アイデア貰いました
「ゴッホちゃん、遊ばない?」
「ゴッホちゃん、クエスト行かない?」
「ゴッホちゃん、一緒にご飯食べない?」
「ゴッホちゃん、絵を教えて欲しいんだけど…………」
「ゴッホちゃん、一緒に寝ない?」
「ゴッホちゃん、……………………」
立香様の言葉達がリフレインする。
彼女にかけられた嬉しい言葉達。
わたしの心を喜びの色に染め上げた言葉達。
「…………………………ぅ」
でも、それは。
喜びの色から、悲しみの色に塗り変わってわたしを縛り付ける。
誰もいない暗い部屋の隅で、隠れるように膝を抱えて縮こまる。
誰も知らないまま、誰も知らない想いに涙を零す。
ポタポタと、ズボンに小さな染みが出来ていく。
「…………………………仕方ない、ですよね…………エヘへ…………」
仕方ない。
だってわたしは、所詮彼女の
それに、人間ですらない。
つぎはぎで、自分が誰なのかを永遠に探し求めて昏い海を彷徨う化け物だ。
そんな化け物が、輝く太陽のような彼女に相応しいはずもなく。
彼女への想いを抱いたこと自体が、大きな間違いだったのだ。
「…………切り替えないと」
首を振って、気持ちを切り替えようとする。
立香様への想いが実らないのは残念だけど、わたしは立香様のサーヴァント。
立香様を心配させてはいけない。
大丈夫。
しばらくしたら、きっといつものわたしに戻れる。
いつものおかしなサーヴァントの、
きっと、大丈夫。
「…………………………ぁ」
…………………………でも。
そんなことは不器用なわたしには出来ず。
涙がズボンを濡らし続ける。
「…………こんな有様じゃ、立香様の前に顔見せ、出来ないですね、エヘへ…………」
幸い、部屋には誰もいないし、来る気配もない。
暗い中、気の済むまで泣き続けた。
少し前。
「〜〜〜〜♪」
廊下を鼻歌混じりに歩いて行く。
今日のわたしは気分がいい。
何故かというと
「エヘへ、立香様とのデート…………♪」
そう。敬愛するマスターにしてわたしが密かに懸想している立香様との週に一度のデートの日だからだ。
いやデートというには語弊があるかもしれない。
わたしが現界してから得た知識に照らし合わせてみると、ちょっと違う気もするし。
わたしが心の中で勝手にデートと言っているだけというのもある。
どこに行くでもなく、わたしか立香様の部屋で一日一緒に過ごすだけ。
一緒に絵を描いたり、遊んだり、ご飯を食べたり、お昼寝したり。
ただダラダラと過ごすだけの日だ。
…………でも、とても楽しい。
だって立香様と一緒にいられるのだ。楽しくないわけがない。
それに、同クラの方達と話していると、どうもわたし以外とは立香様は「デート」をやっていないらしい。
つまり、立香様にとってもわたしとだけの特別な逢瀬のはず。
更に言えば、お家デートなる言葉があるとも聞く。
だから、これはきっとデートなのだ。
「…………ウフフ…………♪」
心を弾ませながら廊下を歩く。
その時。
「…………マシュってさ」
「!」
立香様の声が聞こえた。
どうやら、近くの休憩スペースで誰かと話しているらしい。
邪魔してはいけないと思い、隠れるように壁にもたれかかる。
「なんでしょう、先輩?」
「…………マシュ様?」
どうやら、マシュ様と話しているらしい。
何を話しているのか気になって、耳をそばだてる。
「…………好きなんだけど、女の子同士ってどう思う?」
しかし、距離のせいか一部が聞き取れない。
でも、肝心な部分は聞き取れた。誰かを好き、という彼女の言葉を。
「…………好きって」
もしかして、わたしのことだろうか。
デートの日だからか、そんな期待が胸の中に湧き上がる。
女の子同士とも聞こえたし。
わたしは女の子。立香様も女の子。
それに、立香様が逢瀬を重ねるのはわたしだけ。
「…………………………エヘへ」
わたしにとって都合の良い妄想に、思わず笑みが漏れる。
「…………はっ」
危ない危ないと口を塞ぎ、彼女達の話を盗み聞く。
