最強の幼馴染   作:なゆさん

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旅禍侵入、そして戦闘 その3

 4番隊隊舎に着いて、慈楼坊が治療を受けたのを確認した後、私はまた観戦に戻った。

 と言っても、もはや鬼道を使う必要すらない。私の眼の先には懺罪宮の前で向かい合う恋次と一護の姿がしっかりと映っている。少々距離は離れているが、声を鬼道で拾えば問題ない。

 歩み出す二人。

 

「どうやって生き延びたか知らねえが、大したもんだ。褒めてやるよ。」

 

そう言いつつ刀を抜く恋次。

 

「だがここまでだ。言ったはずだぜ。俺はルキアの力を奪ったヤツを殺す。てめえが生きてちゃ、ルキアに力が戻らねえんだよ。」

 

恋次が駆ける。

 

「その力が、永遠に失われそうになってるのに何言ってやがる。通らせてもらうぜ!」

 

一護も斬魄刀を掲げ走り出す。

 

「やってみろ! てめえに俺が倒せるならな!」

 

「おらあっ!」

 

ぶつかる剣と剣。力は拮抗し、互いに弾かれる。だが、二人は動じず返しの剣を振るう。

 

「ハァ!」

 

「そおおおい!!」

 

再び剣がぶつかる。しかし、

 

「ぬうううっ…フッ!」

 

一護が恋次の刀を押し切り、壁際へ追い詰める。一護の膂力で恋次を押し切った?いや、違う。

一護は得意気になっているが、アレは多分わざとだ。恋次の顔には余裕がある。

 

「おい、黒崎一護。てめえ、ルキアをどうやって助けるつもりだ?」

 

恋次が尋ねる。恋次はルキアの為に、ルキアと並ぶ為に今まで努力を続けてきた。立場的にも、思う所があるんだろう。

 

「どうやって?」

 

「ここで俺を倒せたとしても、まだ11人の副隊長がいる。その上には、さらに13人の隊長、そしてそのまた上には、あの護廷隊最強のお方も控えているんだぜ。それを全員倒す以外、ルキアを助ける方法はねえんだ。それをてめえはやれるってのか?」

 

恋次の気持ちが分かった。恋次は、自分が諦めてしまった道を進もうとしている一護に、今心が揺らいでいるのだ。一護の覚悟がもし本物なら、自分ももしかしたらと、無意識の内に考えている。だから、覚悟を問うためにこんな質問をする。

 

「やれるさ。」

 

一護が即答する。

 

「隊長が何人? 副隊長が何人? 護廷隊最強? 関係ねえよ倒してやる! そいつらが邪魔するってんなら全員だってな!」

 

叫ぶ一護。

 

「何だそりゃ。その自信の根拠はどこにある? 何をそんなに思い上がってやがる。斬魄刀が変わったな。まさか、その程度で強くなったとうぬぼれてるんじゃねえだろうな。」

 

恋次の刀に力がこもる。

 

「はああっ!」

 

一護を押し飛ばす恋次。

 

「吼えろ 蛇尾丸!」

 

斬魄刀が開放される。

 

「はあああっ!」

 

恋次の蛇尾丸が延び、一護に向かっていく。

 

「ぐっ、ぐぅっ、がぁ!」

 

斬魄刀で受け止めたが、勢いを消しきれず、壁に激突する一護。壁に穴が空き、建物に突っ込んでいく。

 

「どうやらてめえは、一度俺と戦ったぐらいで俺の実力を知った気でいるみたいだが、いいことを1つ教えてやるぜ。現世に出る時、俺たち副隊長以上の死神は現世に不要な影響を及ぼさねえよう力を極端に制限されてるんだ。今の俺の力はあの時の5倍。てめえがいくら強くなっていようが俺に勝てる可能性は万に一つもねえ。」

 

そうだ。限定封印が施されている副隊長程度を目安にしていては、この恋次には遠く及ばない。一護が勝てる可能性があるとするならば、あの斬撃を放つしかない。まだ意図して打てないようだが。この試合は見物である。こんな状況でなければじっくり見たいところだ。

 

「はあん。」

 

壁の穴から一護の声が響く。

 

「うん?」

 

「ってことは今のがてめえの実力ってわけだ。」

 

頭から出血しながら、一護が暗闇から現れる。

 

