空条承太郎の友人~番外編~   作:herz

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・形兆視点。

・ご都合主義、捏造過多。キャラ崩壊注意!!

・シリーズの本編のいくつかの話を、形兆視点で書いています。いろいろ飛ばし気味です。




 ――虹村形兆だって、幸せになっても良いはずだ。




虹村形兆は、普通の幸せな人生を送る

 

 

「――あなたが望むなら、この命も捨てます」

 

「兄貴ぃ!?」

 

 

 

 

 

 

「――――はぁ?」

 

 

 あいつと出会ったその日に、俺は罪を償いたいと申し出た。……胸ぐらを掴まれた時は、きっと殴られるんだろうと思っていた。

 

 だから、それも受け入れようとしたのに。

 

 

「――そんなに軽々しく!自分の命を捨てるとか言うなぁっ!!」

 

 

 次に聞こえたのは、そんな思いもよらない言葉。

 

 

 その時の俺は、まだ知らなかった。前世で俺が殺した男――園原志人は、底無しのお人好しなのだという事を。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「兄貴、兄貴!今日仗助に頼んで、志人のアニキに会って来たぜぇ」

 

「何?……発作を起こされなかったか?」

 

「おー、そうそう。仗助がそれを心配して志人のアニキに聞いてたけど、俺1人なら大丈夫そうだってよ」

 

「…………そうか。……で?その志人のアニキとかいう呼び方は何だ?」

 

「あっ、そうだった!聞いてくれよぉ、兄貴!志人のアニキは前世の仗助の恩人で、超カッコいい人だったんだぜ!」

 

 

 ……要領を得ない億泰の話をまとめると、どうやら園原志人の存在は前世の東方仗助に大きな影響を与えていたらしい。

 数日前、財団の支部で奴に睨まれた時は何事かと思っていたが……なるほど。俺が前世の恩人を殺した人間だと知ったからか。

 

 

 あの出会いから、既に数週間が経過していた。……あれ以来、園原とは顔を合わせていない。

 

 同じ高校に通っているらしいが、億泰が仗助から聞いた話によれば、普段は軽く変装する事で身を隠しているようだ。

 二度と会う事は無い、なんて事は無いと思うが、会う度に発作を起こされては困る。……本人に直接何か償いをする事を断られてしまった今、用も無いのに接触する必要は無い。

 

 

 彼は俺に、"普通の幸せな人生を送れ"と言った。それが、俺に出来る唯一の償いだと。

 

 

「お前、自分は許されない人間だからって、自分から不幸になる事を望んでるんだろ?

 

 だから俺は、お前の望みの正反対の生き方をしろって言ってるのさ。――自分を殺した人間が望む断罪なんて、俺は一生やってやらねぇ」

 

 

 その言葉を聞いた時、悔しい事に納得してしまった。……確かに俺は、不幸になる事を望んでいた。

 自分を殺した人間が望む事なんて、それは叶えたく無いだろう。だから彼は、それと正反対の生き方をする事が償いになると言った。

 

 ……いや。もしかしたら、そうやって俺を振り回す事が目的だったのかもしれん。

 

 そう思うと、彼にしてやられた事への苛立ちと……弟を残して死なずに済んだ事への感謝が混ざり、複雑な心境になる。

 

 

 彼と二度目の顔合わせをしたのは、そんな複雑な心境を感じてから、数日後の事。

 

 

「おっ?――志人のアニキ!」

 

「っ馬鹿、億泰!」

 

 

 きっかけは、億泰の迂闊な行動だった。

 

 その日はちょっとした用事があって、億泰と共に財団の東京支部に向かったのだが、そこで億泰が承太郎さんと一緒にいる園原を見つけて、声を掛けてしまった。

 俺は彼がいる事に気づくのが一瞬遅れて、億泰を止める事ができなかったのだ。

 

 また発作を起こされたらと焦って、園原の様子を伺う。……予想外な事に、彼は平然としていた。

 

 

「よぉ、億泰くん。……虹村も、久しぶり」

 

「あ、ああ……」

 

 

 それどころか、向こうから声を掛けて来る。……信じられん。俺は前世の貴様を殺した男だぞ!?