「そうですね…………女の子同士でも、私は大丈夫だと思います。だって先輩、本気で好きなんですよね?」
「…………?」
しかし、マシュ様の言葉を聞くと何故だか胸がざわめく。
なんだろう。
これ以上踏み込んではいけないと、頭のどこかが鐘を鳴らす。
「…………うん。大好きだよ」
「…………私は、嬉しいです…………」
「…………………………」
これ以上聞く前に離れろ、と頭全体が悲鳴をあげる。
しかし、身体は言うことを聞かず、その場に縛り付けられる。
「…………ありがとう、マシュ! マシュがそう言ってくれて、嬉しいよ! …………」
喜色を帯びた立香様の言葉に、身体が反応してつい覗き込んでしまう。
やめた方がいいと、警告が鳴り響くも、逆らうことが出来ない。
そして。
「───────」
後悔した。
立香様の顔が、マシュ様の顔に重なっている。
まるで、キスしているよう。
その光景を見て、頭が固まる。
りっかさまが、ましゅさまと、キス。
わたしにも、したことないのに。
なんで。
りっかさまは、ゴッホのことが…………
更に。
「…………私も嬉しいです、先輩。…………ところで、告白の言葉は…………」
「うん、そうだね…………えっと、シンプルだけど…………貴女を愛してる。ずっと一緒にいて欲しい。…………」
追い討ちのように、立香様がマシュ様に告白する。
マシュ様はそれを受け入れて。
「…………………………なんで」
きょうはわたしとの、デートのはずなのに。
「…………ぁ、ああ…………」
受け入れ難い光景に、頭が真っ白になる
だからやめた方がいいと、離れろと言ったのに。
頭のどこかでそんな言葉が聞こえる。
同時に。
「誰がキミみたいな化け物を好きだなんて、言ったっけ?」
立香様の声で、そんなセリフが聞こえた。
「わたしが好きなのは、マシュだよ」
「あ──────」
ああ、そうか。
その言葉に納得してしまう。
わたしはどこまで行っても化け物で。
立香様はそんなわたしに同情していただけなのだ。
こんな化け物の想いが、誰かと通じ合うなど、最初からあり得なかったのだ。
立香様に似合うのは、マシュ様なのだ。
「──────ッ!」
気づけば、駆け出していた。
立香様のいない場所へと。
遠く遠く。
「…………うぐ、ひぐ…………っ」
そして。
暗い場所で、今もわたしは独り泣いている。
「なんで…………りっかさまぁ…………」
なんでわたしに優しくしたのだろう。
同情心なら、いっそ嫌ってくれた方が良かった。
嫌ってくれれば…………きっと今みたいな、苦しい想いを抱かなくて済んだのに。
「…………くるしい…………つらい…………」
胸の内を、誰かに吐き出したい。
こんな時、真っ先に思い浮かぶのは立香様の顔で。
余計に苦しくなる。
その時。
「…………そうだ、ウィレム…………!」
頼れる
わたしの頼れる相談役。
きっと彼なら。
そう思うけど。
「…………あれ…………ウィレム…………どこ…………?」
ウィレムが宿る絵筆はこの手に無く。
「…………あ…………うそ…………」
慌てて周りを探して見るけど、何処にもない。
きっと何処かに落としてしまったのだろう。
「…………………………エヘへ、ゴッホはひとりぼっち…………」
あまりの惨めさに、笑うしか無くなる。
きっとわたしは、彼にも見捨てられたのだろう。
いっそ消えたいくらいだけど、忌まわしき邪神の呪いがそれを許してくれない。
傷は向日葵へと開花して、最終的には。
「…………いえ、りっかさまのめいわくには…………」
立香様がわたしのことを好きじゃなくても、立香様はわたしを救ってくれた。
彼女の迷惑にはなりたくない。
その想いで、どうにか消えたいという想いを抑えつける。
「…………だれか、たすけて…………」
「〜〜〜〜♪」
朝。
目覚めた私は、マイルームの掃除をしていた。
いつもマリーンズが掃除してたりするから散らかってるわけじゃないけど。
今日はゴッホちゃんと過ごす日だから。
