東方現異録 ~ 博麗の系譜   作:五代ユウスケ

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不定期更新になると伝えましたが、創作意欲が残っているうちに早速一話を投稿します。

オリキャラが登場します。


一話:もう一人の博麗

 ピピピッ

 

 薄暗い部屋に、朝を告げる電子音が鳴り響く。その音で、一人の少女が目を覚まし、布団から上体を起こした。

 

「んぅ…ふぁぁ…もう朝か」

 

 彼女は博麗夢花(はくれいゆめか)。ごく普通の中学校に通う十四歳の少女だ。夢花は布団から出て、部屋のカーテンを開けた。

 

「今日も良い天気。あ、着替えなきゃ」

 

 窓から差し込む陽の光を浴び、夢花は微笑んだ。そしてパジャマから制服に着替え、身支度をした後部屋を出てリビングに向かった。

 

「おはよう夢花。朝ご飯できてるから食べちゃって」

「叔母さんおはよう。いただきます」

 

 リビングでは叔母の藤田清美(ふじたきよみ)が、朝食の支度をしていた。夢花は清美に挨拶を返し、朝食を食べ始めた。

 

 夢花の両親は、夢花が物心ついた時には既におらず、ずっと叔母である清美のもとで暮らしていた。最初は親がいないことを疑問に思っていた夢花だったが、現在は気にすることも無くなった。

 

「ごちそうさまでした。あ、そうだ。今日は帰りが遅くなるかも」

「わかったけど、何かあるの?」

「ううん、そんな感じがするだけ」

 

 朝食を食べ終えた夢花は出掛ける前に、一般的にはよくわからないことを清美に伝えた。少し疑問に思った清美だったが、

 

「そう…いつもの勘ね。気をつけてね」

 

そう言って夢花を見送ることにした。夢花の勘は、恐ろしい程よく当たるのだ。

 

「うん。じゃ、行ってきます」

 

 夢花は頷き、玄関の扉を開けて、自身が通う中学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 中学校までの道を、夢花は歩いて進んでいた。いつもと同じ道、いつもと同じ景色の筈だが、この日は夢花にとって少し違うように感じていた。

 

「…なんだろう…この感じ…」

 

 不安に思う夢花だったが、特に何事も無く中学校に到着した。

 

「気のせい…?だと良いけど…」

 

 校舎に入りながらも、夢花の不安は消えなかった。いろいろ考えながら、夢花は教室に入った。

 

「…おはよう」

 

 扉が開く音に、中にいた生徒数人が一斉に夢花の方を向くが、挨拶は返さずすぐに元通りになった。学校内には、夢花にとって友達と呼べる存在はいない。成績優秀な夢花にとって、授業以外の時間は苦痛でしかなかった。

 

 

 朝に感じた不安が気掛かりだった夢花だったが、放課後になるまで普段と変わらない時間を過ごした。

 

「考え過ぎか…」

 

 このまま何事も無く、家に帰れる。そう思った夢花だったが、

 

 

 ドォォォォン!!

 

 

校舎の外から聞こえた、何かが爆発したような音で、その思考は途絶えた。

 

「何!?」

 

 夢花は慌てて、爆発音がした方向へ駆けていく。生徒や教師が逃げ惑う中、その音源にいたのは、

 

 グルルルルルルルルル…

 

明らかにこの世のものとは思えない、異形の存在だった。

 

「な、何…これ…!!」

 

 対峙した途端、夢花は震えが止まらなくなり、無意識に後退りしていた。今すぐ逃げなければ襲われてしまう。そう思った夢花だったが、体が思うように動かない。

 

グルォォォォ!!!

 

 遂に襲い掛かってきたため、夢花は恐怖で目を瞑った。しかし、どれだけ待っても、痛みがやってこない。恐る恐る目を開けると、

 

「危ないところでしたわ」

 

見慣れない神社の前におり、金髪の妙齢の女性に顔を覗き込まれていた。

 

「え…?え??ここは…?」

 

 混乱する夢花に、金髪の女性は淡々と語り始めた。

 

「ここは幻想郷。その東にある博麗神社という場所。あなたをここに連れて来たのは、あなたの世界と幻想郷(こちらの世界)のバランスを守るために、お願いがあるから…聞いてくれるかしら、博麗夢花さん?」

「なんで私の名前を…それに…」

 

 話を聞いていた夢花だが、混乱は増すばかり。質問しようとした夢花だったが、空から来た何かによって遮られた。

 

「紫、連れて来たわよ。って…その子は?」

「え…今空を…え??」

 

 空から来たのは、服装はそれぞれ特徴的な数人の人だった。余計に混乱する夢花を横目に、紫と呼ばれた女性は微笑んだ。

 

「あら霊夢。ありがとう。こちらは博麗夢花。ピンチだったから外の世界から連れて来たの」

「ふーん…あなたが外の世界の博麗ね…私は博麗霊夢。この神社の巫女よ」

「博麗…私と同じ…?」

 

 混乱が漸く落ち着いた夢花は、霊夢と名乗る少女の方を向く。自身と同じ名字の人物に会うことが無かったため、内心驚いていた。紫は、夢花が落ち着いたことを確認し、現状の説明を始めた。

 

「さて…時間が無いので手短に説明すると、今あなたの世界に、幻想郷の妖怪が逃げ出してしまったの」

「あれは…妖怪…!?」

「そう。ただ、退治するには霊夢の力が必要なのだけれど、わけあって霊夢はそちらの世界には行けないの。そこで…」

 

 紫は一旦言葉を切り、懐から一枚のカードを取り出し、夢花に差し出した。

 

「あなたに、霊夢の代わりになってもらいたいの。同じ博麗の名を持つあなたに」

「私が…?」

 

 突然のことに、夢花は戸惑った。それを見た霊夢は、

 

「本当はこんなこと頼みたくないけど…あなたにしかできないことなの。お願い」

 

夢花の手を握り、後押しをした。

 

「…わかった。やるよ」

「ありがとう」

 

 霊夢の後押しを受けて、夢花は決心し、紫からカードを受け取った。

 

「話はまとまったみたいだな」

 

 霊夢が連れて来た人物のうちの一人が話しかけてきた。

 

「紹介するわね。あなたと一緒に妖怪退治をする面々よ」

霧雨魔理沙(きりさめまりさ)だ」

魂魄妖夢(こんぱくようむ)です」

東風谷早苗(こちやさなえ)です!」

 

 紫が指した人物達は、夢花に軽く自己紹介をした。

 

「さて、時間が無いわ。四人共、行ってらっしゃい」

 

 そう言うと紫は、自身の能力で何もない空間に"スキマ"を作った。

 

「…はい!」

 

 夢花は力強く返事をして、他の三人と共にスキマを通っていった。

 

 

続く




夢花が受け取ったカードの効果は次の話で明かします。

オリキャラの設定はそのうちまとめます。
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