空条承太郎の友人~番外編~   作:herz

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【こちらのお話は承太郎の友人シリーズ本編と、原作介入編を読了後にご覧ください。また、下の注意書きは必読です!】


・ハーメルンの読者様からのリクエストを元に書いた話

・ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊が非常に激しいので注意。それから、念のために書いておきますが、not腐向けです

・「空条承太郎の友人」、「空条承太郎の友人〜原作介入〜」それぞれのシリーズの最終回後の話

・混部時空の親友組と、原作時空の博士&助手組が夢の中で出会う(ただし、目覚めた後は夢の内容を忘れている)

・混部時空の男主と原作時空の男主との間で、視点がコロコロ変わります




親友組と、博士&助手組〜出会うはずがなかった4人〜【前編】

 

 

 ――目を覚ますと、俺は何故か冷たい床の上で横になっていた。……今日は自宅のベッドでちゃんと眠ったはずなのに、なんで?

 

 

「……シド?」

 

 

 呼ばれて振り向くと、俺の隣には承太郎がいた。こいつも俺と同じように床で横になっていたらしく、ちょうど体を起こしたところだったようだ。

 承太郎はこちらを見てきょとんとした顔を見せたが……次の瞬間。俺の後ろに視線を移して血相を変えると、俺の腕を引いて無理やり引き寄せた。

 

 

「ちょっ、何だよ!?」

 

 

 

 

 

 

「――何者だ、貴様ら……」

 

「俺達と同じ顔……スタンド能力か……!?」

 

「……えっ?」

 

 

 後ろから2人の男の声が聞こえて、振り向く。……そこにはどういう訳か、俺と承太郎と同じ顔をした人間がいた。しかも、

 

 

(イージス!?)

 

 

 俺と同じ顔をした人間の背後には、俺のスタンドであるイージスの姿があった。それに、彼らを囲むバリアまで張っている!

 その状況に対して混乱した俺は、思わず声に出して改めてイージスを呼んだ。

 

 

「っ、イージスホワイト!!」

 

「はいはい、ここにいるよ!」

 

「うぇっ!?」

 

「「「は?」」」

 

「おやおや……?」

 

 

 ……すると、何故か。俺の背後にもイージスが現れた。

 これには俺だけでなく、向こうの俺と承太郎と同じ顔の人間も、向こうにいるイージスも、未だに俺を引き寄せたままの承太郎も揃って驚いている。

 

 

 え?これは、つまり……どういう事だっ!?

 

 

「…………い、イージス?お前は、俺だけのスタンド、だよな……?」

 

「う、うん……そのはず、だけど……?」

 

「じゃあ何で向こうにもお前がいるんだ??」

 

「知らないよ??」

 

「デスヨネー……」

 

 

 俺の後ろにいるイージスと顔を見合わせ、そんな問答をしていると……視界の端で、何かが強い光を放った。

 はっと顔を上げた先の真っ白な壁には、大きな扉があった。そしてその扉の上の壁が光っていて……やがて光が収まると、そこに文章が現れる。

 

 

 

 

 

 

 ――嘘偽りなく15回質疑応答しないと出られない部屋

 

 

 

 

 

 

(――――なるほど、状況はよく分かった)

 

 

 となれば、今すべき事は敵対ではなく協力だ。

 

 

 改めて、向こうにいる俺達と同じ顔の彼らを見る。……冷静に観察すると、彼らは俺達と全く同じという訳ではない。

 服装が違うし、彼らの姿は俺達よりもかなり成長しているように見える。そして何よりも、

 

 

(向こうの承太郎がどう見ても原作6部時点の承太郎にしか見えない……)

 

 

 俺が今考えている予想が、当たっている可能性が高い。……向こうの俺もこっちを観察している。なんとなくだが彼も、俺と似たような事を考えているような気がするな……

 そうだと信じて、それからこの部屋の仕様について確かめるためにも、向こうの俺に対してこう聞いてみる事にした。ついでに、なんとなく片手を上げてみる。

 

 

「はい!質問その1!」

 

「っ、おい、シド!?」

 

 

 こっちの承太郎が俺を止めようとしたが、内心で謝って構わず質問した。

 

 

「こっちは今20✕✕年3月だが、そっちは今何年何月だ?」

 

「!!」

 

「20✕✕年……!?随分先の未来だぞ!?」

 

 

 向こうの俺とイージスが息を呑み、向こうの承太郎は信じられないといった様子でそう言った。……やっぱりな。

 

 

「…………俺達の方は、2012年3月だ。……ちなみに――あと数日で、4月に入る」

 

「!!」

 

 

 向こうの俺の回答を聞いて、今度はこちらが息を呑んだ。

 

 

 目の前にいる、6部時点の承太郎。向こうは今2012年3月……さらに、あと数日で4月になる、だと?そんなの、確定じゃねぇか!!

 

 

(原作軸!しかも原作6部が終わった後だっ!!)

 

 

 生きてる。承太郎が、原作の世界で生き残ったんだ!!生きてる!……生きてる……っ!!

 

 

「――――っ……!!」

 

「志人!?どうした、何故泣く!?」

 

 

 片手で口を押さえて、嗚咽する。……耐えられなかった。ボロボロ泣いた。

 前々世の最推しが、今世の大事な親友が!原作軸で生き残って今まさに目の前にいるという事実に感情が高ぶって、涙が、止まらない……っ!!

 

 

 隣にいる承太郎が慌てている。向こうの俺達もイージスも驚いてるけど、ごめん、今答えられる余裕ない……!

 こっちのイージス、説明任せた!!前々世の事は隠して上手く説明してくれ!

