空条承太郎の友人~番外編~   作:herz

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※後書きの最後に、アンケートについての説明があります!どうかご協力のほど、よろしくお願いいたしますm(_ _)m




親友組と、博士&助手組〜出会うはずがなかった4人〜【後編】

 

 

「…………なんか、向こうの俺達を見てたら俺の未来も見えてきた気がする」

 

「……確かに、10年以上経っても俺はシドの頭を撫でてるだろうな……いや、俺だけじゃねえか。お前の頭は“各方面から撫でられる頭”だからな」

 

「言いたい事はなんとなく分かるが“各方面から撫でられる頭”って何その字面??」

 

 

 そんな会話が聞こえて我に返り、慌ててまだ頭上にあった承太郎の手を払った。

 向こうの俺と空条のやり取りは既に終わっていたらしく、こっちの俺達のやり取りを勝手に観察されていたようだが……なんだか恥ずかしい。

 

 変に突っ込まれる前に話を変えたい……あぁ、そうだ!質問しよう、そうしよう!

 

 

「し、質問その8!――そっちの俺は何故空条からシドと呼ばれてるんだ!?」

 

「えっ?」

 

「あ?」

 

 

 咄嗟に思い付いた事を口にすると、向こうの俺達はきょとんとしていた。……そんなに意外な質問だったか?

 

 

「何故、って聞かれてもな……えっと、回答その8――承太郎が勝手にそう呼び始めたから」

 

「……そっちの俺が勝手に呼び始めた?どういう事だ?」

 

「最初にそう呼んでいたのは仗助だったが……今は俺だけがシドと呼んでいる。そして今後も、俺以外には呼ばせねえ」

 

「…………そういう事か……」

 

 

 承太郎が呆れた表情……いや、ジト目で空条を見ている。なんだ?どうした?

 

 

「独占欲が強過ぎる……」

 

「お前それブーメランだぜ」

 

「ブーメラン……?」

 

「……ああ、そうか。通じないよな、悪い。つまり“お前が言うな”って事だ。……どうせ“俺”の事だから、園原を助手にする時も外堀埋めたんだろ?」

 

「…………よく分かったな?」

 

「むしろ何故分からないと思った?」

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、そっちの俺。承太郎達のあの会話の意味、分かるか?」

 

「あー……うん、そうだな。さっぱり分からん」

 

 

 俺が承太郎の助手になった経緯の裏側が空条にバレていた件は、さておき。それ以外の事がよく理解できなかったのは本当なので、向こうの俺の問いに対してはそう答えておく。

 

 

(…………この無自覚人たらし天然ジゴロウルトラ鈍感本体め……)

 

 

 心の中でイージスからn回目のそんな罵倒を受けたが、聞こえない振りをした。

 

 

「……ところで、そっちの世界でお前の事をシドと呼んでいるのは、本当に空条だけなのか?」

 

「あぁ、そうだけど……?」

 

「リゾットさん達やジョルノ達からそう呼ばれてたりしないか?」

 

「え、なんで?」

 

「こっちの世界ではな、あの人達が俺の事をそう呼んでるんだ」

 

「はぁ!?」

 

「……質問、9――園原は何故、そいつらからシドと呼ばれている?」

 

 

 と、空条がそう質問してきた。先程まで承太郎と何やら小競り合いをしていたのだが、それでもこちらの会話が聞こえていたらしい。

 

 

「回答その9――俺が任務中に使った偽名が、そのまま彼らの間で定着したから」

 

「任務……?」

 

「……元暗殺者チームの奴らを、財団に引き抜くためにイタリアから脱出させる任務だ」

 

「はい??」

 

 

 俺の代わりに、承太郎がイタリアでの例の任務について説明してくれた。

 

 事の発端である財団の人員不足の件から、上層部の命令で俺がイタリアに飛んで元暗殺者チームの死を偽装する作戦まで事情を話し……

 ついでに、ジョルノ達に手を貸してディアボロを倒して、その最中にポルナレフを保護した件も明かす。

 

 

「――と、そんな任務中にシドの名前を使っていたら、どういう訳かその呼び方を気に入ってしまったようで……以来、彼らからはずっとそう呼ばれている」

 

 

 承太郎の説明が終わった後に俺がそう締め括ると、向こうの俺は納得したように何度か頷き、空条は深く溜め息をついて額を押さえた。

 向こうの俺のその様子は、俺が原作知識を利用して彼らを救済する作戦を実行したのだと察したからこその反応だろうが……空条のそれはどういう事だ?

 

 

「…………おい、そっちの俺……」

 

「ん?」

 

「どうせそいつらもコロッと落とされたんだろ?」

 

「…………まあ、うむ、ご想像の通り」

 

「だろうなッ!……はあ……まったくこれだから“園原志人”ってやつは……」

 

「……ちなみに。こちらではジョルノからFratello(兄さん)と呼ばれていたり、リゾットから“我が主”と呼ばれていたり、それ以外の元暗殺者達から“我らが幸運の女神”などと呼ばれていたりするが、そちらはどうだ?」

 

「こっちではブチャラティとアバッキオから弟扱いされてたり、ジョルノやミスタ達から兄貴分扱いされてたり、元暗殺者共から俺達のAngelo(天使)なんて呼ばれてたりするぜ……」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 ……ちょっと前まで小競り合いをしていたはずの承太郎達が、今度は互いに見つめ合って固い握手を交わす。どういう事なの??

 

 

 向こうの俺を見ると、目が合った。……2人揃って首を傾げたところ、心の中で再びイージスの声が聞こえた。

 

 

(…………この無自覚人たらし天然ジゴロウルトラ鈍感本体✕2め……)

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 承太郎達の様子を見て、向こうの俺と共に首を傾げていると……やがて空条さんが、“そういえば”と前置きしてからこんな質問をして来た。

 

 

「質問、10――そちらの世界の徐倫は今、どうなっている?……平和な世界で、あの子がどんな風に日々を過ごしているのか、聞かせてくれ」

 

 

 例え別の世界人間でも、元は自分の娘だった徐倫の事を気にしているのだろう。……良いお父さんだなぁ。

 

 向こうの俺が、大体俺が想像した通りに原作介入をやってきたのなら……

 おそらく承太郎の離婚は阻止しているはずだし、徐倫との仲も原作よりはましになっているはずだが……そこはどうなったのかな?気になる。質問したい。

 

 

「回答、10――エルメェスやF・Fと共に、楽しく過ごしている。あいつらは今世では同い年の友人同士で、仲が良い。

 ただ。その中にはたまに、ウェザーと……アナスイの野郎が加わる事もある」

 

「…………ウェザーはともかく、アナスイか……」

 

 

 空条さんが嫌そうな顔をしている。あー、うん。アナスイは向こうでも徐倫に結婚を迫っているだろうし、そんな顔になるのも納得だな。

 と、そんな空条さんが、承太郎から俺へと視線を移す。じいっと見つめられた。な、なんでしょう?

