「仕事の時間だ」
夜 ルビコン ブリーフィング
「仕事の時間だ」
ボクオシゴトダイスキ
9/20追記
待たせてしまい申し訳ありません。次回ですが10月下旬になります。
11/9追記
ちょっとした指摘があったので、加筆修正しました。
遅れるに遅れていますが、続きは必ずや投稿します。
感想、評価、誤字報告いつもありがとうございます。
なんとも皮肉な光景じゃないか
俺の一族を地下に生き埋めにした者が
一族が呼び寄せた病を患うなんてよ
狭間の都を守って来た者たちが
今は異界の都を滅ぼそうとしてやがる
ある種の因果応報なのかもな
奴らも少しは思い知っただろう
居場所がないことがどれだけ辛いのかを
さて、お得意さんはどう出るかな
お手柔らかに済ませて欲しいところだ
あの都には友人となった
商人たちもいるからな
もしかしたら……
新しい故郷になるかもしれないんだ
どうか頼むぜ、お得意さんよ
────────────────────
突然の報告に国王は唖然としたが、確認しなければならないことを思い出し、意識を切り替える。自分の妹のこと、狂い火が疫病であること。
「城の様子、それと感染者はどの程度なのだ?」
「王城は、まだ無事のはずです。私が出立した時には、奴らの手も届いておりませんでした。感染者については……詳細は不明ですが、既に多くの民たちが……」
王城が無事なら、王妹もきっと無事だろう。だが感染者に関しては、既に甚大な被害が出ている。王都の内部は勿論、王都から逃げ延びた者にも感染者が確認されており、その数はもはや数えることが困難となっている。分かっていることは、急速に広がっていることのみ。
広がる感染にどう対処すれば良いのか。有効な治療法は、まだ見つかっていない。隔離するとなると、王都そのものを封じなければならない。感染者を殺すとしても、どれだけの民を殺す事になるのか。
「そもそも何故、王都の内部に侵入を許したのだ?外壁や門に配備された守衛たちは何をしていたのだ?」
「そ、それが、守衛の話では内部に突然現れたようだったと。恐らく、何者かが内側から手引きしたのかと」
「何だと?馬鹿な……いや、まさか……」
国王が何やら呟きながら思案し始めた時、勇者の治療を終えた配下が声を掛ける。
「陛下、悩むのは後です。今は、王都奪還が最優先です」
「……ああ、そうだな。急ぎ王都へ帰還する。勇者の様子は?」
「僕は、平気…だよ」
「勇者殿、まだ動かれては成りません!」
少しよろけながらも、勇者は立ち上がる。国王の配下が治療したとは言え、凄まじい回復力だ。現に賢者と剣聖は、目を覚ます様子も無い。あれだけの事があったのだから、それが普通である。
勇者は国王の配下を振り払いながら、褪せ人のもとへ行く。
「褪せ人さん、確か転移ができるんだよね。転移で王都まで行けないかな?もし行けるなら、僕を連れて行って欲しい」
勇者の言葉に国王は驚き、褪せ人は困惑する。確かに、王都の付近に転移することはできる。しかし、褪せ人は誰かと一緒に転移した経験が無い。円卓や火山の館のように、誰かに連れて行ってもらった経験ならあるのだが。
「失敗したら、自力で向かうだけだよ。だから、お願い……連れて行って」
「待て、勇者。そなたには、まだ休息が必要だ。しかも聖剣を失ったのだろう。武器も持たずに、何ができるのだ」
「……僕が足手まといになることは分かってる。でも、僕は今起きていることをこの目で見たい。いや、見ないといけないの」
「それは、何故だ?」
「……ごめんなさい。理由は今は言えない。けれど、必要なことなの」
「理由も分からず、許可することなどできん。それに異界の王を、我が国の問題に巻き込む訳にもいかん」