自分の手で掃除したい。
そう思い、気合いを入れて掃除する。
とはいえ、私の私物は結構少ないからすぐに終わってしまうんだけど。
そして、数分後。
棚の上をつつーっと、指でなぞってみる。
「…………よし」
なぞり終わった指には、埃一つ付いていなかった。
その結果に満足し、掃除を終わらせる。
「…………ふぅ」
道具を片付けて、ベッドに腰掛ける。
「…………ふふ、楽しみだなぁ」
週に一度の、ゴッホちゃんとの逢瀬。
ただ一日、彼女と一緒に過ごすだけだけど。
私にとっては楽しくてしょうがない。
だって。
私は──────ゴッホちゃんのことが、好きだから。
初恋って、やつだ。
いつからかはわからない。
でも、あのベッドに現れた日から、あの大きな夢を経て、カルデアに彼女が現れた時から。
一緒に過ごす内に、少しずつ彼女に惹かれていった。
女同士で変、なのかもしれないと思う時もあるけど。
好きなものは、しょうがない。
…………まぁ、彼女が来て結構経つ割には、未だにゴッホちゃんに告白出来てないんだけど。
この逢瀬も何度も繰り返したものだというのに。
「…………………………はぁ」
溜息をつく。
私はいつまでも、一歩前に踏み出せずにいる。
…………………………怖いから。
ゴッホちゃんに、振られることが。
頭ではわかっている。
ゴッホちゃんもきっとわたしを、憎からず思っていると(そうでなければ、何度も逢瀬を重ねたりしないだろう)。
告白したら、受け入れて貰える勝算はあると。
だけど、そうじゃなかったら?
そんな考えが頭を掠め、いつまでも一歩前に踏み出せない。
初めての恋。
恋なんて経験したことのない私に、失う恐怖はあまりにも大きく。
一歩を踏み出すには、途轍もない勇気が必要だった。
「…………でも、いつかは踏み出さないと、なぁ…………」
モヤモヤした気持ちのまま、ゴロゴロとベッドを転げ回る。
その時、ふと時計が目に入る。
文字盤は、彼女が来るまで後一時間ほどと、示していた。
気持ちを切り替えないと。
「…………よし、コーヒーでも飲みに行こう」
ベッドから立ち上がって、休憩スペースへと。
「ふぅ…………」
熱いコーヒーを喉に流し込む。
その熱さに、モヤモヤした気持ちが少し晴れる。
コーヒーを飲むと、なんだか落ち着く気がする。
多分、ゴッホちゃんのせいだ。
彼女と一緒にいる内に、彼女の好みが移ったのだろう。
「…………よし」
切り替えた。
とりあえず今日もゴッホちゃんと楽しもう。
そう考えていると。
「あ、先輩。珍しいですね」
「あ、マシュ」
マシュが来た。
カップを持っていて、どうやらマシュも休憩に来たらしい。
「ここ、座っても良いですか?」
と、私の目の前を指差す。
「もちろん」
断る理由もないので同意する。
「ありがとうございます。では…………」
と、マシュが目の前に座ってカップを口に傾ける。
透けている色から察するに、ホットコーヒーだろう。
「ふぅ…………」
「…………」
人心地ついている様子のマシュを見て、ふとマシュに相談してはどうか、とアイデアが思い浮かぶ。
…………というか、こんなことマシュくらいにしか話せない。
よし、聞いてみよう。
「…………マシュってさ」
「なんでしょう、先輩?」
「…………多分マシュにはバレてると思うけど、私、ゴッホちゃんが好き。ゴッホちゃんに、恋してる」
そうですね、とマシュが頷く。
やっぱりバレてたか、と思うとともに流石私の後輩、という謎の信頼感が湧き上がる。
それに安心して続きを話す。
「…………好きなんだけど、さ。女の子同士ってどう思う?」
「そうですね…………女の子同士でも、私は大丈夫だと思います。だって先輩、本気で好きなんですよね?」
「…………うん。大好きだよ」
「本気で好きなら、きっとそれは性別の壁を越えると思います。ゴッホさんも、先輩を悪しからず思っているようですし…………問題はないかと。私は応援しますよ。…………それに、私は嬉しいです。先輩に好きな人ができて」
