空条承太郎の友人~番外編~   作:herz

1 / 14


・プッチ視点。

・キャラ崩壊あり。神父がもはや別人になっているかもしれません。

・スタンド、ホワイトスネイクについて捏造、オリジナル設定あり。ご都合主義、捏造過多。




 もしかすると――今世のこの世界こそが、本当の"天国"なのかもしれない。

(……なんて、な。それはさすがに、言い過ぎだろうか?)




エンリコ・プッチに、後悔は無い

 

 

 

 その日。SPW財団から依頼された仕事を終えた私は、帰宅途中に小さな教会を見つけて、ふらりと立ち寄った。

 今世でも神父として生きているが故の、ただの気まぐれだったのだが……その先で、とある少年と遭遇する。

 

 彼は、聖堂に続く扉の前に佇んでいた。身長は私よりも少し低い程度だが、その背中は何故か異様に小さく見える。……彼が纏う空気が、私にそう見せていたのだ。

 彼は扉にゆっくりと手を伸ばし……そしてすぐに引っ込めた。中に入る事を躊躇っている?

 

 

「……そこの君、」

 

「――っ!?」

 

 

 思わず後ろから声を掛けると、彼は大袈裟な程に体を震わせ、こちらにばっと振り向いた。その目を見て、私は驚く。

 目付きが悪い。非常に、悪い。……だが、その瞳は不安と怯えで揺れている。

 

 

「驚かせてすまなかった。中に入るのを躊躇っていたようだから、思わず声を掛けてしまったんだが……」

 

「…………この教会の、神父さん?」

 

「……いや。ここには、たまたま立ち寄っただけでね。普段は別の場所で神父を勤めている者だ」

 

 

 そう言うと、彼は警戒を解いたのか、安堵のため息をつく。……それから、気まずそうに口を開いた。

 

 

「……あの、……突然、すみません。聞きたい事があるんですけど……いいですか?」

 

「あぁ、構わないよ」

 

「ありがとうございます。……その、ここで祈りたい場合は、キリスト教徒ではないと駄目ですか?」

 

「いいや。そんな事は無い。教会は、今を生きる人達全員のために開かれている場所だ。君が祈る事も許されるだろう」

 

「――神を、信じていなくても……?」

 

 

 一瞬、前世の時のように素数を数えそうになったが、我に返って止めた。今世ではもうやらないと決めている。

 

 

「……君を責める訳ではないが、聞かせてくれ。神を信じていないのに、何故ここに祈りに来たんだ?」

 

「……神ではなく、亡くなった母と、祖母に祈りを捧げたいと、思って……」

 

「ふむ……」

 

 

 伏し目になり、胸元を強く握るその仕草から、強い悲しみを感じる。……どうやら、何か訳ありのようだな。

 

 

「……良かったら、私にその理由を聞かせてくれないか?それ次第で、答えが変わるかもしれない」

 

「…………全ては、話せませんが……それでもいいですか?」

 

「もちろんだ。君が話せるところまでで構わない。……そうだな。向こうのベンチにでも座ろうか」

 

 

 教会の扉から少し離れた場所にあるベンチまで移動し、そこに座って少年の話を聞いた。

 

 

 地元から離れ、1人暮らしを始めたばかり。……訳あって父親に恐怖心を抱いており、父親がいる地元から逃げ出した事。

 亡くなった母と祖母がキリスト教徒で、今日は祖母の命日。……しかし、母と祖母が眠っている墓は地元にあり、地元に行くと父親に関する記憶が甦るため、墓参りに行きたくても行けない。

 

 だから。墓参りの代わりに、そこから離れた場所にあるこの教会で、母と祖母に祈りを捧げたいと思った。

 

 

「なるほど……ところで、君が神を信じていない理由は何かな?どんな理由でも構わないから、正直に言ってみて欲しい」

 

「…………母が、」

 

「君のお母様?」

 

「はい。……母はずっと、神を信じていた。きっと、死ぬ間際まで信じていた。それなのに――神は母を助けてくれなかった。

 いつも真剣に祈っていたのに、母がずっと信じていたのに……肝心な時に、助けてくれなかった。

 

 こんな考え、傲慢というか、烏滸がましいのは分かってます。都合が良過ぎる考えだと。

 でも……でも、あんなに神を信じていた母のために、ほんの少しでも何かしてくれても良かったんじゃないかって、どうしても、そう思ってしまうんです。

 

