最強の艦娘と唯一の艦息(大規模修正予定) 作:提督兼指揮官兼トレーナー
というわけで1話です。3話くらいまでは一気に更新しますので、よろしくお願いします。
深海棲艦
突如として太平洋をはじめとする各地の海に出現し、人類に対して攻撃を始めた異形の存在。
各国は、海軍を派遣し、各地で戦闘を行った。
だが、結果は惨敗。
当初、彼我の装備の差から圧倒的勝利を収めるとされていただけに、人類のショックは大きかった。
人類が2次大戦以来、積み重ねてきたミサイルを使った攻撃は、全く当たらず、当たったとしてもダメージにならなかった。
艦砲も、魚雷も通じず、逆にこちらが砲撃で倒される始末。
通商路が破壊された太平洋地域の島国は全滅。
日本のように海路で成り立っていた国は大打撃を受けた。
内陸国には直接的な被害は及ばなかったものの、世界経済への影響から、無傷では居られなかった。
超大国と称される国々は、当初自国の軍事力に絶対的自信を持っていただけに、その影響は大きかった。
アメリカは、第七艦隊がほぼ壊滅し、本土に戻ることも出来ず、海上自衛隊に編入され、それ以外の艦隊も、自国帰還が叶わないとなると、それぞれの母港を置く国や、友好国に編入してもらう他なかった。
ロシアは、北極地域に大規模な部隊の出現によって、自慢の空母を含めた多くの艦艇を失った上、地上侵攻すら許す有様。
中国は、増強中だった海軍を潰されたことにより、それまで目の敵にしていた日本に防波堤の役割を求めるようになった。
そのほか、英、仏、独、日も似たような有様で、人類は制海権を失いつつあった。
だが、人類は新たな対抗策を見出すこととなる。
かつて2次大戦で活躍し、そして沈んでいった骨董品レベルの軍艦……
その艤装と記憶を受け継ぐ存在、艦娘。
彼女たちの力によって、人類は再び反攻の兆しを見せたのだ。
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~沖ノ島付近~
「右舷雷跡!」
「面舵!」
「1本喰らいます!」
「衝撃に備え!」
ズゥーン!
喫水線に大きな水柱が上がる。
服や艤装がボロボロになり、顔にも傷が見える。
「大和さん!」
「大丈夫……です。」
今作戦は失敗になりつつある。
沖ノ島付近に展開していた深海棲艦迎撃のため、呉鎮守府などから出撃した連合艦隊は、空母機動部隊からの奇襲を受け、散々な目に遭っていた。
「敵雷撃機3機接近中!」
「対空砲、弾幕を張れ!」
「ダメです!、対空砲がさっきの爆撃でやられてます!」
「クッソ!、こんな時に……」
大和の妖精達が悔しそうに敵編隊を見つめる。
(もう……ダメみたいね……)
大和が静かに目を閉じた時………
ドン!、ドン!、ドン!
突如として、誰のものでもない艦砲の音が鳴り響く。
「誰……?」
低高度で侵入しようとした雷撃機が砲弾が命中して落とされる。
???「対空戦闘用意、前甲板VLS、敵艦載機を照準」
(VLS……、確か海上自衛隊の艦艇が使っていた兵装……、でもそんな兵器をどうして?)
???「攻撃開始」
ミサイルが放たれ、瞬く間に敵編隊が全滅する。
???「右砲戦、敵駆逐艦」
見ると、敵の駆逐艦が接近する。
???「撃て」
ドン!、ドン!、ドン!、ドン!
おそらく20.3cm程の中口径砲だが、射撃速度は駆逐艦並だ。
???「敵駆逐艦の全滅を確認。周囲に敵影無し、敵空母機動部隊撃退のために索敵を開始。」
そう言うと、艤装の後ろからヘリコプターが飛び立つ。
「あなたは……一体?」
大和のその問いには答えず、持っているタブレットに目を向ける艦娘………
「違う……、艦娘じゃ……無い?」
顔ははっきり見えなかったものの、短く切られた髪の毛と、着ている服は紛れもなく男性のものだった。
「大和さん!、大丈夫ですか?」
「吹雪さん。私は大丈夫。あの……」
「説明はあとです。提督から撤退の指示が出ました。」
「えっ……でも……」
言いかけて、もう一度、謎の艦息(?)を見ようと顔を向けると、もうそこにはいなかった。
「どうしました?」
「あ、いえ、わかりました。撤退しましょう。」
損傷で速力を出ないものの、海域を後にする大和達。
(あの人は一体………、どうして人間が艤装を背負って戦えるのでしょうか?)
