明るくまたたく夜の星。森の木々は風に揺れ、喜ぶように踊っている。
魑魅魍魎は汚れによって力を増す。
差し出された巫女の手は光り輝き、戦がもたらした血と怨嗟は浄化され、元の肥沃な大地へと戻る。
このようにして巫女は森を守っているのだ。
妖怪の男は女の務めを木の影からそっと見つめていた。
「なあ、●●、そこにいるのだろう?でてきてくれないか? 」
女は隠れている男に声をかける。凛としながらもどこか優しげな声である。
男は木の影からでてくる。少し驚いたような顔だ。女が自分から男を呼ぶようなことはいままでなかった。
「おめぇから呼ぶなんて珍しいじゃねぇか」
「すこし話したかっただけだ」
女はおもむろに話し出す。
「お前には感謝している。こんな私を好いてくれた。
なぁ、どうか人間に絶望しないでおくれ。人間はとても残酷な面があるが、とても、とても尊い面があるんだよ。
どうか、私がいなくなっても人間を害さないでおくれ。頼んだよ」
「……」
なぜか男にはわかった。この女はもう自分と会わないつもりであると。
「えらい弱気じゃねぇか。おめぇらしくねぇな。この土地のわりぃ奴らにつけこまれるぜ。あいつら、いつか復活してやると目を光らせてやがるからな」
「あいつらは、私が死なない限りでてこないさ」
「おれはお前をあきらめねぇぜ。それに、おれは人間みたいに死なねぇ、なにがあっても生き抜いてやる! おまえがいる限りな! 」
女は笑った。
「……おまえはいつもまっすぐだな」
女は言った。
「お前に渡したいものがあるんだ。いつもお前には色々ともらっていた」
「おかえしなんざいらねぇよ」
「そういうな、こっちにこい」
女と男は近づく。
女は男を抱き締めた。
いい匂いがした。男は動けなかった。
『やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは 薄紅(うすくれない)の秋の実に 人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの その髪の毛にかゝるとき たのしき恋の盃を 君が情(なさけ)に酌(く)みしかな』
「ゆるせ●●、さよならだ」
体が離れた。
男は動けなかった。
女は去っていく。
男は女を追って走る。しかし結界に阻まれた。森の仕業だ。森はこの女を一人にしようとしている。女をこの森のためだけに身を尽くさせようとしている。
男はたたく。結界をたたく。
「おれはあきらめねぇぞ! お前を絶対にあきらめねぇ! 」
男は叫ぶ。
「おまえは、幸せになっていいんだ! 」
男は叫ぶ。
「なあ、なんでこの時代に妖怪である俺が存在できるかわかるか!? 悪しき心を持つ妖怪が駆逐されたこの世界に!
おれには、生まれる前の記憶があるんだ!
人間の記憶だ! おれは人間でありながら妖怪でもある。
なあ。おまえと似てねぇか!? 人間でありながら森を守る巫女であるおまえと!
おれにはおまえの気持ちが少しだけわかる。 つれぇさ! 人間にとってはこの命は長すぎる!
お前も一人だろう? おれも一人さ! でもお前に会って世界が変わったんだ! 」
女の姿が見えなくなっていく。
男は女の幸せを心から願う。
大好きな人が幸せであるように、今すぐに、毎日幸せであるように
男はありったけの力をこめて叫ぶ。
「おれは必ず、お前を幸せにする! 」
何度でもあなたに伝える、
疑いの無いディスクール。
書く毎に未熟さを痛感します
アドバイスよろしくお願いします