トレセンで数学教師をやっていたらいつの間にかサトノのトレーナーになっていた件。 作:提督兼指揮官兼トレーナー
新生活が始まって時間が取れなかったのと、なかなか書くのが難しくなってきたため遅れました。すみません。
「ダイヤさん、出走ウマ娘が決まりました!」
トレーナー室にやってきたダイヤに開口一番に中田はそう言うと、出走表を見せる。
書かれていたウマ娘は、全て中田の予想通りだ
「トレーナーさんの予想通りですね」
「ああ、とりあえずトレーニングはこのまま続けていくが、何かやってみたいトレーニングはあるかな?」
「特にはありません。トレーナーさんが必要だと思うトレーニングをお願いします」
「わかった。じゃあ今日もトレーニングを始めていこうか」
「はい!」
というわけでトレーニングなのだが……
「えっ?、トレーニング場が使えない??」
「すみませんトレーナーさん……、どうやら予約が重複していたみたいで………」
珍しい、たづなさんのミスなんて……
「参ったなぁ……、今日は走ってもらってタイムの計測を行うつもりだったのに……」
「あ、ひらめきました!」
困り顔のトレーナーを見て、何やら閃いた様子のサトノダイヤモンド
そのままスマホを取り出して電話する。
「もしもし、お父様?、トレーニング場を使いたいのですが……、よろしいですね!……はい!」
あっという間に話をまとめたらしい。
「トレーナーさん!、私の家に行きましょう!」
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初夏の日差しは真夏のそれよりは穏やかだが、春に比べれば強く、気温もお昼頃のピークは過ぎたもののやはり暑い。
青い空、白い雲、踏み跡一つとない綺麗なターフ
「これがプライベートの練習場なのかよ………」
今度は中田トレーナーがドン引きしている。
「さ、トレーナーさん!、練習を始めましょう」
もうダイヤは準備万端だ
「あ、ああ、始めようか」
いや、始められるかフツー
トレーニング場が使えませんね▶︎じゃあ自宅のトレーニング場使いましょうか?じゃねぇーよ!、一体どこの家ならそんなことが出来るんだよ!
「安心してください!、ここはサトノ家のトレーニング場なんで、普段は出来ないトレーニングもしっかりできます!」
答え:でも、サトノ家なら出来る。
もう適応するしかない。
「よし、なら今日は実戦に近いトレーニングと題してこれを使おう」
そう言って、中田がお願いしたのはゲート。
「ゲートインから本格的にやる。タイムもしっかり測るから」
「はい!」
ゲートインしたサトノダイヤモンド。
ゲートが開き、走り始める。
誰もいないターフで、サトノダイヤモンドは全力で走り続ける。
中田もまた、手元のストップウオッチを見ながらサトノダイヤモンドの体の動き全てを細かく、丁寧に見ていく。
(スタートは問題ない、コーナーも良し、後はスパートだな……)
ストップウオッチを見ながら、スパートのタイミングを確認する。
(ここだ!)
(ここですっ!)
中田が狙ったタイミングで、サトノダイヤモンドもスパートをかける。
そのままぐんぐん速度を上げてゴールイン。
「トレーナーさん!、タイムは!?」
「良くなってる、ココ最近1番のタイムだ」
「やった!」
喜ぶサトノダイヤモンド。
「だが、プレッシャーがかかっていないというだけもあるかもしれない。気を引き締めてトレーニングをしていこう」
「はい!」
このあとも引き続きトレーニングをこなし、レース前の大事な時期ということもあり、入念なストレッチの後、終了した。
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そして、迎えたレース当日
「ダイヤさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。磨いてきたこの足で、最高の結果を掴んでみせます!」
「うん、頑張ってきて、ゴールで待ってるから」
「はい!」
G1以下のレースでは体育着だ。ゼッケンをつけたサトノダイヤモンドはそのままターフへと向かって行った。
<<さぁ、いよいよ芝2000のデビュー戦が始まります!、注目の子はなんと言ってもこの子、名家サトノ家の娘にして、実力十分のサトノダイヤモンドです>>
やはりサトノダイヤモンドは注目度は高く、ファンからの期待も大きい。
デビュー戦は数が少ないとはいえ、それなりのギャラリーがいる。中田は、ゴール前のベンチに腰掛けて、スタートを待つ。
「おっ、これはこれはサトノダイヤモンドのトレーナー様ではありませんか」
「おう、萩野か、この間はありがとうな」
「いえいえ、名家サトノダイヤモンドへのインタビューが書けるとなればお易い御用ですよ」
萩野克巳
スポーツ新聞を扱う記者であり、中田の高校時代の後輩にあたる。今後、サトノダイヤモンドへの独占取材を許可する代わりに、サトノダイヤモンドが今後出走予定のウマ娘のデータを収集することを手伝ってもらう。