 

 

「園原君と徐倫の仲はどうだ?」

 

「俺と徐倫ちゃんの仲?えっと、俺は彼女の事を可愛い妹分だと思ってます。

 そしてありがたい事に、徐倫ちゃんも俺の事を“もう1人の兄のような存在だ”と、以前アナスイさんに対してそう紹介してくれた事がありますが……?」

 

「……そちらの俺に聞くが、彼の言葉は本当か?実際は園原君が徐倫の本心に気付いていないだけとか、そんな事はないか?」

 

「いや……そうであれば良かったが、シドの話は事実だ。こいつと徐倫の関係は、兄貴分と妹分……それ以上でもそれ以下でもねえ。

 ……徐倫は、アナスイから迫られて困ってはいるが……嫌がってはいないんだ。残念な事に……」

 

 

 “嫌がってくれたらアナスイの野郎を排除する大義名分ができたのに”、とでも言いたげだな、承太郎は。このシスコンめ。

 

 

「…………では今後、徐倫と園原君が恋人同士になる可能性は、」

 

「ないないないないっ!!あり得ない!」

 

「そんな可能性はゼロに等しい。諦めろ」

 

「……そう、か――さすがに、こちらの世界の2人のように上手くはいかな、」

 

「あぁぁーっ!!承太郎さん、ストップ!!」

 

「ん?」

 

「……は?」

 

「え、おい、今のって……!?」

 

 

 途中で向こうの俺が大声を上げて遮ったが、ギリギリ聞こえたぞ!!

 

 

「“こちらの世界の2人”……そっちの俺と徐倫ちゃんの事だよな?

 さらに、その2人のように上手くはいかないってのは、つまりそっちの2人は上手くいってるって意味だよなぁ!?」

 

「…………」

 

 

 向こうの俺がわざとらしくそっぽを向いた。こっちと目を合わせようとしない。……だったら、また無理やり言わせてやるぜ!

 さっきまでは承太郎が離婚していないかどうか、奥さんとはどうなったのかを聞こうと思っていたが、予定変更だ!

 

 

「質問その11――そっちの俺と徐倫ちゃんの関係は?あとついでに年齢差も一緒に答えろっ!!」

 

「ぐっ……!ここぞとばかりにこの部屋のルールを利用するのは卑怯だぞ!?」

 

「卑怯もクソもあるか!さっさと言え!!」

 

「…………回答、その11――恋人……いや、婚約者だ。年齢は……10歳差……」

 

 

 …………ほーう、そうかそうか、なるほど?……へぇ?ふーん……?

 

 

「――――このロリコン野郎っ!!」

 

「ろっ!?はぁっ!?ふざけんな!俺はロリコンじゃねぇっ!!」

 

「高校卒業してからアメリカに行って財団職員になったんだろ?当然そこで承太郎から紹介されてようじょりーんと出会ってるだろ?でもって彼女はまだまだ幼いせいで年上のオニイサンに憧れちゃったんだろ?かーらーの“大きくなったらオニイチャンのオヨメサンになる!”の流れだったんだろ!?」

 

「な……何故それを……っ!?」

 

「ほらみろやっぱりロリコンだっ!!」

 

「だから違うって言ってるだろうがぁっ!?」

 

「こらこら、待ちなさい」

 

「シドも落ち着け」

 

 

 向こうの俺との言い争いが激しくなり、ついには互いに掴み掛かったところ、承太郎達によって引き離された。

 興奮状態が収まって、徐々に冷静になっていく。……確かに、ロリコンはちょっと言い過ぎだったかもしれない。だが、それでも黙ってはいられなかった。

 

 だってようじょりーんの初恋を奪うなんてギルティだろ!?例え俺自身でも……否、俺自身だからこそますます許せない!

 “俺”なんかが承太郎の……前々世の最推しの娘の初恋を奪うなんて!“空条承太郎”のファンとしてそれは駄目だろ!?

 

 ……とはいえ。向こうの俺にとっても、俺自身にとっても。互いが今いる世界こそが現実だ。前々世の事はあまり持ち込みたくない。

 ついさっきカッとなってガッツリ持ち出しちゃったばかりだけど、これ以降は口に出さないようにしよう。

 

 

「……で?いったい何がどうなって園原が徐倫の婚約者になったんだ?」

 

「まあ、こちらでもいろいろあってな――」

 

 

 こっちの承太郎からの問い掛けに、向こうの承太郎が答えてくれた。

 

 

 幼い徐倫から結婚宣言された後。向こうの俺はそう簡単には結婚できない事を説明し、将来の事はもっといろんな経験をしてから決めなさいと、彼女を諭したそうだ。

 しかし……徐倫はその場では理解を示したものの、納得はしていなかった。彼女は、向こうの俺と結婚する事を諦めていなかったのだ。

 

 そのまま月日が流れても、彼女の気持ちは全く変わらず、10年間も向こうの俺に片思いし続けて……プッチ神父に勝利した後、ついにその想いを打ち明けた。

 向こうの俺はその告白に対して動揺しながらも、少し時間は掛かったが“覚悟”を決めたらしい。……生涯を掛けて、彼女を護る覚悟を。

 

 そして……今度は向こうの俺の方から、わざわざ婚約指輪まで用意してプロポーズしたという。で、めでたく婚約者同士になりました、と。

 

 

「……なお、そのプロポーズをしたのが今日だ」

 

「「今日ッ!?」」

 

 

 “俺”が自分からプロポーズした事でさえ目玉飛び出るかと思うほど驚いたのに、まさか今日プロポーズしたばかりだったとは……!?

 承太郎と共に驚きの声を上げ、揃って向こうの俺を凝視する。……相手は顔を赤らめて目を泳がせていたが、やがて俺と目を合わせて睨んできた。

 

 

「……という訳で、俺はロリコンじゃないからな」

 

「あ、あぁ、うん……そうだな、ごめん。悪かったよ」

 

「ふん……」

 

 

 どうやら地味に気にしていたらしい。話を聞く限り、向こうの俺は徐倫に振り回されていただけだったようだし、そこは素直に謝罪しておいた。

 

 

 …………それにしても……“俺”が、徐倫の婚約者、か……そうか……

 

 

「お前は……」

 

「んん?」

 

 

 

 

 

 

「――母さんとあのクソ野郎の事があっても、それでも結婚する気になれたのか……凄いな。俺とは違って」

 

「――――」

 

 

 思わずそう呟くと、横からガッと肩を掴まれた。……承太郎が、怖い顔で俺を睨んでいる。

 

 

「今のはどういう事だ?」

 

「え、」

 

「お前、まさか……あのクソ野郎に、前世でも虐待されてたのか!?」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ……向こうの俺は、前世の幼少期の事を空条には何も話していなかったらしい。あからさまに“しまった”という顔をしていた。

 

 

「あー、えっと……今のは聞かなかった事に、」

 

「する訳ねーだろ」

 

「さ、さっきは“無理に話さなくていい”って言ってくれたじゃねぇか!?」

 

「それはそれ、これはこれだ」

 

「理不尽!」

 

「うるせえ!……ちっ、しょうがねーな。さっそく試してみるか……」

 

 

 おっと?どうやら、空条には向こうの俺の口を割らせる秘策があるようだ。何だろう?

