ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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『同じ『姉妹』でも、これ程の差が出るとは。日ごろの行いが…ってやつなんですかね? 物理的に一つになるのと、心を通い合わせて一つになるの…どっちが本当の『幸せ』だと思いますか?』








『更識姉妹』

 楯無と簪とが話をしてから数日。

 あれから全く音沙汰がないことに不安を感じながら、美咲はもう完全に習慣になりつつある一夏と一緒の昼食を取っていた。

 

「そういや、あれからどうなったんだ? 例の会長さんと、その妹さんとの話は…」

「一応、やれるだけの事はやったつもりなんですが…」

「なんか不安要素が?」

「いえ。不安要素と言うか、あれから全く連絡が無いので、どうなったのかなと…」

「連絡が無いのは元気な証拠…って、これは違うか」

「合ってるようで全然違いますね」

 

 一瞬だけ『ん?』と思いそうな事を言うのは、流石は一夏と言うべきか。

 

「あらあら。今日もまたラブラブね~。美咲ちゃん」

「「え?」」

 

 いきなり聞き覚えのある声で話しかけられる。

 まさかと思い振り向くと、そこにはニコニコ笑顔の楯無が、妹の簪と一緒に立っていた。

 

「楯無先輩。それに簪さんも。そうしてご一緒にいると言う事は…」

「うん。美咲のお蔭で、お姉ちゃんと仲直りが出来た。本当にありがとう」

「いえいえ…どういたしまして」

 

 簪からのお礼に、変に謙虚な態度をせず、真っ直ぐに礼を受け取る。

 そうして貰うと、礼を言った方もいい気分になる。

 

「君とは会うのは初めてね。織斑一夏君」

「あ…あー…そうですね。初めまして」

「初めまして。IS学園生徒会長で二年生の更識楯無よ。そして、こっちにいる子が…」

「更識簪。一年四組でクラス代表をやってる」

「そっか…君が…」

 

 ある意味で因縁のある者同士である一夏と簪の初邂逅。

 もう簪の方は吹っ切れているようだが、一夏の方はそうはいかない。

 

「えっと…その…ごめん。美咲に聞いたよ。俺がISを動かしたせいで君の機体が…」

「その事はもういいから。気にしてない」

「そ…そうなのか?」

「うん。だって、貴方は何も悪くない。悪いのは倉持技研の連中だから」

「お…おう…」

 

 正直、一発ビンタされるぐらいの覚悟をしていただけあって、完全に意表を突かれた。

 そんな一夏の様子に、美咲は口を手で覆いながらクスクスと笑った。

 

「一夏くん。簪さんは、初対面の相手に暴力を振るうような女性ではありませんよ?」

「そ…そうだよな…あはは…」

 

 完全に空回りだけをした一夏に、三人揃って微笑を浮かべた。

 楯無と簪が一緒に微笑んでいる姿を見て、美咲は『もうこの姉妹は大丈夫だ』と確信する。

 

「簪ちゃんの専用機に関しても問題は無いわ。今後は私だけじゃなく、知り合いの整備班の子達にも手伝って貰うつもりだから」

「それは何よりです」

 

 IS学園は二年生になると『操縦班』と『整備班』の二つの班に分かれる事になり、そこから本格的に自分が学びたい事を重点的に勉強出来るようになっている。

 そんな者達からの助力となれば、これ以上ない程に心強い味方となる。

 

「専用機の製作に関われるなんて本当に貴重な機会だからね。皆も二つ返事でOKしてくれたわ」

「でしょうね。後学の為にもやらないと言う選択肢は無いでしょう」

 

 もし自分が整備班であっても、頼まれたら絶対に手伝う。

 独学や量産機の整備では得られない貴重な経験が待っているだろうから。

 

「問題は、倉持技研が変なちょっかいを出してこないか…それが心配なのよね」

「その点は大丈夫かと」

「あらどうして?」

 

 今度は美咲が自信満々に胸を張る番。

 話ながらも器用に自分の食事である『親子丼定食』を食べ進め、味噌汁を静かに飲み干す。

 