 

 

「しょうがないなぁ、もう……」

 

「イージス?」

 

「……あのね、こっちの承太郎。まず、向こうにいる俺達とそっくりな人達は……おそらく、前世の俺達だ」

 

「はあ!?」

 

「承太郎だって、見覚えないかな?……杜王町で早々に死んでしまった志人には当然見覚えないけど、向こうの承太郎の姿は、生前の君の姿そのものだったりしない?」

 

「!!…………それ、は……」

 

「……やっぱり、そうなんだね。……こっちの志人はその可能性に思い至ったからこそ、向こうの俺達に今何年何月なのかと聞いたんだ。

 そして、向こうの志人はこう言った……2012年3月……あと数日で4月に入る、と」

 

「――――」

 

「つまり……2012年3月21日を、前世の承太郎達の命日を乗り越えて……今、彼らは生きている」

 

「――――」

 

 

 承太郎も、ようやく状況を理解したのだろう。こっちは泣き止もうと必死だから見えないが、頭上で聞こえる声が震えているのは分かった。

 

 

「おい、そっちの俺……」

 

「何だ?」

 

「1つだけ、聞く……徐倫は、無事か?」

 

「…………ああ。無事だ」

 

「――――そうか……」

 

 

 承太郎が、そう呟いた。しかしその一言にはきっと、万感の思いが籠められている。

 

 

 ……その後。俺の肩を強く引き寄せて、そのまま頭を撫でて慰めてくれる彼の手は……先程聞こえた声と同じく、震えていた。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「…………承太郎さん」

 

「ん?」

 

「――“原作”について、彼らには何も言わないようにしてくれ」

 

「…………向こうの志人は?」

 

「……あの反応からして、知っている可能性は高い……だが、向こうの承太郎さんにはおそらく何も言っていないはず……」

 

「なるほど……分かった。黙っておこう」

 

「あぁ、頼む」

 

 

 向こうの俺が泣き止む前に、念のためイージスのバリアに一時的に防音効果を付与してから、こっちの承太郎にそうお願いした。

 彼が本当に別世界の俺なのだとしたら、そうする必要がない限り、原作について承太郎に明かす事は一生無いだろう……“俺”は、そういう人間だから。

 

 

(にしても……前世、か……)

 

 

 向こうのイージスは、確かにそう言ってたよな?しかも向こうの俺は杜王町で早々に死んでしまった、と。さらに向こうの承太郎は……

 って、段々面倒になってきたぞ?……そうだな、せめて向こうの承太郎の事を“空条”と呼んで区別を付ける事にするか。で、こっちの承太郎の事はいつも通りに呼べばいい。

 

 さて、空条について。彼は向こうのイージスの話を、ごく普通に受け止めていた……前世云々の話は、向こうにとっては当たり前だという事か。

 だがそれでも、“俺”の事だから“ジョジョの奇妙な冒険”についてはさすがに明かしていない……と、思う。そういう前提で、今後も原作の話はしないようにしよう。

 

 

 しばらくして向こうの俺が泣き止んだため、さっそく互いの現状を確認し合う事に。

 

 

「――で、前世でプッチ神父に殺された後、今の世界にその時の記憶を持ったまま転生した、と?

 そしてスタンド能力も前世と変わりなく……いや、むしろ若返ったからこそ全盛期と同等、あるいはそれ以上の力を発揮している……?」

 

「……ああ、そうだ」

 

「他にも前世から記憶を持ったまま転生した奴が大勢いて?

 でもそっちの俺だけは前世で例の矢が刺さって死んだにも関わらず、今の世界で新たにスタンド使いになった……?マジで??」

 

「そうそう、マジです」

 

 

 まず、向こうの俺達から簡単に現状を説明してもらったのだが……なんかとんでもない事になってた。

 

 その話から察するに、どうやら空条は6部の原作通りの結末を迎えて死亡し、そして前世の記憶を持ったまま今の世界……混部世界に転生したようだ。

 さらに。向こうの俺は原作世界で形兆が使った例の矢によって死亡した後に、混部世界に転生。後にスタンド使いとして目覚め、その際に前世の記憶を取り戻した……

 

 となると、向こうの俺にとっては“園原志人”になる前の記憶は前々世の記憶って事になるのか?ややこしいな!?

 

 

「そっちの俺は死なずに済んだのか……で、アメリカに移住して財団に就職?へぇ……」

 

「……しかも、そっちの志人……“園原”はプッチ神父との戦いにも参加して、そっちの俺や徐倫達と共に奴を倒して生き残った、と……俺達の前世とは随分と展開が違うな」

 

 

 次に、俺達の現状についても軽く説明すると、向こうからはそんな反応が返って来た。

 なお。俺が園原と呼ばれたのは、俺が向こうの承太郎の事を空条と呼んでいるのと同じく、互いの存在に区別を付けるためだ。

 

 ちなみに、向こうの俺はこっちの承太郎の事を“空条さん”と呼び、こっちの承太郎は向こうの俺の事を“園原君”と呼んでいる。

 正直に言って互いに違和感しかないが、区別を付けるために仕方なくそう呼び合う事になった。

 

 

 ……とまぁ、そんな風に話し合っているうちに互いに敵ではない事がはっきりと分かったので、俺と向こうの俺は既にそれぞれバリアは解いたしスタンドもしまっている。

 そして。この奇妙な部屋から脱出するために、協力し合う事になったのだが……

 

 

「とりあえず、壁を殴るぜ」

 

「おう」

 

 

 そう言って脳筋……ではなく、力自慢のダブル承太郎がスタープラチナをダブル召喚して部屋の壁に向かってダブルオラオララッシュ!!当然、壁は粉々に――

 

 

「な……何ッ!?」

 

「なんだ、この壁……硬過ぎるぞッ!?」

 

 

 ――なりませんでした。……うん、想定内。

 

 

「◯◯しないと出られない部屋って、実在したんだなぁ……」

 

「そうだな……しかも実際にそこに閉じ込められる事になるとは夢にも思わなかったわ」

 

 

 ……そういや、これって夢の中の出来事なのか?それとも現実か?