 

 

「そっちの俺達には悪いが……質問12を横取りさせてもらうぜ。その代わりに、この次の質問13はお前らが使え」

 

「は?」

 

「質問、12――シド。お前の前世の幼少期はどんなものだった?詳しく話せ」

 

 

 ……カチッ、という音が聞こえて質問数が12になった。同じ世界の人間同士でも質疑応答が成立するのか!?これは新しい発見だな!

 

 

「……嘘偽りなく15回質疑応答しないと出られない、という条件はあってもそれ以外の事は何も指定されていなかった……

 それなら同じ世界の人間に質問しても、質問は質問だからしっかりカウントされるだろうな、と……そう推測してみたんだが、当たりだったな」

 

「…………」

 

「さーて……さっそく答えてもらうぜ、シド……おそらくこの質疑応答はセットであり、一度質問してそれがカウントされたら取り消しは効かないはず……

 つまり。お前がこのまま何も答えなければ、俺達はこの部屋から出られない」

 

「…………あー、もう……分かったよ……」

 

 

 向こうの俺は観念した様子で、前世の幼少期の出来事を渋々語った。

 

 母親と共に、父親から虐待を受けていた事。……しかしある日、母親が向こうの俺を庇って父親と揉み合いになり、その末に2人揃って階段から落ちて死んだ事。

 父親の親戚がやって来て、母親の遺品のほとんどを売り払ってしまった事。唯一遺されたのは、母親が死の間際に渡してくれたロザリオだけである事。

 それから……母方の祖母が自分を引き取ってくれたが、その祖母も高校に入学する前に病気で亡くなり、結局1人になった事。

 

 

「…………何故……何故、何も言ってくれなかったんだ……?」

 

 

 その全てを聞いた空条は、悲痛な表情で、声を絞り出すようにそう言った。

 

 

「俺達は……ジョースター家は、そんなに頼りないか?」

 

「違う!俺が勝手に黙ってただけで、お前達のせいじゃない!……ただ、承太郎達に甘える事でこれ以上迷惑を掛けたく無かっただけだ……」

 

「…………この部屋から脱出したら、」

 

「?」

 

「――あのクソ野郎を……お前の父親をぶん殴りに行くぜ。ジョースター家全員に招集かけてな!!」

 

 

 …………は……?

 

 

「え、ちょっ、なんで!?」

 

「ディオが脅迫して追い払って塩撒きまくっただけじゃ足りなかった!前世の志人をそんな目に合わせた恨みも込めて今度こそ殴るッ!!」

 

「いやいやいやいや!?あのクソ野郎なんかもうどうでもいいだろ!?ディオさんがあんなに脅してくれたし、もう関わってこないだろうし、それで充分だって!」

 

「駄目だ……!俺は足りねえッ!全ッ然殴り足りねえ!!ジョナサン達だって今の話を聞けば俺に賛成してくれるはずだッ!!」

 

「やめろっ!!あの人達には言うな!あのクソ爺の時みたいに暴走されたらどうせ止める役目は俺になるんだろ!?疲れるからやだ!!」

 

 

 …………向こうの俺達は、ギャーギャーと言い争いを続けている……が、今の俺はそれどころではなかった。

 隣から、承太郎が心配そうに見つめてくる。俺と目が合うと、彼は首を横に振った。

 

 やめておけ、と言いたいんだろうな……ありがとう、承太郎。

 でも俺は、それでも聞きたい。例えどんな答えが返ってきたとしても、俺にはそれを受け止める義務があると思うんだ……母さんの、息子として。

 

 

「…………質問その13――」

 

「えっ?」

 

「あ?」

 

 

 

 

 

 

「――そっちの俺の家庭事情は?」

 

「――――」

 

「――――」

 

「……実の父親が、あのクソ野郎が生きてるなら……母さんは?婆ちゃんは?……いったい、どうなったんだ?」

 

 

 俺がそう聞くと、向こうの俺達は揃って息を呑み、俯いた。……それからややあって、向こうの俺が顔を上げる。

 

 

「回答その13――」

 

 

 そう言って、向こうの俺が明かした過去は……俺の想像以上に、酷いものだった。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――――そんな……」

 

「っ、志人!?」

 

「なんで……?……母さん……!!」

 

 

 ……前世と同じく、父親から暴力を振るわれていた。しかし途中から、母親が身代わりになった。

 そんな母親のためになれば、と……そう考えて片っ端から本を読んで知識を身に付けるようにした。

 当時は父親によって携帯もパソコンも使用禁止にされていたから、知識を得るには本しか無かった。

 

 母親と共に父親から逃げる計画を立てた。そのために中学の時からこっそりバイトを始めて金を貯めた。

 母親が働いて得た金は父親にむしり取られていたが、俺の方はなんとかバレずに済んで、金が充分集まって計画を実行できるようになった。

 

 しかし……中学を卒業した翌日、既に体も心も限界だった母親が、自殺してしまった。

 

 その後。母親が遺した遺書に従って、ロザリオと母親が稼いだ金の一部を回収。

 父親が……母親の遺品を売り払ったり葬儀の準備をしたりしている間に、隙をついて逃げ出した――

 

 

 ――そんな、俺の幼少期から高校に入学するまでの全てを聞いて、ふらついて倒れそうになった向こうの俺を、空条さんが慌てた様子で支えていた。……まぁ、うん。そうなるだろうと思ったよ。

 俺はもう、あれから何年も経ってるし、承太郎とジョースター家の皆のおかげで立ち直れたが、向こうの俺にとっては今初めて聞いた話だからな……そりゃあショックも大きいはずだ。

 

 

「……と、俺はこのようにあのクソ野郎の下から逃げ出したんだが……去年、奴が俺の居場所を突き止めた上にジョースター家の皆が住む家に乗り込んで来てな」

 

「えっ……!?」

 

「だが、承太郎達のおかげで追い出す事ができたし、SPW財団が裏から手を回してくれたから、今後関わる事は二度と無いだろう」

 

「…………そう、か……」

 

「あぁ。……その時にあのクソ野郎の随分と情けない姿も見たし、本当の意味で奴から解放された事もあって、俺としてはかなりスッキリしてる。

 今では承太郎のおかげでいろんな人達と出会えて仲間がたくさんできたし、皆が俺なんかに優しくしてくれるし、財団が仕事をくれるからお金も稼いで安心して生活できてるし……

