【SS】邦キチ! 映子さん『HK 変態仮面』をプレゼンします!【二次創作】   作:木下望太郎

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(前編)邦キチ! 映子さん『HK 変態仮面』をプレゼンします!

 

 部長「さてと、今日も今日とて部室に行って映画話を……というか、また聞く羽目になるんだろうな……邦キチの邦画プレゼンを」

 

 ――部長こと小谷洋一(こたによういち)

 『映画について語る若人の部』(要するに映画同好会)部長。好きな映画ジャンルは洋画全般、マーベルコミックス実写系のアクションなど。ジブリやルパンなどメジャーどころのアニメも好き。良くも悪くも普通の男子高校生。――

 

 部長「それにしても。何ていうんだこういうの、二次創作? 【実写化】ならぬ【文章化】?」

「普段『実写化映画がどうのこうの』言ってる俺たちからすればおっかないな……【他人の手による作品化】って」

「どうせあれだろ、原作からのキャラ崩壊だとか、エロい方面に振られたりするんじゃないのか? 不安だな……」

 

 

 (不吉なことを言いつつ部室棟にやってくると、中から女子の声が聞こえた)

 邦キチ「いや~、これはなんとも……何度見ても素晴らしい造形でありまするな~」

 

 ――邦キチこと邦吉映子(くによしえいこ)

 『映画(略)部』部長以外で初の部員にして後輩。

 好きなジャンルは邦画。とにかく邦画。邦画狂と言っていいほどの邦画大好き女子高生。

 いつも(妙にツッコミどころの多い)邦画を発掘してきては愛と勢い(と悪意のないツッコミ)に溢れたプレゼンを所構わずかましてくる、邦画界の歩く爆弾。

 まぁまぁ(あくまで「まぁまぁ」)可愛い天然女子。リボンを結んだショート丈のポニーテールがチャームポイント。――

 

 邦キチ「はぁ~、本当に見れば見るほど素晴らしい……お尻でありまする!」

 部長「(尻!!?)」

 

 ヤンヤン「確かにナ……役者魂が伝わってくる、いいケツしてるアル」

 部長「(また尻!!? 女子二人いて話すこと尻!!? さっそく変な方面に振られてないかこれ!?)」

 

 ――ヤンヤンこと(トン)洋洋(ヤンヤン)

 隣の『東洋電影(アジアえいが)研究部』部員(部員は彼女一名)。映画(略)部に入り浸ってるので実質そっちの部員みたいな人。

 中国・インドハーフの父とフィリピン・韓国ハーフの母を持つアジアの申し子。カンフーアクションだけでなく、幅広くアジア映画を推してくるアジア版邦キチ的存在。

 褐色の肌にチャイナドレスが映える美人(部活時以外は制服)。――

 

 

 部長「(いや、いや待て落ち着け俺)」

「(役者魂がどうとか言うからには、俳優の肉体美を指して言ってるんだろう。……尻から伝わるものかはサッパリ分からんが)」

「(映画(略)部の部長として、冷静な対応を――)」

 

 マリア「ほんと、うっとりしてしまいますね……俳優としての覚悟が伝わってくるような、この……ケツえくぼ」

 

 部長「ケツえくぼ!!? って何だよ!!!」

 

 マリア「部長さん!?」

 

 ――石破(いしば)マリア

 邦キチの邦画プレゼンに憧れ、彼女を師匠と呼んでいる。

 シネマサロン部員だったが映画(略)部に移籍した……わけでもないのかも知れないが、とにかく入り浸っている。

 柔らかな物腰や、ふわふわした髪のお嬢さま然としたルックスに反して、映画の好みはエンタメ全振りのアクションや黒社会(ノワール)悪漢(ピカレスク)系。イケメンがいっぱい出るタイプのアニメも好き。――

 

 

 部長(部室に入って)「ええい、さっきから聞いていれば! 何なんだ女子が三人も雁首揃えて、話すことがケ……尻って! 伝わるのかよそこから俳優の覚悟!? 何なんだよケ……尻えくぼとかって!」

 

 邦キチ(不思議げに目を瞬かせて)「何って……ケツえくぼはケツえくぼでありまするが」

 ヤンヤン「だよナー」

 マリア「ですよねー」

 

 部長「ねー、で通じ合ってんじゃないぞ女子! 尻の話で! 何だよその話題! そして何だよこの疎外感!?」

 

 ヤンヤン「疎外感も何も……映画系の部活で主役俳優の話をしてただけアルが」

 

 邦キチ「部長~。部長ともあろう方が、ジャンプで連載されていたあの大人気コミックの大人気実写版を御存知ないんですか?」

 