 だから俺は、神を信じない。結局、何があっても俺が自分でなんとかしなければいけないんだ。でも……いつも俺を助けてくれた母や、母が慕っていた祖母の事は、信じている。

 神に祈りは捧げませんが、母と祖母に対してなら、俺はいくらでも祈ります」

 

「――――」

 

 

 彼の言葉に、思うところがあった。……今世では今も生きているが、前世で亡くした妹の事だ。

 妹を亡くした時。妹を助けてくれなかった神に対して、ほんの一瞬だが、彼と似たような思いを抱いた事もあった。……呪われるべきなのは、この私だったのだが。

 

 

「……なんて、母に助けられてばかりで、何もできなかった俺が言える事では無いですね。自分が母を助けられなかったから、神にその責任を押し付けて、自分が楽になろうとしているだけ……」

 

「…………」

 

「あのクソ野郎に怯えて、震えるだけだった俺を、母さんはずっと守ってくれた。俺は何もできなかった。クソ野郎のせいでボロボロになった母さんに、泣いてすがる事しかできなかった。

 ……遺書には、幸せに生きて欲しいとか書いてあったけど――母さんを護れなかった俺に、幸せに生きて良い資格なんて無い……!」

 

「……少年」

 

「っ、あ、」

 

 

 顔を上げた少年の表情は青ざめていて、おそらく、そこまで話すつもりはなかったのだろうと、察する事ができた。

 

 

「す、すみません。今日会ったばかりの人に、下らない話を聞かせてしまいました」

 

「……いや、下らない話では無いよ。下らないなんて、そんな事は思えない。……それよりも、君がここで祈っていいのかどうか、という話だったな」

 

「あ、はい……」

 

 

 あえて深くは触れず、話題を変えた。

 

 

「そういう理由であれば、教会で祈りを捧げても問題無いだろう。君は神を信じていないが、神を冒涜する意思は無い……そうだね?」

 

「はい、もちろんです。俺は信じていないけど、母と祖母は信じているから、それを貶すような真似はしたくない」

 

「よろしい。……そうだ。君の名前を聞かせてもらっても良いかな?」

 

「園原志人です」

 

「では、志人君。……神の御許に召された君のお母様とお婆様が、安らかな眠りにつかれるよう、心から祈らせてもらうよ」

 

「……ありがとうございます、神父さん。……神父さんの名前も、聞いていいですか?」

 

「エンリコ・プッチだ。……しかし、とても残念だが、聞いても無駄になってしまうね」

 

 

 そう言って、――スタンドを出現させる。

 

 

「今から、君と私の出会いは"無かった事"になる」

 

「え、」

 

「――ホワイトスネイク」

 

 

 ……スタンドの能力を発動し、私に関する記憶のDISCを抜き取り、それから記憶の改竄を行う。今日、私と出会った事を無かった事にした。

 ベンチで意識を失っている彼から離れ、物陰に隠れて彼が目覚めるまで見守る。……やがて目を覚ました彼は、何事も無かったかのように教会の聖堂へ向かった。

 

 志人君が最後に話した事は、面識の無い私が聞いていい事ではなかった。彼も誰かに話したくなかったはずだ。……ならば、私と出会った事自体を無かった事にしてやればいい。

 あの話から察するに、彼と彼の母親は、彼の父親から暴力を――おっと。余計な詮索もしない方がいいな。家庭内暴力には腹が立つが。

 

 

(……さて。職場に戻ったら、彼の母と祖母のためにも祈るとするか)

 

 

 

 

 

 

 ――そんな、去年の出来事を思い出したのは、あるスタンド使いの記憶を見た時だった。

 

 

 今世で再会し、再び友人になる事ができたDIO……いや、ディオからの依頼で、あるスタンド使いの記憶DISCとスタンドDISCを抜く事になった。

 そのスタンド使いは、ジョースター家の人間とその仲間達が通う学校で事件を起こし、彼らによって捕えられた、火宮幸恵という女子高生。

 

 彼女が持つスタンドは、人と人の縁を切る能力を持つ。……使い方次第では、かなり危険なスタンドだ。確かに、このスタンドは抜き取った方がいいな。

 

 前世では、スタンドDISCを抜き取られた人間はやがて死ぬ運命にあった。

 しかし、今世で試行錯誤を繰り返した結果。スタンドDISCを抜き取った後に、その代わりとなるDISCを入れる事で、その人間の死を防ぐ事が可能となった。

 