「ハァ……効かねえなあ全然。ありがとうよ、この程度の奴らが11人なら、何とかなりそうな気がしてきたぜ。」

 

睨み合う二人。

 

「バカ野郎が」

 

一護の痩我慢をあざ笑う恋次。一護は明らかに立っているのでやっとな状態だ。効いてない筈がない。

 

「ヘッ。このくらいどうってことねえ。」

 

視界も定まらないだろうに仲間にそんなことを言う一護。しかし、

 

「ハッ、生意気な口を聞いたはいいがどうやら立ってるのがやっとみてえだな。」

 

そう言って恋次は飛び上がり、

 

「終わりだ!」

 

蛇尾丸を振り下ろす恋次。

一護はそれを何とか躱す。

 

「てめえさえいなけりゃ、てめえにさえ会わなきゃルキアはこんな目に遭わずに済んだんだ!」

 

恋次が吠える。これが恋次の本音の全て。ルキアの、自分とルキアのこれからが、唐突に断たれた。その理不尽、その元凶への怒り、憎悪。だから今の恋次の攻撃は、苛烈で、強い殺意を秘めている。

恋次が振るう剣を、飛びのいて避ける一護。

何とか致命傷を負ってない一護であるが、このままでは負けるのは時間の問題だ。コレを見れば、誰もが恋次の勝ちだと思うだろう。

だが、恋次の無意識にある迷い、一護の覚悟、そして私の勘がこのままでは終わらないと囁いてくる。

 

「逃がさん!」

 

追撃を放つ恋次。それを躱す一護。そして、今度は正面から向かっていく。

 

「うらあっ!」

 

「はあっ!」

 

ぶつかり合う二人の斬魄刀。衝撃であたりに土煙が舞う。一撃、二撃、三撃…斬魄刀の斬り合いが続く。周りの壁は壊れ、地面にはヒビが入る。一護は、恋次の攻撃に真っ向から迎え撃つ。

斬りつける。避ける。斬りつける。避ける。防御。避ける。防御。弾かれる。避ける。

斬り合いは恋次の圧倒的有利だ。ただでさえ恋次の方が格上なのに、一護は重症。本来なら、勝負にすらならない。一護の底力が、この状況をかろうじて保っている。

 

『ガン』

 

一護がのけぞる。

 

「くっ。」

 

恋次は追撃を仕掛けない。蛇尾丸の稼働数の限界だ。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 

二人の息づかいが荒い。全力でぶつかり続け、二人共体力がかなり消耗している。

 

「しぶてえ野郎だ。そんなにルキアを助けてえか。」

 

「バカ野郎! 助けてえんじゃねえ、助けるんだ!」

 

恋次が動揺する。恋次の心の揺らぎが大きくなっているのだ。

 

「うっ…ふざけんな!」

 

蛇尾丸の刃が一護の肩を捉える。

 

「てめえが力を奪いやがったから、あの人の懇願で消えない程ルキアの罪が重くなったんじゃねえか! 分かってんのか! てめえのせいなんだよ、てめえのせいでルキアは全てを奪われるんだ!」

 

恋次の怒りの剣を一護は受け止める。

 

「んんっ、くっ…。んなことは分かってる。だから俺が、助けるんじゃねえかよ!!」

 

弾かれる蛇尾丸。

 

「はああああっ!」

 

走る一護。

 

「クソが!」

 

恋次が蛇尾丸を伸ばす。それを横に躱す一護。その後繰り出される2発目も、躱す。そして、3回目の連続攻撃の瞬間、蛇尾丸を弾き、恋次の懐に走る一護。どうやら恋次の連続攻撃回数を見極めたようだ。確かに蛇尾丸は3回目の攻撃の後、必ず引っ込む。ただ、連続攻撃の隙というのは、実力差がある程突きにくいものだ。

 

「終わりだ! 恋次!」

 

斬魄刀を振り下ろす一護。

 

――しかし、その斬撃は空をきる。

 

『ザクッ』

 

一護の肩に蛇尾丸が振るわれる。先程よりも深々と。

 

「言ったろ。てめえは万に一つも俺には勝てねえ。」

 

膝をつき、呆然とする一護。

 

「どうしてかわされたか分かんねえって面してやがんな。連撃の隙を突くってのはいい、タイミングも完璧、なのになぜてめえは俺を倒せなかったか。答えは一つ、てめえが俺より遅えからだ。俺とてめえの埋めようのねえ力の差。単純にそれだけのことだ。」