疑問を覚えつつも、撤退を続ける大和。
その答えがわかるのはしばらくしてからである。
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???「データリンク完了、敵空母機動部隊を捕捉。トマホーク攻撃始め」
手持ちの艤装からトマホーク巡航ミサイルが放たれる。
眼鏡型の液晶には、ミサイルと敵空母機動部隊の位置が表示される。
「着弾」
大爆発とともに、敵空母機動部隊の旗艦にトマホークが命中、続けてほかの艦艇にも命中していく。
「敵空母機動部隊の全滅を確認。」
<<了解した、DDG-100、直ちに帰還せよ>>
「了解」
帰路につく艦息。
「大和型戦艦一番艦大和……か……」
<<どうした?、惚れたのか?>>
「いや……、なんでもない」
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呉鎮守府にて
「沖ノ島付近を遊弋していた深海棲艦の撃退を行おうとしていた連合艦隊は、深海棲艦空母機動部隊の攻撃にあい、撤退、作戦は失敗した………」
「はい」
「だが、不思議なことに、我々を攻撃した空母機動部隊も、水上艦隊も全滅している。尤も、水上艦隊は駆逐艦が残るのみだったが……」
「そのことについて、帰還した大和から報告があります。」
「どれどれ………」
大和たちの戦闘結果を見ているのは、呉鎮守府の提督と、秘書艦の大淀である。
「正体不明の艤装を背負った人物が、大和に接近中の機体に砲撃を直撃させ、その後、残った艦載機も全滅させた………」
「大和の妖精も同様の報告をしており、見間違えの可能性は少ないと思いますが………」
「あまりにも常識から外れてるな……」
この謎の艦息が打ち立てた戦果が次の通り
・艦載機20機以上撃墜(うち3機は艦砲)
・駆逐艦4隻撃沈
・空母機動部隊全滅(?)
「口径は8inch程、連射速度は推定毎分10~15発程度、海上自衛隊のVLSらしき装備を持っている………」
「20センチの主砲でそのレートの砲は存在しないのでは?」
「いや、アメリカ海軍が、その昔8inch砲を開発していた。全く出来ないってわけじゃない。」
「となるとアメリカの新型艦娘でしょうか?」
「いや、アメリカは艦娘を有効活用できていない。現にウチにフレッチャーとかが来てるだろ?」
「それもそうですね………」
あまりにも既存の常識から外れた存在である艦娘は、運用にも難があり、そのためまとまった数とその指揮を取れる国は限られており、日本と、EU軍のみとなっている。
アメリカは、保有こそしているものの、有効活用出来ず、日本やEUに沿岸防衛分を除いて派遣しており、ロシアの艦娘は地上戦における被害を避けるためEU軍に合流した。
「一時期流行っていた人工艦娘でしょうか?」
「それもない。あれは完全に失敗したものだった。」
艦娘が出現した当初、その強力さ故に、人間を艦娘にする試みが行われたものの、被験者が死亡、または重度の障害を負うなどして失敗し、挙句、中国では人工艦娘を無理やり作ろうとした結果深刻な女性不足を引き起こしてしまった。
「何はともあれ、こっちの受けた被害は甚大だ。大和はまた長期のドック入りだ。」
さて……、どうしたものかな……、と思っていた提督。
「失礼します。」
「おっ、大和か、ちょうどいい。あの時に感じた謎の人物について教えてくれ。」
「はい、まずあの人は女性ではありませんでした。」
「女性じゃない?」
「はい。わずかながら声が聞こえたのですが、明らかに女性の声ではありませんでした。」
「ふむふむ。」
「容姿も男性のそれでした。」
「なるほど」
「後、砲の数が多かったです。」
「と言うと?」
「明らかに3門以上は搭載していました。」
「イタリアのアレみたいだな……」
「私の覚えてる中ではこれだけです。」
「いや、十分だ。それより君の今後の方針だが………」
「艤装は大破してますから、復帰には時間がかかります。」
「そう、だから近くの高校で艦娘教員として参加してくれ。詳細は後で話す。」
出撃頻度の高い駆逐艦などに比べ、戦艦や空母は比較的頻度が低い。そこで、戦争で不足する教員の人材を補い、かつ艦娘を身近に知ってもらうために、艦娘教員という制度が整えられている。
「わかりました。」
「うん、任せた。」
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日本国、某所