「実は、今回の簪さんの専用機に関する一件をウチの会社の社長に報告しておいたんです。もしかしたら、倉持をどうにかする切っ掛けになるかもと思って」

「美咲の会社の社長さんって…」

「木星公社の社長と言えば…あの人ね」

「あら。ご存じで?」

「勿論。色んな意味で有名な人だから。木星公社の老社長『クラックス・ドゥガチ』。僅か数人の仲間達と共に小さな会社を立ち上げ、そこから必死の努力を突き重ねていった結果、小規模ながらも大会社に匹敵するようなレベルの高度な技術力を有するようになった企業。美咲ちゃんの専用機である『ファントム』も、木星公社の技術の粋を集めて製造された最新鋭機…よね?」

「流石は生徒会長。流石です」

 

 言いたい事は全て言われてしまったが、要はそういう事である。

 

「うちの社長は無駄に人材を集める事を良しとせず、多少の問題には目を瞑り、とにかく優秀だと思った人物を積極的に採用しているんです」

「そうみたいね。素晴らしい才能を持っているにも拘らず、元いた会社では他の人達とソリが合わずに退職した人達を拾い上げて、見事に有効活用していると聞いているわ。そんな会社だからこそ、世間的にはそこまで有名ではなくても、知る人ぞ知る…みたいな会社になってるのよね」

 

 実際、デュノア社を初めとする大会社の一般社員などは木星公社の事を全く知らない。

 流石に幹部や社長ともなれば知ってはいるが。

 

「倉持技研が簪さんにした所業を聞いた途端、ドゥガチ社長は珍しく憤慨しておられました」

「そりゃそうだろ。聞けば誰だってブチ切れるって」

 

 まだまだ一般人的感覚を持つ一夏ですら怒るぐらいなのだ。

 一流の企業人であるドゥガチが聞けばどんな反応をするかは明白である。

 

「今までにも倉持技研の黒い噂はあったようですが、それに関する証拠や証人の全てが見事に隠蔽されていて、あくまで『噂レベル』に抑えられていたようです。ですが…」

「簪ちゃんと言う証人と、打鉄弐式と言う物的証拠が現れた」

「えぇ。それにより、今までずっと燻っていた憤りが爆発したようですね。今までずっとライバル関係だった他の会社にも同じ情報を流し、倉持技研を一点集中攻撃する気満々みたいです」

「他の会社と言うと?」

「まずは世界規模の超大企業の『アナハイム・エレクトロニクス』に、そのライバルとも言うべき海軍戦略研究所『サナリィ』、たった一代で巨大な複合企業集団と化した『ブッホ・コンツェルン』。他にも大小様々な企業が『打倒倉持技研』に名乗りを上げています」

「アナハイムにサナリィにブッホ・コンツェルン…いずれも名が知れた所ばかり…凄いわね…」

 

 倉持技研が今の状況を知っているかは不明だが、どちらにしても倉持の運命は決したも同然だった。

 周りの全部が全て敵。完全にアウェーな状況。

 まさか、一人の少女の意志を踏みにじった事が、自分達の破滅を招く結果になるとは夢にも思わなかっただろう。

 

「近い内、倉持技研は間違いなく解体されるでしょうね。場合によっては裁判沙汰になる可能性もありますね」

「もしそうなったら、ウチのお父さんも裁判に呼ばれるかもしれないわね。ま、どんな証言をするかは分かりきってるけど」

 

 大事な娘を侮辱されたのだ。

 父親として立ち上がらない理由は無い。

 

「このご時世じゃ、再就職も難しいでしょうね」

「それ以前に、倉持の関係者ってだけで、どの会社も採用とかしないんじゃないか?」

「倉持が無くなれば、その所員たちの隠蔽能力は皆無になる。となれば必然的に…」

「大半の人達が実家に籠る形になるか。場合によっては文字通り『路頭に迷う』事になるかも」

 

 淡々と言ってはいるが、ここにいる全員が同情の念など微塵も持ってはいない。

 信賞必罰。自業自得。

 悪いことをすれば、悪いことが自分に返ってくるもの。

 

「怒らせてはいけない人達を本気にさせてしまったんです。今はまだ報道などはされていないようですが、それも時間の問題でしょう」

 

 美咲の一言に全員がウンウンと頷く。

 

 因みに、これから少し時間が経った後の話ではあるが、本当に倉持技研は解体され、所属していた人間は世間からの完全に鼻摘まみ者にされてしまい、大半の者達は再就職先に恵まれず、殆どの者達が実家に引き篭もる結果となった。

 強かな一部の者達は偽名を使ってアルバイトなどをして辛うじて生計を立てているようだが、そこから以前のような生活をするのは絶対に不可能だろう。

 

