一角を連れて四番隊隊舎に着いた。
「姐さん。ちょっといいッスか?」
傷を治していると、一角が尋ねてきた。
「……何?」
「なんで一護に朽木ルキアの場所を教えたんですか?」
「……さっきも言った。一角を倒したご褒美。」
「俺には褒美には思えません。あの程度の奴、たとえあいつより他の奴らが強かったとしても朽木ルキアを助けられる訳がない。現に、奴らは姐さんに力の一端すら出させられないままボコられているじゃないですか。死にに行くのと同じ事です。姐さんの性格上、面白そうとかいう理由ではないだろうし、あいつを2回も見逃してるから死んでほしい訳でもないでしょう。本当はどういうつもりなんです?」
……そうだった。一角は意外と頭がいいんだ。言い逃れできそうにない。
「……私は、ルキアと仲が良かった。」
「知ってます。姐さんが上に懇願して死刑を取り下げさせたと聞いていますから。」
「……それで交換条件として刑の執行する邪魔をしない事になった。」
「あぁ。だから上も、簡単に死刑を止めたんすね。」
「……でも、ルキアが罰を受けるのを認めてる訳じゃない。だから、一護達にかけた。」
「――正直あいつらじゃ無理ですよ? 本気ですか?」
「……勘。一護は強くなる。私の勘はよく当たる。」
「…そうですか。」
「……治療は終わった。まだ安静にしておいてね。」
そう言い残し、私は四番隊隊舎を去った。
◇◆◇◆◇
さて、一護は一角に勝った。さっきアフロヘアーの弓親が一角の病室に入っていったから岩鷲が撃退したのだろう。あの戦力差でよくやったものだ。
そして、石田って子と女の子の霊圧の近くに兕丹坊の家族の一貫坂慈楼坊の霊圧を感じる。石田の腕なら勝てそうだけど、どうなってるかな?
鬼道で見ると、女の子が追い詰められてた。石田は屋根をよじ登っている。どうやら分断されたらしい。
「初めて見る術ではありましたが、貴方の攻撃には殺意などまるでなし。そんな術ではたとえ虚は殺せても死神には到底通用しますまい。ここは戦場! 殺意の込もらぬ攻撃で止められるものなど、何ひとつなし!」
そう言って、慈楼坊が女の子目掛けて刀を振るう。
その瞬間、その手が矢に貫かれる。
「殺意の込もった攻撃がお望みかい?それなら僕と戦うといい。僕の弓になら込もっているよ。君の好きな殺意ってやつがさ。」
石田が間に合った。これは勝負あったね。
「ほう、これは珍しい。あなたはもしやクインシーでは?」
「そのとおりだよ。」
そういえば、クインシーって随分前に初代護廷十三隊と大規模な戦争をした種族か。おじいちゃんがかなり怒りの籠もった声で授業してたからよく覚えている。
生き残りがいたんだなぁ。
「フフフフフ、これは面白い。一人は見知らぬ術を使い一人はクインシー。そのどちらもが飛び道具。そしてそれが二人共、私の敵として現れようとは…何たる奇遇、何たる運命のいたずらか。」
斬魄刀を胸の前に据える慈楼坊。
「ならばご覧に入れましょう。私の斬魄刀の真の姿。羽ばたきなさい 劈鳥(つんざきがらす)!」
解号とともに無数の手裏剣のような物が出現し、慈楼坊の周りを漂う。
「どうです?さあ後悔なさい。私は、七番隊第四席一貫坂慈楼坊。またの名を鎌鼬慈楼坊。」
ん? 鎌鼬慈楼坊? なんだそれ。私知らない。
「鎌鼬の称号は、最強の飛び道具使いの証。この宙を舞う無数のやいば―劈鳥を見て生き延びた者など、ただ一人としてなし。」
ああ! あの暴走したって言ってた剣八が持ってた称号か。確かに隊長格で飛び道具が主軸の戦いをする人は居なかった。鬼道を含めないなら、確かに隊長格に飛び道具使いは居ない。そんなことを考えている間にも、慈楼坊は話を進めていく。
「ほらほらどうです? 目で追うことすらできないでしょう。華麗なる死へのプレリュード。」
石田は黙ったままだ。でも、戦場どうこう言ってたのに戦場で長話するのはどうなんだろう?慈楼坊に喋ってる途中での石田の攻撃を咄嗟に防ぐ程の反射神経はないと思うけど。
「ハンッ。そんな弓矢など劈鳥の前には赤子も同然、無力です。同じ飛び道具の使い手として私に出会ってしまったことを存分に後悔して…」
『ガン』
その言葉を言い終える前に石田の放った矢でその飛び道具を大量に撃ち落とされる。
「面白いもんだね。現世と違ってさ。どうやらこっちじゃ、最強の使い手ってのは、ダラダラと御託の長いヤツのことを言うらしい。」
涼し気な顔でそう告げる石田。
「むうっ、バカな…。今のはまぐれ! あまり図に乗ると…」
そう言いながら新たな飛び道具を用意しようとする慈楼坊。
「まだ分からないのかい?」
『シュッ』
飛び道具ごと手を撃ち抜かれる慈楼坊。
「悪いけど、君が最強というのなら、今日でその称号は返上だ。飛び道具に関しては、僕の方が上らしい。鎌鼬雨竜なんて名前、いい名前とは思えないけどね。」
「うううっ、手が、手が、私の左手が…ああっ…」
うずくまる慈楼坊。
「少しは後悔できてるかい? 同じ飛び道具の使い手として、僕に出会った、不幸ってやつをさ。」
「私が後悔ですと? 小僧めが!」
そう言って石田に飛びかかろうとした慈楼坊を――
「……見苦しい。」
私は鬼道で二人の場所に現れて、止める。ついでに向かってきた石田の矢を素手で受け止める。
「ぜ、零席殿!?」
「何!?」
驚く二人。
「……もう、決着は着いた。慈楼坊、撤退。」
「で、ですが…」
「……命令。」
「は、はい!」
返事と同時に、急いで離れる慈楼坊。
「――クッ! 井上さん! キミだけでも逃げるんだ!」
私に弓を向けながら叫ぶ石田。
「そんな! 石田君は!?」
井上とかいう女の子も動かない。どうやら私が二人を始末しに来たと勘違いしているようだ。
「……私、戦うつもりはない。」
「信用出来るか!!」
弓をこちらに向けて睨みつけてくる石田。
完全に警戒されている。仕方がないとは思うが、そんなに警戒されると少し凹む。
「待って石田君!!」
井上が叫んだ。
「この人、悪い人じゃないと思う。」
「何を言ってるんだ井上さん! 相手は敵の最高戦力だぞ!!」
「そうだけど……何となく仲良くなれそうな気がするの。」
「……そう。私、悪い死神じゃない。」
「だから信用出来ないって―――」
「……ここには慈楼坊を連れ帰りに来ただけ。もう帰る。だからそんなに心配しなくていい。」
そして、私は背を向ける。
「……慈楼坊に勝ったご褒美に、ルキアの場所、教えてあげる。」
「何!?」
「……ここから見えるあの白い塔、名前は懺罪宮。あそこにルキアはいる。頑張れ。それじゃ」
「な! ま、待て!!」
石田の声を無視して私は4番隊隊舎へと向かった。