ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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『学園祭…それは貴重な青春の一ページ…。いやはや懐かしいですね~。若い頃を思い出すようです。私も学生時代は、学園祭でムーンサルト逆バンジー選手権に出ていたものです』









『学園祭準備』

 学園祭に向け、各クラスでは催し物を何にするかの話し合いが行われていた。

 司会進行役はクラス代表が勤め、話し合いを進めていく…のだが…。

 

「えー…それでは、我が一年三組では何を出すかの話し合いを始めたいと思いますが…」

 

 美咲が教壇に立ち、クラスメイト全員の顔を見渡しながら意見を求めると、すぐに挙手が上がった。

 

「はいはーい! 意見じゃないけど、ちょっとした情報がありまーす!」

「情報? それはなんですか?」

「私がゲットした情報によると、どうやら一組はメイド喫茶を、二組は中華喫茶をするみたいだよ?」

「メ…メイド喫茶ぁ? 中華喫茶ぁ?」

 

 確かに、喫茶店と言うのは数ある選択肢の中でも最もポピュラーなアイデアの一つだ。

 だが、そこに『メイド』や『中華』という頭文字が付くとなると一気に話が変わってくる。

 

(あの一夏くんが、そんな意見を出すとは考えにくいですし…恐らくは、クラスの女子の意見と見て良さそうですね。多分、他に良いアイデアも出なかったから、そのままずるずると流れで決定したんでしょう)

 

 ああ見えて、一夏は割と周囲の雰囲気に流されやすい所がある。

 しかも、それが多人数からの意見となれば、一夏に話の流れを覆すほどの力は持っておらず、必然的に意見が固まってしまう。

 

「けどいいなぁ~。メイド喫茶かぁ~。私も可愛い服を着て喫茶店とかしたいなぁ~」

「まぁね~。でも、先を越されちゃ意味無いよね~。仮に私達もメイド喫茶をしても、ほぼ確実に二番煎じになるだけだし…」

 

 同じ事をすれば、必然的にお互いのクオリティがモロに売り上げに直結する。

 少しでもどこかが劣れば、それが致命傷になりかねない。

 

「っていうか、なんで二組は中華なわけ?」

「それは普通に謎。一組がメイド喫茶って聞いて、差別化を図ったんじゃない?」

「喫茶店以外をするって選択肢は無かったわけね…」

 

 元々が美咲を中心に纏まっている三組は、特に美咲が進行しなくても、各々で有益な話し合いを繰り広げていく。

 これならば自分が司会進行役をせずに、ディベートのような形式にした方が良かったかもしれないと思った。

 

「ねぇ美咲ちゃん。一組、二組と並んで喫茶店をするんなら、私達は別の物にした方が良いよね?」

「そうですね。もし仮に別のモチーフを元にした喫茶店をしても、殆ど集客効果は無いでしょう。私がお客の立場ならば、まず間違いなくどこか一ヵ所にだけにしか立ち寄りませんね」

「だよねー。ライバルの土俵でライバルと同じ武器を持って戦うのは流石に無謀かー」

 

 これもまた美咲の影響なのか。

 三組の生徒達は広い視点で大局を見据えられるようになっていった。

 若くして社会人になっているが故なのかもしれない。

 

「展示物系…はちょっと地味だしなー」

「折角の学園祭だし、思い出に残るような物にしたいよねー。うーん…」

 

 全員が腕組みをしてウンウンと考える。

 それに習って美咲も考えるが、いいアイデアが思いつかない。

 

「鉄板の喫茶店を連続でされたら、他のクラスの選択肢が一気に狭まるのよね~」

「食事系は排除するべきか…?」

 

 悩みに悩む生徒達を、教室の端で温かく見守る担任の先生。

 本当は話し合いに混ざって意見を言いたいが、今回は生徒達の自主性を優先して黙っていた。

 

「最大の禁じ手として『休憩所』と言うのもありますが…」

「「「「それは流石に却下」」」」

「ですよねー。それは最後の手段ですよねー」

 

