ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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               トリ










『更識楯無』①

 二人での夏休みを思い切りエンジョイした美咲と一夏は、充実した思い出と共に二学期へと突入する。

 と言っても、特に何かが変わると言う訳ではなく、強いて言えば一学期よりも、より実戦的な実技の授業が増えたぐらいである。

 

「これで今日の授業は終了…っと。佐藤さん、号令を」

「はい。起立。礼」

 

 今日も今日とて、美咲の号令と共に一日の授業が全て終わる。

 二学期が始まってから早数日。

 学園内は少しだけ浮き足立っている雰囲気があった。

 

「二学期と言えば、やっぱり『学園祭』だよねー」

「うんうん。天下のIS学園の学園祭だもん。まず間違いなく、そこらの学校よりも豪華で派手なものになるに違いないよね」

 

 どれだけIS学園が特殊な場所とはいえ、表向きは立派な学校法人。

 当然のように一般の学校と同じようなイベントも存在している。

 学園祭も、そんな行事の一つだった。

 

「と言う訳で、美咲ちゃんはやっぱり、織斑君と一緒に学園祭を見て回る感じ?」

「いや、普通に話が早すぎますから。まだ学園祭は先ですし、出し物についての話し合いもしてませんし」

「あー…そーだったー…」

「ウチらもなんかしなくちゃいけないんだよねー…」

 

 自分達も当事者であることを思い出した瞬間、急にテンションが下がる面々。

 それでも、いざ話し合いになると再びテンションが高くなっている事だろう。

 

「さて…と。では、私はそろそろ行きますね」

「お? 今日もまた愛しの彼氏の所ですかな?」

「……そうですよ」

「否定しないんだ。美咲ちゃんも成長したねぇ~…」

「アナタは私の親戚のおばちゃんですか?」

 

 遂には美咲がツッコみをし始める。

 それだけ彼女がクラスに馴染んだという証拠だ。

 

「全く…」

 

 呆れながら、今度こそ教室を出ようと立ち上がると、そこへいきなりクラスメイトの一人が美咲の事を呼んだ。

 

「おーい。美咲ちゃーん」

「おや? どうしました?」

「なんか知らないけど、二年生の人が美咲ちゃんと呼んでるよー」

「二年生が?」

 

 いきなりの事に目を見開く。

 同学年ですらクラスメイトと恋人である一夏以外に知り合いがいないのに、上級生に知り合いなんて一人もいない。

 その筈なのに、いきなりの御指名とはこれいかに。

 

 若干の困惑をしながらも教室のドアの方を見ると、そこには二年生で唯一、顔だけは知っている人物の姿があった。

 

「あの人は…」

「知ってる人?」

「知ってるも何も、あの人はIS学園の生徒会長ですよ」

「「「マジでッ!?」」」

 

 一応、学園専用のサイトやパンフレットなどにも顔写真や簡単なプロフィールが記載されているのだが、この様子だと彼女達は全く見ていないようだ。

 

「でも、その生徒会長さんが美咲ちゃんに一体何のようなんだろう?」

「それは本人から聞いてみないと何とも。仕方がありませんね…」

 

 溜息を吐きながら、美咲はメールで一夏に少し遅れる旨を伝えた。

 

「これでよし…と。では、行きますか」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

 教室の出入り口にいたのは、水色の髪と言う個性的な髪色を持つ少女だった。

 その手に機械的なデザインの扇子を持ちながら腕組みをしていて、その顔には余裕に満ちた笑みが浮かんでいた。

 

「私なら大丈夫よ。こうして会うのは初めてよね。私は…」

「IS学園生徒会長にして、自由国籍を持つ現ロシア国家代表の『更識楯無』先輩ですよね」

「あら。もう既に知っていたのね」

「自分の通う学校の生徒会長の名前と簡単なプロフィールぐらい知っていて当然です」

「流石は企業所属。噂通りに真面目な子なのね」

「それほどでも」

 

 どんな噂なのかは気になるが、一介の生徒でしかない(と美咲は思っている)自分の事すら知っている事に素直に感心した。

 

「ところで、その生徒会長が私に一体何の御用でしょうか?」

「うーん…それなんだけどー…」

 

 徐に楯無が周囲を見渡す。

 それを見て美咲はすぐに『この場では話しにくいことなのか』と悟り、自然に話題を振った。

 

「それでは、今から食堂にでも行きましょうか。今の時間のあそこならば、ここよりから静かでしょうし」

「そうね。それじゃあ、そうしましょうか」

 

 クラス代表なんて事をしていると、自然とこんな時の対処法も身についてくる。

 楯無もそれを分かっているのか、彼女の持つ扇子が広がり、そこに『ナイスフォロー』と書かれてあった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 食堂に到着すると、美咲の予想通りに人影は疎らだった。

 なので、二人は適当な席に向かい合うように座ってから、お互いに茶を飲みながら本題に入ることに。

 因みに、美咲はホットココアを、楯無は紅茶を飲んでいた。

 

「急にゴメンなさいね。貴女の事を呼び出すような真似をして」

「お気になさらないでください。それだけ重要な話があったと言う事なのでしょう?」

「重要…ね。正確には『重要だった』って言うべきかしら」

「だった?」

 

 どうして過去形なのか。

 もう既に事態は収束したと言う事なのだろうか。

 

「企業所属の美咲ちゃんなら事情も分かってくれると思うから、ハッキリと言うわね」

「はい」

「実は私ね、日本政府の方から織斑一夏くんの護衛をしろと言われていたのよ」

「一夏君の護衛…」

「えぇ。その理由は…分かるでしょ?」

「彼が世界で唯一無二の男性IS操縦者だから…ですね」

「ご名答。簡単な質問だったわね」

 

 世界で唯一であるが上に、一夏の身柄を狙う者は後を絶えない。

 実際、ISを動かした直後にも明らかに怪しい連中が彼の家にまで直接押しかけてきて、自分達の所に来るように言ってきたらしい。

 

「そのついでに、彼の事を鍛えて少しでも強くしろ…とも言われてたんだけど…」

「けど? どうしたんですか?」

「美咲ちゃんがいるから大丈夫かなーって思って」

「私がいるから?」

 

 どうして、そこで自分の名前が出てくるのだろうか?