 その仮のDISCは、スタンドが含まれていない、ただの生命力の塊。つまり、死にはしないがスタンド能力を永遠に失う事になる。

 あとは、対象からスタンドに関する記憶や前世の記憶を抜き取り、記憶を改竄してしまえば、最後に残るのはごく普通の一般人だという記憶のみ。

 

 だが今回。それと同時に他にも抜き取って欲しい記憶があると、ディオは言う。詳しくは彼女の記憶を抜き取り、それを見た後に説明してくれるらしい。

 

 

 それを実行する日に、財団の東京支部でディオともう1人の人物を待つ。

 

 

「プッチ。待たせたな」

 

「やぁ、プッチ。今日はよろしく」

 

「そこまで待ってないよ、ディオ。――よろしく、ジョナサン」

 

 

 前世ではディオの宿敵だった、ジョナサン・ジョースター。……今世では、ディオと私の友人である。

 

 我々は、前世の因縁を忘れた訳では無い。だが、その因縁を今世にまで持ち込みたくないと考えている。その考えが一致したおかげで、友人として上手く付き合う事ができていた。

 財団の一部の人間は、我々の関係を良く思っていないそうだが、表立って邪魔をしないようなら、どうでもいい。

 

 万が一。余計な真似をするようなら、私もディオもジョナサンも、それ相応の措置を取ると決めているが。

 

 

 3人揃ったので、例のスタンド使いが拘束されているという場所に向かった。そこで財団の職員数名の立ち会いのもと、まずは記憶DISCを抜き取った。

 抜き取る前にスタンド使いの少女が何やら喚いていたが、それはさて置き。

 

 

「とりあえず、プッチが先に記憶を見てくれ。その後に俺達も見る」

 

「分かった」

 

 

 さっそく自分の頭にDISCを挿入し、その記憶を見て――素数を数えたくなって、即座に止めた。

 

 

(…………志人君?)

 

 

 少女の人生はなかなか衝撃的だったが、それよりも去年、教会で出会ったあの少年が出て来た事に驚愕する。

 見た目は前髪を下ろして眼鏡を掛けていて、雰囲気も変わっていたから最初は気づかなかったが、周囲の人間が園原志人と呼んでいたため、そのおかげで気づいた。

 

 志人君がスタンド使いだった事。……去年出会った時は、そうではなかったはずだ。彼はスタンドが見えていなかった。では、いつ前世を思い出してスタンド使いになったのだ?

 この少女が、志人君のストーカーだった事。……妙な勘違いをして彼に危害を加えた件については、怒りを覚える。

 

 そして――空条承太郎。……志人君とは相当仲が良いらしい。それに、前世ではディオの息子だったというジョルノ・ジョバァーナも。

 しかし、前世で見た承太郎の記憶の中に、志人君はいなかった。……今世で出会い、友人になったのだろうか?

 

 

「……プッチ?」

 

「大丈夫?」

 

「っ!!……すまない。彼女の記憶がなかなか衝撃的だったから、驚いていたんだ。……何故こうも斜め上の行動に出たのか、と」

 

「あぁ……なるほどね。僕達もジョルノや承太郎から聞いたけど、彼女は……まぁ、うん。いろいろあれ(・・)だったみたいだから」

 

「その斜め上の行動を、実際に見せてもらうとするか。次は俺に貸してくれ」

 

「どうぞ」

 

 

 驚いた本当の理由は志人君の事だが、それを隠して別の理由を話せば、納得してくれたようだ。

 

 ディオが少女の記憶を見て……眉間にシワを寄せ、こめかみを押さえた。そうしたくなる気持ちは、よく分かる。

 続いて、ジョナサンもその記憶を見ると……こちらは何故か、笑顔で怒っているようだ。落ち着きなさい。

 

 

「女の子じゃなかったら、一発ぶん殴ってるところだよ」

 

「おそらく俺もそうしていただろうが、落ち着けジョナサン。……そもそも、女では無い奴が園原のストーカーをしていたらもっとあれ(・・)だろ」

 

「あ、それもそうか」

 

 

 ディオのおかげでジョナサンが落ち着いたので、本題に入る。

 

 

「スタンド使いに関する記憶や、前世の記憶以外でプッチに抜き取って欲しい記憶というのが、この女が執着している相手……園原志人に関する記憶だ」

 

「既に学校から退学させたし、彼に関わる事は無いと思うんだけど……彼女がいつまでも志人君に未練を持っているのは気に入らないから、いっその事記憶を抜いてもらおうと思ってね」

 

「万が一、園原と接触してしまった時にまたストーカーになられても面倒だからな。……彼がこんな女に執着されたままというのも癪に障る。綺麗さっぱり、消し去ってくれ」

 

「それは構わないが……」

 

 

 珍しいな。……どうやら、この2人は志人君に入れ込んでいるらしい。ディオとジョナサンにそこまでさせる程の何かが、志人君の中にある?

