トレセンで数学教師をやっていたらいつの間にかサトノのトレーナーになっていた件。 作:提督兼指揮官兼トレーナー
さて、前回中途半端に終わった面談です。
果たして、ダイヤのトレーナーになることは出来るのか?
さて、時は遡り、パーティー会場にて
「サトノダイヤモンド、おそらく、君のご両親は簡単には同意しないだろう。」
「それは熟知しています。」
なんせ、あれだけの名だたるトレーナーを蹴ってしまったのだ、当然、焦りや不安もあるだろう。
「まぁ、だからこそしっかり納得できる内容を作るべきだと考えたんだ。」
「なんか先生とても悪い顔をしていますね。」
「まぁ、打てる手は打っておけ、というわけさ」
そう言うと中田はスマホを取り出した。
「本当はタブレットの方にメインのものがあるんだけど、スマホと同期させてあるからこっちでも色々出来るんだよね。」
スケジュール表を出して、そこに指導日や、指導内容などを書き込んでいく。
「なんにせよ、どうやって指導していくかを見せることが大切だと思う。」
「はい、私もそう思います。」
「サトノダイヤモンド、デビュー戦は早くても夏明けになると思う。その後すぐのG1となればホープフルステークスで、それに挑むこともできるけどどうする?」
「やります!」
「OK、それなら………」
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中田の経験も踏まえた内容に、ダイヤの両親は理解を示していたが……
「あなたの意見は最もです。確かに、トレーナーの選抜のために、娘の体を危険に晒す訳にはいかないことは同意します。」
ですが……、と続け
「ですが、そうとはいえ、なんの根拠も無しに娘を任せることも出来ません。」
ここで、中田はダイヤと練っていた1つの策を講じることにした。
「そこで、ここにこのようなものを用意させていただきました。」
タブレットを取り出し、ダイヤと練っていたあるものを見せる。
「これは2人で組んだジュニア級からシニア級前半にかけてのトレーニング表です。ダイヤさんの現在の状況を分析して、本人の希望なども取り入れつつ、実力を積み重ねて確実にG1を取れるように組んであります。」
そう言ってタブレットを取り出した。
「これは……すごい………」
「選考会で見てきたトレーナーはホープフルステークスへの出走を前提にしたトレーニングをすると言っていたトレーナーもいましたが、さらにその先……、シニア級前半までも見据えてトレーニング表を作って来たのはあなただけです。」
そして……、と中田はさらにダイヤにも見せていなかったあるものを見せる。
「そして、このフォルダに入っているのは、現時点で予想可能なホープフルステークスの出走予定ウマ娘と、その組み合わせです。一部のメンバーについては、実際の走りの映像を取り寄せて、内容を吟味して、場合によってはトレーニング内容を差し替えられるようにしています。」
えぇっ!?、とこの場にいた中田を除く全員が拍子抜けする。
「まだ全然揃っていないのにか!?」
「確かにそうですが、私は実は今までトレーニング指導を行っていました。今年も実は本格化前のウマ娘への指導を行っていたのですが、今年の残りのウマ娘の本格化は経験上、早くても夏明けだと予想できます。」
夏明けに本格化しても、デビューは10月や11月にずれ込む、そうなればたとえジュニア級であってもホープフルステークスへの出走はウマ娘の実力が追いつかない、さらに言えば本格化前のウマ娘ではとてもレースで勝てるレベルになれない。
「もし、一刻も早くG1への出走を目指すのなら、ホープフルステークスへの出走を前提としたトレーニングをすることになります。」
その上で……、と中田は続ける。
「2400mを今の段階で練習することはダイヤさんの将来のためにもならないと思います。もし、それでも2400m用の指導で実力を測るとのことならば、遺憾ながら私としては今回の件、辞退させていただきます。私が関わるところで2度もウマ娘の人生を破壊したくはありません。」
「せっかくのチャンスをふいにするのかね?」
驚いた顔をする両親。
「私はダイヤさんとお話する中で、サトノ家一族の悲願について知り、その夢の達成を支えたいと思ったから志願しました。そして、その目標の達成のために、自分がベストだと考える選択を取りたいと思ったわけです。もし、ここまでのお話を通じて私が実力不足だと思われるなら、ここで退席させても構いません。」
その言葉は、自らの手では無いにせよ、1つの引き金となったあの事件を経たからこそ、はっきりと重みを持つ言葉だった。
中田の目には曇りひとつも無い。
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パーティー会場にて
「………、もし、ご両親が、君の体に無茶をさせるような無理難題を用意したら、僕は受けない。」
「えっ……」
