ラブリーエンジェル美咲ちゃんの幸せ大作戦! ~み~んな幸せになぁ~れ!~   作:とんこつラーメン

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               コンニチワ










『凰鈴音』①

 少女は見た。

 

 自分の想い人である少年が、見知らぬ少女と仲睦まじく歩いている姿を。

 

 少年の顔には、慣れない環境に半ば無理矢理に放り込まれたとは思えないような笑顔が浮かんでいた。

 あんな笑顔は、彼の『幼馴染』である自分ですらも見た事が無い。

 

 彼の隣にいる少女のことは全く知らない。

 恐らくは、ここに入学してから初めて知り合ったのだろう。

 

 まだ一年どころか、半年も経過していないのに、あんなにも仲良くなっている。

 少女は許せなかった。

 本来ならば自分が居るべき筈の場所に、どこの馬の骨とも知れぬ人間が何食わぬ顔で立っていることが。

 その相手に対し、まるで長年連れ添った恋人同士のような感じを見せている少年が。

 

 後に少女は知る。

 少年はクラス代表になっていて、その隣にいる少女もまた別のクラス代表になっているのだと。

 各々に違うクラス代表同士ではあれど、互いに支え合いながら慣れない『クラス代表』という役職を頑張ってこなしていると。

 そんな二人の事を、クラスメイトも暖かい視線を繰りながら密かに応援している事を。

 

 付け入る隙が無い。このままならば。

 故に少女は短絡的考えを思い付く。

 二人がクラス代表ならば、自分も同じようにクラス代表になればいいと。

 そうすれば、自分も二人と同じ土俵に立てると。

 

 だが…それは大きなミステイク。

 確かに、手札が最悪でも、相手が最強でも、勝負のテーブルに座ることは出来る。

 しかしそれは、決して『勝つ見込みがある』と言うことではない。

 例え1%であっても、可能性があるなら賭けてみる。

 少女はそんな考えの持ち主だった。

 伊達に、僅かな期間で『代表候補生』という地位に上り詰めたのではない。

 

 けれど彼女は失念していた。

 自分の想い人が『鈍感』であることを。

 短い間に築かれた二人の絆の強固さを。

 

 『勝負』は…始まる前に終わっている事を。

 

 自分と再会すれば、すぐにあんな女なんて出し抜いて、昔のような仲に戻り、そこから先に発展出来ると信じて疑っていない。

 

 人の『想い』は、時には強固であり、時には脆い。

 そして…時には山の天気のように変わり易い。

 

 そもそも、少女はまず想定していない。

 相手が自分を異性として見ていないということを。

 

 男女の友情は確かに存在する。

 だがしかし、フィクションのように『友情』が『恋愛』に変わるとは…限らない。

 

 『友人』は、どこまで行っても『友人』以上にはなれないのだ。

 

 

 

 

 

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「ねぇねぇ聞いたッ!?」

 

 三組教室にいつものような声が響く。

 またか…と思いながらも、美咲はクラス代表として聞き耳を立てた。

 

「二組に中国からの転入生が来るんだって!」

「こんな中途半端な時期に? なんで?」

「さぁ…それは知らない。けど、実はその子…代表候補生らしいよ!」

「マジで? うわぁ~…それは普通にヤバいね~」

「だよね~。もうすぐクラス対抗戦あるし、ここで新たな専用機持ちが登場するのは厄介だよね~」

「多分その子は十中八九、クラス代表に任命されるんじゃない? 勝つために」

「それってアリなのかな? もう既に代表は決まってるんじゃないの?」

「別にいいんじゃない? 特にそう言う取り決めって聞いたことないし。あ、一組は先生が『一年間は変える予定は無い』って言ってたらしいよ」

「あそこは厳しいだろうね~…」

「なんか話が逸れたけど、クラス代表自体はちゃんと言えば変更可能だと思うよ? ほら、あれみたいなもんじゃない? 年明けにある駅伝に良く出てくる外国人選手的な…」

「あぁ~…成る程。それはあるかも」

 

 話の概要を整理すると、隣りのクラスに突如として中国から代表候補生が転入して来て、恐らくはクラス対抗戦に備えて、その転入生をクラス代表に据える可能性が非常に高い。

 つまりは、そういうことだ。

 

「ってことは、これで専用機持ちは一年全体で三人(・・・・・・・・・・・・・)代表候補生は二人(・・・・・・・・)って事になるね。厄介だなぁ~…」

 

 なんとなく、自分に話が降られそうな予感がした美咲は、そっと読んでいた小説に栞を挟んで閉じた。

 

「佐藤さん…大丈夫? 候補生ってなると相当に強いと思うけど…」

 

 ほらやっぱり。

 

「ご心配なく。例え、誰が相手であろうとも私は負けませんよ。これでも私、テストパイロットとして厳しい訓練を受けてきてますから。皆さんを『幸せ』にする為に、この程度の事ではへこたれてなどいられません」