国王の言葉を、褪せ人は否定する。あの傭兵たちが狂い火に負けたとすれば、それは絶望が原因だろう。最初の狂い火は、絶望によって呼ばれたものなのだ。そして、あの傭兵たちが絶望したとすれば、その原因は他ならぬ褪せ人にある。
「……それは少し違うぞ。彼らを腫れ物として扱ったのは、我々とて同じだ」
国王は魔神王との戦いの後、異種族間の交流をより深いものにしていきたいと思っていた。しかし、異種族と問題ばかり起こす傭兵たちは、異種族からの強い反感を買っていた。初めは英雄視していた者たちも、彼らの横暴さに嫌気がさして自然と離れていった。
結果、傭兵たちの処遇は彼らの働きに見合うものとは呼べず、孤立したも同然であったのだ。
国王の話を聞き終えても、褪せ人は王都へ行く気持ちを変えない。己の手で、彼らと決着をつけたいと。
「それなら、僕も連れてって。何もできないけれど……どうか、お願い」
勇者は目に涙を浮かべながら、褪せ人に嘆願する。涙で濡らしながらも、その瞳から強い決意を抱いていることが伝わってくる。褪せ人が断ったところで、何としてでも王都へ向かうだろう。
褪せ人は勇者の願いを聞き入れ、国王も仕方ないと言うように溜息を吐く。もとより、勇者を説得することは不可能に近いことを、国王は良く知っている。
「……異界の王よ、この様なことを頼むのは気が引けるのだが……彼女を、勇者を頼む。それと、可能な限り狂い火を食い止めてくれ」
褪せ人は、国王の頼みを聞き入れる。褪せ人は勇者に手を差し出し、勇者はその手を強く握る。
準備が整い、褪せ人は王都の近くにある祝福へ転移を行った。
──────────
ゆっくりと目を開け、隣に勇者がいることを確認する。転移は無事に成功したようだ。
褪せ人は勇者と共に、王都が見える小高い丘の上にいた。勇者に祝福が見えるか確認するが、彼女には見えないようだ。褪せ人と共に転移はできても、休息を取ることはできないようだ。
褪せ人は祝福で手早く休息を済ませ、勇者と共に王都を見下ろす。そこには、王都の正門と内部を占拠した狂い火が見えた。
「……酷い」
正門の外側では、狂い火の感染者たちが救援に来た軍と冒険者を牽制している。軍と冒険者は狂い火の感染を警戒しているのか、遠くから矢と魔術を放つばかりで積極的に攻撃する様子は見られない。彼らの背後には王都から逃亡した避難民が見え、声が聞こえなくても慟哭していることが良く分かる。
正門の内側では、狂い火の侵略を冒険者と軍が防ごうとしている。樽や瓦礫で即席の壁を作成し、弓や魔術を懸命に放っているが、劣勢に立たされているのが目に見えている。狂い火に感染した者たちは、兵も冒険者も市民も全て敵に回ってしまう。まだ、侵略されていない場所でも悲鳴が聞こえ、あらゆる場所で感染者が出ていることが分かる。
静寂を保っているのは、王城の奥側ぐらいであろう。城の入口側では、固く閉ざした城門に避難を求める市民が群がっており、いつ暴徒と化してもおかしく無い。
「一体、どうすれば……」
勇者は、魔神王から狂い火を受けたことがある。恐るべき発狂と激痛を思い出し、思わず身震いしてしまう。
褪せ人は勇者に後方で待つよう伝え、前方へ踊り出る。
かつて、狭間の地の王都を守り抜いた者たちが、異界の王都を滅ぼそうとしている。彼らを追い詰めた者として、何としても止めねばならない。
褪せ人は、幾つかのタリスマンを取り出す。その中の一つ、所有者に禍を運ぶそれは、厳密にはタリスマンとは呼べない代物だ。ましてや、あの男の肖像など悪趣味極まりない。手に入れた時は、使う事など絶対に無いと思っていた。しかし、目の前で起きている王都に降りかかる禍を、褪せ人へ仕向けるには丁度良い。
距離は離れているが、遠矢の加護を得た滑車の弓ならば届くであろう。用意したタリスマンを身につけ、弓を引いて矢を王都の門に向けて構える。
