家に着いて、一旦別れる。彼女の着替えは彼女の部屋にあるので、お互いに別れて着替えるのだ。まだ正午でもないのに制服じゃ色々不味いしね。
「まあ、適当に良さげなのでいいかな」
とりあえず、いつもの私服に着替える。
「今考えると、これって現実にあるデザインだったのか…………」
私が今来てる服は、かつてカルデアで着ていたアニバーサリー・ブロンドによく似たデザインをしている。昔から何故かこのデザインの服に惹かれていて、両親に頼んで買ってもらったモノだ。執着があまりない私の珍しいわがままなのか、快く両親に買ってもらった記憶がある。
「今思えば、これって前世が無意識的に影響してたのかなー…………」
この服を着ると、私が世界に感じていたズレが修正される気がした。そんな理由で、好んでこの服を着ていた時もあった。今はなんとなく癖で着ているだけなんだけど。
「さーて、そろそろゴッホちゃんも終わったかな」
軽く荷物を纏めて外出の用意を終わらせると、ドアを開けて外に出る。
「ゴッホちゃーん、大丈夫?」
彼女の部屋のドアを叩いて聞いてみる。
「は、はい…………今行きます…………!」
と、彼女からの返答が来たので待っていると
「お、お待たせしました…………!」
彼女が部屋から出てきた。彼女の服装は、白いパーカーに白い短ズボン、オレンジのタイツでいつかの夏に、見た記憶のある格好だった。
「ゴッホちゃん、それ似合ってるね」
「えへへ…………ありがとうございます…………立香様も、昔良く着ていたお召し物に似ていますね…………似合ってます…………ウフフ…………」
「ゴッホちゃんも、見た事あるね。いつの夏だったかな…………」
「えへへ…………皆様と、エジプトを巡っていた時のですね…………気に入ったので、こっちでも似たようなデザインのものを買っちゃいました…………」
「じゃあ、私と一緒だね。私も似たものを買っちゃった」
「エヘへ…………お揃い…………嬉しい…………」
「それじゃ、行こうか」
「はい! …………立香様とデート…………ゴッホ幸福…………」
彼女と手を繋ぎ、歩いていく。
「ところで、何処に行く? ゴッホちゃんが自由に決めていいよ」
「で、では…………まず美術館へ!」
「オッケー。確かこっちだったかな…………」
彼女はまだこの街の地理に疎いため、彼女の手を引いて先導していく。
7月の太陽は眩しく私達を照りつけ、影を地面に焼き付ける。
美術館に付き、彼女と一緒に入る。
一回手を離し、彼女とゆっくりした時間を過ごす。彼女は興味深そうな顔、苦々しい顔、あるいは不満そうな顔など、表情をコロコロ変えながら、掛けられている絵を順繰りに若干駆け足気味に回ってる。どうやら楽しんでいるようだ。一方私は、記憶を思い出す前は『星月夜』くらいしか興味が無かった。あの時はむしろ絵を無意識に避けていたような気はする。まあ、今にしたってかつてカルデアで見た北斎さんやゴッホちゃんの絵くらいしか知識はないんだけどさ。だから、ゆっくり回ることにする。絵の下に書いてある解説を読み、なんとなく概要を把握しながら順繰りに回る。平日の午前中ということもあってか、人はあんまり居らず、静かな時間が流れていった。
そのまま歩いていると、一般展示の順路は終わりらしく、出口に着く。ちょうど彼女も出口に着いたらしく、もう一回手を繋ぐ。
「どうだった、ゴッホちゃん?」
「エヘへ…………良い時間を過ごせました…………これで絵を描く時の参考になります…………ウフフ…………ありがとうございます…………立香様はどうでしたか?」
「んー、楽しかったよ? ゴッホちゃんの色々な顔が見れたし、絵のことはよくわからかったけどさ、知らないものを見るのは楽しいことだし」
「それなら、良かったです…………ウフフ…………」
「次は、何処に行く? そろそろお昼だけど」
「そうですね…………お腹、減っちゃいました…………では、次は立香様にお願いします…………」
「私? うーん、そうだなぁ…………じゃあ、あそこに行こう!」
「あそこ、ですか?」
「まあ、着いてからのお楽しみってことで」
そう言って、彼女の手を引いて目的の場所に向かう。しばらく歩いていると、直ぐにその場所に着く。
「ここは、喫茶店ですか?」
「そうだね。良く通っているんだ」
その場所は、喫茶店だった。個人経営の喫茶店で、安くて量が多いから良く通ってる場所だ。マスターとも顔見知り、と言って良いくらいには通っている。あんまり他人に干渉しないタイプだから、居心地が良かったこともあるけど。
ドアを開けて、喫茶店に入る。カランカランとベルが鳴る。
「む、いらっしゃい」
「二人で、お願いしまーす」
「あいよ。好きな席に座るといい」
店内はガラガラで、何処でも座れそうだ。テーブル席で、向かい合って座る。
「ゴッホちゃん、何頼む?」
「結構沢山ありますね…………立香様のおすすめって、ありますか?」
「私のおすすめはこれかなー?」
そう言って、ランチセットを指す。
「では、これでお願いします。立香様は?」
彼女がいくつかあるランチセットのうち一つを指す。
「私は、そうだなー。こっちにしようかな? じゃあこれで良いかな?」
私は、彼女に示したのとは違うランチセットを選ぶ。彼女が頷いたので、マスターを呼ぶ。
「すいませーん! 注文お願いしまーす!」
「注文を伺おう。何にするんだ?」
「これとこれで、お願いします!」
「承った」
マスターが厨房に引っ込む。料理が来るまでの間、彼女と雑談する。
「な、なんだか、あのマスター様は無愛想な方ですね…………」
「無愛想だねー。まああれでも、腕は良いし無愛想なだけだからね。居心地が良いのかピークの時は結構人はいるよ」
「なるほど…………確かに、内装にも拘ってるし、雰囲気は結構良い感じですね…………」
「でしょー?」
「お待たせいたしました」
そんな風に雑談していると、料理が届く。私のはカレーライスのセットで、ゴッホちゃんのはオムライスのセットだ。
「本当に多いですね…………ありがたいです…………」
「じゃあ、食べようか」
「「いただきます」」
お互いに食事を始める。
「あ、ゴッホちゃん、カレー食べる?」
「あ、ではこちらもオムライスをどうぞ…………ウフフ…………」
そうお互いの料理を交換したりしながら、楽しい昼食を過ごした。
「「ごちそうさまでした」」
食事を終えて、喫茶店を後にしようと会計を頼む。結構お腹が空いていたのに、食べ終わる頃には満腹になっているから本当に量が多い。
「ランチセット2つで、2000円です」
「はーい。じゃあ、これでお願いしまーす」
「2000円、ちょうどお預かりしました。こちら、領収書になります。またのお越しを…………」
「?」
マスターに笑われたような気がしたけどなんでだろう?
まあ、いつも無愛想なマスターの笑顔を見れたし、馬鹿にしてる気配もないから悪い気はしないけど。
「次はどうする、ゴッホちゃん?」
「…………お腹も膨れましたし、良いインスピレーションも得ました。では、次は実践です! 立香様、この街で一番良い風景の場所に連れて行ってください!」
「もちろん、いいよ。この場所で一番いい風景ってなると…………あそこかな」
喫茶店のマスターはなんとなく橙子さんみたいなイメージ
喫茶店自体のモデルは自分の家近くにある喫茶店
マジで量が多い