狂気的な恋   作:96963

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ゴッホちゃん好き。



始まり

 最近、私はおかしい。あのバレンタインからかな。

 そう、彼女──────ゴッホちゃんがチョコを贈ってくれた時だ。いや別にチョコに何かあったわけじゃないしあのチョコマリナードはさっぱりしてて、胃に優しい良いチョコだった。問題は渡す時のゴッホちゃんの行動だ。自分を食べて欲しいとナイフを渡されたあの時、もちろんそれは断ったけど、同時に私は無意識に思ってしまったんだ。彼女は一体、どんな味がするのだろうと。それがいけなかった。あの日以降、彼女を見るたびに私の中から得体の知れない感情が湧き上がってくる。彼女を見ると胸が弾む。胸が躍る。胸が痛む。そして──────喉が鳴り、涎が出る。私は彼女に何を想っているのか、不安になる。彼女のことは好ましく思ってるし、彼女に悪意なんて無い。無いのだけれど──────彼女を傷つけたくなる。彼女を傷つけ、その身を喰らいたいと想ってしまっている。だからここ数日、私はゴッホちゃんを避けている。彼女を傷つけたくないから。マスターと慕ってくれる彼女を失望させたくないから。

 

「…….様」

 

 私はこの想いに対して、どのように向き合えば良いのか。答えは出ず、海の底を彷徨っている。

 

「…….香様! 立香様!」

 

「ん、ゴッホちゃん? どうしたの?」

 

 そんなことを考えていたら噂の人物が来てしまった。ああ胸が躍る自分に嫌気がさす。

「エヘヘ……その、立香様のことが気になって、最近何やら思い詰めた顔をしていらっしゃいましたし、ゴッホを避けているようでしたから……」

 どきりとする。ゴッホちゃんを避けていたのは事実であり、出来れば顔を合わせたくなかったからだ。

 

「い、いやそんな事ないよ…….ただちょっと考えていただけだから……」

 

「考え事、ですか……」

 

「う、うん。大した事じゃないんだ。だから大丈夫」

 

 彼女を見ると胸の動悸と涎が激しくなり、思わず目を逸らしてしまう。

 

「何故目を逸らすのです、立香様。……ハッ⁉︎もしかして、ゴッホが何か粗相をしましたか⁉︎それでしたら(可能な限り)改めますのでどうぞ仰って下さいお願いします! ……ウフフ、何でしたら折檻をされても……ウフフ、ゴッホジョーク……立香様?」

 

 その言葉を聞いた時、私の中で何かが切れた。そうか。折檻か。私を惑わすこの子に折檻をーーーーーーー

 私は立ち上がると彼女をベッドに押し倒す。彼女はサーヴァント、非力な私の腕じゃ抑えられるはずもないが抵抗せずに彼女は押し倒される。

 

「…….あの、立香様? これは一体どういうワケで? 何故ゴッホは立香様に押し倒されているのでしょう?」

 

「……ゴッホちゃんが、悪いんだからね……!」

 

「エヘヘ……え? どういうことで……ハウッ⁉︎」

 

 噛み付いた。彼女の身体は柔らかく、血の味がする。確か海月とは味が無く、食感を楽しむものらしい。そういう意味では彼女の肉は、血の味しかしないという点で、確かに海月だった。

 

「痛ッ⁉︎立香様一体何を……えっちょっと何食べてるんです⁇」

 

「何って、ゴッホちゃんだよ。だって言ってたじゃない、ゴッホちゃん。自分を食べて欲しいって」

 

「た、確かに言いましたけどォ……で、でもこれはちょっと……いきなりすぎて、ゴッホ困惑……」

 

「ゴッホちゃんが文句言ってもだーめっ、これは『折檻』なんだから。私の心をかき乱す悪い子には、お仕置きしなきゃね」

 

「……?」

 

(立香様は、一体何を──────? それより、この状況をなんとかしなければ。確かに立香様に食べて頂く……それ自体は嬉しい事だ。でも、それはこの身体じゃない。つぎはぎの、あの異形の身体で食べてもらうことが悦びなのだ。立香様の様子もおかしいし、一回落ち着かせなければ……)

