「何これ」
ちょっと早めに夕食を終えて、マイルームに入ると、何か大きな箱があった。見た目は無地の白色の箱で、細長い。少なくとも人が入ることの出来る大きさではないので、人やサーヴァントの皆が入っていないことは確実だ。側面をみると、これ見よがしに大きな矢印が書いてある。蓋を持ち上げろと書いてあるようだ。
「開けろってこと?あ、怪しい・・・・・・」
いかにも怪しくて、一人では開けたくない。うーん、どうしよう。
「とりあえず、誰か呼ぼうかな・・・・・・・」
そう思い、一旦部屋から出ようとする。すると、扉が何故か閉まっていて外に出ることが出来ない。鍵が掛かっているようだ。それならばと、マイルームの端末から誰かを呼ぼうとすると、端末の接続が切られているのか、何処にも繋がらない。客観的に言えば、
「閉じ込められた・・・・・・?」
途端に不安になる。少なくとも部屋に気配はなく、私一人きりなのは確かだ。つまり、ここは密室で、私は誰にも会えない。
「どうしよう・・・・・・」
思わずベッドに倒れ込む。とりあえず、状況を整理しよう。マイルームに入ると、謎の箱があって、気づいたら物理的にも電子的にも閉じ込められた。つまり、あの箱が原因なのは間違いないだろう。
「開けるしか、ないのかな・・・・・・」
正直、嫌だ。怪しすぎて何が起きるかわかったもんじゃないし。でも開けろってこれ見よがしにアピールしているし現在状況を動かせそうなのはアレくらいだ。数分ほど悩んで開けることを決意する。
「どうか変なものが出ませんように・・・・・・」
と、叶わない望みを思いながら箱を開ける。その中にはーーーーーーー
「ハロウィン・ロイヤリティ?」
意外にもそんな変なモノではなく、最近ハロウィンの騒動が起きる時着用している魔術礼装、ハロウィン・ロイヤリティが入ってた。でも、色が違う。形こそ一緒だけど、青と白を基調とするハロウィン・ロイヤリティと違って、こっちは黄と白、黒を基調としている。まるでーーーーーーー
「ゴッホちゃんみたいな色してるなぁ」
彼女を思い出すカラーリングだった。さしずめ、ゴッホ・ロイヤリティと言ったところだろうか。でも、魔術礼装のような力は感じず、ただ型を模した服みたい。触った感じ、生地はしっかりしていて、激しい動きにも耐えることは出来そう。
「これを着ろってこと?」
どうも私を閉じ込めた主は私にこれを着させたいらしい。着ないことには状況は好転しなさそうなので、渋々着てみることにする。
「・・・・・・うーん、やっぱりこの服着るのはちょっと恥ずかしいな」
この服はいかにも王子様って!感じの服で、改めて鏡で見ると、ちょっと気恥ずかしい。ハロウィンの時はそんなの気にする余裕ないんだけどさ。
「それで、来てみたけど?どうすれば良いのー?」
そんなことを言っていると、ドアが開く音がする。
「・・・・・・エヘヘ、失礼します。立香様。・・・・・・そのお格好は一体・・・・・・?」
「あ、ゴッホちゃん。いやなんか部屋に閉じ込められてさー。どうもこの服を着なきゃいけなかったみたいなんだ」
「・・・・・・それで、その服を着用したら、扉が開いて、ゴッホがやってきたと・・・・・・・」
「そんな感じだね。ゴッホちゃんは心当たりない?」
「いえ、ゴッホには皆目見当つかず・・・・・・申し訳ありません・・・・・・ウフフ・・・・・・」
「うーん、そっかぁ。じゃあ誰だろう?あ、そう言えばこの格好どう?似合ってる?個人的にはちょっと恥ずかしんだけど・・・・・・」
「!ええ、ええ、それはもちろん、とてもよく似合っておりますよ、立香様・・・・・・まるで王子様みたいで絵に納めたいくらいです・・・・・・ウフフ・・・・・・」
「そう?ゴッホちゃんが褒めてくれるなら、嬉しいな」
どうやら、ゴッホちゃんに心当たりは無いらしい。まあでもゴッホちゃんが喜んでるみたいだしこれはこれで良いのかもしれない。
「エヘヘ・・・・・・その、立香様、ちょっとスケッチしても良いでしょうか・・・・・・?その御姿を、肉眼にのみ収めるのはあまりに勿体無く・・・・・・」
「良いよー。ゴッホちゃんのお眼鏡に叶ったなら、喜んで」
「エヘヘ・・・・・・ゴッホ歓喜・・・・・・では、お願いします・・・・・・」