「さすがの戦闘力だな。そして、それを十二分に操れる君の才能もさすがだ。」
「ありがとうございます。」
大和を守った艦息はここでメンテナンスを受けていた。
「人工艦娘プロジェクトは多大なる負債を残して消え去った。それはなぜか?、覚えているかな?」
「艦娘という存在に囚われすぎたからです。」
「その通り。彼女たちは特別な存在だ。普通の女性から艦娘を生み出そうって言ったってそうはいかない。」
「はい。」
「だからこそ、我々新日本重工は、新たなアプローチを取る事にした。性別の枠を越えて、新しく人工艦娘プロジェクトを進める。すなわち、君のように健康な男子高校生を使って艦娘……、いや艦息を作る試みだ。」
「理解しています。」
「君を被検体にするにあたって君にとって1番の希望を叶えたとはいえ、過酷な適応処置を振り返ればきみには辛い目に合わせてきてしまった。今更、謝りきれるものでは無いが………」
「決意したのは俺です。ならば、もうあなたが悩む必要は無いでしょう。」
「そうか……、だが1つ問題がある。」
「なんでしょう?」
「当初、予定していた大々的な艦息部隊の編成は不可能となった。」
「それはまたどうして?」
「中国における人工艦娘の失敗から、世界は、生存のためとはいえ、人に過度な改造を施すことを禁じたのだ。幸い、君の存在はあらゆる手段を使ってカバー出来るものの、さすがに2人以上をカバーできるような上手い話は無い。」
すまない。再び頭を下げた男に艦息は顔色一つ変えずにこう返した。
「あれだけ適応処置だったのですから、タブー視されるのは当然です。私は大丈夫です。」
「君は強いな。」
「弱いですよ。」
自らを嘲笑するように笑う艦息。
「さて、君の艤装の方だが……、しっかり点検しておくからもう休みなさい。明日は学校だろ?」
「はい、そうします。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
1人残った男は、彼の付けていた艤装を点検する。
「イージスシステム搭載艦。DDG-100、名前すらつかない味気ないものだが、世界最強なのは間違いない。」
そう言って、妖精達とともに彼はメンテナンスを開始した。
イージスシステム搭載型護衛艦 DDG-100
実艦スペック
全長 185m
最大幅 25m
機関方式 統合電力システム
速力 35ノット
兵装 60口径203mm単装速射砲(毎分15発)×1基、76mmスーパーラピッド砲×2門(実物における艦橋前部)、57mm速射砲×2基(実物におけるヘリ格納庫上部)、SeaRAM×1基(実物における艦橋前部)、21連装RAM発射機×1基(実物におけるヘリ格納庫上部艦橋側)12.7mmRWS×4基(実物における両舷に二基ずつ)、Mk41 VLS(96セル)(前に64セル、ヘリ格納庫と艦橋間に32セル)、Mk57 VLS(24セル)(ヘリ甲板両脇に装備)、三連装短魚雷発射管×2基、艦首魚雷発射管×6門
艦載機 ティルトローター機1機もしくは通常ヘリ最大2機
見た目 海自が計画中のイージスシステム搭載艦のイメージを踏襲しつつ、あたご型、ズムウォルト級、アンドレア・ドーリア級の武装配置を参考にしている。
・艦息としての艤装は、両側で前と後ろが分かれている形となっており、右側を前、左側が後ろになるような艤装となっている。
・直接的手に持って動かすのは203mmか、76mmか、57mmで、それ以外は手で直接動かすことは無い。
「あっ、そうだ平河技師……」
「どうした?」
「さすがにいつまでもヘリでの索敵はキツイから、早く戦闘機や、早期警戒機による支援が欲しいです。」
「そこは大丈夫だ。多元が頑張っている。」
「多元さんが!?」
多元は元々は海自の人間で、諸事情によって退官した後、一般大学の航空宇宙工学を学んだ男である。元々、軍人としては優秀だったようで、彼から運用のイロハを叩き込まれたのだ。
「ああ、そのうち試作機を持ってくると言っていたよ。」
「よし」
「分かったら早く寝なさい。君は艦娘とは違って少々特殊な1面もあるのだから。」
「わかりました。」
布団に戻り、艦息は休む。
まだ、この男がどんな風に艦娘達と関わっていくのかは、誰も知らない。
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