ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~ 作:とんこつラーメン
そして、月日が流れた。
京都への修学旅行や体育祭などといったイベントを経て、美咲や簪と言った同級生たちの尽力により、一夏は無事に二年生へと進級できた。
美咲たちが二年生になったタイミングで一部校則が変更され、生徒会が部活扱いではなくなり、生徒会と部活との両立が可能になった。
それに伴い、楯無はすぐに美咲と一夏、簪を生徒会へと勧誘し、二人は彼女には色々と世話になっているという恩義もあったし、簪は今まで姉に迷惑をかけた分、今度は姉に役に立ちたいという考えで、少しでも生徒会の活動を手伝えればいいと考えて生徒会入りを決意。
一夏は庶務に、簪は書記、美咲は副会長に就任し、企業勤めの手腕をいかんなく発揮し、書類整理や各部からの要望などを見事にこなしていった。
二年生の二学期後半辺りで楯無が生徒会長を辞任、後任として美咲を指名した。
本来ならばIS学園の生徒会長は実力で決定されるものなのだが、楯無はもう既に美咲の実力は知っていた上に、彼女の持つ独特のカリスマ性や性格もよく知っていたので、試合などをすることなく特例として美咲に生徒会長の座を明け渡した。
今までに前例がないことに普通ならば抗議などがありそうなものだが、もうその時点で全校生徒に美咲の仁徳は知れ渡っていたので、教師陣を含めて誰も反対する者はいなかった。
因みに、美咲が生徒会長になった事に合わせて、一夏が副会長に昇進した。
美咲が生徒会長になった事で、今までにも少なからずあった差別意識やいじめ問題などが完全に消滅し、教師たちからは『今までで一番平和なIS学園になった』と絶賛された。
そんな学園生活を経て今日、遂に彼女達が卒業する。
「卒業生代表。生徒会長、佐藤美咲」
「はい」
静粛な雰囲気の中、美咲が壇上に登って行く。
その様子を一夏と簪、そして端の方にいる千冬が見守る。
卒業式と言う事もあって、必死に我慢しているが、大半の生徒達が涙を堪えている。
中には我慢出来ずに涙を流したり、鼻を啜ったりしている者もいた。
多種多様な反応をしているが、今の彼女達の想いはたった一つ。
『IS学園に入って本当に良かった。最高の三年間だった』
その一点に凝縮されている。
マイクの前でお辞儀をし、手に持っている紙を広げてから一瞬だけ目の前にいる生徒達を見渡す。
同じ時代を過ごし、共に青春を分かち合った友人達。
そして、そんな中で出会った愛する人。
思わず美咲も涙が込み上げてきそうになったが、この場面での落涙は厳禁であると即座に判断し、すぐに我慢をした。
「私は……」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
卒業後、一夏はなんと大学には進学せずに、美咲の伝手でなんと木星公社に就職。
厳しくも優しい先輩社員(主にギリ)達に鍛えられながら、雑務をしながらのテストパイロットをやっていた。
最初は強面老人社長であるクラックス・ドゥガチにビビってはいたが、すぐ怖いのは見た目だけで、中身は普通の好々爺であると同時に敏腕社長であると知り、あっという間にドゥガチのお気に入りに。
そうして再び月日が流れ、二人は無事に成人し、そして…。
「結婚…しちゃいましたね…」
「だなぁ…。後悔とかは微塵も無いんだけど、未だに実感が湧かないや…」
山の上にある純白の教会にて、二人は結婚式を迎えた。
式には木星公社の皆だけでなく、学生時代の友人達、楯無や簪、一夏の男友達である弾を初めとした面々、恩師とも言うべきIS学園の教師たち…主に真耶などもきていて、当然だが千冬も珍しく号泣しながら出席していた。
「千冬姉…まだ泣いてるし…」
「婚活…頑張ってるそうですね?」
「未だに良い出会いが無いってぼやいてたっけ…」
悲しき姉の現状に、思わずジト目になる一夏。
顔も良いし、スタイルもいい。
パッと見はかなりの優良物件の筈なのだが、家事能力の無さが完全に足を引っ張っていた。
「うぅぅ…弟に先を越されたぁぁぁぁぁっ!!」
「せ…先輩ッ!? 折角のおめでたい席なんですから、魂の叫びを上げるのは止めましょうよッ!?」
「お前に何が分かる真耶! 私を差し置いて結婚したお前にはっ!」
「そんな事を言われてもぉ…」
余談だが、元IS学園教師の中で未婚なのは千冬だけで、他の皆は全員が無事に結婚をして幸せな家庭を築いていたりする。
真耶に至っては、二人の子宝に恵まれて順風満帆な結婚生活を満喫していた。
「お…俺もいつか、虚さんと一緒に負けないぐらいの結婚式をやってやるからな~! ですよね虚さん!」
「だ…弾さん…」
虚というのは、簪の幼馴染で一夏の嘗てのクラスメイトでもあった『布仏本音』の実の姉で、楯無の幼馴染兼従者でもあった女性。
学園祭の時に知り合った縁で、美咲→楯無からの伝手で友人から始め、その後に一緒の大学に通った辺りから本格的に交際を開始。
今では家族もドン引きするぐらいのカップルになっていた。
「綺麗ね…美咲ちゃん」
「そうだね。幸せそうで本当に良かった」
大切な友人として、姉妹の仲を救って貰った恩人として、更識姉妹は心から二人の結婚を祝福していた。