 

 

「……おい、シド」

 

「んん?」

 

「大丈夫なのか?」

 

「あぁ……思ってたより、平気みたいだ。全然落ち着いてる」

 

「……そうか。無理はするなよ」

 

「おう」

 

 

 彼を止めてくれるはずだと期待していた承太郎さんも、止めるつもりは無いらしい。

 

 

「……貴様、何を考えている?俺は前世の貴様を殺した殺人犯だぞ?被害者側から犯罪者に話し掛けるなど、」

 

「そんな事より億泰くん。そいつ、あれから不幸になろうとしてないか?」

 

「おう!大丈夫だぜぇ。俺が見張ってる」

 

「よしよし。引き続き頼んだ」

 

「話を聞け!!」

 

 

 今のは、わざと話を遮ったのだろう。……何なんだこいつは?何を考えているのかさっぱり分からん。

 

 

「話はちゃんと聞いてる。被害者側から犯罪者に話し掛けるだかどうとか、だろ?……だが、それは前世の話だ。今世の虹村は犯罪者じゃない。俺も、被害者ではない。

 今世のお前は素直になれない弟想いの兄で、今世の俺は――そんなお前と、できれば仲良くなりたいなと思っているだけの、ただの高校生なんだよ」

 

「――――」

 

「それなら、こっちから話し掛けるのは自由じゃないか」

 

 

 そう言って笑う呑気な男に、怒鳴ろうと思えばそうできただろう。だが、俺はそうしなかった。……心底認めたくないが、園原の言葉に安心と喜びを感じている自分がいたからだ。

 

 

「くくっ……!まあ、諦めろよ形兆。こいつは、こういう男だ」

 

「……承太郎さん」

 

「こいつはな――底無しのお人好しだぜ」

 

 

 底無しの、お人好し。……その言葉は不思議と、腑に落ちた。

 

 

 それ以来。園原は俺を見かける度に声を掛けて来た。戸惑いながらも応対して分かったのは……あまりにも、居心地が良過ぎるという事。

 あいつとの会話は退屈しない。そして引き際をよく分かっていて、こちらを不快にさせる事がほとんど無い。

 

 園原が承太郎さんの親友だと最初に聞いた時は疑問に思っていたが、この居心地の良さを知って深く納得した。

 これがあるから、あの人は園原を親友と呼んでいるのだろう。俺や承太郎さんのように、周りから気難しいと言われる人間にとって、園原は非常に接しやすい人間だ。

 

 しかし後に、親友と呼ぶ理由はそれだけでは無い事を知るのだが……それはさて置き。

 

 

 俺に積極的に声を掛ける園原だが、どうやら俺の方から突然声を掛けたり、物理的に距離を詰めるのは駄目ならしい。

 一度、俺の方から声を掛けた事がある。その時、園原は俺がいる事に気づいておらず突然だったため、発作を起こした。さらには俺が思わず慌てて駆け寄ると、それが悪化してしまうという始末だ。

 

 幸い、一緒にいた承太郎さんが落ち着かせてくれたので事なきを得たが、あれにはこっちの心臓も止まるかと思った。

 ……しかし。そんな事があっても、発作が収まった直後に"驚かせて悪い"と謝ってくるわ、後日にまた普通に話し掛けてくるわ、そんな調子に怒りを通り越して呆れを感じた。

 

 

 

 

 

 

 そんな、底無しのお人好しと交流する事に慣れて来た頃。

 

 

「兄貴ィッ!今グループ見たんだけどよぉ、例の正体が分からないスタンド使いに、承太郎さんと志人のアニキが攻撃されたんだってよ!」

 

「――あ"ぁ?」

 

 

 そんな話を聞いた俺は、億泰に詰め寄った。

 

 

「どういう事だ、説明しろ!簡潔に!!」

 

「えっと、えっとぉ……簡潔、」

 

「ああ、待て。やっぱりいい。とりあえず園原に怪我は?」

 

「け、怪我は無いってさ」

 

「…………そうか。なら良い」

 

「……志人のアニキの事が心配なのか?」

 

「そりゃあダチ(・・)なら心配するのも当然――っ!!」

 

 

 片手で口を押さえた。……今、俺は何を口走った?

 

 

「兄貴、今、」

 

「忘れろ」

 

「いやぁ、でも、」

 

「――忘れろ」

 

「お、おう……」

 

 

 億泰を黙らせてから、自分の発言の意味を考える。……いつの間にか、俺は園原の事を"ダチ"だと認識していたらしい。こんな事で自覚するとは、間抜けにも程がある!