「僕達トレーナーが大事にすべきなのは、生徒の体調だ。君の家の悲願であるG1制覇の上で、明らかに障害になるような内容は、明らかなオーバーワークで体を壊させないためにもやらない。」
「でも……、それじゃあ、試験があったとして、拒否するということですか?」
「その時はその時だ。僕はなるべくご両親を説得するようにする。だからこそダイヤも僕を信じて欲しい。」
最初こそ、戸惑っていたダイヤだが、中田の覚悟を決めた顔を見て、彼女もまた、決心した。
「マックイーンさんの言葉を借りるなら、正しく<一心同体>ですね。」
「そうだ、よろしく頼む。」
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ダイヤの両親が自分の娘を見る。彼女もおそらく中田と同じ目をしているのだろう。
「マックイーンさん。どう思われますか?」
質問されたマックイーンはもう一度、ダイヤと中田を見て、1つの答えを出した。
「覚悟を感じました。」
「まるで私が天皇賞・春に向けてひたむきに突き進んでいった、あの時と同じような目を2人はしています。」
「この2人なら大丈夫だと確信しました。」
その言葉を聞いて、ダイヤの両親はお互いに顔を見合わせて、納得したような表情を見せると……
「わかりました。中田先生、いや、中田トレーナーさん。私どもが夢を追うあまり、冷静になれていなかった。あなたの言葉で今一度、元の目標に立ち返ってみることが出来ました。」
では、試験内容を変更されますか?との質問に首を振るダイヤ父。
「今まで出していただいた資料、データ、トレーニング表、そして何より、あなたとダイヤの間にある信頼関係を信じて、私達の娘を、一族の原石を託します。」
「2000m用の指導で確認しないのですか?」
「あなたのその熱意があれば大丈夫でしょう。」
ダイヤがその言葉を聞いて顔を明るくする。
「トレーナーさん、やりましたね!」
うん、と頷くと、再度両親の顔を見て
「必ずや、G1で勝利し、一族の悲願を達成させてみせます。」
中田がそう言うと、お願いします。と逆にこちらが頭を下げられてしまった。
この後、正式に中田はサトノダイヤモンドのトレーナーになることが決定した。
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数日後
「というわけで、中田先生はサトノダイヤモンドさんのトレーナーになったのて、今週いっぱいで副担を外れます。」
「短い間でしたがお世話になりました。」
挨拶を終えた中田が最後の荷物を取りに数学科研究室に戻る。
「よぉ中田、どうやら俺の予想通りになったな」
「だな、お前さんには世話になった。」
「何、将来有望なサトノダイヤモンドのトレーナー様が同僚だったってのなら誇らしいもんよ。」
「結果が出せなければハラキリさ。」
「お前さんなら大丈夫だ。噂によりゃあ、テストをする予定だったご両親がお前さんの話を聞いただけで、即採用したって話だぞ」
「半分はあってるな。」
「まあなんだ、ようやく本来あるべき姿になれたんだから、気合い入れてけよ、トレーナー」
「ああ、ありがとう。」
がっちりと握手をして、荷物を取り、理事長室に向かう。
「失礼します。」
「うむ、入ってきたまえ。」
中では理事長とたずなさんが待っていた。
「これからはサトノダイヤモンドのトレーナーとして頑張るように。」
「はい。」
簡単なやり取りの後、新しく用意されたトレーナー室へ向かう。
トレーナー室はまだものが少ないがとりあえずやるべきことがいくつかある。
「シュミレーション機材欲しいなぁ……」
実は中田、大学時代にウマ娘のシュミレーション装置について考案し、超簡易版をタブレットに入れていたのだ。
これを少々手直しした上で実戦投入したのが、例のあのレースであり、普通なら何十年もの経験を積んだベテラントレーナー並の指導を実経験のほとんどない新人トレーナーでも行えるスグレモノ
(もちろん、完璧に使いこなすには使用者側にそれ相応の実力が求められるということもあり、そういった点からも中田自体の指導力は当然優秀であるが、やはり経験の差を埋めるのにはそれ相応のものが必要との判断である。)
問題はスペック、装置自体はいくらでも拡張出来はするが、ハード側の処理能力的に、ノートパソコンレベルではダイヤの指導となれば直ぐに限界が来てしまう。
「買いに行くか。」
幸い、教員時代も含め、金はある。
それに、トレーニングとデータ分析のためにスペックを振り分けるから、さして金もかからない。
トレーニングは明日からの予定だから、今から秋葉原に向かえば最低限揃えられるはずだ。
目指すは日本初?、のウマ娘分析専用スーパーコンピュータ。
大学時代に学んだことも活かして、今の自分とダイヤに合ったものを作るため、秋葉原の電気街をウロウロしたのであった……
新シナリオに近い気もしますが、特に意識はしてません。