おかしい。私は首をかしげる。
あれから何日か経った。魂魄消失の犯人は一向に分からないが、最近流魂街で虚が発生することが多くなってきた。原因なしでは有り得ないことだ。そして、魂魄達の安全がそのせいで危険に晒される。許せることではない。
私は考えた。現れる虚達は、全て特異な能力や霊圧を持っていた。偶然とは考えにくい。普通の虚とは違うナニカがあの虚達にはあると。
だから私は、おじいさんに提案した。
「……おじいさん。
「何? 虚圏じゃと? 何故じゃ?」
「……最近流魂街で発生する虚、ちょっとおかしい。データとってみたから虚圏の虚と比べてみたい。もしかしたら魂魄消失事件と関わりあるかも。私仕事ほぼないし、私だけなら虚圏へ行っても問題ないはず。入口と出口は自分で創った。」
「うむ…。そう簡単に許可は出せんが、おぬしだけで一年以内に終わらせるならよかろう。」
「……やった、ありがとう。おじいさん。」
「ハクナよ、何故儂をおじいさんと呼ぶ?」
「……イヤ? ならおじいちゃん。」
「総隊長と呼ばんか!」
「……もう慣れちゃった。」
「はぁ。――もうよいわ。」
◇◆◇◆◇
そんなこんなでおじいちゃんから許可を貰い、虚圏へ行ける事になった。
魂のバランスを崩さないように虚は基本的に倒してはいけないし、期間は決まっているけれど、私は初めて行く虚圏に対するワクワクが止まらなかった。
虚圏に来て一日。何もない。虚も居ない。ただ砂漠のような場所を歩くだけ。
最初の意気込みは何処へやら。正直帰りたくなってきた。早いとこ良さげな虚見つけて帰ろ。
そんなことを考えながら歩いていると、遠くからとてつもない霊圧を感じた。遥か遠くから伝わる霊圧は、大きさからして、隊長のレベルを軽く凌駕している。
並の存在では近づくだけで命を蝕まれるレベルの霊圧。私ははやる気持ちを抑え、最速で霊圧の発生源に向かった。
霊圧の発生源に居たのは、男だった。虚圏に似つかわしくない、普通の男。隣に小さな女の子もいる。こちらは大した霊圧は感じないが、霊圧の感じが男のとよく似ている。そして周りには、男の霊圧に殺られたのだろう。大量の虚の死体が山のように積み上がっていた。
男がこちらに振り返る。男の顔には、割れた虚の仮面のようなものが付いていた。
虚が稀に進化するという、破面なのだろうか。
「……私、中野ハクナ。貴方達は?」
私は問いかける。男は、その問いには答えず、口を開く。
「アンタ、俺の側に居ても平気なのか?」
何処か、期待するような男の声。その目からは、孤独感や寂しさのようなものがありありと伝わってくる。
「……寂しいの? その子と一緒なのに?」
「俺達は二人で一人。孤独を紛らわすには足りねぇ。」
ポンポンと少女の頭に手をおいて、男は答えた。
「……じゃあ、友達になる?」
「は?」
「……友達がいれば、一人じゃない。でしょ?」
男はしばらく呆けたような顔をして、
「ハハハ。アンタ死神だろ? 俺と友達、なんて……アンタ面白いな。」
笑った。きっと心の底から。
「……友達、なるの?」
「あぁ。破面と死神が友達だなんて普通じゃねぇが、今更だしな。俺はコヨーテ・スターク。こっちはリリネット・ジンジャーバック。よろしくな、ハクナ。」
「……ん。よろしく。」
私は新たに出来た友達、スタークとリリネットと握手した。リリネットは人見知りのようで、中々口を開かなかったが。
◇◆◇◆◇
私がスタークと友達になって1カ月が経った。私は、スタークに霊圧を抑える方法を教えたり、スタークと模擬戦をしたりして過ごしていた。もちろん、虚のデータ収集もしっかりやってる。私は仕事のできる女なのだ。趣味と仕事はしっかりどちらもやる。忘れかけてなどない。ないったらない。
今日もスタークと模擬戦をしている。
「始め!」
リリネットが開始の合図を発する。
スタークがそれと同時に接近戦を仕掛けてくる。
「スキありだぜ、ハクナ。」
いつの間にか死角から刀を仕掛け、一本を狙ってくるスターク。
「……破動の四、白雷」
それを読んでいた私は指先だけをスタークに向けて鬼道を放つ。
「! おっと!」
紙一重でそれを躱すスターク。
「誘ってたのか。ならこれならどうだ?