 

 

「……園原志人という人物は、どんな人間なんだ?記憶を見る限り、あの承太郎とも気安い仲のようだが」

 

「そうだね。まずは、彼の事を話そうか」

 

 

 ……最初に聞いて驚いたのは、志人君が今世の承太郎の親友だという事。彼らは、志人君が前世の記憶を取り戻す前から友人同士だったという。

 

 志人君は、今年に入ってとあるスタンド使いの事件に巻き込まれた結果。土壇場でスタンドを発現させた。

 まるで、神話の天使のようなスタンドだったな。神を信じていない彼が、そんな見た目のスタンドを持つ事になるとは……

 

 前世の志人君は、東方仗助の知り合い。しかし、スタンド使いではなかった。……例の矢が刺さった事で死んでしまったが、今世ではスタンドを発現させたという、珍しい例だったらしい。

 前世の記憶を取り戻して以来。ジョースター家との関係が深く、今では身内同然の関係だとか。……母と祖母を亡くした彼に新たな家族ができたようで、何よりだ。

 

 なるほど。ディオとジョナサンが志人君を気に入っているのは、そのせいか。

 

 

「話は分かった。そういう事なら、指定された記憶もしっかり消しておこう」

 

 

 まず。スタンドDISCを抜き取り、その代わりとなるDISCを差し込む。

 次に、スタンドに関する記憶、前世の記憶、それから志人君に関する記憶を抜き取り、違和感が無いように記憶を改竄した。……これで、次に目覚めた時から彼女は普通の一般人となる。

 

 彼女の事は財団の職員達に任せて、3人でその場を後にした。

 

 

「……プッチ。良かったら、これから一緒に夕食を食べに行かないか?今日の仕事の礼に奢ってやるぞ」

 

「夕食を食べに行くのは喜んで。だが、奢りは必要ないよ。普通に食事を楽しもう」

 

「ありがとう、ディオ!ご馳走になるね!」

 

「誰がお前の分まで払うと言った?そっちは自分で何とかしろ」

 

「えー?ディオのケチ」

 

「ケチ?ケチだとジョジョ貴様言わせておけば、」

 

「こらこら、2人共。程々にしなさい」

 

 

 ディオはジョナサンが相手となると、急に煽り耐性が低くなる。

 ジョナサンはそれが分かっていて揶揄するし、ディオもそれを理解しながら、彼との言い争いを少々楽しんでいる節があるから、困ったものだ。

 

 

 地上へと続くエレベーターに乗り……やがて扉が開き、外に出ると、

 

 

「――っ!!」

 

「うお、ちょ、っ!?」

 

 

 …………予想外の遭遇だった。相手の強い警戒心が伝わってくる。彼は私と目が合った瞬間、共にいたもう1人を背中に隠し、身構えた。

 

 

「やぁ承太郎、志人君!偶然だね」

 

「財団の仕事の帰りか?」

 

「…………あぁ、そうだ」

 

「こんばんはジョナサン、ディオさん……と……?」

 

 

 警戒を解かない承太郎に対し、ジョナサンとディオは怯まず話しかける。それに毒気を抜かれたのか、彼は少し力を抜いた。

 そして。彼の後ろから顔を出し、2人に挨拶した志人君が、私を見て目を見開き……ややあって承太郎と私を交互に見る。

 

 

「承太郎。もしかして、彼は……」

 

「……お前の想像通りだぜ、シド。そいつがエンリコ・プッチ神父……前世の俺や徐倫と、因縁がある男だ」

 

 

 志人君は、承太郎から前世の私の話を聞いていたらしい。……残念だが、これで彼と仲良く話せる機会は失われてしまったな。

 前世の私が、周りから見れば"悪"だったという事は、既に自覚している。彼もきっと、そう判断するだろう。

 

 

「ふーん――初めまして、プッチ神父。承太郎の友人の、園原志人です。どうぞよろしく」

 

 

 私に向かって、人好きのする笑みを浮かべ、柔らかく挨拶する志人君。…………おや?