 

恋次が告げる。

 

「分かったか。てめえにルキアは救えねえ。」

 

蛇尾丸を上に掲げ、振り下ろした。辺りに土煙が舞う。

 

「――ハァ、ハァ、ハァ」

 

土煙の中から立ち上がる一護。直前で恋次の攻撃を躱していた。

 

「とことんしぶてえ野郎だな。」

 

恋次が一護を見やる。

 

「――あぁ?」

 

恋次が異変に気づく。一護の雰囲気が変わった。

 

「待たせたな、恋次。――覚悟だ。今度こそ、てめえを斬るぜ!」

 

一護の霊圧が爆発的に増える。

 

「やああ!!」

 

一護が飛び上がる。

 

「クソッ! うっ…」

 

恋次が蛇尾丸を放つ。が躱される。恋次の追撃。一護はしっかりと受け止め、弾き返す。

 

「攻撃するなら、斬る!」

 

一護の霊圧が高まり、

 

「てえっ!」

 

「やあっ!!」

 

蛇尾丸が両断され、鮮血が舞った。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

立ちつくす恋次。もう、立っているだけで辛いだろう。

 

「クソーッ!」

 

恋次の咆哮が響き渡る。立って居られなくなり、恋次が膝をつく。

 

「ハァ、ハァ、うっ、ああっ、ハァ。」

 

動くたびに血が滴る。

 

「…………………だが、今にして思えば、ビビってただけなのかもしれねえな俺は。クッ。…まったく、野良犬根性が染みついてやがるんだ。嫌んなるぜ。」

 

ナニかを思い出したのか、そう呟く恋次。

 

「くっ、うう…」

 

やっとのことで立ち上がる。

 

「星に向かってほえるばかりで、飛びつく度胸もねえ。」

 

そう言いながら、一護の胸ぐらを掴みあげる。

 

「お前のせいで、ルキアは懺罪宮に捕らわれた。そう思うと、はらわたが煮えくり返った。だが、そうじゃねえ! 俺が、ルキアを止めなかったからだ。俺はあの時、ルキアを罪人にするために朽木家へ行けと言ったんじゃねえ。ルキアが幸せになれると思ったから、そう信じたから……!」

 

恋次の本音が、後悔が、本人の口から告げられる。

 

「俺は、朽木隊長を超えたかった。あの日からずっと、あの人を追いかけて、毎日死ぬ気で鍛錬してきた。だが俺は結局一度も勝てねえままだ。あの人は、遠すぎる。力ずくでルキアを取り戻すなんて、俺には、できなかったんだ!」

 

恋次が叫ぶ。そして顔を上げ、

 

「黒崎! 恥を承知でてめえに頼む! ルキアを、ルキアを助けてくれ!」

 

涙を流しそう懇願する恋次。

 

「ああ。」

 

一護は、恋次をまっすぐに見つめながら、そう返事をした。その返事を聞き、力尽き倒れる恋次。それにつられるように、一護も地面に倒れ伏す。

 岩鷲と花太郎が一護に駆け寄る。そういえば今気付いたが、花太郎は何故一護達と一緒にいるのだろうか? …まあいいや。とりあえず恋次を回収するか。あっ。その前に今あそこに向かっている人達を説得してからか。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 阿散井恋次重症につき、私が治療するのでそっちは旅禍を探せ的な事を言ったら簡単に引いてくれた。

じゃ、一護の所に、ゴー!

 

「……やぁ。」

 

「わあ!! ハクナさん!?」

 

花太郎が飛び上がって驚く。

 

「てめえはどっかで……ああ!! 姉ちゃんと一緒に鬼道の開発してたあの!!」

 

岩鷲も私のことを覚えていたようだ。

 

「何しに来やがった!! 弱ったとこ狙うなんて卑怯だぞ!!」

 

「ハ、ハクナさん! え、えーっと…あ、あの」

 

「……私、恋次を回収しに来ただけ。」

 

「え!? マジで?」

 

「……マジ。じゃ、私はこれで。」

 

気を失ってる恋次を担ぎ上げる。

 

「……一護に、よく頑張ったねって褒めてあげてね。」

 

そう告げて、私はその場を去った。

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