相変わらず響転で動き回りながら、手をかかげ、虚閃を撃ちまくるスターク。
射線を読んで最低限の動きで躱す。スタークは避けられないタイミングで撃っているつもりだろうが、射線と射線の隙間を上手く活用すれば、瞬歩を使うまでもなくかわせる。
そして虚閃によりスタークの視界から私が消えた瞬間、私は瞬歩でスタークの響転に追いつく。
「な!?」
「……隙あり。」
後は首元に刀を突きつければ一本だ。だが、
『ゾクッ』
何か嫌な予感がして、一瞬踏み出すのを躊躇った。そこに、
「虚閃」
スタークが密かに溜めていたであろう極大の虚閃が放たれる。後一歩踏み出していれば直撃だった虚閃を紙一重で躱し、スタークの喉元に刀を突きつける。
「――はぁ。降参だよ。今のを避けられるなんてな。」
「……私の勘はよく当たる。」
「そーですか。」
スタークが呆れたように呟いて腰を下ろす。
そうしてしばらくすると、
「アンタ達どこまで行ってんのよ!!」
走りながらリリネットが怒鳴ってきた。
「……ごめん、リリネット。」
とりあえず謝っておこう。
「ホントよ、ハクナ。アンタ強いんだから少しはスタークにも勝ちを譲ってあげなさいよ!」
「……私、負けたくない。」
ごめんね、リリネット。最強になるためなんだ。わざとでも、負けるわけにはいかない。
「もう! 負けず嫌いなんだから。スタークも! もっとちゃんとしなさいよ!」
「無理だ。ハクナが強すぎる。」
スタークの覇気のない声。
「そんなんだから負けるんだよ! 何なら
ん? 帰刃?
「はぁ、リリネット。わざわざこんな手合わせに使う必要は―」
「……ねぇ。帰刃って?」
私の質問にリリネットが答える。
「アタシとスタークの本来の力を取り戻す技だよ。死神でいうと斬魄刀の開放みたいなものね。」
あぁ。やっぱりスタークの斬魄刀も開放できるんだ。
「……何で使わないの?」
「リリネットが、死ぬ危険性があるんだ。」
どういうこと? リリネットが関係する能力なのかな?
「だから、私は別に――」
「リリネット。黙っとけ。」
珍しく険しい表情で、スタークがリリネットを威圧する。リリネットは押し黙った。
「ハクナには説明しとこう。俺達の帰刃の能力は―」
そして、私はスタークの帰刃、
何でも、本来一人だったリリネットとスタークが一人に戻ることで発動する破面版の斬魄刀の解放らしいのだが、大きなダメージを受けた際にリリネットにもその被害が及ぶ危険性があったり、リリネット自身が命を失うような技があったり、リリネットにとって危険なリスクがあるのだという。
「――だから俺は使いたくないんだ。」
なるほどなるほど。……ん? もしかして、
「……私、それのリスク減らせるかも」
「!? 本当か?」
そして私は、荷物からある人形を取り出す。
「……これは、霊圧を加えると霊圧の持ち主の精神を一時的に移せる人形」
大雑把に説明するならば、魂魄の中枢である精神を司る部分のみを抽出してそれを人形に移す技術だ。
もともとは敵の拷問用に作られたものだが、そもそも精神を移す本人が霊圧を注がねばならず、拷問に使用するには難しく、結局使い所が見つからないと実戦使用されなかった私と浦原の合作である。
精神さえ生き残っていれば、後から回復させる分には問題ない。これならば、リスクを踏み倒せるかもしれない。
「……やってみて。」
人形にリリネットを登録させた後、スタークが帰刃する。
結果は、大成功だった。
帰刃後、人形の効果を発動させると、リリネットの精神は人形に移り帰刃の状態は継続された。
私は人形が壊れてもいいように、持っていた人形20個を全部スタークに渡した。
帰刃後のスタークは別人のように強かった。始解なしで霊圧を制限している現状では、私の勝率は四分の三くらいだった。本人も、帰刃を気軽に使える様になったからか、どんどん帰刃を強化していった。
そして虚圏に来て一年。ソウルソサエティに帰る時間だ。
「……じゃあね。スターク、リリネット。何かあったらあのさっきあげた装置から連絡して。」
「――じゃあな。」
少し寂しそうなスターク。
「アンタのお陰でスタークが笑うようになった。ありがとう、ハクナ。」
満面の笑みで感謝を伝えるリリネット。
二人の友人に見送られて、私は虚圏を去った。
スタークさんを救いたい一心で、無理矢理展開創った。気に入らない人、誠に申し訳ございません。
何か更木の出番が無いうちにハクナがどんどん男つくってる気がする。……気にしたら負けだ。