 

 凄く恵まれて、満たされている……幸せなんだ。……だから、そんな顔するなよ」

 

 

 向こうの俺は、泣きそうな顔をしていた。……母を護れなかった自分には幸せに生きて良い資格など無い、と。そう考えていた、かつての俺のように。

 

 

「…………俺の方は、母さんは亡くなったけどあのクソ野郎も死んだから、それ以降は虐待もなく平和に過ごす事ができた……

 婆ちゃんが引き取ってくれて、たくさんの愛情を注いでくれた……でも、お前は……

 

 お前の方が、ガキの頃の俺よりもよっぽど悲惨な目に遭ってるじゃねぇか……!そんなお前を差し置いて、俺は――」

 

「――“やっぱり結婚なんてしない方が良いんじゃないか?”とか言ったらボコボコにしてやる」

 

 

 次に出てきそうなセリフを先取りすると、向こうの俺は目を見開いた。……あぁ、そうだよな。“俺”ならそう言うだろう。だが、それは駄目だ。

 

 

「既に徐倫ちゃんにプロポーズしてるくせに、無責任な事を言うな」

 

「でも、」

 

「俺は!……俺は、お前とは違ってもう結婚なんて……子作りなんて、一生できない。そう確信している。

 …………おそらく俺の方がお前よりも、あのクソ野郎を恨む気持ちが数倍は強いからな……」

 

 

 そう……俺の体には、あのクソ野郎の血が……穢れた血が、流れている……それと同じ血が流れる事になる俺の子供を、愛せる自信が無い……

 だが、向こうの俺は違う。確かにあのクソ野郎の血が流れている事は同じだが、俺と比べたら奴を恨む気持ちは多少は薄いと思う。だからこそ徐倫にプロポーズできたんだろうし……

 

 

 それなら……向こうの俺だったら、俺には一生できない事ができるはずだ。

 

 

「……なぁ、そっちの俺……お前に、頼みがある」

 

「…………何だ?」

 

 

 

 

 

 

「――いつか……そっちの母さんと婆ちゃんの墓の前で。孫、曾孫の顔を見せてやってくれ」

 

「――――」

 

「お前と徐倫ちゃんの間にできた子供の顔を、天国にいる母さんと婆ちゃんに見せてやれ。……孫と曾孫の顔を見せるなんて親孝行、俺にはもう出来そうにないからな……」

 

「…………志人……」

 

 

 名前を呼ばれて横を見ると、親友が泣きそうな顔をしていた。

 あーあ、やれやれだぜ。向こうの俺だけでなくお前もかよ……唯一冷静なのは空条さんだけ、って、あ、駄目だ空条さんまで同じ顔で俺を見てる!?

 

 まったくもー、しょうがないなぁ!じゃあ俺が責任持って空気変えてやるよ!!

 

 

「おい、そっちの俺!」

 

「は、はい!?」

 

「お前は徐倫ちゃんとの間に子供を作る事の意味を、ちゃんと考えた事はあるか!?」

 

「……徐倫と子供を作る、意味?」

 

「徐倫ちゃんが出産する子供……それはつまり、彼女だけでなく誰の血を引いている事になる?」

 

「誰の血、って――――あ、」

 

 

 俺にそこまで言われて、ようやくその考えに辿り着いたらしい。……はっと顔を上げた向こうの俺の視線の先にいるのは、空条さんだ。

 

 

「そう……徐倫ちゃんとお前の間にできる子供は、空条さんの血も引いている――彼の、孫だ」

 

「――――」

 

「空条さんに、彼の孫の顔を見せてやりたいと、そう思わないか?」

 

 

 

 

 

 

「――――思う」

 

「「はあ??」」

 

 

 2人の承太郎は限界まで目を見開いて驚いているが、それはさておき。

 向こうの俺の同意を得られて良かった!そうだよな!そう思うよな!?俺だってお前と同じ立場だったらきっとそう考えていたはずだ!

 

 

「“おじいちゃん”になった承太郎さんを見てみたい」

 

「分かる分かる!ジョセフ先輩も元孫が大好きだし、その血を引いている承太郎ならきっと同じように孫大好きな“おじいちゃん”になってくれると思う」

 

「た、確かに……!」

 

「だろ?そう思うだろ!?」

 

「孫を抱いて嬉しそうにしてる承太郎さんが見たい!孫を甘やかす承太郎さんも見てみたい!!」

 

「あー、良いな、それ!俺も見たい!!……あ、でも子作りよりもお前と徐倫ちゃんの気持ちの方が優先だからな?それを理解した上で、前向きに検討してみてくれ」

 

「分かった、頑張る」

 

「おう、頑張れ。応援してる」

 

 

 向こうの俺と固い握手を交わす。“ピシガシグッグッ”が出来そうな勢いだった。

 うんうん、向こうの俺が立ち直ってくれて良かった!さっきまでのどんよりとした空気もすっ飛んだな。よしよし。

 

 

 俺だったら子作りで自分の穢れた血と徐倫の綺麗な血が混ざって結果的に承太郎の血も汚す事になるのは烏滸がましいと思うし罪深いと思うし自分を赦せなくなるしとにかく断固拒否するが……

 向こうの俺なら、子供が出来てもそこまでは気にする事なく育ててくれるだろう。これで一安心だ。

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な……!子作りを躊躇っていたあの子の気持ちがあっさりと動いた、だと……?それもまさか、あんな訳の分からん説得で!?

 いや、俺のためだという事は理解したが俺に“孫の顔を見せるため”!?結局どんな顔をすれば良いんだ俺は……ッ!?」

 

「あー……なん、というか……心中お察し申し上げる、とでも言えばいいのか?」

 

「…………彼は……否、彼らはいったい何なんだ?」

 

「さあな……もはや、あれらは“園原志人”という名の全方向人タラシ天然生物なんじゃないか?」

 

「…………新種か」

 

「新種だな。それもかなり希少だ。1つの世界に1人しかいないぜ」

 

「……大事に保護しなければな」

 

「俺はとっくにそうしている。……あんな広い世界で、“園原志人”に出会えた幸運、いや奇跡を噛み締めろ。俺は出会う事なく死んだからな。お前とは違って」

 

「…………」

 

「……今世で出会えた事すら奇跡だと思ってるのに、前世で出会って、しかもそのおかげでポルナレフと再会して、徐倫もお前も死なずに済んだんだろ?……妬みしかねえな」

 

「…………今、お前に謝ったら、」

 

「オラオラの刑」

 

「……そうだよな……だから、謝罪はしない。その代わりに、あの子を死ぬまで大事にする」

 

「ふん……当然だな」

 

 

 

 

 

 

「あのー……」

 

「そっちの話、終わった?」

 

「!……ああ、終わったぜ」

 

「……どうした?」

 

 

 向こうの俺と共に、恐る恐る承太郎達に声を掛けた。……俺達が気づいた時には既に、何やら深刻そうな雰囲気で話し合っていたが……いったい何を話していたんだろうか?