「「「「おぉ~!」」」」

 

 当然のことを言ったつもりだが、教室にいるクラスメイト全員から感心の声が上がった。

 

「それなら『アッチ』の方も心配なさそうだね!」

「あっち?」

「そ。その転入生って、あの織斑君の知り合いみたいで、朝っぱらから一組の教室に乗り込んで堂々と宣戦布告をしていったらしいのよ」

「一夏くんの知り合い…?」

「うん。どういう関係なのかまでは分からないけど、一組にいる友達の話だと、普通に仲が良さげたっだって」

「そうですか…」

 

 どうやら、一夏は想像以上に交友関係が広いようだ。

 まさか、外人にも知り合いだいたとは思わなかった。

 

「けどダイジョーブ! 私達は佐藤さんと織斑君の関係を応援するって決めてるから!」

「ウチらだけじゃないからね。一組の子達も二人の事を応援するって言ってくれてるから」

「は…はぁ…」

 

 一体、自分達の何を応援するつもりなのだろうか。

 どんな事であれ、クラスメイトに応援されること自体は純粋に嬉しいが、その内容を把握できていないと、実にもどかしい気持ちになる。

 

「ところで、その転入生さんのお名前はなんて仰るんですか?」

「えっとね~…確か~…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『(ファン)鈴音(リンイン)』…だったと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 昼休みになり、三組教室に一夏がやって来た。

 勿論、美咲を昼食に誘う為に。

 

「美咲! 一緒に昼飯食いに行こうぜ!」

 

 いつの間にかお互いに名前呼びになっていた二人。

 それに対して、これといったツッコミが無い時点で、周囲の二人に対する応援具合が伺える。

 

「ほらほら。愛しの彼がやって来たよ~」

「愛しの彼って…」

 

 確かに仲が良い方ではあるが、そんな関係かと言われれば答えに詰まる。

 実際、自分達の関係性を表現する言葉は何だろうか。

 美咲も一夏も、その言葉をまだ知らない。

 

「少し待ってください。すぐに机の上を片付けますから」

「おう!」

 

 素早く手早くてきぱっぱ。

 あっという間に美咲の机の上は綺麗になった。

 

「お待たせしました。では、行きましょうか」

「あぁ。早く行こうぜ。腹減っちまったよ」

「私もです」

 

 二人は肩が付きそうな距離で並んで歩き、今にも手を繋ぎそうだ。

 最初こそは一夏目当てで後を付いて来ていた一組の女子達も、この二人の間に割って入ろうとか、後ろから着いて行こうとかなんて無粋な考えは起こさない。

 静かに暖かく二人を見守り続ける。

 これが一組と三組女子の総意だった。

 

「今日の昼は何にするかな~。また日替わりにでもするかな~。美咲は何にするとか考えてるか?」

「そうですね…私は今日は丼ものの気分ですから、親子丼かカツ丼か…」

「丼ものか~…それも良いな…。美咲がそうするなら、俺も丼もの系にするかな。あれならガッツリ食えて腹いっぱいになるし、何気に味噌汁や漬物もついてくるからな」

 

 頭の中でふわふわとろとろの親子丼を想像して、口の中が涎で溢れる一夏。

 日本人に生まれた人間で、あの味に抗える人間はそうはいないだろう。

 

 なんて話している内に食堂に到着。

 毎度のように入り口は多くの生徒達で賑わっている。

 

 そんな中、一人の小柄でツインテールな少女がラーメンの乗ったトレーを持って二人の前に立ちはだかった。

 

「ちょっと一夏! 遅いじゃないの! なにトロトロしてんのよ!」

「いきなりご挨拶だな。っていうか、普通にそこどけ。通行の邪魔になってるから」

「う…うっさいわね! 分かってるわよ! アンタがとっとと来ないのが悪いんじゃないのよ!」

「人のせいにすんなし。俺がどんなペースで来るかなんて、俺の勝手だろうが」

「そ…それは…そうだけど…」

 

 まさかの一夏が論破。

 それを見て美咲はキョトンとしていた。

 

「お知り合いですか?」

「あ…っと。そういや、美咲は鈴の事を知らなかったんだっけか。悪いな」

「りん…?」

「そ。こいつは…」

「一夏! 自己紹介ぐらい自分で出来るわよ!」

 

 慌てて一夏の言葉を遮り、キッと美咲の事を睨みつける。

 美咲からすれば、どうして自分が睨まれるのか意味が分からない。

 

「中国代表候補生の凰鈴音。呼びにくいでしょうから『鈴』でいいわ」

「あなたが…」

 

 まさか、彼女が噂に聞いた転入生だったとは。

 驚きと同時に、美咲はある事を思う。

 

(どうやら…彼女も『幸せ』を欲している人間のようですね…)

 

 心の中でうっすらと笑みを浮かべつつ、それを隠しながら自分も自己紹介をする事に。

 