 部長「(それにしても実写版好きだなコイツ)」

 

 邦キチ「これです! 『HK 変態仮面』! あんど慶周先生の傑作『究極!! 変態仮面』実写版でありまする!」

 

 (邦キチが広げた映画のポスター)

(そこには、パンティーの覆面で顔を隠し、筋肉隆々の肉体にスリングショット水着のような――肩から尻と股間にかけてV字の紐が走っているだけのほぼ裸体、超極小衣装――パンツと網タイツをまとった男)

(ある意味異形のヒーローがたくましい背中を――丸出しの尻も――こちらに向けて、雄々しく立っていた)

 

 部長(吹き出して)「う……ぷ、くく……は、ははは……!」

 

 邦キチ「部長?」

 

 部長「いや、すまん……原作は俺も読んだし好きなんだが、なんか……くくっ、その格好、その格好を大マジメに実写化しただけで面白いなんて……ぷぷ……ズルいなこれ! 面白いけど!」

 

邦キチ「部長~。笑っている場合ではありませぬ。今ご自分がおっしゃった内容が、どれだけこの映画のすごさを物語っているか気づきませぬか?」

 

 部長「え? 『原作の格好を』『大マジメに実写化して』『面白い』……はっ!?」

 

 

「(そうだ、俺たちは何度も――主に邦キチのプレゼンで――見てきたじゃないか)」

「(『原作から思いっきりオリジナル路線に行ってしまった実写版』)」

「(『逆に、原作に忠実に作ったあまり、現実感と乖離してしまった実写版』)」

「(『言いづらいけどなんかアレな実写版』の数々を!)」

「(だがこれは、逆に――)」

 

 

「そういえば原作に何度もあったぞ……『変態仮面の変態な格好を見た悪党が、思わず爆笑して隙を見せてしまう』シーン! まさにさっきの俺のような!」

「つまり俺は……『原作に忠実な主役のビジュアルだけで』『原作の登場人物と同じ心理状態に引きずり込まれた』ってことか……!?」

 

 邦キチ「そう! まさにそれなのです! そしてそれを可能にした大きな要素が……主演・鈴木亮平の肉体美なのです!」

 

 部長「確かに。全裸に近い半裸で戦う主人公なら、その最大の衣装は『俳優自身の肉体』ってことか」

 

 ヤンヤン「つまり……ケツだナ」

 マリア「尻ですね」

 

 部長「尻に戻ってきた!? いや、尻の話はいいだろ、筋肉がすごいって話だろ!」

 

 邦キチ「いえ、つまりそれを集約すると……尻なのです!」

 部長「何が!!?」

 

 ヤンヤン「ヤレヤレ……お前、ヤンヤンたちがイヤラしい目線で鈴木亮平の尻を見てたと思ったナ? まあソレもあるが――」

 部長「あるんかい」

 ヤンヤン「筋肉界隈にはこういう格言があるアル――『鍛え具合を見たければ下半身を見よ』と」

 

 マリア「体を鍛える方はついつい腕や胸、つまり上半身を重点的に鍛えてしまいがちだそうです。ズボンに隠れている下半身と違って、他人からも自分からも目につき易い部位だからでしょうね」

 

 ヤンヤン「そういう、上半身ばっか鍛えてるような奴は筋肉界隈で『チキンレッグ(ニワトリみたいなヒョロ脚)』と呼ばれてバカにされるアル。けど――鈴木亮平はそんなこと言われるタマじゃないアル」

 

 邦キチ「見て下さい、腕や背中の筋肉だけじゃない、この脚、太もも、そして……お尻!」

 

 ヤンヤン「大腿(だいたい)筋――太もも――は人体で最も大きな筋肉。軽視されがちな下半身が最も重要な筋肉というのは皮肉アルが、だからこそここを鍛え込んでるかどうかを見られる箇所アル。亮平のたくましい大腿筋、そこから続く引き締まった大臀(だいでん)筋……つまり尻。それがまさに、ガチの筋肉!」

 

 マリア「そして鍛え抜いて筋肉を肥大させ、脂肪をそぎ落とした尻の両サイドに現れるくぼみ、美の曲線……ケツえくぼ。いい……」

 ヤンヤン「いい……」

 邦キチ「はい……」

 

 部長「……いや、何だこの空気! どうしたらいいんだよ俺! ていうかそんな筋肉界隈の住人なのかお前ら!」

 

 ヤンヤン「これぐらいは常識アル。本格中国拳法マンガ『拳児』でも基本中の基本として『とにかく足腰を鍛えろ』って言ってたからナ。武術でもスポーツでもそのほとんどは『足腰で発生させたエネルギーを手に伝える動作』……腕はテクニック担当であってパワー源じゃない以上、上半身だけ鍛えても強くはなれないのアル」

