寮に帰って少し仮眠をとる。藍染惣右介が動き出した。相手は浦原が危険視している男だ。どんな事をしてくるか分からない。これからは、常に気を張る必要がある。その為の仮眠だ。
◇◆◇◆◇
目が覚める。少し寝過ぎたかもしれない。ただ、これからはもう隙は見せない。藍染は、必ず仕留める。
さて、それはともかく一護達の様子はどんな感じだろう?
鬼道を使う。まず一護組は懺罪宮への階段か。更木と会いそうだけど、どうなるかは正直分からない。更木は無意識に力を制限してしまうから、ああいう戦いで急成長するタイプには弱かったりする。もしかしたら一護組にも生き残る可能性はあるかもしれない。まぁ死んだら仕方がない。できれば生きて欲しいけど、今の私は一護達を守れる立場にないのだから。石田と井上は懺罪宮に向かっているが、今のところ危険ではなさそうだ。大柄の子は……ヤバい、よりにもよって隊長がいる。一護ならともかく、あの子に隊長は荷が重い。しかも京楽。勝てるわけがない。幸いにも京楽は無闇にあの子を殺すことはしないだろうし、やる気もなさそうではあるが、考えがあまり読めないタイプの男だ。どうなるかは分からない。
◇◆◇◆◇
先に動きがあったのは一護組。階段を登りきった一護組に、更木の霊圧にあてられ動きを止める。
「な…何だ? このデタラメな霊圧は!」
岩鷲が叫ぶ。
「何が…何がいやがるんだ? クソッ――走るぞ! 何だか分かんねえけどとんでもねえヤツが近くにいることだけは確かだ。敵がこっちを見つける前に、とにかく走って少しでも進むんだ!」
一護が指示を飛ばす。
「おう!」
「はい。」
「行くぞ!」
再び走り出す一護組。
だが、しばらく進み、
「うっ…。」
花太郎が倒れる。
岩鷲がソレを背負って進む。だが、それから少しもしない内に一護が止まった。
目が合う更木と一護。更木はすぐさま瞬歩で一護の背後に立つ。
「どうした? いつまでそっちを見てやがる。」
更木から殺気が放たれる。一護が怯んだ。恐らく、自分が刺された幻影を見たのだろう。怯えが目に現れている。
「黒崎、一護だな?」
更木が問う。
「何で、俺の名前…てめえ一体…」
動揺する一護。
「俺か?俺は十一番隊隊長 更木剣八だ。てめえと殺し合いに来た。」
名乗りを上げる更木。随分テンションが高い。大方、強い強いと聞かされていた一護とようやくやれるもんだから、昂ぶっているのだろう。
対する一護は動けていない。無意識に制限されているとはいえ、更木の霊圧は濃密で、何より重い。動けなくなるのも仕方がないというものだ。
「どうした? 言ってんだぜ、俺は、てめえと殺し合いに来たってな。何の返事もねえってことは、始めちまってもいいのか?」
「うっ!」
咄嗟に構えようとする一護。いい反応だ。しかし、
「岩鷲! 花太郎!」
うめき声を上げる二人に、振り返り声をかける。
岩鷲も花太郎も満身創痍。特に花太郎は、殆ど意識がない。
「おい! 大丈――」
「バカ野郎! 一護!」
岩鷲が声を張り上げる。
「俺も花もちょっと霊圧に当てられただけだ。構うんじゃねえ! 俺らのことはいいから前向いてろ! あっという間にやられちまうぞ!」
岩鷲の言う通りだ。ただでさえ勝負にならない程の力の差があるのに、二人を気にしてちゃ一瞬で殺される。
「ああっ! すっごいよだれ!」
更木の肩から緊張感のない声が響き、やちるが現れる。
「んしょっと」
やちるは呆けている一護の肩に一瞬で飛び乗り、
「よっぽど剣ちゃんが怖かったんだね。可哀想。」
花太郎を見てそんなことを言う。
「クッ!」
「おっとっと。」
一護が肩のやちるを振り払い、やちるはきれいに着地する。
「怒られちゃった。」
「バーカ。おめえが悪い。」
うん。やちるが悪い。
「バカっていうほうがバカなんです〜。」
「そうかよ。」
敵が眼の前に居るのに呑気に話すやちるとそれに付き合う更木。
