幕間12ネタバレあり
参考資料:光コヤンのバレンタイン
──────最近、ゴッホちゃんがいなくて寂しい。
「どこに行ったんだろう、ゴッホちゃん…………」
いないといっても、邪神関係で何かあったとかそういう物騒な感じじゃない。
1週間ほど前に絵のアイディアが閃いたと言って、そのままどこかに行っちゃったのだ。
完成するまで私には内緒と言っていたからまたシミュレーション内で彼女の故郷を眺めながら描いているとか、或いは何かの画材でも買いに出かけたのかな、と最初の頃は思っていたのだが。
それが1週間ともなると、少し心配になる。
ゴッホちゃんと仲がいいお栄さん達に聞いてみても、行方はわからないし。
1週間くらいで心配しすぎでは、と思うだろうが彼女の前科を思うとそうも言えない。
ジャックちゃんを題材に絵を描こうとして、結果的に軽い終末概念? を生み出しかけた時とかあったし。
この時も彼女の行方がわからない、という共通点があった。この件はゴッホちゃんのリソース横領から始まる事件だったけど…………今度は、何をやらかしているのやら。
寂しいというのもあるけど、それ以上に心配の方が強い。
ニコニコ機嫌良さそうにしてたから、メンタル面の心配はしてないけど。
「……………………ゴッホちゃんの部屋に行ってみるしかないかな」
完成するまで内緒って言っていたから、完成途中の絵が置かれているだろう彼女の部屋に行くのは気が進まない。
だけど、行かないとダメな気がする。
「…………よし。行こう」
少し迷って、行くことにした。
数分後。
ゴッホちゃんの部屋の前にたどり着いた。
「……………………」
少し緊張しながら、部屋のドアを叩く。
そのまましばらく待ってみるけど、反応はない。
「…………やっぱり、いないかな」
意を決してドアを開ける。
そこには。
「…………あれ?」
何も、なかった。
彼女の画材も、道具も、彼女の絵も。
ただ、ベッドのシーツが少し乱れているだけだ。
そこ以外、まるで最初から彼女がいなかったようにその部屋は真っ白だった。
「これって、どういう…………」
予想外の光景に思考が止まる。
その時。
カタン、と小さな音がした。
「……………………?」
その音に思考を取り戻す。
音のした方を見てみると、部屋の中に何かが落ちている。
ここからじゃよく見えないから、何なのかはわからないけど。
「何あれ…………?」
おそらく、ドアを開けた瞬間に落ちたのだろう。
「…………怪しいけど、手がかりはこれしかないか」
本当はダ・ヴィンチちゃんに報告するべきなんだろうけど、ゴッホちゃんのことで頭がいっぱいだった私には部屋に入る以外の行動が思いつかなかった。
部屋に入り、落ちているものをを手に取る。
「これは…………カード?」
それは、見覚えのあるマークが描かれたカードだった。『招待状』と書かれている。
裏返してみると、今日の日付と共に文章が書かれている。
「『拝啓、親愛なるマスター、立香へ。
この部屋の住人であるクリュティエ=ヴァン・ゴッホは当カジノ、カジノ・キャメロットでのカード勝負に大変興じておられました。しかし勝負とは時の運。残念なことですが不幸にも彼女は敗北を積み重ね、彼女の支払い能力を超える多額の負債を抱える身となったことを此処に報告いたします。その為、当カジノのルールに従い彼女の『全て』を差押えさせてもらいました。彼女の画材も、道具も、絵も、彼女の身体も。そして彼女の負債を回収する為、数日後にクリュティエ=ヴァン・ゴッホのオークションを執り行います…………』…………はぁっ⁉︎」
そこに書かれていたあまりの文言に文章の途中だけど思わず叫ぶ。
ゴッホちゃんのオークションって何。
ゴッホちゃんのオークションという言葉だけが頭の中をぐるぐる回る。しばらく言葉のインパクトに打ちのめされていたが、どうにか落ち着いて来たのでカードの文章について考える。
カジノ・キャメロットと書いてあるから送り主は恐らく水着のアルトリア・ランサー…………水着獅子王、つまりアルトリア・ルーラーだろう。表のマークも、よく見ると彼女の紋章だ。