 

 部長「そういや『鬼滅の刃』の岩柱こと悲鳴嶼(ひめじま)さんも、足腰を鍛えろって言ってたな」

 

 邦キチ「そんな鈴木亮平でありまするが。なんとこの肉体を作り上げるため、いったんわざと15キロも太った状態にまで脂肪をたくわえてから鍛えていったそうでありまする!」

 部長「15キロ!?  脂肪で!?」

 

 邦キチ「まず脂肪を増やして体を大きくした後、筋肉を鍛えて脂肪を落としていく方法を取ったそうです。『失敗したら俳優生命が終わる』という覚悟で挑んだそうですね」

 部長「それで失敗したら肉体美どころかデブだもんな……」

 

 邦キチ「本作の後も鈴木亮平は『天皇の料理番』で【病でやせ細っていく主人公の兄】、『俺物語!!』で【太くたくましい巨漢の主人公】、『西郷(せご)どん』で【体重100キロの西郷隆盛】を演じておりますね!」

 部長「どんな体重の振れ幅だよ! 俳優生命より本人の生命が心配になるわ!」

 

 邦キチ「ということで、まさに俳優魂と覚悟が生んだケツえくぼというわけですね。まあお尻の話はこれくらいにいたしまして」

 部長「最初からしなくていいわ! 肉体美に絞って話せよ! ……いや、それより映画自体はどうなんだ」

 

 邦キチ「あらすじでございまするが。正義感は強いがケンカはからっきしのダメな拳法部員、主人公の色丞(しきじょう) 狂介(きょうすけ)

 部長「原作では拳法部のエースだったが、変身後との対比を考えればその方がいいかもな。それにしてもすごい名前だ」

 

 邦キチ「まあ変身前でもガタイがすごいので、全く弱そうには見えないのですが(身長186センチ)」

 部長「いやまあ、しょうがないけどな身長も鍛えた体も!? その役のために鍛えたんだから!」

 

 邦キチ「そんな彼がパンティーをかぶると……正義と変態の血が覚醒し、限りなく全裸に近いヒーロー『変態仮面』となり! 悪党をバッタバッタとなぎ倒すのです!」

 部長「おお、原作どおりだ!」

 邦キチ「必殺技は自分の股間に相手の顔を押しつけるわけですが」

 部長「原作どおりだ……」

 

 邦キチ「でも原作と違って、パンツの中にまで顔を突っ込ませたりはしないのです……やっていただきかった! 再現してほしかったのです! 役者魂で!」

 

 部長「役者に多くを求めすぎだろ!? 勘弁してやれよ!」

「というか、お前にしては珍しく原作も読んでるんだな」

 

 邦キチ「(わたくし)たちからすれば、いわば先輩格のマンガでありまするからね~」

 部長「いや、集英社発行のギャグマンガってくくりではそうだが。ざっくりし過ぎだろそのカテゴリー分け」

 

 邦キチ「他に、この映画ではアクション描写も力が入っておりまして! 特に見所はクライマックスのニセ変態仮面との死闘!」

 部長「ほう、原作にはなかった展開だな」

 

 邦キチ「お互いに、自分の股間へ相手の顔を押しつけようとする組んずほぐれつの大バトル!」

 部長「何だその地獄絵図!」

 

 邦キチ「いかに相手の股間から顔をかわし、いかに相手の顔を股間へ押しつけるか……柔道やプロレスのような組技の試合にも似た、独自の技術体系で魅せる白熱バトルでありました」

 部長「白熱したくない絵ヅラだな……」

 

 邦キチ「とにかく! そうしたコミカルな姿で、なのに肉体も強さも正義感も本物のヒーローで! なのに変態扱いされて! 実際変態ではあるのですが! という……ギャップの触れ幅が楽しい作品となっておりまする!」

 

 部長「なるほどな……近年では【シリアスな笑い】という、大マジメにやってるのになんか変、というギャグの概念があるが、その系譜なのかもな」

「欧米では結構古くからあるらしくて、【キャンプ】と呼ばれる概念だそうだ。『バットマン』なんかも元々はその系統として見られていた、と聞いたことがあるぞ」

 

 邦キチ「つまり! 変態仮面こそは正当なヒーローの系譜にしてバットマンの後継、そういうことでありまするね!」

 部長「そうはならんだろ!? オマージュ元的にはスパイダーマンの方だろうし!  目つきとか紐での空中移動とか」

 

 

(後編へ続く)




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