こちらを向き
そして思い出せ
狂い火を宿しても
その憎しみは消えぬだろう
お前たちから全てを奪った者が
ここにいるぞ
──────────
救援に来た軍が陣地において、軍と冒険者、避難民が王都を眺めている。王都が襲撃された後、軍は周辺に滞在していた兵と冒険者を集めて救援部隊を形成していた。
救援部隊も、当初は積極的に攻勢に出ていたのだ。しかし、狂い火に感染した傭兵が悍しい叫び声を上げた途端、その叫び声を間近で聞いた者が発狂し始め、瞬く間に狂気が伝染していった。狂い火にだけ注意を向けていた部隊は、思わぬ出来事を前に後退を余儀なくされてしまった。
これ以降、救援部隊は狂い火を相手に攻勢をしかける事ができず、避難民の保護を行うことが精一杯であった。陣地の天幕の中では協議が行われているが、指揮官たちは狂い火を恐れてすっかり弱腰になってしまい、国王の到着を待とうなどの消極的な意見が出始めている。
そんな陣地の中に、西方辺境の上位冒険者たちがいた。
「……この調子じゃ、王都が落ちちまうぜ」
「対策が見つからないからな。耳栓は勿論、《沈黙》も意味が無かったらしい。自棄になって、突撃しろと言われるよりかはマシだが……」
槍使いが王都を眺めながら愚痴り、重戦士が答える。彼らは偶然にも、王都の近くに冒険に来ていたのだ。それぞれが、依頼を終えて西方辺境へ帰還しようとしていたが、滞在していた街のギルド職員から頭を下げられ、やむなく王都救援を引き受けたのだ。
引き受けた際、女騎士だけは「これで堂々と奴らを切り捨てられる!」と、とても張り切っていた。初戦の被害から、直ぐに冷静さを取り戻したが。
女騎士は、苦虫を潰したような顔で話す。
「あの騎士のような傭兵をどうにかできれば、何とかなるんだがな」
「叫ぶのは、傭兵の精鋭、だけだから、ね」
あの悍しい叫び声は、傭兵の中でも騎士のような格好をした精鋭だけしか出せない。彼らさえ排除できれば、戦況を変えられる。しかし、狙撃や誘い出しなど様々な手を試してみたが、どれも失敗に終わった。
傭兵たちは、攻めることよりも防衛の方が経験豊富なのだ。正気を失っても尚、その強固な陣は簡単には崩せない。
女騎士が、何か手はないかと辺りを見回していると遠くに人影が見えた。
「ん?あの向こうの丘にいるのは誰だ?」
「……よく見えないが、避難民って訳じゃなさそうだな」
重戦士が目を凝らして、その人物を見ると鎧を着ている事がわかる。報告すべきか迷っていると、弓を正門に向けて矢を放ち始めた。
「一体何を──」
女騎士が疑問を言いかけた時、周囲の雰囲気が変化した事を肌身に感じた。身震いしたくなるような、強い寒気を感じて冷や汗が出始める。空気が、怒りと憎しみが込められた重いものに変わっていたのだ。
正門の方を向くと、傭兵たちが丘の方を注目しているのが分かる。全員が同じ方向を向きながら、異様に静かだ。まるで時が止まったかのような感覚の後、轟音が鳴り響き地面が揺れた。
正門から怒号を上げながら、傭兵たちが丘へと向かって行く。驚いたことに王都の内部にいた傭兵たちまで、次々と出て来ては丘を目指していく。まるで、火が丘に向かって燃え広がるように。
これには冒険者や兵士たちだけでなく、天幕にいた指揮官たちも、避難民も何事かと注目する。
「……嘘だろ」
槍使いの呟きは、この場にいた者たち全員が思った事であった。
彼らは、天罰を見たのだ。
実際には天罰などでは無いが、虚空から現れた大量の隕石が、次々と絶え間なく傭兵たちへと落ちていく光景を、神の怒りと勘違いするのは仕方のない事であった。
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狂い火の王都襲撃