頼れる後輩の言葉に、勇気が湧いてくる。
「…………ありがとう、マシュ! マシュがそう言ってくれて、嬉しい!」
「わっ、先輩⁉︎」
背中を押してくれたマシュに感謝と抱擁を。そして、決意を固める。
「…………うん、勇気出た! 今日、ゴッホちゃんに告白しよう! 本当にありがとう、マシュ!」
彼女に告白する決意を。
「お役に立てて、私も嬉しいです、先輩。…………ところで、告白の言葉はどうするつもりなのか、よろしければ教えてもらっても良いですか?」
「…………あ」
そういやそこ全く考えていなかった。
告白するということのみに意識を割いていて、どう告白するかなんて二の次になっていた。
マシュのおかげで思い出せた。
「…………先輩。それはどうかと…………」
「その、ごめん…………こんなの初めてで、色々浮ついてて…………気づかせてくれてありがとう、マシュ」
「…………なるほど。先輩もこんなミスをすると…………これが恋、ですか…………」
「ちょっとマシュ⁉︎」
「あ、すいません。それで、どう告白するんですか?」
「あ、うん、そうだね…………えっと、シンプルだけど…………貴女を愛してる。ずっと一緒にいて欲しい。とか、かな?」
「良いと思います。少なくとも、ゴッホさんの立場なら私は嬉しいです」
「…………良かった。相談に乗ってくれてありがとう、マシュ」
背中を押してくれるだけでなく大切なことに気づかせてくれたマシュにお礼を言う。
「いえ、このくらいお安いご用です。私は、先輩のサーヴァントですから」
「…………本当に、ありがとうね」
時計を見ると、そろそろゴッホちゃんが来る時間だ。
部屋に戻らないと。
マシュにお礼を言って、席を立とうとした時。
カタン。
と小さな、しかしハッキリとした音が響く。
「…………なに?」
「なんでしょうか?」
気になって、二人で音のした方へ向かう。
そこには。
「…………ゴッホカッター?」
「ゴッホさんの絵筆、ですね…………」
ゴッホカッター、もといゴッホちゃんの大きな向日葵の絵筆が落ちていた。
『やあマスター君。早速だが彼女を追いかけてくれないかい?』
「わ、ウィレム」
なんでこんなとこに、と思っていると絵筆から声。
ゴッホちゃんの宝具の仮想人格、ウィレムだ。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの人格の再現らしいけど。
「追いかけろって、どういうこと?」
『彼女が僕を落としてしまってね。別に彼女が霊基を変化させたら消えるし問題ないんだけど。彼女、随分追い詰められていてね』
「落とした? ゴッホちゃんが? いやその前に追い詰められた?」
『うんまあなんと言うか…………僕らしいというか…………いやなんでもない。簡単に説明すると、彼女はここで君たちの会話を盗み聞きしていたんだが…………一部しか聞き取れなくてね、君とマシュ君が付き合ってるのだと勘違いしてしまったんだ』
僕にとってはどうでも良いから彼女の勘違いだとすぐにわかったけど。とウィレムが言う。
『無論、直ぐに止めようとしたとも。しかし、聞く間もなく彼女が僕を落として走り去ってしまってね」
「…………何処に行ったの」
『うん?』
「ゴッホちゃんは、何処に行ったの」
ウィレムを持ち上げる。
『…………こっちだね』
向日葵の花が、レーダーのようにくるりと向きを変える。
その方向に向けて、走り出した。
「…………ひぐっ、えぐ…………っ」
まだわたしは泣いている。
宝具にすら見放され、ひとりぼっちのわたしはどうすれば良いのだろう。
いっそ死にたいけど、ひとりじゃわたしは死ねない。
むしろ、狂気を撒き散らしてしまう。
一人で死ぬことも出来ないなんて、なんて愚図。
取り柄の絵も、道具を失くしてしまった。
そんな風に泣いていると、ドタドタと足音が聞こえる。
足音はどんどん大きくなる。
どうやら、こちらに近づいてきているようだ。