 

 今日はあの慰労会の後に承太郎と一緒にホテルの客室に戻って、それから互いに早めに眠ったはずなんだが……ふと目を開けたらこんな所にいた。

 夢にしてはリアル過ぎるが、現実にしては危機感がまるで感じられないし……脱出の条件が無理難題では無かったおかげか?……うーん、よく分からん。

 

 

 それはさておき。……向こうの俺と共に遠い目でそんな話をしていると、承太郎達が振り向いた。

 

 

「◯◯しないと出られない部屋……?」

 

「……何だ、それは?」

 

「あー……簡単に説明すると、漫画やアニメ好きのオタクの間で割と有名なネタ?です」

 

「その部屋で指定された条件をクリアしない限り、どんな事をやっても脱出は不可能……と言われている」

 

「指定された条件……」

 

「……あれか?」

 

 

 空条が指差した先にあるのは、ここに閉じ込められた当初からあった大きな扉……その上に先ほど浮かび上がった文章。

 “嘘偽りなく15回質疑応答しないと出られない部屋”。そう、あれがその条件で間違いないはず……って、あれ?

 

 

「……なぁ、そっちの俺。あの数字、さっき見た時もあったか?」

 

「いや……無かったと思う」

 

 

 いつの間にか。扉の上には文章だけでなく、何かの数字も浮かび上がっていた。右側に1、左側に0……そんな数字が出ている。

 

 

「……条件の内容からして、あの数字は質問数と回答数をカウントした物か?」

 

「……そうだとしたら、おかしいぞ。俺達は互いの現状を確認している最中に、数回程度だが質問と回答を繰り返していたはずだ……数が合わねえ」

 

 

 承太郎達の言う通りだ。あれでは数が合っていない。それに、あれだけではどれが質問数のカウントで、どれが回答数のカウントなのかが分からない。

 

 

 いろいろ試してみるしかない、か……んん?いや、待てよ?

 

 

「そっちの俺。さっき俺達に今は何年何月かって質問した時、どんな感じで質問した?」

 

「どんな、って……なんとなく片手を上げて、質問その1!って言ってから質問して……あ、まさか?」

 

「その、まさかじゃねぇかな、と。――回答その1!俺達の世界では、今は2012年3月だ!」

 

 

 向こうの俺と同様に片手を上げてそう宣言すると、カチッという音が聞こえた。……扉の上を見ると、左側が0から1になった。よし!

 

 

「なるほど……手を上げてはっきり宣言しないとカウントされない仕組みだったのか」

 

「それに、今のでどちらがどれをカウントした数字なのかが判明した……右側が質問数、左側が回答数をカウントしているようだ」

 

「つまり。あの数字がどっちも15になったら脱出できる、って事か?そっちの俺、よく気づいたな……」

 

「お前が偶然、カウントされる行動と同じ行動を取ってくれたおかげだ。それが無かったら、検証するのに時間を取られるところだった」

 

 

 やれやれ、だな。これでようやく、本格的に脱出を目指せるようになった。……さっそく、俺からも質問させてもらおうかな。

 

 

「承太郎さん。こちらからの最初の質問は、俺が聞いてもいいですか?」

 

「……ああ。構わない」

 

「ありがとうございます。じゃあ、質問その2――そっちの俺達の関係性は?」

 

 

 俺がそう聞いた瞬間、カチッという音がまた聞こえた。扉の上を見ると、右側……質問数が1から2になっている。うん、ちゃんとカウントされてるな。良かった。

 

 

「はい、回答その2――高1からの友人同士!」

 

「……もっと正確に言えば、親友同士だ」

 

「「親友!?」」

 

 

 俺と、承太郎が……!?

 

 

「…………羨ましい……」

 

「承太郎さん??」

 

「あ。……すまない、今のは聞かなかった事に、」

 

「つまり本音が漏れたんですね!?」

 

 

 嘘だろ、承太郎……え、何?あんた、俺と友達になりたかったのか!?

 

 

「……そっちの俺は、園原ともっと気安い仲になりたいんじゃねーか?だから俺とシドの関係が羨ましくなったんだろ」

 

「心を読むな」

 

「俺とお前はどっちも“空条承太郎”だ。思考回路が大体同じだから、分かっちまうんだよ」

 

 

 空条がニヤニヤしながら、承太郎をからかっている。揶揄された方は苦々しい表情で相手を睨む。……その様子はまるで、3部承太郎が6部承太郎で遊んでいるように見えた。ちょっと面白い。

 

 おっと、それはともかく……もっと気安い仲になりたい、だって?周りに誰もいない時に敬語禁止令が出されている件はともかく、さすがに普段からそれは無理だぞ?

 

 

「……期待に応えられなくてすみません、承太郎さん……さすがに、年上を相手にそっちの俺のような態度を取るのは難しいですね……その上、俺はあなたの助手ですから」

 

「「助手!?」」

 

「んん?」

 

 

 と、向こうの俺達が驚いている。あれ?俺と承太郎の関係性は話してなかったっけ?

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 向こうの俺が聞き捨てならない事を言ったので、透かさず片手を上げて質問!