 

 おっと、それはさておき。

 

 

「質問13まで終わったから、残りはあと2回……そのうちの1回、質問14を俺達で使ってもいいか?」

 

「承太郎さん達2人に、俺達から質問したい事があるんだ。さっき空条がそっちの俺に質問してもカウントされたし、多分こういうのでもいけるはず」

 

「別に構わねえが……お前達から、俺達に質問したい事?あまり想像がつかねーな」

 

「……俺も構わない。……で、その質問とは?」

 

 

 2人から同意を得られたので、向こうの俺と頷き合い、さっそくその質問を言葉にした。

 

 

「質問その14――」

 

 

 

 

 

 

「「――――今、幸せか?」」

 

 

 ……示し会わせた訳でもないのに、向こうの俺と声が重なった。質問された2人は、揃って目を見開いている。

 

 

 さて、ちょっと話が変わるが。不思議な事に俺達はつい最近……というか今日。それぞれの世界の承太郎から、“幸せ”という言葉を聞いたばかりだった。

 

 俺の方は、ジョナサンとディオの引っ越しの手伝いが終わった後、その帰りにジョナサンが承太郎に“幸せか?”と聞いた時、承太郎がそれに肯定する形で。

 そして向こうの俺の方は、徐倫にプロポーズした後、空条さんに“あなたの家族になっても良いですか?”と聞いた時。

 なんと、あの“空条承太郎”が“俺はこんなに幸せになっていいのか?”なんて言いながら泣いていたのだという。

 

 

 ……とまぁ、そういう事で。俺達は彼らから“幸せ”という言葉を既に聞いていたのだが……

 この部屋のルールの“嘘偽りなく”という部分を利用して、承太郎達は今本当に幸せなのかを、改めて確かめたいと思った。

 

 きっとこの2人は、例え嘘だったとしても俺達に気を遣って“幸せだ”と答えるだろう。

 でも、この部屋に閉じ込められた今なら……本心からそう言ってくれた場合は、ちゃんとカウントされる。

 

 それをこの目で確かめる機会は、今しかない。目に見える形で、承太郎達が幸せを感じている事を確かめる機会は、今しかないんだ。

 

 

「……何故今、改まってそんな事を?」

 

「今なら、ほら。あのカウントが動けば、承太郎さん達が本心からそう言ってくれたかどうかが目に見えて分かるので」

 

「ああ、そういう事か……」

 

 

 向こうの俺の説明を聞いて、承太郎達は納得したようだ。……彼らは顔を見合わせ、頷き合った。

 

 

「……回答、14――」

 

 

 

 

 

 

「「――――幸せだ」」

 

 

 2人が揃ってそう答えると、カチッという音が聞こえた。……回答数が14になっている。つまり承太郎達は、本心から幸せだと答えてくれた!

 向こうの俺に向かって片手を上げる。笑顔で同じ動作をしてくれた。ハイタッチ!やったぜ!良かった良かった。

 

 

 前世、及び前々世の最推しが幸せなら、俺達も幸せ!素晴らしい!

 

 

「……ふむ。俺達も、今の状況を利用して質問してみるか?」

 

「そうだな……だが、こっちも単純に幸せかどうかを聞くだけじゃ芸が無いぜ。……それに、」

 

「ん?」

 

「シド達の事は、これから俺達が今以上に幸せにしてやるんだ。……だから、“今”幸せかと聞いても意味ねえだろ?

 “今”が一番幸せ、なんて言われたら困るんだよ。こいつらにはもっと幸せになってもらわないとな……」

 

「!……なるほど。それもそうか……ならば、こういう質問はどうだ?」

 

 

 ……俺だけでなく、向こうの俺もそうだと思うが、今でも充分幸せなんだけどなぁ。どうやら俺の親友にとってはまだまだ足りないらしい。

 やっぱりその辺の認識にどうしても齟齬が出てしまう。別に嫌ではないんだが、これ以上幸せになったらバチが当たりそうでちょっと困る。俺、神の存在は認めていても信用はしてないから……

 

 そんな事を考えていたら、空条さんが承太郎に耳打ちを始めた。何を話しているんだろうか?

 

 

「…………ほう……悪くねえな。無論、手放すつもりは無いが……現時点での本心を知る事ができるなら、質問する価値はある」

 

「ああ。……しかし万が一、その結果が俺達にとって好ましくないものであった場合は……この子達には悪いが、少々教育(・・)を施さなくては、な……それを判断する良い機会となるだろう」

 

「…………そうだな。その場合は、ちゃんと教育(・・)してやるとしよう」

 

 

 おい、待て。教育(・・)ってなんだ?嫌な予感しかしないんですけど!?いったい何の質問をするつもりだ!?

 

 

「……では、さっそく質問するか?」

 

「おう。……質問、15――」

 

 

 

 

 

 

「――――お前達は、これからも一生……」

 

「……俺達の側から離れないと、約束できるか?」

 

「えっ?」

 

「んん?」

 

 

 思わず、向こうの俺と顔を見合わせる。想定外の質問だった。

 

 

「なんでわざわざ、そんな質問を?」

 

「……理由は、お前らがさっき俺達に質問した時と同じだ」

 

「お前達の本心を知りたい……正直に、答えてくれ」

 

 

 承太郎達は、真顔だった。それになんというか、空気が重くなった気がする。……2人から感じられるその重さと緊張感に尻込みしていると、向こうの俺が口を開いた。

 

 

「承太郎さん……あなたもよく知っているはずですが――未来は突然変化するもの……もしかしたら、何らかの理由で俺達があなた達から離れなければならない日が来るかもしれない……」

 

 

 すると、空気がさらに重くなった。……向こうの俺の馬鹿っ!今のは絶対に承太郎達の地雷を踏んだぞ!?

 あぁ、ほら!2人の顔から感情が抜け落ちてるじゃねぇか!?どうすんだよぉっ!?

 

 

「ですが。……それはあくまでも、その何らかの理由に俺達の気持ちが……あなた達から離れたくないという気持ちが、反映されなかった場合の話です」

 

「!」

 

「……そういった、やむを得ない状況になる可能性がある事を前提として、俺達の回答を聞いてください。……回答その15――」

 

 

 

 

 

 

「――――俺が、自らの意思で(・・・・・・)、承太郎さんの側から離れる事は一生ない……そう、約束しよう」

 

 

 …………なるほど。

 

 

「無条件でそんな大事な約束をしたら、この先の未来で万が一やむを得ず承太郎達から離れなければならない状況になった時。

 結果的に、承太郎達を裏切る事になってしまう。そんな不誠実な真似はしたくない。だからこそ、自らの意思で(・・・・・・)という条件を付けた……そっちの俺が言いたいのは、そういう事だな?」

 

「あぁ、そうだ」

 

 

 向こう俺がこちらの言葉に同意すると、一気に空気が軽くなった。……承太郎達が唖然としている。よし、今のうちに俺も答えてしまえ!

