僕はしばらく行けていなかった廃村に久しぶりにやってきていた。七陰の皆は居るだろうか?僕が廃村の入り口に差し掛かると廃村から何かが走ってきた。
そして僕の目の前でジャンプして僕に抱きついてきた。体を僕にスリスリしてきたのは犬系獣人のデルタだ。
戦闘脳筋で考えるより行動してしまいタイプで、それでアルファに度々怒られているちょっと残念な子だ。だけど、シャドウには絶対の忠誠を見せてくる。
「ボス!デルタはたくさんディアボロス教団の連中をぶっ殺したのです!」
「そうか。流石だな」
「ボス!もっと褒めて褒めて!」
デルタは僕の命令を聞いて、ディアボロス教団の連中を倒してきたことに対してのご褒美を求めてきた。本当にデルタは犬だと思おう。
僕はデルタの頭を優しく撫でた。デルタは目を細めて尻尾をブンブンと振って嬉しそうにしていた。
それからしばらくしてデルタは満足したので、僕は近くの木に視線を向けた。指先にスライムで作った弾で木を撃った。
「……今度こそ、完璧だったのに」
「残念だったね。ゼータ」
木の影から猫系獣人のゼータが出てきた。諜報員で気配隠しはシャドウガーデンの中では一番だ。でも毎回、僕に見つかるので訓練している。
「どうして?」
「この森で気配を消し過ぎなんだよ。ある程度、残しておかないと逆に怪しいよ」
「……なるほど。主の教えは流石だ」
ゼータは木から僕に近づくと頭を体にこすり付けてきた。猫の構ってアピールってやつだな。僕はゼータの頭も優しく撫でた。
すると先ほどまで満足していたデルタが抱きついてきた。その顔はゼータに対して不満があるようだった。
「おい!メス猫!今度はデルタがボスに撫でてもらうんだぞ!」
「ワンちゃんはさっきしてもらっただろ。今度は私の番だ」
「なんだと!?メス猫は今度すれば、いいのです!」
「ワンちゃんは少し黙ることができないのかな?」
犬猫は性格が違うから喧嘩になることはあるだろう。前世で動画で犬と猫はそれなりに時間があれば仲良くなるはずなのにデルタとゼータはいつまで経っても仲良くなる気配は皆無だ。
デルタとゼータはお互いに何が気に入らないんだろうか?このままでは大喧嘩に発展してしまいそうなので、僕はブラシを取り出した。
「二人ともいい加減にしないと今日のブラッシングはなしだよ?」
「い、嫌だ!ボスにブラシしてもらう!」
「そ、そんな……ここでの楽しみが!」
デルタとゼータはまるで絶望のどん底に叩き落されたような顔をしていた。獣人の二人にとってブラッシングは何もない廃村での楽しみの一つだ。
「前回はデルタだったから今回はゼータからね」
「ううぅぅ……ゼータ、早く代わるです!」
「ワンちゃんは大人しくするんだね!」
「ほらほら喧嘩しない。ゼータ、おいで」
「うん!」
デルタは僕の近くで丸太椅子に座ってゼータを睨めつけている。ゼータは僕の前に座ったのでブラシで髪を梳いた。女の子って、髪が命って言うけど、ゼータはどうなんだろうか?
七陰の皆は髪に触るのは嫌がらないから大丈夫だと思うけどね。それにしてもゼータの白金の髪は本当に綺麗だ。
アルファの金髪やベータの銀髪とも違っているんだよね。髪が終わると次は尻尾もブラシをした。
「はい。おしまい」
「はぁ~……主のブラシは最高だよ」
「ありがと。デルタ、おいで」
「やっとデルタの番なのです!」
やっと自分の番が来たとデルタは僕に飛びついてきた。デルタは僕の太ももの上に体を預けてきた。デルタのブラッシングのスタイルはこれだ。
まずは頭をブラッシングする。七陰の中でもデルタはお洒落を気にするタイプではない。むしろ全力行動で髪の毛はボサボサになるのが目に見えている。
「ボスのブラシ!ボスのブラシ!」
「こら、デルタ。動かない」
「はいのです!」
暴れるデルタを大人しくさせて僕はデルタの髪と尻尾をブラッシングした。これでしばらくは綺麗だけど、すぐにボサボサになりそうだ。
「さて、二人も少し遊ぼうか?」
「はいのです!」
「うん……いいよ」
僕はスライムソードを構えるとデルタは鉤爪、ゼータは三日月刃をそれぞれスライムで作った。二人の得意武器だ。
七陰の皆には剣の基本的な動きは覚えさせたけど、やっぱり一番しっくりくる武器を使った方がいいよね。
「それじゃいくよ!二人とも」
「負けないのです!」
「主をあっと言わせてやる」
僕は時間がある限り、二人と手合わせをした。まあ、二人は連携なんてしないから相手をするのは楽なんだよね。もし二人が息を合わせてきたら僕でも危ないかもしれない。
まあ、二人が協力プレイなんて性格上、出来る訳ないんだよな。それでも並みの魔剣士では相手に出来ないほど二人は強くなっていた。
二人が協力出来るようにした方がいいんだろうか?今度、二人が協力し合えるようにご褒美で釣ることを考えてみるかな。