「…………?」
気になって、顔を上げる。
すると、勢いよく扉が開けられた。
「…………………………ぅっ」
眩しい光が廊下からやってくる。
暗い部屋にいたせいで、眩しくてつい呻き声が出る。
「…………ゴッホちゃん! 大丈夫⁉︎」
そして、あり得るはずのない声が聞こえる。
「…………りっか、さま?」
そこに居たのは、わたしを嫌いなはずの──────立香様だった。
ウィレムの声に従って走り続け、ある部屋に辿り着く。
そこは、使われていない部屋だった。
鍵はかかってなく、勢いよく扉を開ける。
「…………ゴッホちゃん! 大丈夫⁉︎」
「…………りっか、さま?」
そこには、膝を抱えて泣いているゴッホちゃんがいた。
かなり長い時間泣いていたらしい、目が腫れている。
しかしそれ以外に外傷は無く、とりあえず無事らしい。
「良かった…………」
最悪の事態ではなかったことにとりあえず安堵する。
「なん、で──────」
ゴッホちゃんの声が部屋に響く。
「なんでって、そりゃキミのことが心配だからに決まってるじゃん」
「だって、りっかさまは、ゴッホのことを、きらいなはずでは…………」
「いや待って」
私とマシュが付き合うのはともかく、なんで私がゴッホちゃんのことを嫌いになるということになるのか。
こりゃもう迷ってる暇はないな、と思いゴッホちゃんの肩を掴んで目線を合わせる。
「へ…………りっかさま、なにを…………」
「ゴッホちゃん、よく聞いて。私はキミを、貴女を…………愛してる。ずっと一緒にいて欲しい。…………キミを嫌いなわけ、ないよ」
「え──────」
「ゴッホちゃん、よく聞いて。私はキミを、貴女を…………愛してる。ずっと一緒にいて欲しい。…………キミを嫌いなわけ、ないよ」
「え──────」
立香様の言葉に、頭が真っ白になる。
ゴッホのことを、立香様が愛してる。
ゴッホのことを愛してる。
嫌いじゃない。
そのまま惚けていると、立香様に頭を抱きしめられる。
「ハウッ…………」
「ほら、よく聞いて…………私の心臓、凄いドキドキしてる」
「…………………………」
押し付けられた立香様の胸に耳を当てる。
確かに、彼女の心臓はかなり速い鼓動を刻んでいた。
「嫌いな人に、こんなドキドキしないよ」
「…………でも、ゴッホはばけもので」
「知ってる。キミがクリュティエ=ヴァン・ゴッホって名前で、つぎはぎされた存在だって、ちゃんとわかってる。それに、キミのめんどくさいとこも凄いところも両方知ってる。その上で、好きなの」
「…………………………」
わたしを抱きしめる彼女の腕は温かく、心が溶けていく。
冷たい海の底から、明るい水面に、引き揚げられる。
「…………………………その」
「なに?」
「ゴッホは、めんどくさいです…………」
「そうだね」
「ゴッホは、ばけものです…………」
「うん」
「つぎはぎの、自分さえ不確かな存在で…………」
「わかってる」
「…………それでも、愛してくれるのですか?」
「当然。愛してる」
即答だった。
ここまで断定されると、ネガティブなわたしの心も信じざるを得ない。
彼女…………立香様が、この
その事実に、心が喜ぶ。
涙が消えていく。
「…………それで、ゴッホちゃんはどうなの? 私だけ言うってのも、ズルくない?」
「…………良いんですね? わたしは、しつこいですよ? 言わせても、良いんですか? もう離しませんよ?」
「うん」
彼女の態度に、確信する。
彼女はわたしを受け入れてくれると。
この化け物と、何処までも歩んできてくれると。
なら、わたしの答えも決まった。
手を伸ばし、お互いに身体を抱きしめる。
「…………わたしも、愛してます。貴女を愛してます。ずっとずっと…………一生、一緒にいたいです…………エヘヘ…………」
「…………うん。これからも、よろしくね、ゴッホちゃん」
「はい…………!」
そのまま、しばらくお互いの体温を感じていた。
はよゴッホちゃんPU来て