【SS】邦キチ! 映子さん『HK 変態仮面』をプレゼンします!【二次創作】 作:木下望太郎
部長「いやーしかし……ヒーローとして考えれば、変態仮面の変身方法もスゴいよな。【パンティーかぶって】【脱衣する】んだから」
「まあ考えてみたらバットマンやアイアンマンなんかも【特殊スーツを着る】んだから、着替えるという意味では近いんだが」
ヤンヤン「まあそうアルが。変身アイテムがパンツっていうのは……」
部長「そうなんだが……でもちょっとだけ、分かる気もするんだよな」
ヤンヤン「ハ?」
部長「いや、笑い話だと思って聞いてほしいんだが。【思春期男子のエロス】を【正義のパワー】にもしも変換できたとしたなら。確かにあれぐらい強くなれるんだろうな、という説得力というか男子としての実感が――」
ヤンヤン(部長から遠ざかりながら冷たい目で)「何言ってるアルお前」
マリア(さりげなく遠ざかりながら笑顔で)「ちょっと分かりませんねー」
部長「だから冗談だって言ったろ! 別に俺がパンツかぶるとかじゃ――」
(そのとき、邦キチは)
(ごく自然に、自分のスカートの中に手を入れ)
(何かを、下半身から脱いで取り出し)
(それを。見えないようハンカチに包み、丁寧に畳んだ)
邦キチ(部長に差し出して)「ハイっ」
部長「……え?」
ヤンヤン「え」
マリア「え……」
(その瞬間。部室の空気は凍っていた)
部長「(えーーーーーーーっっ!!?)」
邦キチ「
(包みを持ったまま前に出てくる)
「ゆえに、今日はまたとない好機! こんなものでパワーが得られるのでしたらいくらでも――」
部長(後ずさりながら)「待て、待て邦キチ! そんなこと俺は求めてなんか――」
邦キチ(ぐいぐいにじり寄りながら)「受験、卒業、就活……部長の人生にもこれから、大変なことがたくさんあるでしょう。そんなときに
部長(さらに後ずさりながら)「待て、落ち着け! そうだ、そんなもの渡したらお前だって困るだろ――」
邦キチ「いえ、大丈夫でありまする! 今日はたまたま履いてて良かったです~」
部長「(履いてないときあんのお前!!?)」
「(いや待て、おかしいだろこんなの)」
「(いくらSSだからって、二次創作だからってやっていいこととダメなことがあるだろ! 原作はこんなエロスないからなこの野郎!)」
「(頼む……お前ら二人からも何か言ってくれ!)」
ヤンヤン「アッ。そういえばヤンヤン、もうバイトの時間だったかナ~」
マリア「あっ。そういえば私も、家でちょっと用事が~」
(そそくさと出て行く二人は、揃って深く礼をした)
「ごゆるりと……」
部長「(あいつら……っ!! 【虎眼先生の精神状態がヤバいときの虎眼流門下生】みたいな顔で出ていきやがった!? 『シグルイ』の!)」
邦キチ「……部長」
部長「(……ひっ!?)」
「(やめろ……そんな眼をして俺を見るな)」
「(そんな、お前がたま~にする、『全て分かっておりまするよ』みたいな目を)」
「(『あなたの全てを、
「(そんな目をされると、俺は――)」
「(俺は――弱いんだ)」
「(弱い。そんな目をされると――本当に……)」
(そして邦キチは、目を伏せて)
(部室のテーブルの上に、そっ、と包みを置いた)
邦キチ(小さく頭を下げて)「部長。急に無理を言って申しわけありませぬ。これは置いておきますゆえ、必要なときがあればどうかお使い下さい」
「それでは、今日はこれで」
(そうして、それ以上何も言わず)
(邦キチは部室を後にした)
部長「…………」
「……何だったんだ」
「いや、というか現状……何なんだこれ」
(息をついて壁にもたれる部長)
「(後輩の パンツと残れる 部室かな ――字余り)」
「(季語はパンツ。その示す季節は春、恋の時節だ)」
「(いや何言ってんだ俺、大丈夫か。大丈夫じゃないなこれ)」
「で、どうしたらいいんだ、これから」
「ふう……疲れたなどうも」
「…………」
(ふと、包みに目をやる)
「……何色なんだろう」
(自分の顔をぶん殴る)
部長「ってバカ! バカか俺は! 俺は変態じゃない、変態じゃない――」
????「――ま……か、聞こえ……か」
部長「何だ? どこからか声が――」
????「聞こ……ますか、聞こえますか……洋一。我はアナタの心の声――深層心理からのメッセージ……アル」
部長「変な語尾ついた今! 中華キャラなの俺の深層心理!?」
深層心理?「洋一よ……恐れることはない……アル。アナタの心のままに行動するがいいアル……つまり――」
「かぶれ。パンツ。四の五の言わずにかぶるアル」
部長「何で!? アグレッシブ過ぎるだろ深層心理!」
???「お待ちなさい!」
部長「また別の声が! 今度は何だよ!」
???「その者はあなたの悪の心……耳を貸してはなりません!」
???「私はあなたの善の心。いいですか部長さ……洋一さん。私の言うことをよくお聞きなさい」
