マクロスDarkΔ   作:シロクロ団子

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昔、昔、ある星には星の歌い手と呼ばれる者達がいました。

彼女達は星の人々を愛し、平和を願いながら星に歌を届けていました。

しかし、光あるところに影があるように闇の歌い手が誕生し、歌で宇宙を支配しようと試みましたが、星の歌い手や彼らを守護するもの達により、その企みは阻止されてしまいました。

闇の歌い手は、本来なら死刑となるはずだったのですが、星の歌い手の恩情により、内側からは永遠に出られない時空の狭間に封印されることになったのでした。



────ウィンダミア遺跡から発掘された童話の一部から抜粋


Prolog

「・・・」

 

「・・・」

 

宇宙を航海する船のブリッジにいるのは一人の青年とホログラムの体を持つ女性が一人。

 

女性は人の形をしているが、体から生えている鳥の翼によって覆われていた。しかし、覆われている翼の隙間から見える体の一部と顔を見るだけで、男は魅了され、女は恐怖を感じさせるほど、彼女は美しかった。

 

しかし、青年の方はどこにでもいる普通の青年だった。だが、一つ違うとするなら、青年の目はこれから起こる全てを諦めているような死人のような目をしていた。

 

「セイレーン。要請を受けた次の惑星までの到達時間は?」

 

「現時点で60時間42分後」

 

「そうか。なら、暇だから遊び相手になってくれ」

 

「わかったわ」

 

ブリッジの巨大スクリーンを作動させ、二人はゲームを始める。船には二人以外誰も乗っていないが、寂しいと思ったことは一度もなかった。

 

そんな中、彼女が何かに気づいたように顔を上げる。そして、一言。

 

「私達に接近している艦がいるわね。どうする?」

 

「警告しろ。5回程言って、返答がなかったら、迎撃開始」

 

「了解」

 

そう言うと目を閉じるセイレーン。青年はブリッジを出て、艦の格納庫に向かった。

 

格納庫には黒い機体が複数あり、その内、六機が動作確認をしていた。青年はそれを横目で見てから、自分の機体があるところに向かう。

 

自身の機体は先程見ていた機体と同型機。違いがあるとするなら、青薔薇と青薔薇の花柄を切り裂くように描かれた3つの爪痕のエンブレムが施されていてるだけ。

 

「アイ。敵艦からの応答はなく、既に七機が発艦した。幸いにも敵艦には武装が装備されていない、楽勝ね」

 

コクピットに乗り込み、システムチェックをしている最中にセイレーンから、敵の詳細が報告された。

 

「わかった。ゴーストには離陸した敵機を、俺は艦をやる」

 

「了解」

 

セイレーンが回線を閉じると先程の機体が発艦して行く。

 

「アイ・カナリア。Sv-303P グレイゴースト、発進する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭!奴の艦から戦闘機が出やした!」

 

頬に傷のある男が上にいる、きらびやかな服を着たふくよかな男に報告する。男は葉巻の煙を大きく吐き、ニタリと笑った。

 

「思っていたより早いな。だが、計画が早びいただけだ。全速前進!奴の横っ腹に大穴開けてやれ!」

 

「「イエッサー!」」

 

この船は武装はないが、その代わり、固さとシールドが売りなのだ。その固さで船の横っ腹に穴を空けるのもわけない。だが、あの船にいる若造は船長であり、腕の立つパイロットでもある。しかし先程出ていった奴らは、腕利きの戦闘機乗り。奴を撃墜してくれれば幸いだが、足止めをしてくれるだけでも、雇った価値はある。

 

「大金はたいて、腕の立つ奴らを雇ったんだ。これで中身がなかったら破産だ。若造には悪いが儲けさせてもら」

 

「か、頭」

 

「なんだ?どうしたお前ら?」

 

「歌が、歌が聞こえます」

 

「歌だあ?何、寝ぼけてやがる。変なこと言ってないで、さっさと船をぶつけやがれ!」

 

「だ、だけど、この歌、凄く、心地いいんですぅ」

 

「あぁ?おい、テメエら。一体どうしちまったんだっ?!」

 

リーダー格の男は異変を起こし始めた仲間に問い詰めるが、男は乾いた音がした瞬間、額から赤い液体を流しながら、椅子に倒れこんだ。

 

「うるさいなぁ・・・。歌が・・・聞こえないだろぉ・・・」

 

銃をボスに向けた男は、まるで麻薬に侵され、都合のよい幻覚を見ているような不適な笑みを浮かべながら、歌が聞こえる方向に目を向けると黒き巨人がこちらを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「敵艦、破壊完了。被害報告」

