狂気的な恋   作:96963

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衛宮ごはんに影響されました。


デート③

 ーーーーーー案内すると言ったけど。実際のところ、景観のいい場所なんてあんまり無いのだ。私達が住んでるこの街は、都会とも田舎とも言えない地方都市で、微妙に開発され微妙に開発されていない。つまりは、中途半端なのだ。かつてのカルデアで巡った様々な場所に匹敵するほどの風景など存在しない。これが首都東京とかなら違ったかもしれないけど。それでも、胸を張って言えるほどじゃないけど、私が心動かされた場所ならある。

「よっと。私がおすすめだと思える場所は、ここかな」

 喫茶店から1時間くらい歩いた先。そこは、言うなればちょっとした小山の上。開発された住宅街の上にある本当にちょっとした山、丘と言ってもいいかもしれない。そこにある小さな原っぱだ。無論人の手が入っていて、あたりには球技や鬼ごっこなどに使われたのであろう跡が散見される。あたりには大きな木が一本だけ生えていて、眩しく照らしつける太陽も、その木の下では光が遮られている。

「ここ、ですか…………」

「うん、そう。たまに、どうしようもなく寂しい時、私はよくここに来て何をするでもなく眺めているんだ。ここは人ももう、あんまり来てないようだしね」

「そうなのですか?」

「昔はここで色々遊ばれてたようだけど、私が来る結構前に、大きな公園が下に出来たみたいでさ。皆そっちに移っちゃったみたい」

 それはまるで、忘れ去られ置いていかれたみたいで。全てとズレていた私にとって、どうしようもなく共感してしまう場所だったのだ。

「なるほど、それで…………でも、良い場所です」

「そう? なら良かったよ」

「エヘヘ…………では、ここで描いちゃいますね…………」

 彼女が大樹の下に座り、絵を描き始める。

 私も彼女の横に腰掛け、彼女を眺める。

 絵を描く彼女の顔は真剣で、格好いい。いつまでも眺めていられる程だ。丘の上ということもあり、涼しい風が吹く。大樹の葉から覗く光に照らされながら、私はかつてシンパシーを感じていた風景と彼女を交互に眺めて、楽しい時間が過ごしていた。

 気づくと空はオレンジ色に染まり、夕陽が私達を照らしている。時刻を確認すると、冬なら真っ暗になっている頃だ。暗くなるのはまだまだ先とはいえ、完全に日が沈んだら危ないので彼女に声をかける。

「ゴッホちゃん、進捗はどう?」

「あ、そこそこには…………ハウッ⁉︎もう世界がこんなにオレンジに⁉︎す、すみません立香様、気付かずにこんなに付き合わせて…………」

「ゴッホちゃんの良い顔が見られたから楽しかったよ? それよりもう少ししたら危なくなるし、良いところで切り上げようか」

「あ、ではありがたく…………この部分を描いたら終わりにしますね…………すぐ終わりますので…………」

「まぁ、まだまだ夜が来るには時間がかかるし、ゆっくりで良いよー」

 そう言うと、彼女はより真剣な顔をして絵を描き始める。やっぱり彼女は絵を描いてる姿が一番格好いい。そんな君だからこそ、私は君を求めたんだよ、と独白する。

「…………あの、立香様、恥ずかしいです…………」

「あれ、声に出てた?」

「ええ、バッチリと…………嬉しいのですが、ゴッホをじっと見られながら言われるのは…………」

「あはは、邪魔してごめんごめん」

「いえ、邪魔というわけでは…………」

 彼女は赤面しながらも筆を進める。すると、キリがいいところで終わったのか、筆を片付け始める。

「終わったの?」

 彼女に訊く。

「ええ、はい。さっきよりも暗くなっちゃいましたけど…………帰りましょうか」

「そうだね」

 彼女が片付け始めたので、私も立ち上がって伸びをする。さすがに結構座っていたから身体が凝っている。彼女も片付け終わったようで立ち上がる。

 彼女がはにかみながら手を差し出す。私はその意図を理解して手を繋ぐ。

「じゃあ、帰ろう。私達の家へ」

 私達は、ほとんどその身を沈ませた夕陽に照らされ、帰路に着いた。その影は、長く、長く伸びていた。

 

 

 帰宅後、お互い同時にお腹が鳴る。まあ、喫茶店のご飯はかなり多かったとはいえ、喫茶店からそこそこ遠く、しかも小さい丘とはいえ坂道を登ったり降りたりした後だ。お腹も減る。

「お腹減っちゃったね。ゴッホちゃん、何食べたい?」

「では、冷たいものを…………ちょっと今日は暑くて、水はとっていたとはいえ、ゴッホには、少々キツいものが…………いえ、楽しかったのですが」

「今日は結構暑かったものねー。じゃあ軽いものにしようか」

 そう言って、夕食の用意をする。冷たいものとなると、この季節なら素麺や冷やし中華だろうけど、あいにくまだ素麺や中華麺は家にない。だから、冷たいお茶漬けにしよう。幸い、冷ました白米があったので後は具だけだ。鮭フレークや、海苔、鰹節はあったからそれっぽいのは出来そうだけど、どうせなら後少し加えたい。そこで、卵を炒めて冷ます。冷やし中華にもあるんだし別に悪くはならないでしょ。後、両親から送られて来たものにたまたま漬物があったのでそれも使うし、適当に野菜を細かく切っておく。出汁は元から冷やしたのがあるから問題なし。後何か欲しいけどーーーーーーそういえば、ホテルやお店のお茶漬けって、なんかお肉あるよね。丁度良いや、試してみよう、と下ののコンビニに行くことにする。多分戻ってくる頃には良い感じに冷えるだろう。ついでにお風呂を沸かしておく。

