけど、まず間違いなく明日のバスの中は皆揃って疲れ果てて、眠ってから静かになるだろうな…」

「容易に想像が出来ますね」

 

 明日の事を想像するだけで、少し笑いが込み上げてくる。

 二人揃って笑みを浮かべた所で、美咲がそっと一夏の肩に頭を乗せた。

 

「一夏くん…私、この臨海学校…とても楽しかったです。きっと、一生忘れないと思います」

「うん…そうだな。俺も楽しかったよ。最高の思い出になった」

 

 どうしてそうなったのか。

 二人は敢えて語らなかった。

 その理由は言わなくても分かっているから。

 

 隣にいる存在が一緒だったから楽しかった。

 

「また…来たいですね。今度は…二人で…」

「あぁ…いつか…きっと…」

 

 そうして二人は見詰め合い…。

 

「「ん……」」

 

 眩しく輝く満月の見守る中、唇を重ね合った。

 

 

 

 

 

 












                ぽん






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