僕の名は「シド・カゲノー」。ミドガル王国の田舎貴族の長男だ。僕には人には言えない秘密がある。それは前世の記憶があることだ。しかもこの異世界について知っていると言うことだ。
ここは僕が前世で読んだ「陰の実力者になりたくて」の世界だ。まさか自分が読んでいた小説の主人公に憑依するなんて思いもしなかった。
あの勘違い異世界ファンタジーにやってくるなんて、最高じゃないか!剣と魔法の異世界での生活を夢見ていた僕としてはなんの問題もない!
「こうなったら最高の陰の実力者にならないと!」
これからの展開は分かっている。廃村で盗賊どもを全滅させて、商人の皆の仇を討ってから「シャドウ・ガーデン」の一人目である、金髪エルフの美少女アルファを仲間にする。
それから七陰メンバーを集めて、組織を拡大して僕は王都の魔剣士学園に入学してから本格的に「ディアボロス教団」を壊滅させる行動する。
「ならまずは修行だ!楽しみだな……」
やはり世界最強になるためには地道な努力で上り詰めないと!薬で強くなるとかセコ過ぎるだろ!原作シド君の気持ちは僕には痛いほど分かる!
さて、修行を始めて数年が経過した頃、僕はある廃村に来ていた。原作通りの展開をするためだ。スライムスーツの準備も魔力操作もバッチリだ!
「きゃほおぉぉぉ!」
「な、なんだ!?」
「邪魔!」
「ぎゃああぁぁ!!」
「次は君!」
「がはっ!?」
「最後だよ」
「なっ!?」
ものの数秒で盗賊団は壊滅した。僕が強いのか、盗賊団が弱かったのか分からないけど。でもお目当ての肉塊に出会うことが出来た。魔力暴走しているアルファだ。
それにしてもここまで臭いなんて、知らなかった。僕は商人が盗賊団に奪われた食料や金品、美術品などとアルファをカゲノー男爵領にある廃村に運んだ。
ここは人が来ないので修行や手に入れた物を隠しておくには持って来いの場所だ。それにここに続く道などは念のために塞いでおいた。魔剣士でなければ、突破は無理だろう。
「さて、アルファにお目に掛かるかな……よっと!」
僕は肉塊の暴走している魔力を整え始めた。この日のために長年、修行していたからな。時間は掛かったけど、なんとかアルファを元のエルフに戻すことが出来た。
さて、陰の実力者の初のお披露目でもするかな。しばらくしてアルファは目を覚ました。
「……え?嘘、私の体が!?」
「目覚めたか、英雄の末裔よ」
「あ、あなたが私を?」
「ああ。そうだ」
「それに英雄の末裔って?」
「それは―――」
僕は目を覚ましたアルファに肉塊になった経緯を説明した。魔人ディアボロスの呪いによって醜い肉塊になったことを。しかしそれは英雄の末裔である証拠だと。
あまり説明がながくなりそうだったので、割愛させてもらった。僕はアルファに手をさし伸ばした。
「君には二つの選択肢がある。一つは何も知らずにただ平凡に生きる道ともう一つは我と共に世界の闇を白日の下に晒す道だ」
「……あなたなら私と同じ者たちを救えるの?」
「それはお前次第だ。さあ、選べ!」
「行くわ。魔人の復活なんてさせないわ!」
こうして僕の陰の実力者への道は歩き始めるのであった。アルファは僕の手を強く握り締めた。流石はアルファだ!カッコいい!!
「君は今日からアルファとなのれ。我のことはシャドウと呼ぶといい」
「ええ、シャドウ」
「それとこれを着るといい」
「あ、ありがとう……」
僕は姉の古着をアルファに渡した。アルファも自分が全裸だということを今更ながら気がついたようだ。顔を赤く染めるアルファは滅茶苦茶可愛かった。最高だよ!
「まずは他の悪魔付きの同胞を探さないと。それに教団に抵抗するための組織作りが必要ね」
「そうだな。一先ずはこの廃村で暮らすといい。当面の食料はある」
「ありがとう、シャドウ」
「気にする必要はない。我らはディアボロス教団を壊滅させる者たち……シャドウ・ガーデンだ!」
最高に決まった!アルファの僕を見る目なんて、キラキラと輝いているじゃないか!これからも慢心することなく実力者として振舞って行くぞ!
まずは他の七陰を集める所からだよな。一癖も二癖もあるキャラの濃い面々だからな。そんな面々から好かれるシド君は流石としか言えない。
これでシャドウ・ガーデンの創設に必要な出来事は終わった。あとはアルファが勝手に七陰たちを集めてくれるはずだ。その間、僕は僕で姉の魔力暴走を治したりなどしておかないと。
「んん~……これから忙しくなるぞ!」
僕は廃村にアルファを残して屋敷に戻った。ちょうどその時に姉の魔力暴走が始まっていたけど、気がつく前に暴走を収めた。原作ではこのことがバレていたんだよな。
もしかしたら屋敷内にディアボロス教団と繋がっている人間がいるのか?でも原作を読んだ限り、その辺には触れていたないから探すのは無理かもしれない。
それにもう屋敷にいない可能性だってある。それは放置でいいだろう。姉は誘拐されてから助ければいいんだから。