部長「普通に部長さんって呼びそうになったよな今」
善の心?「師匠……いや映子さんが置いていったその下着。決して――」
「――決して! 無駄にしてはいけません!!」
部長「……へ?」
善の心?「いいですか? いったいどんな気持ちどんな覚悟で師匠……映子さんがそれを置いていったと思うんですか!」
「据え膳食わぬは男の恥……かぶりなさい部長さん! 師匠のためだけじゃない! あなた自身の願いのために!!」
部長「エヴァっぽく言ってきた善の心!? というか善悪とも結論同じじゃねーか!!」
「もう、いい加減にしろよヤンヤン! マリア!」
(部室の窓の外から様子を見ていた二人。ヒソヒソと声をかわす)
ヤンヤン「ったく。パンツ一つでまーウジウジとじれったい男アル」
マリア「といいますか……ホントじれったいんですよね~あの二人。つかず離れずでいつも一緒のあの距離で、まだつき合ってないんですからビックリですよね~」
ヤンヤン「パンツでも何でもいいケド、二人がお互いに意識を変えるチャンスだと思ったアルがな~」
マリア「まあ、その手段が下着である必要は全くないんですけど」
ヤンヤン「シカシまあ、アノ二人。つき合うとかどーのこーの通り越して、熟年夫婦感すらあるアルよなー」
マリア「もはやマスオ×サザエを通り越して、波平×フネの次ぐらいの安定感ありますもんねー」
ヤンヤン「なっ!? それもはや人類史上最高レベルの安定感アル!」
部長「何ぶつぶつ言ってんだ外の二人! さっさと帰れよもう! 俺も帰――」
(部長が外へ出ようとしたそのとき)
(息せき切って、邦キチが部室の中へ駆けてきた)
(その勢いのままに頭を下げてくる)
邦キチ「部長! このたびは真に申しわけありませぬ!」
部長「な……何だよ、急に」
邦キチ「本当にすみませぬ……部長のお気持ちも考えず勝手なことを」
部長「いや……いいんだ。……俺もなんか、悪かった。その、お前なりに、俺のためを思ってしてくれたのに――」
邦キチ(聞いてない)「まったく、
「本物の変身アイテムであるパンティーではなく……短パンを渡していたなどと!」
部長「短、パン……」
邦キチ「体育の後でたまたま履いたままにしておりましたので、ちょうど良いかな~と思ったのでありまするが」
部長「(それで、たまたま履いてて良かった、とか言ってたのか)」
「(フ……なんだそうか、短パンかぁ)」
「(俺としたことがすっかり慌てていたな……最初から別に、気をもむようなことでも――)」
「(――いや、充分おかしいわ!!)」
「(後輩が脱ぎたての短パンくれるのも普通に変だろ!)」
邦キチ(全て分かっておりまするよ、という目で)「部長。さ、本物志向の部長にふさわしいのは」
「こっちで、ござりまするね……?」
(す、とスカートの中に手を差し伸べつつ)
(部長の方へとにじり寄る)
部長「(ふりだしに戻ってる!!! 結局パンツくれようとしとる!!?)」
「(~~~ッ!! なんてこった……前半は邦画プレゼンもして、二次創作にしちゃあ平常運転だと思ってたが)」
「(
「(割といつものテンションのまま、センシティブな方向にグイグイ来やがる……!?)」
ヤンヤン「(そして、外からのぞいてるヤンヤンたちは)」
マリア「(こういうときどんな顔をすればいいか分からないのです。いえホントに)」
邦キチ(さらににじり寄りながら)「さあ、どうしたのでありまする部長? さあ……さあ、さあ――」
部長(後ずさり逃げようとするが、背中が壁にぶつかって動きが止まる)「(~~~ッッ! なんてこった……何かちょっと【変態仮面にじり寄られて股間を押しつけられる悪党の気持ち】が分かっちまったぜ……!)」
「(というか、むしろこの状況に甘んじてしまいたい俺がいる……それが何より怖い……ッ!!)」
部長「(ああ、誰か――)」
「(誰でもいい――)」
「(どうか――)」
「(誰か、助けて……! 誰か、そう、ピンチに颯爽と現れてくれる『ヒーロー』のような――)」
(そのときだった)
(突然。部室のドアを吹っ飛ばして、誰かが室内に倒れ込んだ)
(誰かに殴られたようなボロボロの男が)
倒れた男「ぐ……!」
部長「え? ちょ、何だ――」
(外には、いかにも不良といった格好の男たちが)
(部室の入口を取り巻くように何人もいた)
不良1「なんじゃい、口ほどにもないやんケ」
不良2「ちょーっと他の生徒から通行税取立てよっただけじゃろがい……何の文句があるんじゃいワレ」
不良3「文句あんなら足腰立たんようにしてやっど、おおっ!?」
倒れた男「くそう……」
邦キチ「だ……大丈夫でありまするか?」
(男に巻き込まれるように倒れていた邦キチ)
(男を気づかって近寄る、その手には)
(握られていた――その男にとっての)
(変身アイテムが……!)