「ゴッホちゃん、ちょっと下行ってくるね!」

「はーい、いってらっしゃいませ…………」

 ちょっと気怠げな返事に背を押されながら、下のコンビニに向かう。予想通り冷やし中華とかに使えそうな加工肉があったので、購入する。

 急いで部屋に戻り、器に盛り付ける。

「これで、よし、と。ゴッホちゃーん、出来たよー」

「はーい。お、これは冷たそうですね…………」

「まあ、手軽に作れるしね。それじゃ、食べようか」

「「いただきます」」

「ズズ…………冷たいお茶漬けというのも、良いですね…………」

「でしょー」

 結構お腹が減っていたことや、あっさりしたものだったため、たくさん食べてしまい、気づいたら用意してた白米は無くなっていた。お腹も膨れたし、良しとする。

「ごちそうさまでした。美味しかったです…………エヘヘ…………」

「お粗末様でした。美味しかったなら良かったよ。じゃあ、片付けるね」

 食器を洗い、後片付けをする。いつもならゴッホちゃんはこのタイミングで一旦自分の部屋に帰っているのだが、今日は珍しくこっちにいた。後片付けが終わってもいるのは珍しいので

「どうしたの、ゴッホちゃん?」

 と尋ねてみる。

「エヘヘ…………その、今日から夏休みですし、立香様と一緒に居たいと思いまして…………ウフフ…………その、もしかして迷惑だったりしましたか?」

「いや、嬉しいよ。ただゴッホちゃんっていつもこの時間は絵を描いてるから不思議に思っただけ。そっか、今日から夏休みで時間が増えるもんね」

「はい…………ですので、一緒に過ごしましょう…………」

「おっと、その前にお風呂に入らないとね。ゴッホちゃん、いつもシャワーでしょ? たまには一緒に入ろう?」

 丁度、沸かしておいたお風呂が沸く。

「⁉︎そ、そうですね…………立香様とお風呂…………ウフフ…………」

 

 

「相変わらずゴッホちゃんの肌はスベスベしててひんやりしてるねー」

 どうせなので、お互いに身体を洗うことにして、今は私がゴッホちゃんを洗っている。彼女の身体はひんやりしてて、気持ちいい。

「そ、そうですか? ゴッホ的にはこの身体は貧相なので、ちょっと恥ずかしいのですが…………」

「えー? 私は今も昔も、好きだけどなー?」

「…………相変わらず立香様は、平然として恥ずかしいことを言いますね…………」

「思ったことを口に出してるだけなのになぁ」

「エヘヘ…………そこもまた、立香様のゴッホが好きなところです…………」

「…………良し、流すよー」

 彼女からの好意に、少し、照れる。照れ隠しに彼女の身体をシャワーで洗い流す。洗い終わったので、次は私だ。

「エヘヘ…………失礼します…………」

「ほーい」

 彼女に身体を洗われる。

「立香様は、傷がない身体ですね…………良いことです…………ウフフ…………」

「まあ、流石にね。あそこほど過酷な場所なんて、そうそう無いだろうし」

 カルデアにいた時も、基本的に傷は無かったけど、それは治癒魔術のおかげで、その効きが現れるまでは傷がそこら中にあった事も珍しく無かった。それに比べたら、今傷がないのは、まあ当たり前のことだろう。

「それもそうですね…………では、こちらも流します…………」

「はーい」

 彼女に洗い流され、お互いに綺麗になり、浴槽に入る。

「はー、生き返る気持ちだー」

「ゴッホも、癒されるのを感じます…………」

 彼女とだらだらお風呂で過ごす。彼女と向き合って入っているので、なんだか少し恥ずかしい。ゴッホちゃんを見ると、赤面していて、きっと私も赤くなっている。お風呂のせいか、はたまた別のせいか。

 お互いに無言の時間が流れる。

 しばらくすると、のぼせたような気分になって来たので、上がることにする。

「そ、そろそろ上がろうか、ゴッホちゃん」

「そ、そうですね…………」

 お互いちょっと恥ずかしくなって、若干気まずい。でも、悪い時間じゃ無かった。彼女にとってもそうだと、嬉しいな。

 

 お互い寝巻きに着替えて、だらだらとテレビを見たり、ゲームをしながら過ごす。そうこうしている内に、時計がそろそろ寝る時刻だと指摘する。

「そろそろ寝ようか、ゴッホちゃん」

「エヘヘ…………そうですね…………今日は動いたので…………ゴッホも、眠くなっちゃいました…………」

 というわけで、寝る前の歯磨きなど、寝る準備をして就寝することにする。

 久しぶりに彼女と一緒に寝るなぁと思いながら、ベッドに入る。いやまあ、起きたらいつもいるけどね。

「それじゃおやすみ、ゴッホちゃん。明日からも、楽しい夏休みにしようね」

「おやすみなさい…………立香様…………明日からずっと一緒…………」

 お互いに抱き合う。ゴッホちゃんのひんやりした温もりの中、意識はすぐに沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 深い深海の中。でも、暗くはない。月明かりが照らす中、私は彼女と歩んでいく。

 

 

 深い深海の底。でも、冷たくはなく、温かい。大切な人の温もりを離すまいと握りながら、わたしは彼女と歩んでいく。





次はどうしようかな

無難に夏休み編かな
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