 

 

「質問その3!――そっちの俺達の関係性は!?説明を頼む!」

 

「……回答、3――海洋学者と、その助手だ」

 

「説明、といっても……承太郎さんが杜王町で一時的に助手として雇ってくれて、その後……高校を卒業した後にこの人が財団側に推薦してくれて、それから財団職員になった。

 以降は、財団から派遣される形で承太郎さんの助手を勤めている、って感じでいいか?」

 

 

 な、なるほど……?何がどうなって空条さんが杜王町で向こうの俺を雇う話になったのかは知らんが、とりあえず正式に助手になるまでの流れは分かった。

 

 

「…………羨ましい……」

 

「承太郎??」

 

「っ、……いや、今のは、」

 

「大方、園原君の優秀さを知っているからこそ、彼による手助けが喉から手が出る程に欲しい……

 さらに、仕事を理由にして自分の一番近くに置いておけるのだと考えて、羨ましくなったのだろうな」

 

「…………てめえ……ッ!!」

 

「ふふ……」

 

 

 おお、6部承太郎の余裕の笑み……まぁ、カッコいいけどこれって結局こっちの承太郎が先程からかった仕返し、だよな?そう考えると大人気無い……?いやいや、それは置いといて。

 

 

「承太郎……念のために言っておくが、さすがに今から海洋学の助手を目指すのは無理があるぞ?俺の進路はもう決まってるし、4月には大学の文学部に入るし」

 

「…………シドは図書館司書になるんだろ?分かってるよ」

 

「図書館司書!?」

 

 

 向こうの俺が驚きの声を上げる。その隣にいる空条さんも目を見開いていた。……そんなに驚く事か?

 空条さんはともかく、向こうの俺も“俺”なのだから多分こっちと同じく本が好きだろうし、そこまで驚く程の話では無いはずだが……

 

 …………あー、いや、そうか。こいつの生い立ちが4部時空の前世の俺と大体同じなら、今世の俺ほど本を読み漁る必要はなかったのだろう。

 本は時に、生き残る術を教えてくれる……この考えはあくまでも、あのクソ野郎のせいで中学生まで散々な目に遭っていた今世の俺の考えだから。

 

 そういう事なら、ただ本が好きだというだけで図書館司書を目指したりしない、か。

 

 

「……よし、次はそれにしよう。質問、4――園原君は何故、図書館司書になりたいんだ?」

 

 

 と、空条さんからそう質問されて我に返った俺は、どう答えようか悩んだ。図書館司書になりたい理由はいくつかあるし、その中からどれを選んで答えればいいんだ?

 一番の理由はあれ(・・)だと思うが……でも隣に承太郎がいる時にこれを言うのは、ちょっと気恥ずかしい。とりあえず、無難な答えを言っておこう。

 

 

「回答その4!本が好きで、その本に囲まれて一生を過ごしたいから図書館司書を目指してます……って、あれ?」

 

「……カウントされない、な?」

 

 

 ちゃんと答えたのに、回答数は3のまま動かない。なんで!?

 

 

「……シド。お前、今の回答の中に何か嘘があるんじゃねーか?」

 

「えっ……」

 

「嘘偽りなく、15回質疑応答しないと出られない部屋……なんだろ?

 さっきまで質疑応答が順調にカウントされていたにも関わらず、急にそれが動かなくなった……となれば、“嘘偽りなく”という条件に引っ掛かったとしか思えない」

 

「…………そういう事か……納得したわ」

 

「はぁ?本当に嘘ついてたのか?なんで?」

 

「……ただ志望理由を話すだけなのに、何故嘘をつく必要が?」

 

「いやいや、嘘つくつもりはなかったんだよ!ただ、言うのがちょっと恥ずかしかっただけで……」

 

 

 承太郎から指摘されて納得していたら、向こうの俺達から疑いの目を向けられたので慌てて弁解した。……こうなったら、一番の理由を正直に言うしかないか。

 

 

「回答その4!――きっかけは親友の一言!」

 

「は?」

 

 

 カチッという音が聞こえた。……よし、今度はちゃんとカウントされたな。回答数が3から4になってる。

 

 

「……俺の一言がきっかけって、どういう事だ?」

 

「あー…………今から話す……」

 

 

 正直に言うと決めたものの、やはり気恥ずかしい事に変わりはない。承太郎と目を合わせないように、向こうの俺の目を見て簡単に事情を説明する。

 

 元々は訳あって、高校卒業後はすぐに働くつもりでいた事。……しかし、ある出来事のおかげでその事情が解決したため、すぐに働く必要がなくなった事。

 その時、以前承太郎から言われた言葉――“お前将来、司書になったりしないのか?”という言葉を思い出した瞬間。視界が一気に開けたような、そんな気がした事。

 

 

 なお。“訳あって”とか“ある出来事”とか、あのクソ野郎……実の父親が関わっている件について、向こうの俺達に明かすつもりは無い。特に、向こうの俺は知らない方が幸せだろう。

 

 

「……承太郎のあの一言が、俺の将来を――これから先、どう生きるのかを決定付ける転機となった。

 それに、承太郎は俺が本を愛する最高の司書になれると信じていると、そう言ってくれた。その信頼に応えるためにも、俺は図書館司書になるんだ。絶対に」

 

 

 もちろん、本に囲まれて一生を過ごしたいという気持ちも、幼い俺に生き残る術を教えてくれた本に恩返しをしたいという気持ちも、図書館司書を目指す理由に含まれている。

 だが、一番の理由は承太郎のあの一言だ。あれが無ければ、ここまでの熱意を持って夢を叶えようだなんて考えられなかったと思う。

 

 こうして承太郎のおかげでかなり早めに進路を決められたが、あれが無かったら俺は今頃どうなってたんだろうなぁ……って、

 

 

(なんか、めちゃくちゃ驚いてる?)