 

 そして後日。億泰の暴露によって園原にもそれを知られてしまい、それがきっかけであいつが俺の事を"虹村"ではなく、"形兆"と呼ぶようになる。

 園原からは"志人"と呼んでもいいと言われたが、調子に乗るなと一蹴した。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――いいから黙って俺にお前を護らせろ!俺を頼ってくれよ、承太郎……!!」

 

 

 その悲痛な叫びを聞いた俺は、唐突に理解した。――空条承太郎が、園原志人を親友と呼ぶ理由は、これなのだ、と。

 

 

 火宮が暴走し、スタンドの鋏を持って承太郎さんに襲い掛かった瞬間。園原は彼に背を向けて、火宮の前に生身で立ち塞がった。

 土壇場でイージス・ホワイトの新たな能力が発現したおかげで無事だったが、それが無ければ怪我をしていたのは園原だ。

 

 承太郎さんなら、園原が庇わなくても上手く対処できたはず。余計な真似をする必要は無かったのだと、その時はそう思っていた。

 

 だが。"護らせろ"、"頼ってくれ"という悲痛な叫びを聞いた後では、そう思えなくなった。……ほんの一瞬、その叫びを聞いた承太郎さんが泣きそうな顔になったのを目撃してしまったら、尚更。

 本当に一瞬で、おそらく他の奴らは見えていなかったと思う。あの時、周囲の視線を集めていたのは園原だったから。

 

 

「おい、承太郎さん!……バット・カンパニーが園原を追跡している。そいつが案内するからついて行け」

 

 

 前世の娘に発破を掛けられ、園原を追い掛けようとする承太郎さんに、俺はそう声を掛けた。

 

 園原が、諦観の表情で部屋から出て行くのを見た時。あれを1人にしたら駄目だと思った。しかしだからと言って、俺が追い掛けても何も出来ない。

 出来た事は、未練がましくバット・カンパニーに追跡させる事ぐらいだ。

 

 だが俺ではなく、園原の親友である承太郎さんなら。あいつのために何か出来る事があるはず。

 園原と承太郎さんを確実に会わせる事ができれば……今まで、俺に臆する事なく話し掛けてくれた園原へ、借りを返すぐらいはできるだろうと、そう思った。

 

 …………決して、あいつを心配したからではないと、自分に言い聞かせる。

 

 

「……おい。それよりも、その女の処分は?」

 

「おっと。そうでしたね。――とりあえずこの女には、財団を通じて理由をでっち上げてこの学校から速やかに退学してもらうという事で」

 

「っは!そいつはいいな。やってしまえ」

 

 

 とりあえず、園原達のいざこざの原因になった女に八つ当たりした。……女じゃなかったら殴れたのに。ああ、腹立たしい。

 

 

 その後。園原達が仲直りした事は聞いたが、まさかそれがきっかけで承太郎さんのファンクラブに見つかってしまったとは、さすがに予想外だった。

 園原に対するファンクラブの人間からのいじめが始まったが、そこは俺達でフォローし、出来る限り園原を1人にしないようにと、メッセージアプリで通達される。

 

 俺も、あいつに何かあったら寝覚めが悪くなると思い、大人しく指示に従った。

 

 

 

 

 

 

 そんな、ある日の事だった。――園原が熱射病で死にかけたのは。

 

 

「……前世に、未練は無い。あの時死んだ事も、今は後悔していない」

 

 

 病院に運ばれた園原の下へ見舞いに行った時。泣き喚く仗助に対して、園原はそう言った。

 

 仗助と――俺に出会えて、本当に良かったと思っている。前世で死んだ事が気にならないぐらい、今世の生活が楽しい。今日も死にかけたが、俺達……前世を持つ仲間と出会えたおかげで助かった。

 ――俺達が、自分を生かしてくれた。……その事実があるだけで満足だと、あいつは語った。

 

 柄にもなく、泣きそうになった。

 

 きっと園原は、かなり前から俺の事を許していたのだろう。それがようやく理解できたのは、間違いなくその言葉のおかげだ。

 

 

「ぐす……っ!おい、形兆」

 

「…………何だ」

 

「今まで、悪かったな」

 

「…………別に、いい。俺も、悪かった」

 

 