(ダイヤと実家には許可を取ってある)
「あんた相変わらず交友関係が広いのねぇ……」
「あっ、姉さん」
「おお、結月トレーナー!、今度インタビューお願いしてもよろしいでしょうか?」
「構わないけど……、マックイーンにインタビューできるかは別よ」
「そこをなんとか……」
記者本能なのか、早速取材を申し込む萩野。
トレセン学園によく出没するとされる乙名史記者ほどではないが、やはり彼も記者なのだ。
<<さて、各ウマ娘、ゲートイン完了、出走体勢を整えました>>
そうこうしているうちに、まもなく出走だ。
<<スタート!、各ウマ娘、揃ってスタートを切りました>>
やはり序盤はレース慣れしていないウマ娘達が、逃げウマ娘であるディアゴスチールに引っ張られる形で早いレース展開になった。
<<縦に伸びていますがこれは……>>
<<ディアゴスチールの早いレース展開についていこうとして、急いでいる子がいますね、これでは後半に垂れてしまうかもしれませんよ>>
<<8番、サトノダイヤモンド、後ろの方に待機しています>>
<<彼女の脚質的にはあっていないような気もしますが、ディアゴスチールについていこうとするウマ娘達がいる中で、レース展開的にはこれで最適解かもしれません>>
レースは半分を過ぎた頃だ
「そろそろ動きがあるな」
「ん?、中田トレーナー?」
「あー、なるほどね……」
「えっ?、結月トレーナー?」
姉弟揃って同じタイミングで判断した。
そして、それはすぐに目に見える。
<<おっと?、これは……>>
<<ディアゴスチールの周りにいた先行型のウマ娘達が一斉に垂れましたね、早いレース展開についていこうとして、スタミナが持たなかったのでしょう、この子達が後ろにどう影響を与えるのか注目しましょう>>
[ま、そんなのお見通しだからこそ、こちらはその対策を練っていたんだけどね]
自らと、スパコンの予測の正しさを認識しつつ、サトノダイヤモンドの動きに注目する。
サトノダイヤモンドは、なんの躊躇いもなく、練習通りにかわしていく。
[トレーナーさんの予想通り、ここで速度を落としてくるウマ娘が多いですね……、焦らず自分のペースを維持できてよかった……]
安心するサトノダイヤモンドだが、そろそろ最終コーナーに入っていく。
[さて……、そろそろ頃合かな……]
おもむろに懐から扇子を取り出す中田。
「あんた何する気?」
「ん?、景気づけ」
そういうと、扇子の端を持ち、一気に広げる。
「さて、まず一勝と行こうか」
その言葉とサトノダイヤモンドがスパートをかけたのはほぼ同時だった。
<<これは凄い!、サトノダイヤモンド、一気にスパートをかけて先頭に向かいます!、逃げるディアゴスチール、しかし、その差は徐々に縮まっていく!>>
最後の直線に入ると、最早ディアゴスチールは後ろから来るサトノダイヤモンドの圧を肌で感じるようになる。
[このまま……、抜き切る!]
<<サトノダイヤモンド、ディアゴスチールを抜き去り先頭に躍り出ました!、そのまま一気に差を広げゴールイン!、勝ったのはサトノダイヤモンドです!、あの差をひっくり返して、見事勝利しました!>>
「さて、迎えに行くか……」
スタスタとサトノダイヤモンドの元に歩いていく中田にサトノダイヤモンドも気づく。
「ダイヤの輝き、如何でしたか?」
「観客席まで届く輝きだったよ、これからも頑張っていこう」
「はい!」
「さ、着替えておいで、ウイニングライブまで時間もないからね」
「では、トレーナーさん、また後で」
「うん」
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「では……、これよりサトノダイヤモンドさんへの記者会見を始めたいと思います」
「○○スポーツの萩野です。まずはサトノダイヤモンドさん、デビュー戦の1着、おめでとうございます。勝利に際して一言お願いします」
「はい、この勝利は日々の練習とトレーナーさんの指導のおかげです。今後、重賞を目指すためにもまずはこの1戦に勝ててよかったです」
「では次の方……」
記者会見はつつがなく進んでいくが、厄介な記者も当然ながらいた。
主に中田にとって
「中田トレーナーに質問です。中田トレーナーと言えばかつて所属していたチームでの事故がありましたが、再びトレーナーとして戻って来ることになった際、あのことについてどう感じていられるのでしょうか?」
黙れ
そう言いたくなるのをグッとこらえる。
ここで記者に揚げ足を取られては元も子もない。
平静を装って、テンプレどおりの言葉を返す。
「申し訳ないのですが、今回はメイクデビューにおけるサトノダイヤモンドと私への質問となっています。私に関わる内容とはいえ、今回のレースとの直接的な関連性に薄い質問は回答を控えさせて頂きます」
このあとも質問は続いたが、なんとか終わり、帰る頃にはすっかり夜遅くなってしまった。
ちょっと短いかもですが、次回もよろしくお願いします