 

 

 向こうの俺だけでなく、空条さんまで目を点にして驚いていた。しかし、彼らの視線は俺ではなくその隣……承太郎に向けられているようだ。

 

 

 首を傾げつつ、俺も彼らと同じ方向を見ようとした……その時、隣から伸びて来た両手によって頭をガッと押さえられた。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「ぐぇっ!?ちょっ、」

 

「てめー……ッ!!マジでいい加減にしやがれよこの愛すべき爆弾魔がッ!!」

 

「いたたたたっ!?首痛い首痛い首痛い!?」

 

「やかましいッ!!」

 

「理不尽っ!!」

 

 

 向こうの俺の頭を両手で押さえつけながらぐしゃぐしゃと撫でている空条……その顔は、真っ赤になっていた。耳まで赤い。

 

 すげぇレア顔!あの“空条承太郎”が、照れて赤面するなんて!それに照れ隠しで逆ギレしてるのもレアだ!

 思わず、こっちの承太郎と向こうの承太郎の顔を見比べてしまう。あの照れ顔とこの無表情の落差よ……

 

 そんな風に見比べていると、何故か承太郎もまじまじと俺を見つめている事に気づいた。

 

 

「“愛すべき爆弾魔”――なるほど……」

 

「え、何が“なるほど”なんですか?」

 

「……お前にぴったりだと思ってな」

 

「何故に??」

 

 

 そのネーミングの何処が俺にぴったりなんだ?というかそもそも空条が言ってた“愛すべき爆弾魔”って何!?

 あと、向こうの俺達の喧嘩……いや、じゃれ合いは一体いつになったら終わるのだろうか?

 

 

「…………なんというか、段々子猫同士がわちゃわちゃしているように見えてきたのは気のせいでしょうか?」

 

「……向こうの俺達よりもこちらの方が年上だから、そう見えただけじゃないか?」

 

「あぁー、俺もそれなりに歳食ったって事ですね?」

 

 

 おっと、そうだった。今の俺は彼らよりも年上、30のおっさんだったな……だから若者のじゃれ合いが微笑ましく見えるのか。納得したわ。

 

 

 そのまましばらく見守っていると、やがて落ち着いて来たようだ。向こうの俺はまだ首が痛いようでそこを押さえているが、質疑応答が再開される。

 

 

「シド……次は、俺があいつらに聞いてもいいか?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

 

 あ。そういえば、空条が向こうの俺の事を“シド”と呼んでいるのは何故だろうか?

 仗助と出会った時の出来事から、彼にそう呼ばれるなら不思議ではないと思うが、空条がそう呼ぶ理由が分からない……俺がそう考えていた、その時。

 

 

「質問、5――今、お前らの周りでは誰が生きている?」

 

 

 そんな質問が飛んできて、息を呑んだ。……俺だけではない。隣にいる承太郎も、向こうの俺もだ。

 

 

「志人が生きて、そっちの俺と出会った事……そして、そっちの俺も徐倫もあの神父と戦った末に生き延びた事から……

 お前らの世界と俺達の前世では、かなり状況が異なっている事がよく分かる。……それなら、……もしかしたら……」

 

「…………」

 

「……誰でも、そして何人でも構わない。お前らが思い付く限り名前を出してみろ。……もしかしたら、その中に。俺が求めている名前が出て来るかもしれない……」

 

 

 …………空条が……“空条承太郎”が求める、生きている人間の名前といえば、それは、

 

 

「そちらの俺には、最初から言っておこう……無駄に希望を抱かせないためにもな」

 

「っ、承太郎さん……!」

 

「志人。……“俺”が相手なら、そうした方が良い」

 

「…………そう、ですか……」

 

 

 承太郎自身がそう言うなら、そうなのだろう。……俺が制止を諦めると、承太郎は向こうの彼自身に対して、こう言った。

 

 

「――花京院、アヴドゥル、そしてイギーは……既に死んでいる。あの旅の最中、エジプトのカイロで死んだ。……前世のお前が、ジジイとポルナレフから聞いた通りの死に方でな」

 

「――――」

 

 

 それを聞いた空条は、一瞬ショックを受けたような顔を見せたが……

 

 

「だが……杜王町に行く前から音信不通になっていたポルナレフとは、再会したぞ」

 

「!!」

 

 

 承太郎の次の言葉で、すぐに息を吹き返したようだ。あぁ、やっぱりポルナレフの名前も求めてたんだな。原作では再会してなかったみたいだし。

 

 

「……うちの優秀な助手が、行方不明になっていたポルナレフを見つけて保護してくれた」

 

「園原が……?」

 

「ああ……全て、この子のおかげだ。ポルナレフも、俺も、徐倫も……志人のおかげで命拾いした」

 

「…………そうか……」

 

 

 空条は、酷く複雑な表情で俺と承太郎を見つめている。……向こうの承太郎は、こっちの承太郎よりも比較的感情が分かりやすい。

 だからこそ、その複雑な表情の中に……先程“羨ましい”と呟いていた時以上の“羨望”が含まれている事が読み取れた。

 

 

(向こうの俺が、前世で死んでいなければ……なんて事を考えてるのかな……)

 

 

 確かに。もしも向こうの俺が前世で生きていたら、俺と同じように原作キャラの救済をしていくだろうし、それは間違いではないと思う。

 そう考えながら、向こうの俺を見ると……彼は何故か、承太郎の事を食い入るように見つめていた。

 

 

 それは、まるで――何かを探るような、そんな目つきだった。……心臓が跳ねる。

 

 

(あの目は、何だ?何を探ろうとしている?)