 それ以来、仗助は俺に敵意を持つ事を止めた。そして俺も――"普通の幸せな人生"を送る事から逃げるのは止めようと、そう決意したのだ。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 あれから時は過ぎ、また春になった。今年からは3年生……前世ではできなかった、大学の工学部進学を目指すつもりだ。

 自分のスタンドの影響で、輸送機器の構造や仕組みに興味を持った事がきっかけだった。

 

 

 進級した俺は、承太郎さんの前世の仲間である花京院さんと同じクラスになる。

 ……あの人との間で、いつの間にか会話が増え、徐々に距離が縮まっている事に気づいた時は驚愕した。

 

 ――花京院典明と、園原志人には、似通った部分がある。……全てが似ている訳では無い。だが、部分的に似ているのだ。

 

 例えば、人の気持ちを汲み取るのが上手い。例えば、普段は流されやすいくせに時々頑固になる。例えば――その隣の、居心地の良さ。

 それとは逆に異なっている部分は……園原よりも花京院さんの方が、意外と手が出るのが早いとか。花京院さんは園原ほどお人好しでは無いとか。

 

 園原はいろんな意味でこちらに踏み込んで来ないが、花京院さんは時に踏み込んで来る事もあるとか。

 

 あの人が踏み込む事で口喧嘩になる事も少なくないが、それがきっかけで互いへの理解が深まるのがほとんどだ。おそらく花京院さんは、それを分かってやっているんだと思う。

 しかしそのくせ、怒られる事を恐れてこちらの機嫌を窺っているような――まるで、うちの愚弟のような雰囲気を滲ませる事もある。

 

 そういうところで、放って置けないという気持ちにさせられてしまう。……園原に対しては、そんな気持ちを抱く事も無かったのに。

 

 

 園原との友人関係と、花京院さんとの友人関係。その違いに疑問を感じていた、ある日。高校生最後の体育祭で、園原がこんな事を言った。

 

 

「承太郎達のやる気は、"勝ちたい"だけど――俺のやる気は、"勝たせてやりたい(・・・・・・・・)"」

 

「!」

 

「親友と弟分があんなに気合いを入れてるし、だったら俺もあいつらのために勝ちたいな、と。そう思ってるんだよ。

 お前は?弟とその仲間達を勝たせてやりたいと、少しでも思わないか?」

 

 

 承太郎さん達と花京院さん達が火花を散らす中。俺にはやる気がなく、同じように彼らを眺めていた園原に声を掛けたのだが……自分のやる気は、彼らとは違うのだと言う。

 そして語られた、勝たせてやりたい(・・・・・・・・)というやる気。……俺はその気持ちに、素直に共感した。

 

 

(――花京院さんを、勝たせてやりたい)

 

 

 そう考えると、今まで感じなかったやる気が出て来て驚く。……しかし、悪い気はしなかった。

 

 それから、気づいた事がある。俺は園原に対して、何かしてやりたいと強く思う事は無いが――花京院さんに対しては、躊躇いもなくそう思えるのだ。

 自分の利益など関係なく、無条件で力を貸したいと思ってしまう。

 

 ……体育祭の結果については、試合に勝って勝負に負けた気分だが、友人関係の疑問が解決したという収穫はあった。

 今思うと、花京院さんに気を許すようになったのは、この体育祭での出来事がきっかけだったと思う。

 

 

 

 

 

 

 体育祭からさらに時が過ぎ、修学旅行初日。……その日の夜に、俺と花京院さんは園原の悲惨な過去を知る。

 そんな過去を、園原は大した話では無いと。何処にでも転がってるような家庭事情だと言った。

 

 ――そんな訳あるか!!

 

 しかし。あのお人好しな馬鹿は、"俺に幸せになる事が償いだとか言ってた貴様こそ幸せになるべきでは無いのか"と言った俺に対して、"自分は充分幸せだ"とかふざけた事を言いやがる。

 これ以上幸せを望んだらバチが当たる、などと阿呆な事を言って呑気に笑う、園原。……承太郎さん曰く、間違いなくこいつは本気でそう言っているという。

 

 園原の父親に、殺意が湧いた。……以前、園原は俺の前世の父親の事を救いようがあるロクデナシ、自分の父親の事を救いようがないクソ野郎と称していたが、なるほど。確かにその通りだった。

 

 

 そんな事があったせいか、らしくもない事をしてしまった。……修学旅行の最終日。伏見稲荷大社のおもかる石に、ある事を願ったのだ。

 