 それでも、美咲が言った『休憩所』も一応は意見に入れておく。

 本当の本当に何も良いアイデアが無かった場合の保険として。

 

「…仕方がありません」

「ん? 美咲ちゃん?」

「何かいいアイデアがあるの?」

「いいアイデアかは分かりませんが、一つだけ思い付いたことが」

 

 全員が注目する中、美咲は静かに口を開く。

 

「メイド喫茶は『洋風』。中華喫茶は『中華風』。ならば私達のテーマは『和風』にするのはどうでしょうか?」

「和風…」

「ある意味では王道よね」

「メイドと中華に対抗するには、こっちも王道で攻めるしかないかぁ~」

「でも、いいんじゃない? 取り敢えずの方向性だけでも決まれば、そこからアイデアは絞れるし」

「そうね。美咲ちゃんの意見に賛成!」

「私も! 和風テイストな出し物、皆で考えよう!」

 

 こうして、一先ずの意見は固まった。

 と言っても、重要なのはここからなのだが。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「…と言う訳で、うちのクラスは『和風』な何かをする事にしました。細かい事は再び話し合いで決めることになりますが」

 

 放課後の食堂。

 美咲は一夏や、例の一件で仲良くなった簪と一緒にのんびりと過ごしていた。

 

「和風かー。いいんじゃないか? 美咲なら着物も似合いそうだし」

「着た事は無いんですけどね…」

 

 美咲に限らず、現代社会で着物を初めとする和服を着る機会自体が希少なので、着たことが無いのも無理は無い。

 

「けど、どうしてウチがメイド喫茶をするってバレたんだ?」

「なんでも、一組の子達が自慢するように言い触らしていたのを聞いたらしいですよ?」

「マジか…。別に聞かれても問題は無いけどさ…」

 

 IS学園のイベントとは言え、学園祭は学園祭。

 別に売り上げを競うような事はせず、あくまで楽しむのが目的だ。

 

「けど、一体どうしてメイド喫茶なんて事になったのですか?」

「あー…やっぱ聞くかー…そうだよなー…」

 

 美咲に聞かれた途端、一夏は急に遠い目をしてお茶を啜った。

 

「実はさー…ラウラが言い出したんだよ」

「え? 彼女が?」

 

 最初の印象からはガラッと変わり、今では自他ともに認める明朗快活な陽キャとなったラウラ。

 元軍人とは思えない程に完全にクラスに馴染んでいた。

 

「なんでも『夏休みの間に、興味本位で入ったメイド喫茶が思った以上に面白かったから、クラスの皆ですればいいんじゃないかと思った』らしい」

「「メイド喫茶…」」

 

 普通、メイド喫茶は男性が行くものであると相場が決まっている。

 女性禁制ではないから入店自体は許されてはいるが、それでも積極的に行こうとする者は少数だろう。

 その『少数』に知り合いがいると思うと、何とも言えない気持ちになる。

 

「簪さんの四組は、どんな感じなんですか?」

「ウチも、美咲の所と同じで一組や二組が喫茶店をするって知った途端に、アイデアの中から飲食店系を排除してた」

「やっぱり、そうなりますよね」

 

 中華喫茶は兎も角、メイド喫茶は正面から相手にするには余りにも分が悪すぎる。

 対抗するには、搦め手で攻めるか、美咲たちのように別の属性で攻めるかだ。

 

「一回の話し合いじゃなかなか決まらないね。学園祭までには時間はあるし、準備期間とかも顧慮すると、あと1~2回ぐらいは話し合いは出来ると思う」

「でしょうね。年に一回の学園祭ですし、中途半端な事はしたくありませんし」

 

 一年生である美咲たちは、まだ来年や再来年にも学園祭をする機会はある。

 しかし、だからと言って妥協をしてしまえば、それはそれで嫌な思い出になってしまうだろう。

 こんな時ぐらい、皆で一緒に全力で取り組みたいと思う。

 

