今日はお弁当を作って廃村に向かっていた。このところ、実家で姉さんの相手をしていて行けていなかったんだよね。皆、元気にしているかな?
「主さ―――へぐっ!?」
「が、ガンマ!?……大丈夫?」
「ず、ずみまぜん……」
廃村に到着すると僕の目の前で見事にこけたのは黒髪のエルフで「最弱」の二つ名をもつガンマだ。それにしても毎回、よくこけるよな?
僕はガンマの手を掴んで立たせてハンカチを渡した。3回に1回は鼻血を出すんだよな。それにしても見事なスラインディングだったな。
「今日はアルファたちは?」
「アルファ様はベータ、イプシロン、デルタ、ゼータと教団の調査に向かいました」
「なら今日はガンマとあの子だけか……」
今日は七陰は二人だけか。最近、全員そろっていることが少なくなった気がする。それだけディアボロス教団の調査が本格的になってきたと言う証拠だ。
「マスター……」
「イータ。今日も眠そうだね?」
「マスターの……叡智を色々、試していた~……」
ガンマと話していると七陰最後の一人がダルそうに近づいてきた。シャドウガーデンの頭脳と言ってもいいエルフの少女だ。
シャドウの記憶を叡智としてその再現は彼女なくしてはありえないほどだ。いつも徹夜しているのか、いつも眠そうだ。
「主様、アルファ様たちに何か用事ですか?」
「うん。今日はお弁当を作ってきたら皆に食べてもらおうと思ったんだけど」
「主様の手作りですか!?」
「マスター、お腹……空いた」
「今日は僕たちだけで食べようか。他の皆には帰ってきてから渡しておいて」
僕はガンマとイータの二人に鞄から屋敷で作ってきた包みを渡した。二人は不思議そうにしていたので、お手本で僕が食べてみた。
「パンですか?丸いパンなんて初めてです。それに間に何か挟んでいる?」
「いい匂い……ん、おいしい」
「お、お!い!し!い!柔らかいパンでお肉とシャキシャキの野菜を挟んで一緒に食べることで何とも言えない旨みがあります!それに包みで食べることでお手軽に食べられるなんて、活気的です!」
ガンマがいきなりグルメレポを始めていた。それを僕とイータはただ黙って見ていた。僕はイータにジュースを渡した。
本当は氷があれば冷えた状態で飲ませられたけど、この時期に氷を手に入れるのは難しいからな。
「マスター……この長いのは?」
「それはポテトフライだよ。じゃがいもを細く揚げたものだよ。ケッチャップをつけると美味しいよ」
「おいしい……もっと食べる」
「これがじゃがいもを揚げただけのものですか!?ホクホクで塩を振っただけなのに、これだけの美味しさがあるなんて!それにケッチャップをつけることでさらに酸味が加わり、旨みを格段に上げている!」
僕とイータはグルメレポを続けているガンマを見続けていた。やはりバーガーは正義だ!こっちの食事は質素な感じがするからジャンクフードは最高だよ。
原作シド君がマグドナルドを作ったのか、分かった気がする。よし、料理革命をしないといけない。もっと味の濃いものを食べたい。
「マスター……この料理のレシピ、教えて……」
「いいけど、イータは料理するの?」
「料理は……科学」
「まあ、そうなるか……」
温度や調味料などを考えれば、料理は科学と言えるか。イータには他のバーガーの再現をしてもらうか。マグロサンドも美味しそうだけど、僕はどっちかと言うと肉系のバーガーの方が好きだ。
「主様、この料理を販売してもよろしいですか!?」
「いいよ。イータにレシピを渡しておくから」
「はい。材料などはわたくしにお任せください。どんな貴重なものでも絶対に手に入れてます!」
それにしても今見てもこの異世界にモダンな建築物があるのって、違和感があるよな。ここだけ日本があるみたいだ。
イータが建築が得意だと知っていたけど、ここまで再現するなんてスゴイ過ぎでしょ。
「主様?」
「マスター……?」
「いや、何でもない。僕はそろそろ帰るよ。あまり遅くなると姉さんが心配するから。お弁当はアルファたちに渡しておいて」
「分かりました!」
「マスター……また、ね」
僕はお弁当のバーガーをデルタとイータに預けて屋敷に戻ることにした。これ以上廃村にいると屋敷に着いた時には夜になる。
出来るだけ夕方には屋敷にいないと姉さんが心配するからな。前世では一人っ子だったので姉がいるのは新鮮でいい。
「もうちょっとお淑やかにならないかな……」
原作開始まであまり時間がないな。そろそろ姉が誘拐される頃合だな。それから数日後に姉は屋敷から姿を消した。
さて、シャドウガーデンのデビュー戦の開始だ。ディアボロス教団の連中に教えてやるか、陰に潜み陰を狩る者を。