「おい! そこのちびっこ!」
一護がやちるに声をかける。
「はい?」
「てめえ、一体何者だ?」
その問にやちるは頬を緩め、
「ヘッへ〜。私は草鹿やちる。十一番隊の副隊長なんだよ。よろしくね。」
満面の笑みで自己紹介をした。
一護の顔に汗が流れる。
「岩鷲! 花太郎を連れて先に行ってくれ。ここは俺がなんとかする。ルキアを頼む!」
「てめえ何言って――」
「岩鷲!……頼む。」
「…チィ!」
岩鷲と花太郎が逃げる。
「ほえ。行っちゃった。」
「悪いな。ここは通さねえぜ!」
一護が構える。
「分かんねえ野郎だな。」
「何!?」
「何度も言わせんなよ。俺はてめえとやり合うためにわざわざここで待ってたんだぜ?てめえの仲間だの朽木何たらだのがどこで死のうと興味はねえよ。」
「…そうかよ。」
一護の霊圧が上がる。
「へえ、悪くねえ。構えは硬えし隙だらけだが、霊圧だけはかなりのもんだ。そこらの副隊長レベルじゃ話にならんだろ。一角が負けるわけだぜ。だが、俺とやり合うにはちょいと食い足りねえな。どうだ? 一つハンデをやろうか?」
随分と大盤振る舞いだ。最近は私との鍛錬はあってもギリギリの殺し合いはなかったから、よほど楽しみなようだ。
「何!?」
「てめえから先に斬らせてやるよ。どこでも好きな所を斬りつけてこい。」
「すっごーい! 剣ちゃん太っ腹!」
「だろ? 文字通り出血大サービスってやつだ。」
驚いた。更木がそこまでサービスするとは。無意識に一護に何かを感じたのだろうか?
「ふざけんな! 何言ってんだてめえ! 構えてもねえヤツに斬りつけられるかよ。バカにしてんのか!」
……甘いな。一護は殺し合いの自覚はあっても心の何処かで相手を気遣っている。こういうのには向いていない性格だ。資質はあるから、尚それが目立つ。
「バカになんかしてねえさ。ただのサービスだよ。構えてねえヤツに斬りつけねえって心構えは立派だが、そんな小綺麗なものは別の機会に取っとけよ。」
そうだ。更木にふざけている気は一ミリたりともない。純粋に戦いを楽しみたいがために、ハンデを与えているのだ。
「ぐっ」
「そう気負うなよ。楽しくやろうぜ。殺そうが殺されようが、所詮は暇つぶしだろうが。ほら来いよ。首でも腹でも目玉でも、何ならこの一撃で俺を殺したっていい。ビビってんじゃねえよ! 来い!」
「っ! うあああっ!」
更木の言葉に急かされ、がむしゃらに一護が突っ込む。
「はああっ!」
上段からの一刀。全体重を乗せた一撃。
―――だが、刀は薄皮一枚斬ること叶わず止まっていた。
「何だよ、この程度かよ。興冷めだな。」
更木の落胆する声。刀を掴まれそうになり、慌てて飛び退く一護。その顔は、訳がわからないという顔だった。
無理もない。自分は全力で斬ったのに、薄皮一枚斬れなかったのだ。今まで立ち塞がる敵をことごとく斬ってきた、その一撃で。
「無理だよいっちー。」
やちるが言う。
「いっちーに剣ちゃんは斬れないよ。だってこんなの、剣ちゃんにしたら刃が付いてないのと一緒だもん。」
まったくその通りだ。更木の体に纏われている霊圧を超えられる程の霊圧が、一護の刀には無い。
「教えてやろうか? 何故てめえの刀が俺を斬れねえか。」
更木が言う。
「何のことはねえ。霊圧同士ぶつかれば、押し負けたほうがケガをする。それだけのこった。要はてめえが敵を殺すために霊圧を極限まで磨き上げて作ったその刀より俺が無意識に垂れ流してる霊圧の方が強い。それだけの話だ。まったく…この程度のヤツを何日も捜し回ってたとはな。笑い話にしたって出来が悪いぜ。」
刀を抜く更木。
「次はこっちの番だな。せめて、こいつのさび落としぐらいはさせてくれよ。頼むぜ旅禍。」
一護は絶望に顔を歪めながらも、必死に剣を構え、更木に向かっていった。
長くなったから一端切ります。
私的には一話に5000字以内がいいなって思ってる。
読みにくかったらすみません。