 

 

「俺も、そっちの俺がさっき話した事を前提として、約束する。自らの意思で、承太郎の側から離れる事は一生ない、と」

 

 

 俺がそう答えた瞬間、カウントの音と共に回答数が15になった……その時。

 

 

「「――ははははははッ!!」」

 

「うおおうっ!?」

 

「うえっ!?」

 

 

 急に、承太郎達が揃って大笑いした。な、なに?何!?なんで2人揃ってそんなご機嫌なんだ!?

 というかこっちの承太郎の大笑いは何度か見た事があるからさておき、6部承太郎の大笑いとか激レアじゃん!?

 

 

「くくッ、ふ、は……ッ!ああ、くそッ!!てめーらマジでいい加減にしろよ!?」

 

「まったく、これだから“園原志人”は……ッ!!ふふ、くくく……!!」

 

「…………えっと、結局俺達は怒られてるのか?喜ばれてるのか?」

 

「どっち??」

 

「「どっちもだよ!!」」

 

「「ええぇー……?」」

 

 

 再び、向こうの俺と顔を見合わせる。……ちょっと不満そうな顔をしていた。きっと俺も同じ顔になっているだろう。そうだな、解せないよな。分かる分かる。

 

 

(…………次からは志人の事を、無自覚人たらし天然ジゴロウルトラ鈍感本体って呼ぶね)

 

(え、なんで??つーか何だよその字面!?)

 

 

 心の中で、イージスが何故かそんな事を宣った。どういう事だ、それは!?

 

 

「……それで、どうする?」

 

「ん?」

 

「“園原志人”が予想の遥か上を行く発言をしたせいで思わず大笑いしちまったから、よく聞こえなかったが――鍵、開いてるんじゃねえか?」

 

「「「あっ」」」

 

 

 承太郎に指摘されて、思い出した。そうだった!部屋の鍵っ!!

 4人揃って、さっきまで開かなかった扉の前に立つ。そして、俺が代表してその扉に手を掛けた。……扉が、開く。

 

 

 

 

 

 

 ――――眩い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 

 

 ――目を開けると、ここ数日で見慣れた客室の天井が見えた。身を起こし、欠伸する。

 

 

(…………うーん……?)

 

 

 何故か、寝て起きた、という感覚が薄い。ついさっきまで起きていたような、そんな気がするのだ。

 ……内容は全く思い出せないが、多分夢を見ていたのだろう。それなりに長い夢を。

 

 

「…………う、……」

 

「あ……おはようございます」

 

「……ん」

 

 

 隣のベッドで、承太郎も起き上がった。例のジョナサンの夢を見た初日以外は、俺の方が先に目覚めて着替えなどを済ませた後にこの人が起きる、という流れが続いていたのだが……今日は珍しく、同じタイミングで目覚めたようだ。

 

 

「…………ちゃんと睡眠を取れた気がしない……」

 

「承太郎さんもか?俺もなんだよなー……昨日の慰労会ではしゃぎ過ぎた、なんて事もないはずだし……」

 

「…………歳、かもな……」

 

「あぁー、俺達もそれなりに歳食ったって事……んん?」

 

 

 あれ……?

 

 

「つい最近、同じ事を言ったような気がするんだが、気のせいか……?」

 

「……いや。俺も最近、お前からそんな言葉を聞いた、ような……?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……え、どうしよう。ど忘れとかマジで俺達もう歳なの??」

 

「やめろ、言うな……」

 

 

 今年30になったばかりのオッサンと、40過ぎの美中年で揃って頭を抱える。……よし。承太郎の言う通りこの話は止めよう、そうしよう!

 

 

 気を取り直し、俺達は順番に顔を洗って着替えを済ませていく。

 そうしている間に、いつの間にか頭がスッキリしていた。……さて、これでようやくまともに話せそうだな。

 

 

 今日目覚めた時から、どういう訳かずっと頭に浮かんでいる“とある考え”について。

 

 

「なぁ、承太郎さん」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「――エリンさんと一緒に、孫を抱いてみたいと思わないか?」

 

「っ、ぐっ!?ごほ……ッ!?」

 

「えっ、あ、ごめん!!」

 

 

 その時、承太郎はちょうど水を飲んでいた。それが気管に入ってしまったらしい。慌ててその背中を擦る。すみませんでした!!

 

 

「いき、なり……っ、何を言い出すんだ、お前は!?」

 

「ごめん……タイミングが悪かったな」

 

「……謝罪はもういい。それよりも、何故そんな事を聞いた?俺達はお前と徐倫に孫の催促をするつもりは……

 いや、待て。まさか、昨日誰かに何か余計な事を言われたのか?」

 

「いやいや、そうじゃなくて!さっき起きた時に頭に浮かんだだけで、これには誰も関係していない。俺の独断だ」

 

「…………本当か?」

 

「本当だって!」

 

 

 そう。何故か急にその考えが頭に浮かんだだけで、余計な事は何も言われていない。あくまでも、俺の個人的な考えだ。

 

 

「……俺は、徐倫を一生護っていく覚悟は出来たが、未だに結婚や子作りに対する躊躇いが残っている……だが、それでも……

 自分でも、よく分からないんだ。何故か今日目覚めた時に突然その考えが頭に浮かんで……それしか、考えられなくなった。

 

 

 ――承太郎さんに、孫の顔を見せてやりたい」

 

「――――」

 

「母さんと、婆ちゃんにも。孫と曾孫の顔を見せたい。……そういう、親孝行がしたい」

 

「――――」

 

「…………いやまぁ、まずは徐倫とちゃんと話し合って彼女の気持ちを最優先に考えたいし、エンポリオくんの事もあるし。

 最終的に頑張る事になるのは徐倫だと思うし、実際子供が産まれる時に俺なんかが彼女の助けになれるかどうか不安だけど、でも……っ、承太郎さん!?」

 

 

 俺の考えを明かし、ついつい言い訳まで口にしてしまったその時。承太郎の体がふらついて、ソファーに座り込んでしまった。

 それから顔を両手で覆って天を仰ぎ、そのまま動かなくなる。……ど、どうした?

 

 

「承太郎さ、」

 

「今話し掛けるんじゃねえ」

 

「…………ごめん、なさい」

 

「違う。怒ってない。謝るな」

 

「は、はい……」

 

 

 怒ってないと聞いて、ひとまずほっとしたが……話し掛けるなってどういう事だ?