そうして、そもそも何故この服が送られてきたのかを忘れて、私達はいつも通り、二人の時間を過ごす。
彼女のモデルになって数時間後。スケッチが終わったのか、彼女が立ち上がる。
「完成したの?ゴッホちゃん」
「ええ、とりあえずの形は。後日、完成させて献上させていただきたいと思います」
「あはは・・・・・・」
正直、今でも恥ずかしいんだけど、恋人が描いてくれた絵は嬉しいモノなので複雑な気持ちで苦笑する。
「じゃあ、そろそろ出ようか。ちょっと部屋に篭り切りだったから外に出たくなっちゃった」
「エヘヘ・・・・・・そうですね・・・・・・では、外に出ましょうか・・・・・・あれ?」
「どうしたの、ゴッホちゃん?」
「その、ドアが開かず・・・・・・鍵をかけられているようで・・・・・・・」
「またぁ?今度は一体何が・・・・・・うん?」
ふとこの服が入ってた箱を見ると、小さな紙切れがある。
「何これ?えーと、『最近彼女と良い仲になっている立香ちゃんにプレゼントだ!その服を着て、いつもと違った一日を過ごそう!マスターの部屋にはその服を着て一日過ごさないと扉が開かないように細工をさせてもらったよ!あ、彼女だけは入れるようにしたけどね!では、良い一日を! ps 食事は適当なタイミングで出るようにしといたよ!ついでにその服は時間が来るまで脱げないけどそのまま寝ても疲れないし皺にもならない特別製だよ!byある親切な魔術師』?誰の仕業だろうこれ・・・・・・って本当に脱げない⁉︎」
「・・・・・・」
「ゴッホちゃん?」
書いてある通り本当に脱げなかったので焦ってると、彼女が妙な顔をしていたので尋ねてみる。
「・・・・・・あの、この魔術師様ですが、もしかしたら、ゴッホの知る魔術師様かもしれません」
「それって、この前の夢の世界の?」
「・・・・・・ええ、恐らく・・・・・・」
「それって、誰なの?いやなんとなくわかる気はするけど」
「・・・・・・すいません。絶対口にするなと言われていまして・・・・・・」
「うーん、じゃあしょうがないかぁ」
正直、こんなこと出来るのは恐らくあの人だろうけど確証が無い以上無闇に疑うのは良くないので一旦忘れることにする。
「一旦この魔術師のことは置いといて、出るためにはどうすれば良いんだろう?いつもと違った一日かぁ・・・・・・うーん。あ、そうだ。ゴッホちゃんゴッホちゃん」
「?何でしょう、立香様ーーーーーーーーーーーーーー⁉︎」
「我が姫よーーーーーーー」
彼女に跪いて、手の甲にキスをしてみた。
「りりり立香様、いいいい一体何を⁉︎」
「この服を着て、いつもと違う一日ってなると王子様とお姫様かなぁって思ってさ。ちょっとそれっぽいことを、ね?」
「そ、それにしても、刺激が強すぎます・・・・・・!」
「あはは、ごめんごめん。それで、どうだった?この方向でいく?それともやめておく?」
「・・・・・・それは、その。いつもと違った雰囲気の立香様にゴッホ、胸の高鳴りが止まりません・・・・・・!どうか、このままで!ぷりーず!」
「ーーーーーーーわかったよ、『僕』のかわいいお姫様?それじゃあ、一緒にベッドに行こう。『僕』達にとって、この部屋は狭すぎる。魔術師くん!どうせみているんだろう、『僕』と彼女の夢をまた繋いでくれないかな!」
そう言って、彼女を持ち上げる。いわゆる、お姫様抱っこという体勢だ。彼女の顔が一瞬で紅く染まる。
「ハウッ⁉︎こ、これはお姫様抱っこ・・・・・・⁉︎」
「君は『僕』のかわいいかわいいお姫様だ。これくらい君の王子として当然だろう?」
「・・・・・・エヘヘ・・・・・・嬉しい・・・・・・ゴッホ狂喜・・・・・・」
そしてベッドに向かい、優しく彼女を降ろす。
「さあ、一緒に夢の世界へ行こう。夢で、たっぷり愛してあげるからね・・・・・・」
「エヘヘ・・・・・・眠れそうにないです・・・・・・ウフフ・・・・・・・」
そうして、いつものようにお互い抱き合ってベッドに横になり、私達の意識は夢の世界へと落ちて行った。
自分の中の型月の王子様キャライメージは妖精騎士ランスロットとオベロンとローランなんで多分3名が混ざった感じの王子様になります。