 

 

 あいつは少し前まで、空条の事を沈痛な表情で見ていたはずだ。それが何故いきなり……?

 

 

「シド?」

 

「んん?」

 

 

 しかし、それも束の間。空条に呼ばれた途端、向こうの俺はニコリと微笑む。……どう見ても作り笑いだった。空条もそれに気づいたようで、訝しげな様子を見せる。

 

 

「……どうした?何かあったか?」

 

「あー……えっと……まぁ、そうだな。……ここまで、なんとなく暗黙の了解みたいな感じで交互に質問し合ってきたから、次も順番を守るとして……

 こっちは、質問その7になるか?……その時にどうしても、そっちの俺に質問したい事ができたんだ」

 

「どうしても質問したい事……?」

 

「うん。……だから、次に順番が来たら俺に質問させて欲しい。いいか?」

 

「…………分かった。好きにしろ」

 

「ありがとう」

 

 

 向こうの俺は空条に向かって笑顔でお礼を言うと、横目でこちらを見る。……“逃げるなよ?”と言われたような気がした。怖い怖い。

 いったい俺に何を聞くつもりなんだか。というか質問相手は探るような目で見つめていた承太郎じゃなくて、俺なのか?何故――

 

 

(――――あ、)

 

 

 ふと、頭に浮かんだ考え。向こうの俺が承太郎を探るような目で見つめて、その上俺にはどうしても質問したい事があるという……それに関連しそうな事で心当たりがあるとすれば……!

 

 

「……ところで、質問の答えがまだ途中じゃねえか?」

 

「ん?……ああ、そうか。質問内容は、今俺達の周りでは誰が生きているのか、だったな……」

 

「は、はいはい!それなら俺が答える!」

 

 

 冷や汗を流した俺は、これ幸いと承太郎達の話に乗った。

 

 救済された人達の名前を聞けば、向こうの俺はそっちに気を取られて結果的に話が有耶無耶になるかもしれない。それを期待した。……まぁ、望み薄だけど何もやらないよりはマシだろ!

 

 

「じゃあ、まずは杜王町の人達から……」

 

 

 そう前置きして、次々と名前を出していく。……向こうの俺達は、良平さん、形兆、重ちー、彩さんの名前が出た時に強く反応していた。

 やはりこの4人は、向こうでは原作通りに死んでいたようだな。

 

 そのまま原作5部の面子と、6部の面子の名前も出すと……俺が最後の人物の名前を口にした途端、驚きの声を上げた。

 

 

「――プッチさん、生きてるのか!?」

 

「あいつが……!?」

 

 

 何故か、他の人達よりもプッチ神父が生きている事に一番驚いているらしい……って、んん?

 

 

「そっちの俺……今、奴の事をさん付けで呼んだよな?」

 

「えっ?」

 

「……親しげな雰囲気を感じたのは、俺の気のせいか?」

 

「…………」

 

 

 向こうの俺が気まずそうに目を逸らした。おいおいおいおい……!?

 

 

「……園原君……どういう事だ?君はそちらの俺の前世の死因を聞いて、それと同時に奴の危険性も理解しているはずだよな?」

 

「いや、えっと、それは、その……」

 

「……今世のあいつは、前世とは違う。もうディオにも“天国”にも執着していない。ちゃんと話も通じるぜ」

 

「何……?」

 

 

 承太郎が向こうの俺を追及すると、空条まで信じられない事を言った。

 

 ……確かにこっちでも、例の手紙の内容からして奴が以前よりも改心した事は分かったが、向こうでは原作通りに死んでるんだろ?

 原作6部で最後まで悪足掻きしていた奴が、そんなあっさりと心を入れ替えるなんて到底思えないのだが?

 

 

「…………おい、ちょっと待て……まさか……」

 

「承太郎さん……?」

 

 

 と、承太郎の声が震えていたので思わず見上げると……真っ青になっている。

 

 

「プッチ神父が転生して、お前達と同じ世界で生きている……それなら……

 

 

 質問6――転生後のDIO……奴も、お前達と同じ世界にいるのか……ッ!?」

 

 

 はっ、と。向こうの俺達の顔を見た。……彼らはゆっくりと、揃って頷く。

 

 

「……回答、6――その通りだ。あいつも転生して、DIOではなく、ただのディオとして生きている……」

 

「でも、今世のあの人は本当に良い人で、俺達にとっては兄のような存在なんだ」

 

「ディオも、プッチと同じく前世とは違う……ジョースター家との関係も良好だ」

 

「最初のうちは当然周りから疑われていたが、ディオさん自身が信頼回復のために地道に行動して、今ではあの人を疑う人間はほとんどいない」

 

 

 そう語る彼らの表情から、嫌悪感や恐怖といった感情は読み取れなかった。むしろ、好意的なものを感じる。

 

 馬鹿な……!相手はあのDIOだぞ!?原作1部では自らの企みのためとはいえ、数年間周囲を騙し続ける程に執念深く狡猾な男だ!