 

 

 

 

 

 

「あ”あ”あー……くそ……こっちの情緒を好き勝手に掻き乱してぐちゃぐちゃにしやがってこの無自覚人たらし天然ジゴロウルトラ鈍感義息(むすこ)がふざけんなよつーか実の母親と祖母だけでなく俺にまで孫の顔を見せたいってそれはつまり俺への親孝行なのかそうなのかいじらしい子だなクソッタレがなんでこの子は俺の実の息子じゃねえんだよあ”あ”あー――」

 

 

 

 

 

 

「…………じょ、承太郎、さん……?」

 

「…………志人」

 

「な、何ですか?」

 

 

 

 

 

 

「――今日から俺の事を“お義父さん”と呼びなさい」

 

「ファッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「……シド」

 

「んん?」

 

「俺は…………お前に対して、墓場まで持って行こうと決めた秘密が、1つだけある」

 

「え、」

 

「おそらく、お前にもあるんじゃねえか?墓場まで持って行くと決めた秘密が……」

 

「――――」

 

 

 朝食の途中で、親友からそんな発言が飛び出した時。俺は思わず握っていた箸を落としてしまった。

 

 

 

 

 

 

 昨日はディオとジョナサンの引っ越しの手伝いをして、承太郎と共に帰って来たのだが……承太郎は“今日は1人で寝る気分じゃない”とかなんとか言って、俺の家に泊まった。

 まぁ、昨日は前世のジョナサンについてとんでもない事実が発覚したばかりだし、承太郎もさすがにかなり動揺してたし、無理もないな。

 

 で、翌朝。俺が起きたのと同じタイミングで承太郎も目を覚まし、2人で朝食を作った。

 それから、さっそく出来上がった朝食を食べ始めたところで……冒頭の爆弾発言によって箸を落としてしまった訳だが。

 

 

「…………なんで、いきなり、そんな事を……」

 

「……さあな……俺にもよく分からん」

 

「は?」

 

「俺は、今日目覚めた時に突然思い浮かんだ事を、なんとなく勢いで話してるだけなんだ」

 

「……はぁ??」

 

 

 なんだそりゃ……承太郎にしては珍しい、……という程でもない、か?こいつ、めちゃくちゃ頭良いくせに考えるよりも先に体が動いてる事が多々あるし……

 

 

「……で?」

 

「ん?」

 

「確かに、お前の言う通り。俺はとある秘密を抱えているが……それを聞いてどうするんだ?正直に言うと、承太郎にどうしても聞きたいって言われたら、俺はそれを断れる気がしない」

 

 

 俺が抱えている秘密……前々世の事は、どうしても隠しておきたい。だが、それを隠す事で承太郎との友人関係が崩壊するくらいなら……全てを明かさなければならない。

 

 

「……さっき言ったよな?俺にも墓場まで持って行こうと決めた秘密がある、と……って事はお互い様じゃねーか。

 お前が話したくないなら、無理して話す必要はない……だが、その代わりに俺もこの秘密はお前に明かさない。それだけの事だ」

 

「…………良いのか?本当に?」

 

「ああ。……それを話すか話さないかは、お前次第だ。どちらにせよ親友止めたりはしねえから、そこは安心しろよ」

 

「…………」

 

「……シド?」

 

「……お前、つい最近それと同じ事を俺に言わなかったか?」

 

「あ?……そういえば、なんかそんな気もするな?何故だ?」

 

「さぁ……?」

 

 

 2人揃ってデジャビュを感じて、首を傾げる。はて?何故だろうか?……って、それはさておき。

 

 

「……承太郎の考えは、分かった。その言葉に甘えて、この秘密は墓場まで持って行く事にする。……だから、お前も無理して話す必要は無いからな?

 俺も約束する。その秘密を話しても話さなくても、どちらにせよ親友を止めたりしない」

 

「ん。……ああ、そうだ。そのついでに、もう1つ約束して欲しい事がある」

 

 

 もう1つ?……何だろう?

 

 

「新しく、ではなく。改めて約束して欲しい事なんだが……高2の時の、あの誓い。もちろん覚えてるよなあ?」

 

「……互いに、護り合う事?」

 

「それもそうだが、重要なのはもう1つの方だ」

 

「…………これからも旧図書館に……は、もう免除で良いよな?卒業したし。それ以外はちゃんと約束守るつもりでいるけど?」

 

「ああ、ちゃんと覚えてたな。よし。……そう、あの時誓ったよな?

 

 これからも俺と会ってくれる。急に連絡を断つ事もしない……一生、俺の親友として、俺の隣にいる、と。

 それを、今この場で改めて誓ってくれ。絶対に、その約束を破らないように……」

 

 

 承太郎は、真顔だった。それになんというか、空気が重くなった気がする。……この感覚にも、何故か覚えがあった。

 その空気に気圧されて、思わず息を呑んだ……その時。頭の中に、何の前触れもなく思い浮かんだ言葉。

 

 

「未来は、突然、変化するもの……」

 

「!」

 

「……これから先、俺の気持ちに……承太郎の側から離れたくないという気持ちに関係なく、やむを得ず離れなければならないような、そんな状況になる可能性もある……

 

 

 だが。それを前提として、改めて誓おう――俺が、自らの意思で、承太郎の側から離れる事は一生ない、と」

 

 

 ……口が勝手に動いた、気がする。しかし、それは紛れもなく俺の本心だと、不思議とそう確信していた。

 

 俺からそんな言葉を聞いた承太郎はしばらく唖然としていたが、やがて噴き出して大笑いを始める。

 おそらく、普段の俺だったらそれに驚いたはず。でも、今はそれほど驚いていない。というかまた既視感を感じているんだが……いったい何なんだろうな?これは?

 

 

「くく、っ、ふふふ……ッ!!」

 

「……俺、そんなに笑える事言った?」

 

「っ、ああ、言ったよ!…………まったく、とことん揺さぶってくるなあ、お前は……」

 

「揺さぶる……?」

 

「…………いや、こっちの話だ」

 

 

 承太郎は、ほんの一瞬苦笑いを浮かべて……それからすぐにニヤリと笑い、テーブルに頬杖をついて俺を見つめる。無駄に挑発的で決まってる顔だなこの野郎。

 

 

「……なあ、志人」

 

「んん?……何だよ」

 

 

 

 

 

 

「――さっきの誓いは逆プロポーズだと思っていいのか?」

 

「んな訳ねぇだろうが!?頭沸いてんのかてめぇっ!?」

 

 

 

 

 

 

 






※今回は人物紹介の代わりに、混部時空の園原と原作時空の園原、混部時空の承太郎と原作時空の承太郎の、それぞれの違いを分かりやすくするため、スタンドのパラメーターの5段階評価のように表現してみました!(解説付き)

※作った表の拙さは見逃してくれるとありがたいです。また、この表が上手く表示されなかった場合は、閲覧設定などを利用して各自で調節をお願いします!