 

 貪る。彼女の身体をただ貪る。でも腕はダメ。彼女が悲しむ。だから彼女の胸に噛み付く。鮮血が滲み出る。ああ、渇きが癒える気がする。満たされていく気がする。そしてそのまま彼女を貪り続けようと──────

 

「立香様、失礼します!」

 

「あ───────」

 

 そこで、意識が暗転する。

 気づけば、私の目には、ゴッホちゃんの顔が写ってた。膝枕、というやつだ。

 

「……お目覚めになられましたか、立香様」

 

「……ゴッホちゃん? ……あ! 私、なんてことを……ゴッホちゃん大丈夫⁉︎私が噛んだとこ、治さなきゃ……」

 

 慌てて起き上がり、ゴッホちゃんの傷を確認する。とんでもないことをしてしまった。私は、なんであんなことを…….

 

「大丈夫ですよ、立香様。この通り、ちょっと赤くなってますが、どこも痛くありませんよ?」

 

「……あれ? でも確かに……」

 

 そう言って彼女の見せた肌は確かにちょっと赤くなっていたがあの鮮やかな血の色は無く、とても肉が削がれたとは思えない。あの肉を喰む感触は幻だったのだろうか? ホッとすると同時に自分のサーヴァントに襲いかかった事実がのしかかり、気分が沈む。

 

「立香様。先程は何故あのようなことを? ゴッホの覚えてる限りでは、立花様はゴッホを食べるのを嫌がっていたと思うのですが……」

 

「……自分でもわからないんだ。ただ、あの日──────ごちゃんからチョコを貰った時以来、ゴッホちゃんを見ると、変な気持ちになるんだ」

 

「……変な気持ち、ですか」

 

「……うん。別にゴッホちゃんが嫌いなわけじゃないんだよ? むしろ好き、だと思う。けれどーーーーーーーゴッホちゃんを見ると、ゴッホちゃんを傷つけたいだとか、ゴッホちゃんを喰べたいとか、そういうことばっか考えちゃうんだ。ゴッホちゃんを見ると胸がドキドキして、喉が鳴る。おかしいよね……」

 

「なるほど、それでここしばらくゴッホを避けて……ん? 立花様、今なんと?」

 

「え? ゴッホちゃんを好きなのにゴッホちゃんを傷つけたくなるって……」

 

「立花様、それはもしかして……今もそうなんですか?」

 

「…….うん。正直言うと、凄いドキドキするし、すごく傷つけたいし、喰べたいよ。……ゴッホちゃん?」

 

 私がそう言うと、ゴッホちゃんは笑っていた。それは、こちらを海の底へ連れて行くような、ゾッとするほど魅力的な笑顔でーーーーーーー

 

「……ウフフ。立香様、このゴッホより『提案』がございます」

 

「提案?」

 

「はい、不祥このゴッホ、立香様の夜の相手をさせていただきたく……」

 

「……はい? えっちょっと待ってどういうこと」

 

「立花様はゴッホを貪り、甚振りたいのでしょう? であればそうなされば良いと思います」

 

 そう言うと、ゴッホちゃんは立ち上がり、白く美しい向日葵の異形へと変化した。

 

「エヘヘ……立香様が思い詰めてると、カルデアの皆様にも心配されますし、ゴッホも辛いです……でも立香様がゴッホを嫌うからではなく、ゴッホを想うがために苦悩するのであれば、ゴッホは助けになりたいのです」

 

 ですから、とゴッホちゃんは続ける。

 

「これから毎晩、ゴッホがマスター様の部屋を訪れます。立香様は好きにゴッホの身体をお使いください。甚振るも良し、食べるも良し。立花様の自由です。あ、でも食べるのならこの身体の時の方が……」

 

「……ゴッホちゃんはそれで良いの? きっとゴッホちゃんをいっぱい傷つけるよ?」

 

「問題ありません。立香様はゴッホのことを想ってくれてるのは分かっておりますし。……それに、ゴッホも痛いのは好きですしね、ウフフ……」

 

「……もう、最後で台無しだよ、ゴッホちゃん」

 

 こうして、私達の奇妙な狂った関係が始まった。




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