最強の幼馴染   作:なゆさん

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再会、再戦、そして仲間

 あれから数百年、私は強者を求めて旅をしていた。

やはりあの少年を超える強者は現れないが、霊圧を抑えながら戦うのは良い修行になる。強者では無い者達とでも良い戦いが出来るし、何かをしながら戦うことは脳や体に負荷を与え成長のきっかけとなるため良い鍛錬になる。

霊圧や膂力は微妙でも、素晴らしい技術を持った者達も居た。彼らの技術はしっかり学ばせて貰ったが、あの少年との死合いのような高揚感は味わえなかった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 ある時、私を『剣鬼』と呼ぶ者が居た。どうやら私のことが噂になっているらしい。なんでも、

 

「ボロボロの服を着た銀髪で赤い目をした何も喋らない女が、色んな場所で名のある強者や席官の死神をボコボコにして、治療した後去っていく」

 

だそうだ。

死神というのは、あの黒い装束を着た怪しげな術を使う奴らの事らしい。何故か見た事があるような気がする格好だったし、中々強かったので印象に残っている。

総じて霊力の操作に長けていたし。どうやらこの世界の警察のような立場のようだ。

(後関係ないけど、私は基本的に口下手であり無口だ。だから何も喋らないなんて言われているのだ)

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 剣鬼の名が広まったからか、最近は強者が行く先々で決闘を申し込んでくる。

ほとんどが大した事は無いが修行になるので大歓迎だ。時々強者もやってくるしね。

 

 

 

そして、この日。

私達は再会を果たした。

 

「――見つけたぜ。」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

更木剣八はその噂を聞いたときすぐに理解した。あの女だと。あの戦いから随分時間は経ったが、彼は一瞬たりとも彼女を忘れたことは無かった。卯ノ花八千流に敗れ、草鹿やちると出会い、様々なことを経験した彼であるが、あの戦いが頭から離れた事は無い。

正史と同じように色々な場所をさすらっていた彼であるが、正史とは違いそれは彼女を探すためだった。

噂を聞いた彼は、草鹿やちると共に噂を元に彼女を探した。しかし、方向音痴な二人が曖昧な噂のみでそう簡単に彼女を見つけられるわけもなく数十日が過ぎた。

しかしその日、ついに彼は出会った。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

更木剣八が口を開く。

 

「見つけたぜ。」

 

彼女は振り返り、そして気づく。あの少年だと。

――自然と笑みが溢れる。そして、基本何も喋らない彼女が、口を開く。

 

「……久しぶり。」

 

「あぁ。」

 

 更木が刀を抜きながら答える。

 

「一つ、聞かせてくれ。」

 

「……何?」

 

「あんたの名前は何てんだ?」

 

更木は自然と聞いていた。この女の名前が、知りたいと思った。自分でも無意識だった。

 

「……中野ハクナ」

 

少し首をかしげながら、彼女は答えた。

 

「そうか。俺は更木剣八だ。そこにいるのが草鹿やちる。……じゃあハクナ」

 

更木は飢えた獣のような、獰猛な笑みで告げる。

 

「始めるか!」

 

その瞬間、彼の霊圧が爆発的に上がる。彼の自身の霊圧を制限してしまう無意識の癖も、ハクナの前では自然と抜ける。

何せ、体は覚えているのだ。眼の前の相手に全力で向かった末、為すすべもなく負けたことを。

 

「……いいよ」

 

ハクナも笑みを深くしながら長らく抑えていた霊圧を開放する。

成長した両者の霊圧は、数百年前とは段違いだった。

 

「行くぜ!!」

 

いつかと同じ様に、更木がハクナに襲いかかった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

更木剣八と中野ハクナは、殆ど互角の身体能力を持っている。

だがしかし、更木剣八と中野ハクナは技術という面で大きな隔たりがあった。よって、通常ならば更木剣八に勝ち目はない。だが彼は闘争のために生きる獣。数百年前もそうだったが更木剣八の本能は理を押さえ、極まった技術にすら迫る。

この数年で更木剣八の戦闘能力は大きく進歩していた。

――結果、更木剣八と中野ハクナの戦力差は確実に縮んでいた。

 

「ハァー!!」

 

 更木の刀がハクナを襲う。それを真正面から受け止めるハクナ。反撃の刃が更木の体に傷を付けるが、更木はそのまま加速し、ハクナの体に刀を振るう。

 

「ッ!!」

 

ハクナは身を捩って躱すが、かわしきれずに横腹に切り傷が付く。

 

「まだまだァ!!」

 

