single-minded Agnes Tachyon. 作:Nautilus
12月28日タキオンの姿は中山レース場の控室にあった。その控室にてタキオンは、調査内容のリストアップや、エアシャカールに渡す機材の調整を行っていた。
(ふぅ…私のトゥインクルシリーズ最後のレースだというのに、感傷に浸ることもなく機材調整とは…いつの間にか研究者魂が染みついてしまったねぇ)
そんなことを考えていると、コンコンとドアをノックする音が控室内に響き渡った。タキオンはドアを開けると、そこにはカフェが立っていた。
「タキオンさん、もうすぐパドックにでる時間ですよ」
「ああ、わかったよカフェ…よし、あとはこれをシャカール君に渡すだけだ」
「はぁ、全くあなたは引退レースだというのに」
「安心してくれカフェ、100%の実力を出す準備は既にできているよ」
「ええ、わかりましたから、早くパドックに向かいますよ。ファンの方々が待っています」
パドックについたタキオンを待っていたのは、歓喜と少しの猜疑を含んだ視線だった。しかし、横断幕やパドックに響き渡る歓声がタキオンの人気を物語っていた。
(長い間走ってなかった私を応援する酔狂なファンがこんなにいたのだねぇ…あそこにいるのは、メイクデビューの時から応援してくれていた人じゃないか)
タキオンは予想以上に自分を応援する声が大きいことに驚きながら、ターフへと足を進める。途中でしっかりとシャカールに機材を渡しながら。
タキオンはスターティングゲートの後ろの待機場へとカフェを伴いながら向かっていた。
(私が2枠2番、カフェが3枠3番か、普段だったらいい枠なのだが今回の作戦だったらもったいなく感じてしまうねぇ、それよりもスカーレット君が外枠なのが面白い、しかし、今のスカーレット君には、その程度の障害は関係ないだろうが)
そうこう考えている内に、目的地についていたタキオンは、他の選手を観察し始めた。事前の情報に脳内で細かい修正を加えながら作戦の支障になる存在がいるかを確認したが、想定の範囲内の振れ幅だったことに胸をなでおろした。
「やあスカーレット君、調子はどうだい」
「こんにちは、スカーレットさん」
「タキオンさん!カフェさん!こんにちは、調子は万全ですよ!」
「ならよかった、見たところ怪我の対策も講じているようだし、レースが楽しみだよ」
「互いに悔いが残らないようなレースをしましょう」
「はい!もちろん!」
「それにしても久しぶりにここに立ったのだが、こんなにも胸がすくような、快哉を叫びたくなるようなものだったかな」
「…魂が燃えているのでしょう」
「ふうン、送り火のようにかい」
「いえ…埋み火がターフにより野火に成ったようなものかと」