 意味が分からず美咲は小首を傾げた。

 

「アナタと織斑君が一緒になってから、彼の実力も成績もメキメキと上がってるって評判なのよ? 知らなかった?」

「いえ…全く。確かに、一夏くんの実力は向上しましたし、最近はちゃんと授業にもついていけるようになったと言っていましたけど…」

 

 まさか、それが周囲に知れ渡っていたとは思わなかった。

 美咲としては、本当にごく普通に一夏と接し、勉強を教え、ISの練習をしてきただけなのだが。

 

「彼の事を鍛える…と言う所は、もうその時点で既に解決済み。私の出る幕は無い。護衛の方も問題は無いでしょ。私から見ても分かるもの。美咲ちゃん…相当に強いでしょ。ISだけじゃなくて、生身の方も」

「それ程でも…」

「あるわよ。ここに来るまでに歩き方や立ち姿とかを見ているだけでも分かる。無意識の内にいつ、何があっても常に対処出来るように手足を動かしていることがね」

「企業での訓練の際に、その辺の事は徹底して叩き込まれましたから」

「だと思った。それぐらいじゃないと、企業所属のIS操縦者なんて出来ないわよね」

 

 国家代表や代表候補生と比べると、どうしても文字的な意味で見劣りしてしまいそうな企業所属と言う肩書だが、実際には全くそんな事は無い。

 寧ろ、国に所属するよりも直に新型機を受領するので、ある意味で国に所属する以上に厳しい基準が設けられている場合も多い。

 美咲が所属している『木星公社』もその例に漏れず中々に厳しく、特に『一騎当千』をコンセプトにしたワンオフの最新鋭カスタム機『サーカス・シリーズ』の一機である『ファントム』の専属となるに当たって、美咲はそれこそ国家代表クラスの厳しい訓練を受け、見事に潜り抜けてきた実績がある。

 別に自慢するような事でもないので誰にも言ったりはしていないが。

 

「本当は別にこうして伝える必要も無いんだろうけど、それでも一応は『実はこんな事があったんだよ』ってことは言っておきたくて。ほら、一応は美咲ちゃんも当事者になってしまった訳だし…」

「それはそうですが…」

 

 だとしても、こうして律儀に伝えに来てくれた事に対して、美咲は素直に偉いと思った。

 普通ならば、こんな事は『面倒くさい』の一言で片付けてしまうからだ。

 

「ところで美咲ちゃんは、どこか部活には入ってるのかしら? よかったらなんだけど、織斑君と一緒に生徒会に入って…」

「いえ。一夏くんは一学期の時点で既に剣道部に所属してますし、私も一学期の中ごろに『eスポーツ部』に所属してますし」

「なーんだ…そうなのね…って、eスポーツ部っ!? ウチにそんな部ってあったかしら…」

「どうやら今年になって設立された部活のようでして。最初は私も何の部活なのか訳も分からず、敢えて何も調べずに入部してみたんです」

「か…顔に似合わず、意外とアグレッシブなのね…美咲ちゃん…」

 

 楯無が入手した噂では、美咲の評判は非常に良く、一人の生徒としても、クラス代表としても優秀で、それに加えてIS学園唯一の男子である一夏と付き合っていると言う事実が更に美咲の評判を加速させていた。

 

「色んなゲームをやってはいますが、最近は特に対戦格闘ゲームの練習をしています。あれはいいですね。最初は『所詮はゲーム』と思って見縊っていましたが、実際にプレイしてみると想像以上に奥が深い。動体視力と反射神経が自然と鍛えられていきます」

「そ…そう…なんだ…」

 

 目をキラキラさせながら熱弁をする美咲に少しだけドン引きしながら、楯無はそんな彼女の姿に少しだけ『妹』の姿を重ねてしまった。

 

「…どうしました?」

「え? 何が?」

「今、一瞬だけ表情が暗くなったように見えました」

「そ…そう?」

 

 鋭い。

 美咲は観察力も凄いと、頭の中で情報を書き加えた。

 

「もしかして、何か悩みがあるのではないですか?」

「ど…どうして、そう思うのかしら?」

「単なる勘です。ですが、こう言う時の私の勘は外れた事がありません」

「それを自分で言えるのが凄いわね…」

 

 でも、その『勘』は大当たりしている。

 楯無は『悩み』を抱えている。

 とても大きな『悩み』を。

 

「もしよかったら、私に話してみませんか?」

「美咲ちゃんに?」

「えぇ。こう見えても私、クラス代表として皆の悩み相談なんかをしているんです」

「もうクラス代表って言うよりは、クラスの皆のお姉さん的な立場になってるわね…」

 

 美咲の精神年齢は自分よりも上かもしれない。

 そう思うと急に情けなくなってきた。

 

「別に無理強いをする気はありませんが、誰かに話すだけでも気分は楽になると思います」

「…そう…ね。凄く情けない話になるけど…聞いてくれるかしら?」

「はい。私で良ければ喜んで」

 

 そして、楯無はポツポツと話し出した。

 嘗て、自分のせいで起きてしまった出来事の事を。

 

 

 

 

 












              がう







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