 

(――園原志人が、これでもかという程、幸せになれますように)

 

 

 持ち上げるとかなり軽く感じたので、なんとも拍子抜けだった。……俺に何を願ったのかと聞いて来る園原を見て、思わず口元が緩む。

 ――今世の俺の、初めての友人の幸せを願った。……そう言ったら、お前はどんな顔をするだろうか。

 

 まあ、そんな事は絶対に言ってやらないが。

 

 

「……っは。教えねえよ」

 

 

 その代わりに、意地悪く笑って誤魔化した。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「……承太郎さん」

 

「ん?」

 

「あんたに、ちょっと聞いてみたい事があったのを思い出した」

 

 

 禅林寺の観光の途中、休憩しようと人気の無い場所まで移動した。雑談する花京院さんと園原を眺めながら、承太郎さんに声を掛ける。

 昔の俺なら、誰かに雑談を持ち掛けるなんてあり得なかった。……花京院さんと園原から影響を受けているなと、しみじみ思う。

 

 

「――花京院さんと園原って、少し似ている部分があると思わないか?全てではなく、部分的に」

 

 

 そう聞くと、承太郎さんは一瞬の間の後。少し笑ってから口を開く。

 

 

「……お前もそう思ったか。確かにあいつらは似ている。人の気持ちをよく汲み取る事、たまに頑固になる事、一緒にいて居心地が良い事……その他諸々だな」

 

「なら、異なる部分は何だと思う?」

 

「そうだな……花京院は口よりも先に手が出る事もあるが、シドは相手から手が出ない限り、自分からは手を出さない事がほとんどだ。あと、シドはかなりのお人好しだが、花京院はそうでも無い。

 そして。花京院はたまにずかずかと人の事情に踏み込んで来るが、シドは俺の方からそうしない限り、滅多に踏み込んで来ない」

 

「……俺も、そう思う。似ている部分、異なる部分の見解はあんたと大体同じだ」

 

 

 この人と意見が一致したという事は、やはり彼らは異なる点がありつつも似ているのだろう。

 

 

「……俺からも聞いていいか?形兆」

 

「何だ?」

 

「お前にとって、志人と花京院はどんな存在だ?」

 

 

 思わず弾かれたように承太郎さんを見ると、彼は予想以上に真剣な表情をしている。……だから、こればかりは素直に答えてやろうという気になった。

 

 

「園原は……恩人だ。俺に、幸せになる事を許してくれた相手。

 

 そして花京院さんは――親友だと、少なくとも俺はそう思っている」

 

「……そうか。それを聞いて安心した。お前が側にいてくれるなら、花京院は大丈夫だろ」

 

「……で?あんたはどうなんだ?……あんたにとって、花京院さんと園原はどんな存在だ?」

 

「俺にとって、花京院は大事な仲間の1人だ」

 

「園原は?」

 

 

 すると、承太郎さんは園原に目をやり――ふわっと笑った。そのあまりにも柔らかい笑みを見て、ぎょっとする。

 

 

「――本当に頼りなる、掛けがえのない親友だ。……俺はいつも志人に護られ、救われている。志人以上の友は、今後一生見つからないだろうな」

 

「――――」

 

 

 ……あの(・・)空条承太郎に、そこまで言わせるとはな。やはり、園原志人は侮れない。

 

 

「……そうだ、形兆。もう1つ聞かせてくれ」

 

「?」

 

「お前は今、幸せか?」

 

「――自信を持って言おう。今の俺は、幸せだ。これからも精々、"普通の幸せな人生"を送るさ」

 

「――――」

 

 

 口にはしないが、俺は今世の親友と恩人に、心の底から感謝している。2人のおかげで、"普通の幸せな人生"を送る事ができるのだ。

 

 

「……そんな事より、スタープラチナは精密なスケッチができるって話を花京院さんから聞いたんだが、それで花京院さん達とそのスタンド達を描く事はできるのか?」

 

「…………」

 

「承太郎さん?」

 

「あ、ああ……できるぜ」

 

「じゃあ描いてくれ。……その方が、喜ぶだろ」

 

「……そうだな。分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……形兆も、あんな顔が出来たんだな。

 

 ――年相応の少年らしい笑顔で、"幸せだ"と断言されるとは。やれやれだぜ)

 

 

 

 

 

 

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