 

 

「っ、おいシド!」

 

「んん?」

 

「てめー、なに普通に挨拶してんだよ。俺の前世の話は聞いただろ!?」

 

「聞いたけど……プッチさん、そんなに悪そうな人には見えねぇし」

 

「…………お前の目には、そう見えたのか」

 

「あぁ」

 

 

 悪そうな人には見えない。……私が?

 

 

「プッチさんもそうだけど、ディオさんとジョナサンの雰囲気は、ちょっと気が抜けてるみたいだし。この人達、結構気安い仲なのかな、と思ったんだよ」

 

「……ほう」

 

「それから客観的に考えると、本当に警戒すべき相手なら、ディオさんとジョナサンが彼と一緒のエレベーターに乗るはずがねぇなと思った。

 エレベーターは密室だろ?プッチさんが承太郎の言う通りの危険人物のままだったら、そんな人と一緒に、いざという時逃げられない場所に仲良く入るか?」

 

「……いや。入らないな、普通」

 

「それに、お前がそんなに警戒してんのに、プッチさんの方は全然敵意が無いだろ?」

 

「…………確かに、そうだな」

 

 

 決して勘だけで判断したのではなく、冷静に状況を見た結果のようだな。あの少女の記憶を見た時も思ったが、彼は相当聡い。

 志人君の考えを聞き、徐々に落ち着いていった承太郎も、今ではすっかり冷静だ。私を見てから帽子を深く被り、そっぽを向く。

 

 

「……変に警戒して、悪かったな」

 

 

 その言葉が私への謝罪なのだと気づいた時、驚愕した。あの承太郎が、私に謝った……?

 

 

「おお、今回は自分から謝ったな。偉い偉い」

 

「シド、お前。この俺を馬鹿にしてんのか?俺だってそれぐらいはできる」

 

「じゃあディオさんの時もさっさとそうしろよ」

 

「ぐっ」

 

「はっはっは。言われてしまったなァ?承太郎」

 

「てめーにだけは言われたくねえ!」

 

「まぁまぁ承太郎。落ち着いて?ディオなんて気にしないでいいからね?本当ならこいつへの謝罪もいらなかったんじゃないかな」

 

「何だと、ジョナサン」

 

「ジョナサン。ディオさんを煽らないでください」

 

 

 私の予想以上に、彼らは仲が良いらしい。承太郎とディオのやり取りも、ごく普通の……家族同士のやり取りに見える。

 

 ……それにしても、

 

 

(――去年、ずっと何かに怯えていた少年の面影は、もう何処にも無い)

 

 

 志人君は今も、楽しそうに笑っている。……心底安心したら、自然と口元が緩んだ。

 

 

 その時。ふと、こちらに振り向いた志人君が、私を二度見する。

 

 

「……園原?どうした?」

 

「いや。プッチさんがこっち見て超優しい顔で笑ってたので、つい、」

 

「何っ!?」

 

「えっ!?」

 

「あ、引っ込んじゃった」

 

 

 ディオとジョナサンが勢いよく振り向くのに驚いていたら、次の瞬間には2人に詰め寄られていた。何だ何だ。

 

 

「貴様、今世ではほとんど笑わなくなったと思えば、そんな顔ができたのか!?」

 

「ちょっと、僕達にも見せてよ!」

 

「そう言われても……こちらはどの顔なのかが分からないから、見せようが無いのだが」

 

「えー!?もう、志人君!その瞬間をちゃんと撮って置いてよ!」

 

「そうだぞ、園原。この男の笑顔はレアなんだ」

 

「無茶言うなよ、あんた達」

 

「……やれやれだぜ」

 

 

 子供のような事を言う私の友人達と、彼らに呆れる志人君と承太郎。……前世のような確執は、もう無いらしい。

 

 前世で私が求めた、"天国"。あれが実現していたら、この光景を見る事はできなかっただろう。

 前世の行いを後悔した事は無い。あれもまた、私の人生だからな。……だが彼らを見ていると、我ながら無責任だが、あの時の私を止める者がいてくれて良かったと思う。

 

 

 もしかすると――今世のこの世界こそが、本当の"天国"なのかもしれない。

 

 

(……なんて、な。それはさすがに、言い過ぎだろうか?)

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。