彼女が嘘をつくとは思えないから、文章の通りゴッホちゃんはカジノでスって身柄ごと抑えられたんだろう。そういうことなら、彼女の物がこの部屋に無いのも納得できる。
「何やってんのゴッホちゃん…………」
ゴッホちゃんの行動に呆れてついそんな言葉が漏れる。
ここしばらく姿を見せないと思ったらまさかギャンブルでスってたとは。いや確かにゴッホちゃんらしいといえばらしいけど。
というかなんで絵を描きに行ったらカジノに行ってんのキミ。
それもオークションって。
カードにはまだ文章が書いてるので続きを読む。
「『オークションに出されるものは当カジノが差押えた彼女の『全て』。当然、彼女の身柄も含まれます。…………しかし、彼女が立香と懇意にしているのはは私も把握しています。ですので、親愛なるマスターにこの招待状を送らせて頂きました。この招待状はカジノ・キャメロットへの挑戦権。この挑戦を以て彼女の負債を超える額を獲得したのならば、オークションを執り行うことなく彼女の『全て』を貴女に譲渡しましょう。無論、負けたのならば貴女の身柄もこちらが貰い受けますが。
──────貴女の挑戦を、待っていますよ。 カジノ・キャメロットオーナー 水着獅子王、アルトリア・ペンドラゴンより』」
「これは…………」
どうしたものか、と少し考える。
オークションの代金は恐らくQP。手持ちのQPはあるにはあるけどこれはサーヴァントの運用とかボーダーの維持とかその他諸々に使うカルデアの資金でもあるから実際に自由に使えるQPはかなり少ない。多分勝つのは難しい。
だから私が取ることが出来る手段はこの招待状を使うことなんだけど。
「アルトリアのカジノ…………勝てるかなぁ?」
そこに不安がある。もし彼女がディーラーなら、私は逆立しても勝てない。
「ウッ、嫌な記憶が…………」
アルトリアにカードでボロ負けした記憶が蘇る。あれは酷かった。…………………………というかこれはもしかしなくても私を嵌める罠じゃなかろうか。
そんな風に悩んでいると、ハラリと何かが舞い落ちる音がする。
音の方を見ると、一枚の紙が落ちていた。
それはサーヴァント達の名前が書かれたリストだった。上の方に小さくアルトリアの字で何か書いてある。
「ええと…………『追伸 オークション参加者のリストです。ああ、そうそう。いつかの時と違い、今回私は参加しないので安心してください。決意が固まったら、その招待状に呼びかけてもらえれば』…………」
その言葉で、不安材料が一つ消える。アルトリアが出てこないならまだ勝ちの目はある。
しかし、そんな甘い考えはリストを見てすぐに吹き飛んだ。
リストにはコロンブスとカエサルの名前がある。
「あの二人…………まさか」
コロンブスとカエサル。以前英霊の伝記を作るとかでゴッホちゃんにインタビューして返り討ちにされたサーヴァント達だ。
ゴッホちゃんの身柄が手に入ると聞いて参加したのだろう。
その二人に身柄が渡った時のことを考える。
…………………………最悪の場合、とてもとても嫌な事態になる、と容易に想像出来た。
「…………………………やるしかないか」
負けた時のリスクはあるが、あの二人にゴッホちゃんの身柄が渡るよりはマシだ。ゴッホちゃんを取られたく無い。
覚悟を決める。
「カジノ・キャメロットへ!」
招待状に対して叫ぶ。
すると招待状が光り輝き、視界が白む。
視界が戻った時、そこは──────
「──────ようこそ、カジノ・キャメロットへ。立香」
「…………………………また、来ちゃったか」
懐かしくも恐ろしい美しきカジノ、カジノ・キャメロットだった。
アルトリアに出迎えられる。
「ふふ、貴女ならきっと来ると思っていましたよ」
「まあね。さっさと勝って、オークションを止めないと」
「おや勇ましい。ふふ、今回私は傍観者の身ですが…………貴女の勇姿に、期待してますよ」
アルトリアの言葉は一見優しいが、奥に潜む裁定者としての冷たさに少し震える。
負ければ、きっと私もゴッホちゃんの様に公平に裁定されると確信する。
「ところで、ゴッホちゃんは何処?」
その震えを隠し平静を装いながら、彼女にゴッホちゃんの居場所を訊ねる。
「彼女なら、あちらに」
