single-minded Agnes Tachyon. 作:Nautilus
沖野トレーナーとスピカのメンバーがチームルームで机を囲み会議を始めている。しかし、部屋が飾り付けられていることや、会議には似つかわしくないお祝いムードに溢れているため、おおよそまじめな雰囲気はなく、全員笑みを浮かべている。
「よーし、みんな集まったし会議を始めるぞ…と言いたいところだがまずはその前に、ウオッカ、スカーレット、二人とも天皇賞、最高の走りだったぞ!」
トレーナーの言葉を皮切りに、様々な賞賛の言葉がスピカのメンバーから飛び交う。
「もちろんっすよ!」
「私も全力を尽くしたから、後悔は残ってないわ」
先輩からの賞賛の言葉を二人で照れながら、少し誇らしげに受け止めている。
「じゃあ次走についてだが、ウオッカはジャパンカップ、スカーレットは有馬記念でいいのか?」
二人は前々から決めていた目標を改めて確認し、前年の雪辱を晴らすために奮起している。
「おう!前回のようにはならないぜ!」
「もちろん!今度こそ一番になるわ」
「スカーレットさんは問題ないですが、ウオッカさんは間隔が少し短くありませんか?」
マックイーンが自身の経験からか不安そうに、トレーナーに尋ねた。
「まあな、正直厳しい戦いになると思うがやるんだよな、ウオッカ」
「勿論!オレは勝ちますよ!」
「ようし!その意気だ!もうメニューは組んであるから、すぐにでも取り掛かれるぞ!」
「あとはスカーレットだが、正直何も心配するところが無いんだよな…」
「おいおい、トレーナーよぉそれは何というか、無責任じゃねえか?」
「トレーナーさんの方針は理解していますけど、さすがに…」
放任主義にしても度が過ぎているんじゃないかという趣旨のゴールドシップの発言に、スペシャルウィークが同意するが、トレーナーは難しい顔をしたまま考え込んでいる。
「いやもう既にバ体は完成しているんだ。秋天ではレース運びに課題があったが、それもウオッカを意識しての面が大きいから、不安視するほどじゃないんだよなあ」
沖野トレーナーの発言にレースの内容を思い出したのか、スカーレットは苦々しい表情を浮かべている。それを見て、沖野トレーナーは微笑みながら、言い聞かせるように言う。
「前回敗れた相手はいるが、去年とは比べ物にならない位に成長している。レースに絶対はないが、今の状態を維持できれば大丈夫だ」
「当然よ!もう誰にも負ける気はないわ!」
スカーレットの自信に溢れた宣言に、全員が己の目標についての意思を高めていく。それを見計らい、沖野トレーナーが一人ひとりトレーニングメニューを伝えていった。
「おいトレーナー!!これ見ろ!!」
ゴールドシップが焦りを浮かべた表情でウマホを突き出す。
そこにはアグネスタキオンとマンハッタンカフェのウマッターが映っていた。
アグネスタキオン:『今年の有馬記念は出走することにした。それとこのレースを最後に、引退することに決めた。』
マンハッタンカフェ:『有馬記念の出走を決定しました。私の引退レースになります。』
『ええええええええええええ!?』
スピカの部室に銘々の叫び声が響き渡る。
「ちょっと、なんでタキオンさんとカフェさんが!?」
「これは想定外だな。カフェはともかくタキオンはデータが少ないんだよなあ」
「しかし、タキオンとマンハッタンカフェの対決というだけで話題性がすごいですわね」
マックイーンがウマッターのトレンド欄を見ながら感嘆したように言う。
「タキオンさんは幻の無敗三冠バで、カフェさんが長距離GⅠ3勝ってお二方ともすごいですね!?」
スペシャルウィークは凄い人とは知っていたが内容までは知らなかったようで、スマホで検索しながら驚いた様子で話す。
トレーナーが場を鎮めるために、落ち着かせるように意識しながら言葉をかける。
「スカーレット今日のところはメニューの変更はないが、もしかしたら次回以降大きく変わるかもしれないがいいな?」
「大丈夫よトレーナー。相手がカフェさんでもタキオンさんでも、絶対に、一番は譲らないから!」