トレセンで数学教師をやっていたらいつの間にかサトノのトレーナーになっていた件。 作:提督兼指揮官兼トレーナー
前書きのクセに全く関係無いこと書きますが、WBCの日本代表強いですね。この調子で優勝してもらいたいところです。
それはさておき今回は前回の続きです。
それはある日の練習だった。
「先輩、マズイですよ!、この子にそんなに負荷をかけるトレーニングをしたら怪我します!」
「うるさい、サブが口を出すな!」
日に日に悪化する2人の関係。
この日、先輩トレーナーが担当していたのは、チームの古参メンバーの中の一人で、中々結果の伸びないウマ娘。
キャプテンがとんでもない結果を出して以来、チーム内、特に先輩トレーナー中心に成果主義がまかり通るようになり、明らかなオーバーワークが見えるようになった。
「中田サブトレーナー、君のところのウマ娘なんだけど、最近成績が下がっている。」
トレーナーの代わりに呼び出された中田が目にしたのは、オーバーワークで勉強時間の減ったウマ娘の成績がみるみる低下していく様子だった。
とにかくこれ以上オーバーワークを極めれば不味いことになる。
ただでさえ、ウマ娘の事故や、怪我は深刻な結果を引き起こしかねないのだ。
中田が再度先輩トレーナーを止めようとしたその時だった………!
「あっ!」
実戦環境で練習をしていたウマ娘がコーナーに差し掛かったところ曲がりきれずに転倒、普段なら手をつくなりして受身を取れたはずが、疲れからか頭から倒れ込んでしまった。
頭から血を流し、倒れている所を見て、大急ぎで駆け寄った2人はすぐに状況を確認すると、救急車を呼んだ。
直ちに処置が行われたものの、ウマ娘の走る勢いで頭から地面にぶつかってしまった以上、どう見ても先行きは暗かった。
結果、懸命な処置も虚しく、ウマ娘は死亡。
さらに不幸は続く。
そのウマ娘の出身が、メジロやサトノほどでは無いものの、それなりの有力な家だった上、当時の練習環境について厳しい目を向けた。
オーバーワーク、雨上がり直後の練習環境、成果主義に固まったチームの空気。
対応に追われていく中で、次第に先輩トレーナーは精神に異常をきたすようになり、ついにはトレセン学園を辞めてしまう。
「先輩、待ってください!」
「中田……、もう俺に関わるな……。」
「しかし!」
「お前のことは誰かが見てくれる。」
「先輩!」
「お前さんの才能はホンモノだ、俺なんかよりずっとな……」
最後は嫌悪だったとはいえ、チームに参加してからずっと目をかけていた後輩に最後の言葉をかけてくれた先輩トレーナーが冷たい雨の降る中で去っていくその姿を中田はただ見送ることしか出来なかった。
「違う、俺にそんな力なんて………」
そして、マスコミもまた、このスキャンダルに食いついた。
ただでさえ以前の勝利の1件で、注目されているチームだったのだ。
「新人トレーナーへのパワハラか?」
「勝利という目標に凝り固まったチーム、最悪の結末を迎える」
「威圧的な練習態度が雰囲気を悪化させた」
あっという間に手のひら返しを受け、激しい取材攻勢を受けたチームメンバーの様子を見て、学園側は事件発生から1週間後にチームを解散。
その後も結果を出せずに退学していったもの達がほとんどだった。
そして、先輩トレーナーは激しい取材攻勢を前に耐え切れず自殺。
中田にとって最高のチームだったこのチームはたった1回の、それも彼とキャプテンが掴んだ勝利がきっかけで崩壊した。
彼は自分の才能で全てを壊したのである。
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「………、というわけなのよ、そんでその後は私の元でトレーナーとしては合格って扱いにはなったんだけど、コイツはずっとこの一件を引きずってトレーナーにはならず、トレーニング指導をずっとやって、持っていた教員免許を使って去年から数学教師としてここにいるのよ。」
中田含めた全員は黙ったままその場にいた。
あまりにも酷い結末、自らの才能の開花が最悪の状況で現れ、最悪の結末を引き起こし、自ら道を閉ざした過去……
それでも……
「中田先生、私のトレーナーになってください」
沈黙を破ったのはサトノダイヤモンドだった。
「今の話を聞いてもまだ言うのかい?」
「先生の過去は関係ないです。私は先生の実力を見てトレーナーになって欲しいと言いました。」
「僕は新人トレーナーだ。」
「でも、ベテランでも指摘しない所を指摘してくれました。」
「だからさっきもそれは……」
言いかけた言葉をサトノダイヤモンドが塞ぐ
「面接で受かるために私のことをおだてておきながら、いざトレーナーになってから問題を指摘するような人は私は信用したくありません」
それに……、とサトノダイヤモンドは続ける。
「それに、そんな人に私達サトノ家の悲願であるG1ウマ娘の輩出という目標を任せたく無いです」
サトノ家の悲願……?