そう言ってアルトリアが指差す。指差した先で──────文字通り身包みを剥がされた、全裸のゴッホちゃんが首輪に繋がれていた。
「り、立香様…………」
私に気づいたのか、少々震えながらゴッホちゃんが私を呼ぶ。
「…………………………帰ったら、お説教ね」
「はい…………」
一週間ぶりの再会にもっと話したい欲があるが、今彼女はカジノ・キャメロットのモノだ。続きはゴッホちゃんを確保してから。
「…………もう勝った気でいる様ですが、此処はカジノ、運が支配するゲーム盤。勝利を確信するのは早いのでは?」
前座とばかりの扱いに不満そうなアルトリアに、敢えて不敵に笑う。
「冗談」
ツキっていうのは、多少ハッタリを効かせなきゃ回ってこない。
「私、ギャンブルは結構強いんだよ? 忘れてた?」
「…………フッ。そうでしたね」
…………まあ、アルトリアが出陣しないからこそのハッタリだからいまいち締まらないけど。
カジノ・キャメロットに来てから数時間。
ゴッホちゃんが負った借金の額は、いつぞやのチョコレートに比べたら随分少なかった。
そのおかげで、予想よりもかなり早く借金の大半を稼ぎ終えた。
後数ゲーム、と言ったところかな。
「なるほど、言うだけのことはありますね。この短時間でこれほどとは…………ふふ、私が出られないのが残念な位です」
「アルトリアが出たら絶対負けるじゃんそれ…………」
そんな軽口を叩きながら、冷静にゲームを進めていく。
「よし、フルハウス。私の勝ち」
カードを叩きつけながら、勝利を宣言する。相手の手はスリーカード。余裕で私の勝ちだ。
これで何連勝かな。面倒くさくて覚えてないや。
「そ、そんな…………」
負け続けたのが心に響いたのか、ディーラーの子が崩れ落ちる。
こうなってはゲームが出来ないので気分転換に別のゲームをやることにする。
後少しだけど焦らず、慎重に。
何もかも溶かしてしまうほど人々を魅了するギャンブル。だからこそ、心のチャックは締めて慎重にいかないと。
…………………………最も、アルトリアやラムダはそこら辺全部吹き飛ばすから意味ないんだけど。本当にいなくて良かった。
テーブルを巡っていると、ルーレットを見つける。丁度良い。カードばっかで飽きてたし。
「受付、まだやってる?」
「は、はい! 只今、受付中です! ど、どちらになさいますか?」
明らかにこちらに怯えてるディーラーに苦笑しながら、受付を終えてベットする。まあ、
「で、では回しますね…………」
ディーラーがボールを射出し、ボールが盤上を走り回る。
「14かな」
締切ギリギリ前に、位置を変更。
果たしてボールは──────狙い通りに、14番のポケットに入った。
「い、一点賭けで…………」
確率的に中々あり得ない光景に、ディーラーが泡を吹いて倒れる。同時にチップが払い戻される。
気分転換にやっただけだから賭けたのは最小限だけど、配当は36倍だ。後数ゲームの予定が、後一ゲームになってしまった。ラッキー。
その様子を見ていたアルトリアに声を掛けられる。
「…………本当に、素晴らしい腕ですね。今なら私と戦えるのでは?」
負けず嫌いなのだろうか、そんな恐ろしい提案をしてくる。正直興味はあるけど、今はゴッホちゃんの身柄が最優先だ。…………自分だけが賭けの対象なら、別に良いんだけどね。
「いや無理だって。絶対初手ロイヤルストレートフラッシュでボロ負けするもん」
なので、丁寧にお断りさせていただく。
さあ、最後のゲームだ。
お、ブラックジャックのテーブルが空いてる。最後はブラックジャックにしようかな。
というわけでブラックジャックのテーブルに着く。
さて、これで終わると良いな。
「──────おめでとう御座います。まさか本当に、この短時間で稼ぎ切ってしまうとは。約束通り、クリュティエ=ヴァン・ゴッホの『全て』を、貴女に譲渡しましょう。今運びますね」
結果から言えば、私はブラックジャックに勝って全て稼ぎ切った。気持ちよくブラックジャックとは行かなかったけど。勝ったので良し。
オークションを阻止出来たことにホッと胸を撫で下ろす。
「はぁ、疲れたぁ…………………………」