 信頼回復のために行動したっていっても、それが演技ではない証拠がどこにある!?こうしている今も何かを企んでいるかも、……あ、やばい。

 

 

(承太郎の殺気が、重い……)

 

 

 一気に背筋が冷えた。向こうの俺はその殺気を浴びて真っ青になってるし、そんな彼を自分の背後に隠した空条はスタンドを出して明らかに警戒している。

 

 

「…………理解できない……本来なら、そうやって絆される前に早急に奴を排除するべきだった……!何故そうしなかった!?そんな状態では、いつか裏切られた時に痛い目に遭うぞ!?」

 

「……別に、理解されようとは思ってねえよ」

 

 

 空条が、そう反論した。……彼の目は、静かだ。これ程の殺気を浴びながら、ほとんど動揺していない。その姿に、どこか超然としたものを感じた。

 

 

「――前世は前世、今世は今世だ。……俺も、志人も、ディオも……前に生きていた人生は既に終わった。

 俺達は今の人生を生きている……終わったものに構っている暇はねえんだよ」

 

「――――」

 

 

 …………嗚呼……そうか。

 

 

「承太郎さん。この話は終わりにしましょう」

 

「志人……?」

 

「この話は、何処までいっても平行線です。……彼らは確かに“俺達”ですが、文字通り、“住む世界が違う”」

 

「……住む世界が、違う?」

 

「はい。――彼らは、俺達とは別の世界の人間です。それに、彼らは一度死んで生まれ変わっていますが、俺達はその死を経験していません」

 

「!」

 

 

 まぁ、この4人の中で実際に死を経験していないのは、一度も転生経験が無い承太郎ただ1人なんだが……

 そんな言外に含まれたものに、承太郎も気づいたのだろう。俺と、向こうの俺達を見る目に複雑な感情が混ざっていた。……疎外感でも感じたのかな?それは申し訳ない。

 

 

「それ故に、彼らと俺達は価値観が合いません。諦めましょう。……俺も、彼らとDIOの仲が良い事に納得はしていませんが……理解は出来ました」

 

「…………納得、ではなく。理解、か」

 

 

 そう……納得はできない。だが、理解は出来た。今の俺も、前世を生きていた頃の人間としてではなく、“園原志人”として生きているから。

 “終わったものに構っている暇はない”……その通りだ。既に今世の新たな人生が始まっているからな。

 

 

 ……承太郎の殺気が収まり、空条のスタープラチナも消えた。ほっと溜め息をつくと、向こうの俺の溜め息と重なる。互いに、苦笑いを浮かべた。

 

 

「……俺の優秀な助手に免じて、今後この件に関しては何も聞かない事にする……俺も、納得は出来ないが……お前達の考えは、理解した」

 

 

 と言いつつもその顔は珍しく、苦虫を噛み潰したよう、という表現がぴったりと当て嵌まる程に、感情が分かりやすいものになっていた。

 承太郎は彼らの考えに一応理解は示したが、個人的にはそれだけ納得できていない、って事だろうな……

 

 

「……さて。今の空条さんの質問と承太郎の回答で、質問6とその回答は終わったな?」

 

 

 はっ……!?そ、そうだ!今ので向こうの俺にあっさりと順番が回ってしまった!!まずいぞ……!

 

 

「質問その7――

 

 

 

 

 

 

 ――そっちの承太郎は、お前の“全て”を知っているのか?」

 

 

 カチッ、と音が鳴った。……質問としてカウントされてしまったその内容は、俺が予想した通りのものだった。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 

 俺が質問した途端。向こうの俺は後退り、空条さんは目を見開いた。……それらの反応からして、やはり俺の予想は正しかったのだろう。

 

 

 先程からずっと、密かに考え続けていた――向こうの俺が、どうやって原作キャラ達を救済していったのか。

 

 最初は、ただの興味本意だった。多分“俺”の事だから出来る限り原作介入して救済もやっていくだろうと、それを前提に推測してみただけだった。

 しかし。4部はこんな風に、5部はこんな風に……そんな想像を続けて、じゃあ6部は?と考えた時。ある事に気付いてしまった。

 

 

(“俺”なら、どうにかして承太郎に自分から強くなってもらえるように働き掛けるはず……)

 

 

 特に、時止めのブランク。6部が始まる前にあれを何とかしようと、4部の時点から動き出すだろう。

 それから、前世の奥さんとの離婚の阻止。ポルナレフの救済と、それに伴って何らかの形でジョルノ達と接触する事になる……おそらく、その件には承太郎も関わる事になると思う。

 

 

 これらの記憶を持った承太郎が、プッチ神父の襲撃を受けたら?

 

 

(そんな“記憶DISC”をあの神父に見られたら、奴の行動が読めなくなる……!!)

 

 

 つまり、6部の原作崩壊に繋がって俺の原作知識が全く役に立たなくなる、という事だ。

 この問題を解決し、さらに無事に第6部、完!を目指すためには、どうすればいいのか?……そう考えた俺の頭に浮かんだ方法は、たった1つ。

 

 ――承太郎と露伴に、“園原志人の全て”を明かした上で協力を求めるしかない。

 

 

 そして……承太郎が向こうの俺達に5つ目の質問をした時。

 花京院達は既に死んでいるがポルナレフとは再会した……と話す空条さんに対して、違和感を感じたのだ。

 

 

(承太郎は、自分の前世の中でも6部に関係している事しか話していなかったはずだ。それ以前の事は何も話していない……当然ながら、3部に関する事も何も言ってない)

 

 

 それなのに、空条さんはどうしてこいつが求めている答えが分かったんだ?