今回の結婚の仲人をしたのも、実はこの姉妹だったりする。
「今からブーケトスをしますけど…」
「どうにも嫌な予感が拭えないな…なんでだ?」
夫婦になった事で勘もシンクロしているのか。
二人の予感は見事に的中することになる。
「時間も押してますし…気にせず投げましょうか」
「そうだな。んじゃ美咲、思い切り投げてやってくれ」
「はい! そー…れっ!」
美咲が全力でブーケを空高く投げると、その瞬間を待ってましたと言わんばかりに千冬が全身全霊の力を込めての大ジャンプを披露した。
「とりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「先輩が物凄い勢いでジャンプしたぁぁっ!?」
その場にいた全員が驚きの余り誰も動けず、結局は千冬が空中にて見事にブーケをキャッチすることに成功した。
「ふふふ…このブーケは誰にも渡さん! これは私の物だ!」
「顔が完全に悪役になってますよ先輩ッ!?」
真耶の必死にツッコミもなんのその。
もう誰も、千冬からブーケを奪おうなんて考えには至らなかった。
「何やってんだよ千冬姉…」
「流石…と言うべきなんでしょうか…?」
「いや。そこは素直に文句を言っても良いと思うぞ美咲」
結婚をして早々に義姉の行動に呆然とさせられた美咲であった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
そして更に年月が流れ…。
ピンポーン。
「ママー。ピンポン聞こえたー」
「ん? 誰か来たみたいですね。私が出ましょうか」
「いやいいよ。美咲は
「分かりました」
誰もが夢見るマイホームを手に入れ、一人娘である『美夏』も生まれ、幸せ真っ只中な織斑家。
ソファに座り、美夏の隣で頭を撫でている美咲が見守る中、一夏が玄関へと向かって行く。
「はいはーい。誰ですかー…って。千冬姉?」
「久し振りだな。あと、私だけじゃないぞ」
「え?」
玄関先に立っていたのは実姉の千冬。
因みにまだ独身。
ブーケの効果を未だに信じて婚活パーティーに通う毎日を送っている。
「やっほー。私達も来ちゃった」
「おっすー」
「楯無さんに…簪も一緒だったのか」
千冬に後ろからひょっこりと現れたのは楯無と簪の姉妹。
この二人は千冬とは違い、まだ結婚こそしていないが、ちゃんと彼氏を作って現在は交際中である。
楯無の方は、近い内に当主の座を降りてから結婚をする気らしい。
「もしかして、三人揃って来たのか?」
「ううん。私と簪ちゃんは、こっちに来る用事があったついでに寄ってみようって思っただけ。その途中で偶然にも千冬さんに会ったから、一緒に行こうって事になったの」
「成る程な。まぁいいや。入ってくれ」
「「お邪魔しまーす」」
「邪魔するぞ」
一夏の招きで家に中に入り、リビングに通されると、すぐに三人の視界に美咲と美夏の姿が映る。
「あら。楯無さんと簪さん。それに千冬さんでしたか」
「やっほー美咲ちゃん。お邪魔してまーす」
「久し振り。ありきたりだけど、元気そうで安心した」
「そちらこそ。お元気そうで何よりです」
流石に学生時代のようなテンションは出来ないが、それでも友人らしいフランクな挨拶は忘れない。
これも偏に、お互いに心を許しているからできる芸当である。
「一夏とは仲良くやっているようだな。美咲」
「はい。お蔭様で」
千冬にとって、美咲は教え子であると同時に大切な義妹でもある。
例え血が繋がっていなくても、千冬は美咲の事を本当の妹のように溺愛していた。
「美夏ちゃんもお久し振り」
「おしさびぶりー! 楯無おねーちゃん! 簪おねーちゃん! そしてー…」
「ん?」
「千冬
「ぐはぁっ!?」
子供の無邪気な一言がダイレクトアタック。
流石にもう自分が『お姉ちゃん』と呼ばれるような年齢ではないと自覚はしているが、それを真っ向から言われると流石に堪えたようだ。
「流石の千冬姉も、美夏の純粋さには勝てないか」
「子供は無敵だものね~」
「今の私達には無い物を持ってるからね」
「うぅ…流石は美夏だな…参った…」
「えへへ~」
美夏の眩しい笑顔に、千冬と楯無と簪の三人がホッコリとした顔になる。
社会の荒波に飲まれる毎日で、子供の純朴な笑顔はそれだけで最高の清涼剤となるのだろう。
「そう言えば、もうすぐ美夏ちゃんって小学生だっけ?」
「はい。来年からになりますね」
「そっかー…子供の成長は早いわねー…」
しみじみとしながら、楯無が美咲の隣に座る。
それと同時に簪は美夏の隣に座ってから、二人の話の邪魔にならないようにスマホで動画を見せて興味を逸らした。
「ねぇ…美咲ちゃん」
「なんですか?」
「今…幸せ?」
唐突に尋ねられ、一瞬だけ呆気にとられる。
どうして、そんな事を聞くのか分からずに少しだけ考えてしまうが、すぐに元に戻り、そんな事は愚問であると言わんばかりに自信満々の顔になって、彼女の顔を真っ直ぐに見つめながらハッキリと答えた。
「はい。私は…最高に幸せです」
『これで『彼女達』の物語は終わりです。ですが、『この作品』はまだ少しだけ続きます。何故なら『仕上げ』が残っていますから。例えば…『 』の事とか。なので、あと少しだけお付き合いくださいね』