ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~ 作:とんこつラーメン
「おい…本当に大丈夫なんだろうな?」
「そんなの、俺が知るかよ…」
その手にアサルトライフルを持つ、全身を重武装した二人組が近未来的な施設に侵入していく。
そこは、地図にも載っていないような非常に小さな小島。
本来ならば誰もいない筈の無人島なのだが、何故かここには明らかに誰かがいた形跡があった。
その証拠が、彼らが今歩いている施設だ。
「一体何なんだ…ここは…」
「見た感じ、なんかの研究所って感じだが…」
「どこぞの国が密かに建造した違法研究所ってか?」
「決して有り得ん話じゃないさ。実際、ドイツにはVTシステムを作ったとされる政府非公認の研究所があったしな」
「『事実は小説よりも奇なり』…か」
「なんだそれ?」
「日本の諺。現実は小説よりもビックリするような事で溢れているって意味だよ」
「言い得て妙だが…ISなんて物がある今の世の中じゃ否定は出来んわな…ん?」
不意に上の方を見ると、そこには監視カメラのような物があった。
レンズの下にはレーザーの発射口のような物まである。
「…随分とご丁寧な歓迎です事」
「これ…動いてるのか?」
「もし正常に作動しているのなら、俺達は今頃普通に死んでるだろ」
「それもそっか」
更に先に進んで行くと、そこには重々しい機械の扉があった。
これは普通の方法では開かないな。
そう思って半ば諦めかけたが、良く見ると扉には僅かな隙間があり、ダメ元で手を差し込んでから力を込めると、ビックリするぐらいに簡単に扉が開いた。
「マジか…一年ぐらい前から休日にトレーニングジムに行くようになった成果がようやく出て来たか?」
「ンなわけあるか。でも…なんでだろうな」
「さぁな。それよりも、早く入ろうぜ。そして、こんな誇り臭い場所とはとっととおさらばだ」
「だな。後で考えればいいか」
気さくに話しながらも警戒心だけは決して緩めず、二人は静かに奥へと進んで行く。
すると、彼らが持っている懐中電灯の先で何かが動くような気配があった。
「…なんだ?」
「気を付けろよ」
「おう」
引き金に指を添え、慎重に歩を進める。
よく耳を澄ますと、何かを舐めているような音が聞こえた。
「…誰だっ!?」
意を決して音のする方に向けて灯りを向けると、そこにいた存在に二人は思わず息を飲んだ。
「「ひっ!?」」
頭は完全に禿げあがって毛髪が僅かに残っている程度で、全身は完全に骨と皮の状態で恐ろしく痩せ細っていて、それなのに腹だけは何故か大きく膨れ上がり、嘗ては大きかったであろう胸も醜く垂れ下がり、その身には制服のような白い服を身に着けているが、痩せているせいで完全にダボダボとなっていた。
そして、その口には明らかに人骨と思われる物を咥えており、名残惜しそうに何度も何度もペロペロと舐めていた。
「あ…あ……あぁ…」
言葉らしい言葉は喋らず時折、蠢くような鳴き声を出す。
それは誰がどう見ても化け物だった。
「な…何だこいつは…!?」
「お…おい…こいつの周り…よく見て見ろよ…」
「周り…? なっ…!?」
もう一人が懐中電灯でソレの周囲を照らすと、そこには多数の人骨が散らばっていた。
しかも、部分部分が欠けている感じがした。
頭蓋骨の数から複数人なのは確かだが、明らかに骨が足りない所がある。
それが意味することを即座に察した男は、恐怖の余り、思わず引き金を引いてしまった。
「こ…この化け物野郎が!!!」
ダダダダダダダダダダダッ!!!