傭兵の裏切り、夜の王の星落とし
惨劇の果てに、勇者が決意を胸に抱く
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数日後、狂い火の感染者たちは大半が討伐され、残りは拘束されて隔離された。傭兵たちが褪せ人によって一掃されたことにより、王都の内外にいた部隊が合流した後、少数ではあるが感染者を捕える余裕が生まれたのだ。感染者とは言え、王都の民であり家族を持つ者もいる。皆殺しとはいかない。
後で調べて分かったことだが、軍と冒険者の努力もあり、被害は想定よりも少なく済んでいた。
だが、安心することはできない。国の要である王都は、常に混沌や邪教徒から狙われている。この機会に、彼らが何らかの策略を用いて来ることは明らかだった。
そこで、集まった冒険者たちに王都に留まってもらった。国の高官たちが自らギルドに出向いて、冒険者たちに依頼をしたのだ。王都の守りに、手を貸して欲しいと。冒険者たちの反応は様々で、快諾する者もいれば、早く拠点に帰りたがる者もいた。それでも、春が訪れるまでは留まる契約を結ぶ事ができた。冒険者も、王都の危機が去っていないことは理解していたのだ。逆に考えれば、春が訪れる前に何としても復興の目処を立てねばならない為、ギルドも王城も大忙しである。
そして、その中心人物である国王は酷く憔悴していた。
王都の復興は、国庫を開けたところで解決するような問題ではない。不足した人材と資材を集めるには、金銭が幾らあっても足りず、そもそも金銭で解決できない問題も数多くある。
だが、彼が憔悴した理由は別にある。惨劇を目にして勇者が抱いたとある決意、その内容を聞いた時、国王は嘆かざるを得なかった。更にもう一つ、地下牢に囚われたとある人物の存在。それは、国王が最も恐れていた事の一つであった。
国王は地下牢の前に立ち、話し始める。
「……王都の警備は厳重だ。簡単には突破できん。つまり、傭兵たちが内部に入り込めたのには相応の理由がある。しかし、内部から手引きするにも、地位を持ち、信頼を得ている者でもないと不可能だ」
王都の内部へ傭兵を手引きできて、狂い火と深い関わりを持つ人物。そのような人物は、国王には1人しか思い当たらなかった。
「……まさか、目を覚ましているとはな。どうやって目覚めたのだ?」
「あら?そのような些細な事を、態々お聞きに来られたのですか?」
優雅な仕草で、地下牢の人物は答える。その余りにもいつもと変わらぬ様子に、国王は逆に恐怖を覚える。
至高神の大司教と言う地位を持ち、世界を救った英雄として民に慕われ、国王の友人でもある人物。
剣の乙女であった。
「……何故、この様な事を?」
「簡単なことですわ。間違いを正す、ただそれだけのこと」
「狂い火を広げる事がか!王都の民が兵たちが、彼らが一体何を間違えたというのだ!」
国王は声を荒くして叫ぶ。しかし、剣の乙女は何一つ取り乱すこと無く、のんびりと答える。
「間違っているのは彼らの行動ではなく、彼らの存在そのものですわ。もっと正確に言えば、この世界の存在そのものが間違えております」
「……理解できん。かつて世界を救った者の言葉とは思えん」
「理解できなくて当然ですわ。私自身、過去の自分なら決してこの様な事はしなかったと思っています」
まるで他人事のような剣の乙女の物言いに、国王は手の拳を強く握る。怒りを振るったところで何も解決しない。何とか理性的に話すよう心がける。
「其方が変わってしまったのは、三本指とやらの影響か?」
「流石は陛下、ご明察ですわ」
揶揄うように褒め言葉を述べ、顔を少し上にむけて思い出しながら語る。
「眠りについている間、三本指様は実に沢山のものを私に見せてくれました。この世界の始まりから、今現在に至るまでの出来事。そして、異世界のことも」