※最後にアンケートについての説明もありますので、そちらもご覧ください!





・園原志人
       ┃混部時空 ┃原作時空
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 性格の明るさ┃  A  ┃  B
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 凄み    ┃  C  ┃  A
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 冷静さ   ┃  B  ┃  A
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 クソデカ感情┃  E  ┃  C
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 心の闇   ┃測定不可能┃  D
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━


 性格の明るさについては、(肉体年齢)10代の混部園原の方が明るく、無邪気。原作園原の方は、30になった事でいろいろ落ちついた。 

 凄みと冷静さも、年齢差によって変化。まだ年若くスタンド使いとしての経験が浅い混部園原よりも、10年以上の経験がある原作園原の方が上。
 原作園原にはあまり自覚が無いが、もはや彼の凄みは混部承太郎……つまり、原作3〜6部時点の承太郎の凄みと同程度にまで達している。

 (承太郎への)クソデカ感情については、混部園原はまだそこまで重いものを抱いていない。そして自覚も無い。
 原作園原の方はそれなりに重い。付き合いが長く、その上自分の“全て”を受け入れてもらった事もあり、若い時よりも重さが増している。“護りたい”という気持ちが特に強い。

 心の闇は、混部園原の方が5段階で測定不可能な程に深い。圧倒的に深い闇。

 父親本人への憎悪と、自分の体に流れる父親の血に対する嫌悪感が強い。心の奥底ではドス黒い感情が渦巻いているが、それは普段から厳重に封印されている。
 なお、原作園原の方は父親が早々に死んだ事、母親が亡くなっても祖母と共にしばらく生活できた事から、心の闇はそれほど深くならずに済んだ。




・空条承太郎
       ┃混部時空 ┃原作時空
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 性格の明るさ┃  C  ┃  D
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 凄み    ┃  A  ┃測定不可能
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 冷静さ   ┃  B  ┃  A
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 クソデカ感情┃測定不可能┃  A
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━
 心の闇   ┃  B  ┃  C
 ━━━━━━╋━━━━━╋━━━━━


 性格の明るさは、混部承太郎の方は転生後に花京院達と再会した事や、園原と旧図書館組という理解者を得た事から、前世よりも明るい。
 原作承太郎も園原と出会う前と比べれば明るい方だが、年齢的にかなり落ち着いている。

 凄みと冷静さについては、やはり年齢差によって変化する。混部承太郎は精神年齢が肉体年齢に引っ張られ、時に冷静さを失う事もあるため、原作承太郎よりも低い。
 原作承太郎の凄みは、原作園原の影響でスタンド能力の特訓を続けた結果上昇した戦闘能力と、妻と娘を物理的にも精神的にも護るという強い覚悟が合わさり、測定不可能な程に増幅された。

 (園原への)クソデカ感情は、混部承太郎の方が測定不可能な程に強い。特に執着心が。原作承太郎の執着も強いが、混部承太郎の執着には負ける。

 混部承太郎は、原作承太郎よりも前世で散々な経験をしたせいか、今世で奇跡的に出会えた混部園原という真の理解者への執着、独占欲、庇護欲、友愛、信愛、敬愛、etc……が非常に強い。クソ重い。
 原作承太郎の方は原作園原だけでなく妻や娘、戦友達にもそれらの感情がいくらか向けられて分散された事で、混部承太郎よりは若干弱め。

 心の闇については、原作承太郎よりも前世で多くのものを失っている混部承太郎の方が深いが、どちらも園原の存在によって少しずつ闇が晴れてきている。




・総合評価(?)

 一見明るく和気藹々としている親友組だが、その裏側は闇と病みが混在する真っ黒世界。表側の光が強い程、裏側の影は濃くなる……否、闇は深くなる。
 ちなみに。この話の時点で園原は承太郎の病みを知らない(今後もそれを知る日は来ない)し、承太郎も園原の闇を知らない(後に思い知る)。

 それに対し、10年以上の経験と付き合いの長さによって、精神的な安定感と戦闘能力も含めた凄みが強過ぎる博士&助手組。
 熟年夫婦、もとい熟年父子、もとい熟年相棒同士。阿吽の呼吸。ツーカー。その上、今後はさらに義父と義息という関係が加わるため、これでもかと繋がりが強化されている。






 結論――闇と病みの混在で“カオス”な親友組。安定感と凄みで“つよつよ”な博士&助手組。






※この下に、アンケートについての説明があります!







 本作をご覧いただきありがとうございます!どうか、アンケートへのご協力をお願いいたします
m(_ _)m


 アンケート内容は――本作の中に出て来た15回の質問以外で、親友組と博士&助手組に何か聞きたい事はありますか?というものです


 選択肢は、以下の2つ


①ある(感想欄にて簡単にお答えします)

②ない


 ①の場合。親友組から博士&助手組への質問でも、博士&助手組から親友組への質問でも……

 はたまた、混部園原、混部承太郎、原作園原、原作承太郎の4人それぞれへの質問でも構いません

 これに関しては、感想欄で直接質問してもらえた場合、簡単にですがお答えします!

 ただし……中には今後の話の展開上、はっきりとお答えできない物もあるかもしれません。予め、ご了承ください

 ちなみに、メッセージでも構いません。お気軽に質問してもらえたらと思っています(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)


 しかし、②の場合は……このアンケートは余計なお世話だったかもしれませんね(;・∀・)申し訳ない 




 なお。pixivでも同じアンケートを行いますが……


 万が一。pixivでもハーメルンでも、選択肢①を選ぶ人が多くて、さらに感想欄やメッセージでの質問数が合計10個以上になったら、

 この場合は、それらの質問をまとめて本作のような小説にするか、会話文のみのSSを書いて投稿してみようかな?

 もちろん、読者の皆様の需要があったら、の話ですが(・・;)


 逆に、②を選ぶ人が多かったら……

 以前からpixivで、「空条承太郎の親友」シリーズの続きでマイピク限定の話を書きたいと思っていたのでそれを進めるか、

 それとも、同じくpixivで承太郎の友人シリーズでも、忠犬と飼い主シリーズでもない、新しいシリーズを書き始めるか……うーん、悩みますね笑




 と、長々と大変失礼いたしましたm(_ _)m

 これにて、アンケートについての説明は終わりです。ここまでご覧いただき、ありがとうございました!

 改めて、読者の皆様。どうかご協力のほど、よろしくお願いいたします!



本作の中に出て来た15回の質問以外で、親友組と博士&助手組に何か質問したい事はありますか?

  • ある(感想欄にて簡単にお答えします)
  • ない
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