「………っ!?」
ソレは一切の抵抗もせずに無数の銃弾に撃たれ即死した。
信じられないような光景を目の当たりにして息も絶え絶えで冷や汗も掻きまくっているが、不思議と頭は冷静だった。
「ハァ…ハァ…ハァ…!」
「やっちまったか…」
「し…仕方がねぇだろ! あんなもんを見ちまったら誰だって…!」
「分かってるよ。別にお前を攻めてる訳じゃない。ただ、どう上に報告するべきかって考えてるだけだ」
「適当で良いだろ…。どうせ、ここはもうすぐ空爆訓練のターゲットになって木端微塵になるんだし。俺達の任務は、その対象となる名も無き島に希少な生物とかがいないかを確認することだったんだしよ」
「それもそうか…。この狭い島には、この謎の研究所擬きの廃墟以外には何も無かった。なんか機械っぽいのはあるが…どう見ても動きそうにない。ここから情報を得ることは難しいだろう」
「なら…」
「あぁ。『この島には特に何もいませんでした』…これで行こう」
「賛成。はぁ…こんな薄気味悪いゴーストハウス、早く出ようぜ…」
その後、男達が島を去ってから数時間後。
島は幾多の専用機や軍艦に囲まれ、訓練の疑似目標として無数の砲弾やミサイル、爆弾の雨に晒され、中にいたモノごと、この世から完全に消滅した。
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・・
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「ねぇねぇ、知ってる?」
「何を?」
「電車女」
「あー…少し前に流行った都市伝説ね。それがどうかしたの?」
「実はあれね…海を渡ってイギリスに出現したんだって!」
「イギリスゥ? またなんでイギリス?」
「さぁ? それは知らない。なんか思い出とかあるんじゃない? 若しくは故郷だったりとか。ほら、電車女って金髪縦ロールの女の子だったって噂だし」
「いやいや…なんでイギリスの都市伝説が日本にいるのよ。意味分んないし」
「そんなの別にいいじゃない。面白ければ」
「なんじゃそりゃ」
「因みに、イギリスでも相変わらず列車の横転事故をしまくってるらしいよ? 男女関係なく中年の人に向かって『おとうさまー…おかーさまー…』って近寄って」
「なにそれフツーにキモ。日本からいなくなってくれてよかったわー。もし自分の親がターゲットにされてたかもしれないと思うと冷や冷やするし」
「それなー」
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「なぁ…例の『アレ』…どうする?」
「アレって…もしかして『キメラ』の事か?」
「そ。ISと融合してたっていう奴。アレの脳髄さ…もうどんだけやっても腐食を防げないぐらいに劣化してるじゃん? だから、さっき先輩に『適当に処理しておいてくれ』って言われちまってさ」
「なら処理すればいいじゃんか。どうして俺に尋ねる必要がある?」
「いやだから…どうやって処理すればいいのかなーって思って」
「どうやってって…」
「だってさ、なんかキモいじゃんか。腐りかけてる脳なんて。神経で繋がってた眼球はとっくに使い物にならなくなってたし」
「うーん…グシャグシャに潰してからトイレにでも流せばいいんじゃね?」
「そっちの方が遥かにキモいわ! 脳を潰すって、お前良く出来るなっ!?」
「そーか? 別に普通だろ? 別に生きてる人間の脳を潰すわけじゃあるまいし。相手は所詮、大して役にも立たなかった腐れ脳みそだろ? 遠慮する必要はないだろ」
「それは分かってるけどさ…感触が苦手ッつーか…」
「お前って妙な所で潔癖症だよな。仕方がない…俺が手伝ってやるよ」
「マジでっ!? 助かるー! やっぱ、持つべきものは友達だな!」
「うっせ。で、どこにあるんだ? そのゴミ脳みそは」
「こっちだ。着いて来てくれ」
「へーい」
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そうして、世界から女性権利団体と女尊男卑主義者は一人残らす消え去った。
全身を血走らせた漆黒のISを纏う謎の人物の手によって滅びたのだ。
「やった…遂に真の意味で世界が平和になったんだ!」
「よかった…本当に良かった…!」
人々は心から喜び、街々は歓声で沸き立った。
もう二度と、理不尽な事で虐げられたりしない。
『なんとなく』や『気に入らない』などという理由で罪をでっち上げられることも、もうないのだ。
「あの方こそ…我々の救世主様だ!」
「そうだ! その通りだ!」
「あの方がいなかったら、今頃どうなっていた事か…」
「考えるだけでも恐ろしい…」
諸悪の根源が排除されたことで、ようやく人々は安心して日々を過ごせるようになった。
どれだけ感謝してもし尽くせない。
だからこそ、感謝の気持ちを言葉ではなく形で残そうと考えた。
「じゃあ、この街の広場にあの方の銅像を建てようぜ!」
「賛成だ!」