「そういや、なんで二組は『中華喫茶』なんて事になったんだ?」

「それに関しては普通に謎ですね。『中華』と『喫茶店』を組み合わせようと考えたこと自体は凄いと思いますが」

「そうだね。普通は、その二つは合体させようとは思わないよ」

「だよな…」

 

 改めて考えると、中々に大胆な発想だと思う。

 それ故に、他のクラスとの決定的な差別化も出来ている。

 

「今思い出したけどさ、出し物ってクラスだけじゃなくて部活でもするんだよな…。剣道部は何をする気なんだろう…」

「運動部系は、やっぱり体験系とかでしょうか?」

「それが一番ベターだろうね。準備も簡単だし」

 

 いつもと同じような準備さえしておけば、後は客引きをするだけで済む。

 因みに、柔道部や空手部はその手で行くようだ。

 

「お姉ちゃんが言ってたんだけど、野球部はストラックアウト、サッカー部はPK、バスケ部はスリーポイントシュートをやらせて、結果によって景品をあげる…みたいな事をするみたいよ?」

「うーん…これまた定番だな。美咲が入ってるeスポーツ部はどうなんだ?」

「ウチも似たようなものです。お客さんと部員とで格闘ゲームで対戦し、もし勝利が出来たら景品を差し上げる…そんな感じです」

「え?」

 

 そこでいきなり簪が変な声を出して停止する。

 

「あのさ…私の記憶が正しければ、今のeスポーツ部の部長さんって、前にストリートファイター5の世界大会でベスト4に入った実力者じゃなかったっけ…?」

「そうですよ。ですから、チャレンジの際はハンデとして必殺技の使用は禁止するようにしてあります」

「それでも十分に無理ゲーだと思うけど…」

 

 普通に考えれば、格ゲーの達人に必殺技抜きとは言え、勝てる方がおかしい。

 その気になれば、技なんて無くても十分にワンサイドゲームに持ち込めるだろう。

 

「そう言えば、簪さんは何の部活に入っているんですか?」

「漫画研究部。と言っても、やってる事は殆ど同人誌サークルと大差ないけど」

「って事は、今度の文化祭も?」

「うん。出し物は部室でやる小規模な同人誌即売会。実際には今年の夏コミでの売れ残りの在庫一斉処分なんだけど」

「「せ…世知辛い…」」

 

 学園祭で在庫の処分を行う。

 聞いているだけで悲しくなってきた。

 

「前に楯無先輩が仰っていましたけど、IS学園では生徒会も部活の一つとしてカウントされているらしいですね」

「みたい。ある意味、IS学園らしいよ」

「まぁ…特殊な学校だしなー」

 

 一般の学校での常識が通用しない。

 それがIS学園。

 

「ならば、生徒会も何か出し物をする…と言う事なのでしょうか?」

「そうなんじゃない? 何をするのかは知らないけど」

「それ以前に、生徒会の出し物って言葉の響きが凄い」

 

 字面だけで見れば、何か凄いことをやりそうな予感がするが、あの楯無が生徒会長な時点で推して知るべしである。

 

「仮に変な事をしそうになったら『虚さん』が止めてくれるだろうし」

「虚さん?」

「ここの三年生で、お姉ちゃんの幼馴染兼従者。そして、整備班の班長で生徒会にも所属してる人」

「ぞ…属性多可だな…」

「ついでに言うと、一組にいる『布仏本音』っているでしょ?」

「あぁ…あの何故か袖が長い制服を着てる、いつものんびりな感じの子か」

「そ。その子のお姉さんでもある」

「…世間って狭すぎだろ」

「それは同感」

 

 ブレーキ役がいるのならば、生徒会は安全かもしれない。

 安全すぎて、逆に地味な事になりそうだが。

 

「どちらにしろ、俺達にとって初めての学園祭…頑張って盛り上げないとな」

「そうですね」

「うん…いい思い出にしたいしね」

 

 お互いに頷き合いながら決意を固める三人。

 

 そうして、学園祭へ向けて生徒達は進んで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 




『次回は学園祭のお話ですよー。果たして、ミサキさん達は一体何をするんでしょうかね~? 今から楽しみですね~』




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