「サトノ家はメジロ家程のでは無いものの、運営協力、慈善事業などに尽力して来ましたが、肝心な部分である<G1を制覇する名ウマ娘を輩出すること>については未だ達成できていません。」
先日行われたトレーナー選考会も、優秀なトレーナーを採用したいという必死な思いから来たものだと語るサトノダイヤモンド。
「そして、その期待を背負ったのが、私、サトノダイヤモンドなのです。そして、その期待に答えるためにも中田先生、いえ、トレーナーさん。あなたが必要なのです。」
真っ直ぐな瞳が中田を捉えている。
「僕は……」
どうしたいんだ、と自問自答する。
俺は何をしたいんだ……。
それはトレーナーになるとか、担任を受けるとかそういう二元論的な話では無い。
自分が全力で取り組めるものはなにか、どんなものなら自分はこの先ずっと続けられるのか。
それを自分の中で問い続けた。
<<何故夢を諦める?>>
突然、頭の中にそんな言葉が響く。
<<諦めるな!、なぜ逃げる必要があるんだ!、夢を諦めて、自分の思うように上手くいかなくて悔しいと思うのなら、お前はまだやれる!!>>
不意に、思い出したのは、サブトレーナーとして入る前に、トレーナー養成所でお世話になった教官の言葉。
当時の辛い勉強環境に弱音を吐いた自分を諭した言葉だった。
その言葉に押されて、1つの結論を出した。
<向き合おう、自分のやりたかったことと、自分の過去に>
結局、自分が本当にやりたかったのは、なんのためにトレセン学園に入ったのか、それは
「優秀なウマ娘を育てたい」
という思いだったはず。ならば、過去がどうであれそれに忠実に向き合うべきだ。
そして、そのチャンスは今、目の前にある。
ならば答えよう。
「サトノダイヤモンド、僕は君のトレーナーになろうと思う。ご両親に面会したい。」
その場にいた姉以外の全員の表情が変わる。
「はい、お父様にお話しておきますね。」
サトノダイヤモンドの言葉の後に、姉は口を開く
「あんた、面接でヘマこくんじゃ無いよ」
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後日
トレセン学園、生徒会室にて
「では改めて自己紹介してください。」
「はい、トレセン学園中等部1-4組副担、数学教師兼トレーニング指導係の中田洸希と申します。今回このような場を設けて頂き、ありがとうございます。」
「中田先生は、確かダイヤのクラスの副担もやっていらっしゃるのですね?、もしトレーナーになった場合はどうなさるおつもりですか?」
「理事長とは既に相談済みで、今年いっぱいは再雇用の先生が入ることになっており、来年以降についても別の先生が入ることで対応することになっています。」
「なるほど……、トレーナーになる分には支障は無いということですね?」
はい、と答える中田。
今回、この生徒会室にはサトノダイヤモンドの両親と本人、中田とマックイーンがいる。
既に娘から中田の分析能力を聞いていたのか、話は中田の指導力について移る。
「あなたの分析能力は高い、そのことは先程聞いた内容からも推察できる。しかし、肝心の指導力についてはよく分からない。」
「試験として、日本ダービーと同じ2400mをこちらの指定する相手と勝負して欲しい、相手としてはマックi……」
「待ってください。」
いきなり話をぶった切った中田。
「2400mが日本ダービーと同じということは無論私とて理解しております。」
しかし……、と中田は続ける。
「しかし、それが彼女にすぐに必要かと言われれば間違いだと私は思います。」
面と向かって間違いを指摘する中田。
「だが、それは実力を確かめるために必要な内容だと私たちは考えている。」
「無論、サトノ家の悲願のために、実力のあるトレーナーをつけたいというご両親のお気持ちは当然理解できます。」
ですが……、とここで1つのポイントを指摘する。
「この時期から2400mに対応したトレーニングを行えば、ダイヤさんの体を破壊します。」
あえて、ダイヤと呼び、壊すというより、破壊という言葉を選んだのはもちろん理由がある。
過度な挑戦が最悪の結果を招きかねないということをご両親のには理解して欲しかったのだ。
「ジュニア級ならばこの時期から最も早いG1で、ダイヤさんの脚質に合わせたものとなれば12月のホープフルステークスで2000m、それ以上の距離を想定した練習は、本格化を迎えたばかりのダイヤさんの体には明らかなオーバーワークとなるばかりか、その後のレース人生にも影響を及ぼしかねません。」
そもそもジュニア級のG1は2000mが最大です。と付け加え……
「かつて、私がサブトレーナーとして在籍していたチームでも、無茶なトレーニングを積んだ結果として、命を落としたウマ娘がいました。2400mという距離がいずれシニア、クラッシック、と進んでいく中で、必要になるものではありますが、例え短期間でも、2400mに備えた練習を、体が成熟仕切らない中等部の、それもようやく本格化を迎えたばかりのダイヤさんが行えば必ず良くない結果をもたらします。」
とした上で………
「ダイヤさんに本当に必要なのは、2400mを短期間で走れる実力ではなく、ジュニア級のG1であるホープフルステークスを勝てるよう、1日でも早く
練習を始めることでは無いでしょうか?」
これが、彼が自分なりに今までウマ娘と接し、指導してきたことから導き出された根拠だった。
「試験内容の変更が今後のためにもベストだと私は思います。」
次回に続く。
というわけで、またちょっと微妙なところで区切ります。
新シナリオ育成はまだ手をつけてないんですが、結構ステータスが積めるみたいなので、僕もサトノダイヤモンドで育成を進めてみたいところです。