倒れていた男「これは……パンティ!? すまない、君――借りるよ」
(素早くパンティを取り、慣れた手つきで顔にかぶる。まるで変身ヒーローの、覆面のように)
部長「これは――」
邦キチ「この方は……まさか――」
倒れていた男「フオオオオオオオオッ! たぎる、たぎるぞ……エクスタシーッッ!!
(説明しよう!)
(人間は通常、潜在能力の30%しか使うことができないといわれている――)
(だがこのとき、体内に眠る変態の血が異常興奮に誘発され覚醒し、潜在能力が100%引き出されたのだった!)
(その力を使いこなすヒーローこそが彼、その名も――)
倒れていた男「変態仮面!! 見参!」
(顔を覆うパンティと自らのパンツ、そして脚の網タイツ)
(それ以外の衣服を脱ぎ捨てたたくましいヒーローは)
(自らのパンツに手をかけ、上へ引き伸ばし。肩にかけた。尻に股間に強く食い込んだ、スリングショット水着のような形に)
不良1「ぷ……くくく――」
不良2「な……ぶふっ――」
不良3「は……あははは――」
不良たち「ははは、あはははは!?」
変態仮面「今だ! あたぁ!」
「あたたたたた! あたぁ! ――成敗!」
(あっという間にヒーローは不良たちをなぎ倒し)
(お仕置きとばかりに彼らの頭を収めていた――自らの股間と尻、パンツの内側へ)
(その視線が邦キチへと向けられる)
変態仮面「お嬢さん」
邦キチ「え……」
変態仮面「怪我はありませんか。巻き込んでしまい申し訳ない……だが、貴女のおかげで助かった、礼を言わせてほしい」
(歩み寄る――きつくパンツが食い込んだ股間に、不良たちをぶら下げたまま)
邦キチ「へ……ええええっ!?」
(歩み寄る変態の前に)
(立ちはだかった、彼は――)
(部長、小谷洋一は)
部長「ま……待てい!」
「(実在したの!? とか、あのヒーローが!? とか、思うことは色々あるが)」
「(そんなことよりとにかく変態! 邦キチのパンツかぶってるし!)」
「(だから、よく分からんが、とにかく――)」
「それ以上一歩も近寄るな! 俺の、お……大事な部員に!」
邦キチ「部長……!」
遠巻きに見ていたヤンヤン「(そこは『俺の女』)って言えヨ)」
遠巻きに見ていたマリア「(言えよ)」
(そのとき)
(ヒーローの仮面の奥、鋭利な眼差しが)
(ふ、と緩んだ――そんな風に見えた)
変態仮面「愛……か」
「そう、それこそが全ての力の源」
「私と――同じだな」
(ぽん、と部長の肩を叩く)
「頑張りたまえ。後輩」
部長「え……」
変態仮面「では――さらばだ!」
(股間に挟んだ不良たちを振り落とし)
(ヒーローは駆け出し、去っていった)
邦キチ「部長……あの方は。あの方は、本物の……?」
部長「ああ、もしかしたら、な。――って」
「待て! ちょっと待てオイ、人のパンツかぶったままカッコよく去るんじゃない!! 待てーー!!」
(追って走り出す)
ヤンヤン「ていうかアイツ、自分のパンツみたいな言い草アルな……」
マリア「それより! この不良の方たちと脱ぎ捨てた服! これいつもどうしてるんですか~!?」
(邦キチ、駆けていく部長に向かって大きく手を振る)
邦キチ「部長~! 頑張って下さ~い、部長はいつでも
部長「お、おう! ていうかこれ――」
(果てしなく駆けてゆく変態仮面と部長の姿が、遠く小さくなっていく)
「――完全に邦画のオチじゃないか!? 具体的にどの邦画って言われると困るけど!」
――出演――
――スタッフ――
脚本 木下望太郎
演出 木下望太郎
監督 木下望太郎
――原作――
『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』(服部昇大 作)
『HK 変態仮面』(福田雄一 監督)
『究極!! 変態仮面』(あんど慶周 作)
――主題歌――
『愛のリビドー(性的衝動)』(筋肉少女帯)
――挿入歌――
『Emotions』(MAN WITH A MISSION)(『HK 変態仮面』主題歌)
――――
変態仮面「むう、このパンティ……色、香り、そしてこのフィット感……三つ星だな」
部長「無駄に高評価!?」
変態仮面「いや、もう少し盛って星3.25か(五段階評価)」
部長「別に高くなかった!?」
――邦キチ二次創作SS製作委員会 2023――
(おしまい)