更木の上段からの振り下ろし。

無駄のない動きでそれを躱し、更木を斬るハクナ。

そして更木の反撃を、躱す、躱す、躱す。

まるで踊っているかのような軽やかな動きで、荒れ狂う嵐のような更木の刃を躱す。

そして嵐の合間を縫って更木の顔に刀を振るう。更木は反射的に首を傾け刀を躱す。目の下が少し斬り裂かれたが無視し、そのままハクナに下から刀を振り上げる。

しかし、それを読んでいたハクナに手首を蹴られ、剣筋をズラされ胸板を斬られる。

 

「――ヌリィぞ!!」

 

『ザシュッ』

 

――しかし尚も怯まなかった更木が振り下ろした剣に、ハクナは肩を斬られた。

 

「クッ!! ……いいのもらった。」

 

「へッ!! こんなもんじゃねぇだろ!! ハクナァ!!」

 

「……当然!」

 

ハクナが攻める。更木の防御や反撃をもろともせず、一方的に更木に斬撃を浴びせる。

 

「ハッ!! 堪んねえ!! コレだよコレ!! もっとだァ!! ハクナ!!」

 

更木はさらに凶悪な笑みに顔を歪め、刃の雨に向かっていった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 更木剣八は歓喜していた。やはりこの女は強い。

今の自分は今までに無いほどに強い筈だ。剣筋は鋭く、感覚は研ぎ澄まされ、身体には力がみなぎっている。それなのに、届かない。相手の命が、限りなく遠い。

以前、卯ノ花八千流と戦った時とはモノが違う。完全に、己が格下。確かに、先の戦いよりは拮抗している。手応えも以前よりある。それなのに、その全力を真っ向から迎え撃ち、上回り、己に次々と傷を負わせている。こちらは精々4回程度しか攻撃を当てられていないのに、己は身体の至る所から出血している。浅い傷ばかりでもない。

 

――あぁ、自分はこの時間が好きだ。大好きだ。命のやりとり。相手も自分も命をむき出しにして殺し合う、この時間が。だから、叫ぶ。

 

「もっと、もっとだ!! ハクナァ!!」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

私は歓喜していた。あの時の少年、更木剣八がここまで強くなったことに。

あれから数百年経っているとはいえ、あの時は一太刀当てるのが精一杯だった男が、私の身体に4箇所傷をつけた。左肩の傷に関してはかすり傷と言えない程の傷だ。

凄まじい成長だ。そして何度斬られても立ち向かってくるその闘志。素直に感嘆する。

それでこそ我が宿敵の器。それでこそ最果てを超える最後の壁に値するのだ。

さぁ、もっと、もっと魅せてみろ更木剣八! 私が受け止めてやる! こんなものじゃあないだろう!!

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

――壮絶な戦いは暫く続いたが、遂に決着の時を迎えた。

更木剣八の傷と出血の量から、これ以上は危ないと判断した中野ハクナは、

 

「……終わらせる。」

 

と呟いた。

 

「はぁ、はぁ、ハハッ!! 冗談だろハクナァ!! 俺はまだまだ満足してねぇ! まだまだやろうぜェ!! はぁ、はぁ……ハァ!!」

 

そう言って斬りかかった更木剣八の懐にハクナは流れるような足さばきで潜り込む。そして、

 

『ドッ』

 

みぞおちに拳を叩き込んだ。

とある男が愚直に人生を捧げた果て。極まったその一撃は、今までの攻防のどの技よりも重厚で、鋭利で、速く、そして美しかった。

その一撃により更木剣八の意識は一瞬で闇に飲まれた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「…ん?」

 

「あ! 剣ちゃん起きた!」

 

更木剣八は起き上がる。眼の前には草鹿やちると中野ハクナの顔があった。

前回と同じように、ここでようやく己の敗北を悟る。

 

「俺は、また負けたのか。」

 

更木は、自分の最後に見た光景を思い出す。懐に潜り込まれ殴り倒された。あの間合いに入りこまれた時点で詰みだった。刀で殺すことも出来ただろうに。この女にまたしても、手加減をさせてしまった。

 

「……更木、強くなったね」

 

人生2度目の悔しさに歯噛みしていた更木剣八に、不意にハクナが微笑みながらそう呟いた。

瞬間、更木の胸に言いようもない感情が湧き上がる。褒められた。他でもないこの女から。更木にとって戦い以外でこれ程の喜びを感じるのは初めてだった。

 

「なぁ、ハクナ。俺達と一緒に来ねえか?」

 

気づけば、聞いていた。

 

「? ……まぁ、いいよ」

 

ハクナは不思議そうに首をかしげつつ、そう答えた。

 

――正史では二人旅を続けていた更木剣八と草鹿やちるに、新たな仲間が加わった瞬間だった。

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