「…どうやら、美咲ちゃんには私達のこと以外でもお世話になったみたいね。ドゥガチ社長がアナタを起用した理由も分かった気がするわ」

 

 この若さで、こんなにも優秀ならば引く手数多だろうに。

 そんな中で木星公社と言う場所を選んだのは、ある意味では運命かもしれない。

 

「御礼代わりと言っては何だけど、困ったことがあったら何でも言って頂戴。美咲ちゃんの為なら、どんな事でも協力するわ」

「勿論、私も」

「お二人とも…ありがとうございます」

 

 礼を言いたいのはこっちなのに、それでも頭を下げる美咲に、更識姉妹の好感度が更に上がっていく。

 今や、この姉妹は美咲に対して絶対的な信頼を持っている事だろう。

 

「そうだ。ねぇ…美咲ちゃん」

「なんですか?」

「もうすぐIS学園の『学園祭』があるのは知ってる?」

「はい。近々、クラスでの出し物を決める為の話し合いをする予定でしたから」

「学園祭かー…。ウチのクラスも話し合いとかしなくちゃいけないのかー…」

 

 タダでさえ狭き門でエリート校としてのイメージが強いIS学園の学園祭。

 訪れたがる一般客は非常に多く、最初の頃は特に入場制限を設けていなかったせいで物凄く混み合って学園祭自体が大混乱になった事がある。

 それ以来、学園側も反省をして、基本的に学園祭に来ることが出来るのは生徒から渡される『入場券』を持つ者のみに限定されている。

 それでも毎年、かなりの数の人間が訪れるのだが。

 

「学園祭をするにあたって、全校生徒には自分が呼びたいと思う人に渡す用の『入場券』が一枚ずつ配布されるんだけど…はいコレ」

「どうも……え?」

 

 楯無から美咲に渡されたのは学園祭の入場券が二枚。

 

「あの…一枚多いようですが…?」

「美咲ちゃんには特別に一枚多くあげようと思って。今はこれぐらいしか出来ないけど、いつか必ず今回の事に相応しいお礼をさせて貰うわ」

「そ…そうですか…」

 

 いきなり入場券を二枚渡されても、誰に来て貰おうかまだ考え中だ。

 ここは矢張り、木星公社の誰かを呼ぶのがベターか。

 

(うーん…誰が良いでしょうか…? コックをしているギリさん? テストパイロット仲間のローズマリーさん…? それとも、社長の御息女のテテニスさん? カラス先生に元軍人上がりのバーンズさんも候補に上がりますね…)

 

 まだ早いとはいえ、それでも考えてしまうのが人の性。

 少しだけ頭の中で考えたが、すぐに『ゆっくりと考えればいいか』と切り替える。

 

「入場券かー。俺の場合は誰にするかなー」

「美咲ちゃん以外は皆一枚だから、誰を呼ぶかは本当に考えるのよね。王道のなのは家族や友人だけど」

「家族…は普通に千冬姉は学園にいるしな。じゃあ、友人…?」

 

 真っ先に思い付くのは中学時代の友人である五反田弾。

 前々からIS学園に行きたがっていたから、入場券を渡せば泣いて喜んでくれるかもしれない。

 

「ま…いっか」

 

 美咲と同様に、まだ先の話を今考えても仕方がないと思い、一先ずは頭の中から消した。

 

「さて…と。それじゃ、私達はそろそろ行くわね。二人の事…応援してるから」

「頑張ってね…美咲」

「あ…はい」

 

 最後の姉妹揃ってのサムズアップで締められ、彼女達は食堂から去って行った。

 

「最後のアレ…なんだったんだ?」

「さぁ…?」

 

 二人揃って小首を傾げつつ、話をしながらもちゃんと食べ終えていた美咲と一夏は、仲良く一緒に出食後のデザートの追加注文をしに行った。

 

 因みに、食後のデザートに二人が頼んだのは、一夏はみたらし団子で、美咲は抹茶プリンだった。

 

 

 

 

 

 

 




『悪が栄えた試し無し…ですか。出る杭は打たれるとはよく言いますが、悪い意味で杭を出すのは感心しませんね~。それでは『どうぞ打ってください』と言ってるようなもんです。ま、倉持技研が滅びるのは必然だったのかもしれませんね』




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