ここ数時間常に気を張ってたから、緊張が解けて力が抜ける。
ソファに座り込んでしばらく待っていると、首輪に繋がれたゴッホちゃん(流石にいつもの服を着ていた)と彼女の私物が詰まっているのだろうコンテナが運ばれてくる。
「では、これを」
アルトリアに首輪の鎖を手渡される。
「本日は、ご来場誠にありがとうございました。勇敢なチャレンジャー、立香様。どうぞこれからも当カジノ、カジノ・キャメロットをよろしくお願い致します」
「まあ、あんまり来たくは無いけどね…………」
苦笑しながらそう返す。ギャンブルって怖いし。同時に、視界が白み始める。
「…………ふふ。本当はもっと語りたいことがあるのですが、これ以上は野暮ですね。どうかゆっくりと、お楽しみください──────」
「へ?」
アルトリアが最後に意味深なことを言った気がする。だけどよく聞こえなかった。
なんだろうと思いながらも最終的に視界が真っ白になり─────視界が晴れると、私の部屋に戻っていた。ベッドに腰掛けている。
「ここは…………立香様のお部屋?」
その声に隣を見ると、ゴッホちゃんが居た。相変わらず首輪に繋がっていて、その鎖は私が持っている。
「あれ? ゴッホちゃん、まだ首輪に繋がっているの?」
不思議に思って訊いてみる。すると、不思議な顔で逆に訊き返される。
「あれ? 立香様、知らされていないんですか?」
「うん?」
訳がわからない。一体何なんだろう。そう思っていると、
「…………立香様は、オークションに出されるはずだったゴッホを取り戻しました。それはつまり、カジノ・キャメロットからゴッホを購入したということで…………ゴッホはもう、立香様のモノなんですよ?」
そう、顔を赤らめたゴッホちゃんに言われた。
「…………………………はいぃ⁉︎」
そう言えば、譲渡するって言っていたような。あれってそういうこと⁉︎
驚愕の真実に動揺していると、ゴッホちゃんにスススと擦り寄られる。
「ウフフ、カジノでスって借金塗れになったこんなダメダメゴッホを買ったということは…………そういうこと、ですよね?」
そんなことを宣う彼女の瞳は、ピンク色に濡れていた。
あ、これ反省して無いな。いつぞやの不正利用みたいに無理矢理誤魔化すついでに楽しもうとしてるなと直感する。
しかし、彼女の勢いは強い。ジリジリと壁側に追い詰められる。このままじゃいけないと、抵抗のつもりで鎖を引っ張ると
「…………ハウッ」
ゴッホちゃんがピタッと止まる。まるでそれ以上動けないみたいに。
「もしかして、この首輪って…………」
同時に、ヒラヒラと一枚の紙が落ちてくる。
そこには
『補足:その首輪は所有物の証です。カジノ・キャメロットのルールにより、首輪が付いた者の行動をある程度制御することが出来ます。外したい場合はもう一度カジノ・キャメロットへ来ていただければ、いつでも外させていただきます。──────水着獅子王、アルトリア・ペンドラゴンより』
と書かれていた。
なるほど、今の状況では好都合だ。
「ゴッホちゃん、正座」
試しにそう言ってみると
「はい…………」
言われた通りに正座した。その姿は何故か堂に入っていて、綺麗だ。
…………何でオランダあるいはギリシャのサーヴァントなのに正座が綺麗なのかは置いておく。
ともかく、これならお説教が出来る。
「説明を」
しばらくゴッホちゃんは抵抗していたようだが、やがて諦めたのか口が開く。
「…………その、たまたまホクサイに連れられて入ったあそこ…………カジノ・キャメロットのあまりの美しさに目を奪われ、これを是非絵に留めたい! と思ったのですが…………スケッチのために通っていたら生前やる余裕もなかったギャンブルにハマってしまい…………ちょっとだけなら良いかと思ったらつい…………」
「つい、借金で身柄を差押えられるまで使っちゃったと」
「はい…………」
正直すぎる理由に何故か納得してしまう。…………お栄さんが気になりはするけど、ギャンブルでスったのはゴッホちゃんの自業自得だから無罪かな。
「すみません、こんなダメダメサーヴァントで…………………………」