「初めまして。佐藤美咲と申します。以後、お見知りおきを」

「知ってる。ついでにアンタが企業所属のテストパイロットで専用機持ち、そして三組のクラス代表ってこともね」

「あらまぁ」

 

 まさか、そこまで既に知られているとは。

 情報収集の早さに、美咲は素直に感心した。

 

「…アタシは先に行って席を確保しておくから。今度こそ、とっとと来るのよ」

「分かってるよ」

 

 ずっと美咲の事を睨みながら、鈴は席を取りに向かって行った。

 

「ったく…なんだってんだ?」

「さぁ…」

 

 彼女の言動を理解出来ないまま、二人は食券を購入してから列に並んだ。

 結局、今日の昼食は二人一緒にカツ丼にした。

 

 

 

 

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 自分の頼んだメニューを受け取り、鈴が確保してくれた席に座る。

 ここからが自分のターンであると言わんばかりに、鈴はすぐに一夏に向かって懐かしトークを繰り広げたのだが…。

 

「いや~…ここの食堂は丼ものもレベルが高いな~」

「そうですね。多すぎず、だからと言って少なすぎず。絶妙な量でありながら満足のいく味に仕上げる…見事なものです」

「だよな。これはマジで参考になるよ」

「一夏くんはお料理が得意でしたものね。あ、少しジッとしていてください。ご飯粒が付いてますよ」

「え? マジ?」

「はい。えっと~…えい。ぱくり。取れました」

「あはは…なんか恥ずかしいな…」

 

 完全に蚊帳の外状態。

 目の前では一夏と美咲の初々しいピンク色の空間が広がっていた。

 

「こらそこ! 話聞いてんのっ!?」

「話? えっと…なんだっけ?」

「偶には怪我とか病気とかしろってこととか、なんでISを動かしてるのよとかって話!」

「あ~あ~…そうだった。そうだった。まぁ…色々とあるんだよ。色々。一言じゃ言い尽くせねぇよ」

 

 会話終了。

 再び、一夏の視線は美咲の方へと向けられる。

 

「そ…そもそも! あんた達二人はどーゆー関係なのよ!!」

「どーゆー関係って…」

「言われましても…」

「「仲のいい友人?」」

「その距離感の一体どこが『仲のいい友人』なのよ! ふざけてんのッ!?」

「別にふざけてなんかないぞ。なぁ?」

「全くですね」

「うぐぐ…!」

 

 傍から見ていると、まるで新婚夫婦に嫉妬する姑のような構図だ。

 実際、周囲の生徒達のそんな風に見ていた。

 

 このままでは埒が明かない。

 ならばここは、自分だけが持っている『武器』で戦ってやる。

 

「そ…そうだ一夏! アタシがISの操縦とか教えてあげようか?」

「別にいいよ。美咲が教えてくれてるし」

「なぁ…!?」

 

 既に先手を取られていた。

 けど、だからと言って諦められない。

 

「なんでそいつがしゃしゃり出てくるのよ! 私は幼馴染で代表候補生なのよ!? そいつなんかよりも、アタシの方がずっと付き合いが長いじゃないの! そんな全然関係ない奴よりも、このアタシの方がずっと上手に…」

「ISの事を教えて貰うのに、幼馴染とか候補生とか付き合いが長いとか、それこそ全然関係ないだろ。お前、何を言ってるんだ?」

 

 またもや論破。

 一日に一夏から二度も論破されるとは。

 昔では想像も出来ない事だった。

 

「そ…そいつって三組のクラス代表でしょ!? 違うクラスの人間に教えて貰うってどうなのかしらね~…?」

「アナタだって、違うクラスのクラス代表では?」

「…ソウデシタ」

 

 今度は美咲から論破された。

 本人は純粋な疑問をぶつけただけだが。

 

「ア…アタシは昔から何度もウチで食事とかをしたことがあるんだからね!」

「いきなりどうした? 食事なら、俺も美咲と知り合ってからずっと一緒に毎日してるぞ? 朝昼晩問わず」

 

 苦し紛れの一撃も、呆気なく迎撃された。

 自分の用意した手札が悉く突破され全滅する。

 

「負け…ないから…!」

「「え?」」

「アンタにだけは…絶対に負けないんだから…!」

 

 涙ぐみながらラーメンを一気食いし、鈴はそのままズンズンとした足取りで席から立ち食堂から出て行った。

 

「負けないって…何の事だ?」

「クラス対抗戦の事では? 私達はお互いにクラス代表なわけですから」

「あぁ~…成る程な。言っておくけど、幾ら美咲だからって、試合で当たったら容赦しないぜ?」

「それはこちらの台詞ですよ」

 

 なんて台詞を吐いてはいるが、二人に雰囲気は相も変わらずのピンク色だった。

 

(凰鈴音さん…貴女がどうしてそんなにも憤っているのかは存じませんが…大丈夫。必ずや私がアナタの事も…『幸せ』にしますよ…)

 

 

 

 

 

 











                 リリ







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