「…………」
「この世界が、神々に作られた盤であることは陛下もご存知でしょう?私も当然、知っておりました。そして、それに疑問を持つことも有りませんでした。しかし……異世界からこの世界と神々を見た時、私が冒険している時に神々が何をしていたのかを見た時、思ってしまったのです。世界も神々も、何もかも間違えていると」
カラカラ…………あっ
失敗しちゃった
相手はゴブリンか
……かわいそうに
国王が、剣の乙女の変化に気づく。手を強く握り、下唇の一部を強く噛み、全身を震わせている。国王は、これほど怒りに満ちている剣の乙女を見るのは初めてであった。
震えが収まると同時に、剣の乙女は再び話し始める。
「面白いことを教えてあげましょう。私、ゴブリンが怖くて殺せませんの」
「何だと?」
「ゴブリンを目の前にすると、体が震えて何もできなくなる。ふふ、可笑しな話ですよね。魔神王とも戦えるのに」
「……ゴブリンが憎いだけかと思っていた」
彼女がゴブリン嫌いなことは、国王を含めた国の高官たちの間では有名だ。会議に出れば、必ずゴブリンは滅ぶべきだと口にする。それがどういう事なのか、今まで理解できていなかった。
「何故、教えてくれなかった?」
「教えて何になりますか?まさか、私を助けてくれるとでも?」
それは、無理だ。剣の乙女のトラウマを知った所で、ゴブリンに対策などしている余裕など無い。友人を優先し、国を傾けるなど言語両断だ。
国王は、彼女を救う事ができない。
「眠りの中で絶望に満ちた私に、三本指様はとある光景を見せてくれました。狂い火が解き放たれた、未来の幻視を。国が、世界が焼かれていくのは、悲しく恐ろしい光景でした。しかし、ゴブリンが苦しみながら滅んでいく光景を見た時、私は───」
「……もう良い」
話を聞き終わり、国王はゆっくりと立ち上がる。その顔は、地下牢を訪れた時よりも決意に満ちている。
国王は確信した。己の友人は、もう手遅れであると。
「話は終わりだ。三本指に拐かされた今、其方はもう至高神の大司教ではない」
「ふふ、そうですか。私の処刑はいつになりますか?」
「直ぐに行われる。三本指に関わる者は、死んでも生き返る可能性があるゆえ、《分解》を用いて毛髪一本残さない手筈を整えてある。墓は作るが、棺は空だ」
「まぁ、酷い。民に知られれば、大事ですわね」
「心配は不要だ。民には、狂い火の襲撃が原因で亡くなったと伝える。それならば、嘘にはならない。仮に真実に辿り着いたところで、それを信じる者は僅かだろう」
「まるで、詐欺師ですわね」
「好きに言え。せめてもの慈悲で、処刑は痛みを伴わぬようにする。……もう、十分に苦しんだからな」
「あら、陛下はお優しい方ですわね。その慈悲にお応えして、大切なことを教えて差し上げましょう」
まだ何かあるのかと、訝しみながら剣の乙女を見る。彼女は顔を下げ、表情を国王から隠しながら語り始める。
「もう、この世界は手遅れですわ。終焉を迎えるか、或いは黒幕の思惑通りに変革を迎えるかのどちらしか残されていない」
「黒幕?何のことだ?」
「異世界から始まった異変、その真の黒幕のことです。私が三本指側に付いたのは、黒幕の存在も大きいのです。神々だけでも許せないのに、そんな者の思い通りになるなんて、絶対にあってはならないので」
「その黒幕とは、一体……」
「終焉を迎えるなら、聞いても無意味ですわ。変革が起きるのであれば、私が語らずとも知ることになるでしょう。その代わりに、もう一つ良いことを教えて差し上げますわ」
下げていた顔を上げ、国王の方へ向ける。その顔の表情は、今日一番の笑顔であった。まるで、悪戯に成功した子供のように。
「傭兵たちによる王都襲撃は、ただの陽動ですわ」