ゴッホちゃんの言について考えていると、しおらしくゴッホちゃんが謝ってくる。
うーんまあ、実害は無かったし私もゴッホちゃんを取られるのは嫌だなってエゴで動いてたから実はゴッホちゃんを叱る合理的な理由はあんまり無かったりする。
ただカジノで遊んでたら、ついハマり過ぎていたってだけだからね。
強いて言えば、自分の身を大切にして欲しいってことなんだけど…………
しばらく悩んで、どんな言葉にするか決める。
「ゴッホちゃん」
「はい…………」
「肝心の絵は、完成したの? 私に内緒って言ってたから、気になってたんだけど」
「! はい、カジノ・キャメロットの絵は…………もう、完成しています!」
「なら、見せて欲しいな」
「…………はい!」
そう言うと、ゴッホちゃんがコンテナを漁って一枚の額縁に入った絵を持ってくる。
そこには宣言通り、彼女の描いた美しいカジノ・キャメロットが収められていた。
美しい大広間。確かアルトリア曰く庭園をイメージしたんだっけ。その特徴をよく捉えた、彼女らしい風景画だ。
「…………どうでしょうか?」
まじまじと見つめていると、不安気に彼女が感想を訊いてくる。
「…………うん、綺麗。このまま壁に飾りたいくらい」
そう、素直な感想を零す。
「ど、どうぞ! 個人的にもかなりの力作です、受け取って貰えたらありがたいです!」
「うん、じゃあありがたく貰おうかな。…………さて」
「ハウッ…………」
私の雰囲気が変わったことを察したのか、ゴッホちゃんが震える。
「ゴッホちゃん」
「はい…………」
「ちゃんと絵を描いてたし、あまり私が叱るのも違うから今回はお咎め無しにしてあげる」
「…………あの、今回ゴッホは立香様にかなり迷惑を掛けたと思うのですが…………」
お咎め無しという判決が疑問なのか、困惑気味にゴッホちゃんが訊ねてくる。
「…………確かに客観的に見たらそうかもしれないけど、今回私が動いたのは私のエゴだよ。ゴッホちゃんを誰かに取られたくないっていう」
そう彼女に答える。…………口に出してみると、恥ずかしい。自分でも顔が赤くなっているのを感じる。つい顔を背ける。
「…………! それは…………つまり、そういうこと、で良いんですよね…………?」
私のエゴが伝わったのか、ゴッホちゃんも顔を更に赤く染めて訊き返してくる。
「…………うん、まあ、ね」
照れ隠しに、そんな言葉しか言えない。
「…………ウフフ、では、さっきの続きを…………!」
私の言葉を同意と取ったのか、ゴッホちゃんがさっきの再演をしようとする。
でも。
「その前に!」
言わなきゃいけないことはまだある。
「もっと自分の身体を大切にして。…………今回ゴッホちゃん、あのカエサルとコロンブスのコンビに買われるかもしれなかったんだよ?」
その言葉に、彼女の動きが止まる。きっとあの時のことを思い出したのだろう。
「それは…………ちょっと、嫌ですね…………」
「でしょ? 私もいつでも助けることが出来るってわけじゃないし…………」
今回勝てたのは運が良かっただけだ。次も勝てるとは限らない。
「だから、今回みたいなことはもうやめて欲しいな。キミが離れちゃうのは、嫌だから」
「…………………………ウフフ」
「ゴッホちゃん?」
「…………でしたら、どうかこの首輪をずっと持っていてください…………わたしが離れないよう、ずっと、ずーっと、この鎖を、握って…………」
彼女に鎖を手渡される。
「…………わかった。それでキミが、側にいてくれるのなら」
鎖を受け取り、強く握りしめる。
「ウフフ…………嬉しいです。ところで」
「?」
「さっきの続き、しませんか…………?」
「…………うん」
部屋の明かりが落ちる。
そして、ベッドに二人の影が沈んでいく。
数日後。
ゴッホちゃんがギャンブルに行くことはなくなった。
代わりに、首輪をずっと付けているけど。
「…………エヘヘ、立香様、今日も…………」
「…………しょうがないなぁ」
ああ、でも彼女が側にいることに比べたら、そんなのは些細なことだ。
ゴッホちゃんがレジライとカエサルを嫌ってるというか苦手そうな感じな理由はゴッホちゃんの幕間1を見てください。
レジライカエサルは好きです。