「なら、私はあの方の武勇伝を本にするわ!」
「子供にも読みやすいように、絵本も出したらどうだ?」
次々とアイデアが飛び交う。
自分達の英雄を湛える彼らの顔は、何よりも眩しく光り輝いていた。
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「では、満場一致の決定と言う事で」
「うむ。異論は無い」
ドイツ軍幹部会。
そこで今、ある議題に決定が下された。
「使い道が全く見い出せない『コアナンバー0183』…嘗て『シュヴァルツェア・レーゲン』に搭載されていたコアを完全廃棄処分にする…」
「非常に貴重なISコアを廃棄するのは本来ならば有り得んことだが…」
「今のアレは完全凍結状態となっている。使い道も無ければ、VTシステムの残滓が残っている可能性も考慮すれば…」
「速やかに廃棄するのが望ましいか」
「それに、いつまでも未練がましくコアを残しておくことは、他国に対しても良い印象は与えまい」
「今までは色々と理由を付けて先延ばしにしていたが…」
「封印の維持費だけでも、それ相応の金は掛かる。これ以上、無駄金を使う訳にも行くまい」
「そうですな。で、処分はいつ頃に?」
「準備が出来次第いつでも」
「なんなら、我等の『苦渋の選択』を示す為に、IS委員会ドイツ支部の人間でも呼びますか?」
「いいかもしれんな。委員会の連中にも、こちらの思惑を示しておく必要がある」
「では、そのように」
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「…報告は以上ッス」
怪異物蒐集協会。
実動部隊:戌へ-59『電波が届かない』。
隊長『
「そうか。ご苦労だった」
怪異物蒐集協会。
第五研究所 管理官『閲覧不可』。
「まさか、例の『怪異物』があんな事になってるとは思わなかったッスよ。ぶっちゃけ、棘崎さんの話を聞いた時は我が耳を疑いましたよ」
「無理もあるまい。今までからでは考えられん事象だからな」
「ですね。普通、考えませんよ。怪異物が人間社会に混じって普通に過ごすばかりか、恋をして、結婚までして、挙句の果てに子供まで作っちまうなんて」
「だが、事実として我々は受け入れなくてはいけない。彼女はもう『怪異物』ではなく、立派な『人間』であると」
「…棘崎さんからも、彼女はもう完全に脅威ではなくなったと聞いたッスよ。前のような『能力』は消え失せ、中も外も完全に『人間』と化していると」
「愛の力…かもな」
「あ…愛? それマジで言ってます?」
「勿論だ。実際、『必要最小限の犠牲』で事は収まっている」
「最小限…ね」
「最小限だろう。今までの『所業』から考えれば」
「まぁ…確かに」
「それに、図らずも『彼女』は『あの世界』の『平和』に絶大な貢献をしている。それはお前も知っているだろう?」
「そりゃもう。他の『世界線』はいざ知らず、あの『世界線』はあのまま『アイツ等』を放置しておけば、ほぼ確実に十数年の間にISを用いた第三次世界大戦が勃発。それが契機となって人類の数が大幅に減少、それから五年と経たない間に人類と世界は滅亡していた」
「そうだ。最初の切っ掛け自体は些細な物かもしれんが、その『些細な物』の元凶こそが『彼女達』だった」
「なんか皮肉ッスね。今まで散々と手を焼かされた奴が、あろうことか世界を救ってしまうだなんて」
「本人は意図していないだろうがな」
「でしょうね。あの子の目的はどこまで行っても『幸せにする事』ですから」
「それで本当に一つの世界を『幸せ』に導いているのだから頭が上がらない」
「俺達の立場…無いッスね」
「そうだな」
「そういや、『あの世界』から一人、保護した人間がいるって聞いたんですけど」
「あぁ。棘崎が『彼女』から預かったらしい」
「マジっすか」
「名前は『織斑マドカ』。身体検査の結果、彼女は純粋な人間ではない事が判明した」
「『織斑』で『人間じゃない』って…まさか?」
「そうだ。彼女は『織斑計画』で生み出された少女だった」
「うわぁ…」
「それが紆余曲折を経て『亡国機業』に拾われ…」
「『あの子』によって滅ぼされた…か」
「フッ…我々よりも遥かに良い仕事をしているな」
「スカウトでもするッスか?」
「それも一瞬だけ考えた」
「冗談でも止めて欲しいんスけど。で、その保護した子は今後、どうするおつもりで?」
「未定だ。どうやら全ての記憶を失っているようでな。自分が何者なのかも全く分かっていない。なので、まずは色んな事を根気強く教えていくことから始めるつもりだ」
「結局、ここで預かる気満々ってことかよ…」
「悪いか?」
「いいえ。所詮は一部隊長ですし? 管理官サマのお好きになさったらいかがですカネ?」
「ならば、お言葉に甘えて好きにさせて貰うとしよう。と言う訳で早速だが、実はお前のデスクにたっぷりと仕事を用意しておいた。良かったな。これで暫くは楽しい仕事に励めるぞ」
「アンタは鬼かっ!?」
次回…最終回。