「……ふぁあ。」
欠伸をしながら目を開ける。すると眼の前にいた老人が、
「目が覚めたようじゃな。」
と言ってきた。
段々と記憶が戻ってきて、目の前の老人と先程まで戦っていた事を思い出しとっさに飛び起きて拳を構える。
「ほぉ。あれだけ灼かれたのにものの数分でそこまで動けるか。」
「……ここはどこ?」
「ここは瀞霊廷内にある護廷十三隊四番隊隊舎じゃ。おぬしを治療するために儂が運んだのじゃ。」
「……治療?」
漸く少し冷静になってきた。
……よく考えたら、通行証がないと入れない場所に無理矢理入ろうとして、更には霊圧を感じてやってきたおじいさんといきなりバトルって――完全に悪いのは私の方だ。
どうやら相当頭に血が上っていたようだ。思っていた以上に二人との別れが堪えていたのだろうか。
「……ありがとう。あと、ごめん。」
「その謝罪、受け取ろう。さて、後の話はおぬしの治療が済んでからするかの。」
そう言って、部屋から出ていくおじいさん。戦闘の時とは違い、優しい雰囲気だった。
◇◆◇◆◇
それから数分後、部屋に女の人が入ってきた。
入ってきた瞬間分かった。さっきのおじいさんもそうだったが、この女の人、強い。そしてその容姿。私は更木に何度か聞いていたある人物と特徴が一致していることに気づく。
「……お姉さん、もしかして卯ノ花八千流?」
「! ……何故その名を?」
「……私の友達の更木って子が子供の時、負けたって言ってた。」
「更木? ――まさか、あの少年? すみませんが、その更木さんの特徴を教えていただけますか?」
私は、更木の容姿を話す。
「――そうですか。確かにあのときの少年のようですね。……失礼、私はご存知の通り元護廷十三隊十一番隊隊長卯ノ花八千流。今は四番隊隊長卯ノ花烈です。」
「……私は中野ハクナ。よろしく、卯ノ花。」
「はい、よろしくお願いいたします。早速で申し訳ないのですが、更木さんのお話、詳しく聞かせてもらえませんか?」
卯ノ花がかなりグイグイ聞いてくる。
隠す事も無いので、私達の出会い、再会、それから旅の日常まで全部話した。口下手なので話は途切れ途切れだし、言葉も足りなかったと思うが卯ノ花はそれを静かに聞いていた。
それから私と卯ノ花は、しばらく話をした。卯ノ花は更木の無意識に手加減してしまう変な癖の事を自分のせいだと言っていた。何だか気にしてそうだったので、
「……原因とか関係ない。更木自身の問題。更木もそれで戦いを楽しめてるし、気にしないで良い。」
と言って励ましてあげた。
その後も色々話したが、卯ノ花が
「そういえば、ハクナさんの治療をしなければいけませんね。」
と、思い出したように言った。
そういえば、確かにあのおじいさんも治療のために連れてきたって言ってた。
「では、治療しましょうか。」
そう言って、こちらに手を掲げる卯ノ花。
すると、私の切り傷や火傷がみるみる治っていった。
他の死神もちょくちょく使っているのを見たことがある。
「……それ何?」
「今使っているコレのことですか? コレは鬼道と言って、死神の基本技能の一つです。破道、縛道、回道の三種類に分かれていて、これはそのうちの回道です。」
へぇ。そんなものがあるのか。知らなかった。あのおじいさんの燃える刀も鬼道かな?
「……あのおじいさんの燃える刀も、鬼道?」
「いいえ。あれは斬魄刀の開放です。あれは斬魄刀にある2つの開放の内、一つ目の開放、始解です。斬魄刀と心を通わせた死神のみが使える、斬魄刀本来の力です。」
「……斬魄刀と?」
「はい。貴方も斬魄刀を持っていますが、斬魄刀には意思があります。その斬魄刀の意思と会話し斬魄刀の銘を識ることで始解を、己の斬魄刀の化身を屈服させることで卍解を習得できます。」
なるほど。死神のあの不思議な技の数々は死神特有の技だったのか。
「……私も死神になればそれ覚えられる?」
「本来は死神になる前に覚える物ですが、貴方が真央霊術院に行くと色々危なそうなので入学出来ないでしょうし、貴方が死神になる際には私が教えてあげましょう。」
それを聞いて、私は笑みを浮かべ、
「……ありがとう。」
と言った。
その後、私はさっきのおじいさんに呼び出された。
「よく来たな。剣鬼よ。」
「……私、中野ハクナ。」
「そうか。儂は護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重國じゃ。それでハクナよ。おぬしの此度の騒動を起こした目的は死神になりたいから。そうじゃな?」
「……うん。」
そのとおりだ。元々、荒事にするつもりも無かった。
「おぬしが条件を呑むなら、おぬしを死神として認めてやる。」
「!……ほんと?」
「そうじゃ。今日より、おぬしに死神としての技能と知識を、儂ら護廷十三隊の誇る隊長達が直々に教える。その教えを全て我が物にすれば、おぬしは死神じゃ。どうじゃ?」
その条件に不満は無かった。技能を身に着けなければ成れない死神にいきなり成ろうなんて思ってないし、先生をつけてくれるのはありがたい。
「……それでいい。」
この日、中野ハクナは護廷十三隊隊長に死神としての教育を受けるという異例の決定が降った。