 

 承太郎の前世と、空条さんの過去が全く同じだとは限らない。原作を知っている俺や、向こうの俺ならともかく。何も知らない奴はそう考えるはず……

 現に。何も知らない承太郎は、向こうの俺と空条さんが生きてそこにいるのを見て……もしかしたら、花京院達も全員生きているのではないか?と、そう考えてしまった。

 

 それに対して、空条さんは花京院達の死を伝え、続いてポルナレフと再会した事も話した……自分の過去と承太郎の前世が全く同じだと、確信しているようだった。

 

 

(……今はまだ、疑いの段階だ。確証は無い……しかし、向こうの俺達のどちらかが回答すれば、それが証拠となる)

 

 

 少し前に、俺が身を持ってそれを証明した。ここは、嘘偽りなく15回質疑応答しないと出られない部屋だ。

 嘘を言えば、意味が無い。真実を言えば、ちゃんとカウントされる……向こうの俺達は、正直に話すしかないのだ。

 

 

「…………回答その7――あぁ、そうだ。この人には、俺の……“園原志人”の“全て”を明かした」

 

 

 やがて、向こうの俺が回答した。……カウント音と共に、回答数が6から7になる。

 

 空条さん……6部時点の承太郎を見つめると、彼は微笑みながら頷いた。

 そうか。あんたは“俺”の“全て”を知っても、“俺”を拒絶する事もなく、6部での救済に協力してくれたんだな?それを知る事ができて良かった。

 

 

(でも……向こうの承太郎はそうでも、こっちの承太郎はどうだ?)

 

 

 どちらも同じ“空条承太郎”で思考回路も大体同じだというが、先程までの会話からして転生……いや、死を経験しているか否かで、価値観はかなり異なってくるようだ。

 向こうの承太郎は、向こうの俺の“全て”を受け入れた。……じゃあ、こっちの承太郎は俺の“全て”を受け入れてくれるのか?

 

 ここまでのやり取りに対し、承太郎は疑問を感じているだろう。そろそろ問い詰めてくるはずだ。

 あの質問をしたのは俺自身……ならば、その責任は自分で取らなければならない。

 

 

 意を決して顔を上げ、承太郎を見つめる。……しかし、彼が俺を問い詰める事はなかった。むしろ、仕方ないなと言わんばかりに苦笑いを浮かべている。

 

 

「……無理に話さなくていい」

 

「え、」

 

「そっちの俺だけが、お前の“全て”を知っているってのは正直に言って、非常に気に食わねえ……だが、お前に無理をさせてまでそれを聞き出すつもりはない。

 

 それを話すか話さないかは、お前次第だ。どちらにせよ親友止めたりはしねえから、そこは安心しろよ」

 

「…………いいのか?俺は元々、この秘密を墓場まで持って行くつもりだった。いや、今もそうしようと思ってる……

 親友に隠し事をしたまま、老衰するつもりでいるんだ。……本当に、それでも良いのか?」

 

 

 どうしても不安で、思わずそう聞いてしまった。

 

 これから先、自分の親友がデカイ秘密を抱えていて、それを明かされる事は一生無いと分かった上でそれでも縁を切らないって、そんなの……

 俺にとっては都合が良くても、承太郎にとっては何もメリットがないじゃないか……!!

 

 

「……なんだ、そうか。だったらお互い様だな。――俺にも、お前に対して墓場まで持って行こうと決めた秘密が、1つだけある」

 

「――――」

 

「まあ。今後のお前次第で、話す事になる場合もあるかもしれないが……その可能性は、かなり低いだろう。

 そういう訳だから、お前が俺に罪悪感を抱く必要は無い。……ほら、お互い様だろ?」

 

 

 そう言って笑う承太郎は、どうやら本気でそう思っているらしい。嘘を言っているようには見えなかった。

 

 承太郎が、墓場まで持って行こうと決めた秘密?いったい何だろう?まぁ、さすがに俺の前々世の話よりはインパクト小さめだろうが……

 ……いや、詮索は止めよう。俺だって、前々世の話は可能な限り秘密にしておきたいし。

 

 

「…………念のため、もう1回だけ聞くぞ……本当に、良いんだな?俺の“全て”を話さなくても」

 

「ああ、構わない。……その代わりに、俺がお前に対して隠している秘密も、本気で墓場まで持っていくからな?」

 

「……分かった。それで良い。……その秘密を話すか否かは、お前次第。俺も、どちらにせよお前の親友を止めたりしない。約束する」

 

「ん」

 

 

 ぐりぐりと頭を撫でられた。……嫌じゃないから別にいいが、お前本当に俺の頭よく撫でるよな?

 いやまぁ、よく撫でてくるのは承太郎だけじゃないけどさ?ジョースター家の年上の人達とかツェペリ家とかアバッキオとかブチャラティとかその他諸々……

 

 

 

 

 

 

「…………承太郎さん」

 

「ん?」

 

「空条が言ってた、向こうの俺に対して墓場まで持って行こうと決めた秘密……それに何か、心当たりはありますか?」

 

「いや……?特に無いな」

 

「そうですか……ちなみに、それを質問するつもりは?」

 

「…………志人がそう望むなら、俺が質問してやろうか?」

 

「い、いえ。大丈夫です。……正直に言えば気になりますが、墓場まで持って行くと決意した程の秘密を暴くような、悪趣味な事はしたくないですし……

 ……それに、彼はあなた自身でしょう?俺は“空条承太郎”の気持ちを尊重したいので」

 

「……お前は相変わらず優しいな」

 

「…………俺もう30のおっさんですよ?向こうの俺とは違って頭撫でられるような子供じゃないんですよ?」

 

「じゃあ、止めるか?」

 

「、はい、止めてください」

 

「……今ほんの一瞬だが、迷ったよな?」

 

「なっ、ま、迷ってない!!」

 

 

 

 

 

 

 ……あれ?どういう訳か、いつの間にか向こうの俺まで空条さんに撫でられていた。……なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 pixivでは1つにまとめて投稿しましたが、話がかなり長いので、ハーメルンでは前編と後編に分けて投稿します!

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