 

「被害は一機だけ。と言っても、敵ミサイルの破片が刺さっているだけよ」

 

「そうか。帰投する」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさま」

 

「周辺や荷物に異常は?」

 

「ないわ。ただ、今回の戦闘でSv-303の装甲の素材が尽きかけていることかしら」

 

それは不味い。いくら数があるとはいえ、整備ができないと万全の状態で飛ぶことはできない。

 

「そうか。確か次の惑星には、軍の駐屯地があったな。荷物を渡すついでに横流ししてもらうか」

 

「そうしてもらえると助かるわ」

 

「じゃあ、そうする。・・・そうだ、セイレーン。また、お前の歌声が聞こえたぞ」

 

「あら?また私、無意識に歌っていたのね」

 

「最近、戦闘時に歌うことが多くなってきたな。だが、お前の歌は人にとって、麻薬のような危険性がある。もし、大衆の前で歌ったら、どうなるかは気になるが、その時がきたとしても決して歌うなよ」

 

「もし歌ってしまったら、どうなるのかしら?」

 

「そんな事は考えるな。俺にも、お前にも、最悪の結果が待っているだけだ」

 

「そう。なら、歌を歌うときは今日みたいに、貴方のためだけに歌うとしましょう」

 

「そうしてくれ。・・・なんだ?この揺れは」

 

「どうやら進行方向にある重力場が、おかしくなっているようね。この船が引っ張りこまれているわ」

 

「引っ張りこまれたら、どうなる?」

 

できれば聞きたくはないが、勝手な判断を下すよりはましだろう。

 

「運良くどこかに飛ばされるか。船がバラバラになるか、でしょうね」

 

やはり最悪の返答が帰ってきた。

 

「そうか・・・。無理に離れようとしても、揺れが大きくなれば積み荷に影響がでる。やむを得ないが、突っ込むか」

 

「わかったわ。数分後におそらく衝撃がくるはずだから、なにかに掴まっていて」

 

セイレーンの姿が消え、通路には静寂が訪れる。アイは通路の手すりに安全帯を取り付けて、胸ポケットからジッポーライターを取り出す。火をつけようとしたが、小さな火花が出ただけだった。しかし、青年は自らの意思で煙草を吸うことは生まれて一度もしたことがない。けれども、アイは火がつかないライターを愛しそうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デフォールド反応があったのはこの辺りだ」

 

「しかしよお、妙じゃねえか?支部からの通達じゃあ、マクロス級が出てきたんだろ?だったら、連絡の一つくらいいれると思わねえか?」

 

「チャック少尉、それがなかったからΔ小隊に調査依頼が来たんじゃないですか」

 

「ミラージュ、チャック。お喋りはやめて、周囲を警戒しろ。デフォールドしてきた奴が味方だとは限らない」

 

「そうだなメッサーの言うとおりだ。見えてきたぞ」

 

四機の戦闘機が連なって報告にあった艦の周囲を旋回する。飛行甲板を挟むように鳥のような羽が覆っていて、長距離フォールド通信モジュールも確認できた。これはただのマクロス級とは違うとこの場にいる全員が思った。

 

「────、これはすごいな」

 

「隊長、どうしますか?」

 

「ミラージュとチャックは周囲を警戒、メッサーは俺についてこい。幸いにも甲板には充分なスペースがある。俺とお前なら、着陸できるだろう」

 

「了解しました」

 

「了解/ウーラ・サー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵影なし。アラド隊長、どこから確認しますか?・・・隊長?」

 

アラド隊長の方を見ると屈んで、甲板についているタイヤ痕に触っていた。彼に近づくと顔をこちらに向けた。

 

「メッサー。このタイヤ痕、どう見る?」

 

アラド隊長に言われてタイヤ痕を調べる。痕はくっきり残っていて、触れてみると微かに指先が黒く汚れた。我々以外に誰かが着陸している。だが、もう一つ見えてくるものがあった。

 

「・・・まだ新しいと思います。ですが、一つを除いて、あまりにも規則正しすぎる」

 

アラド隊長と俺が見ていたタイヤ痕は一機だけ。格納庫へ向かうエレベーターに向かってはいるが、何故かこれだけ他のタイヤ痕と比べるとずれていることに気づいた。

 

「やっぱりそう見えるよな。まず、格納庫に向かおう。それとセーフティは着きしだい解除しておけ、いつでも撃てるようにな」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酸素濃度標準値、どうやら艦のシステムは生きているみたいですね」

 

甲板で格納庫に繋がっている梯子を降りていくと一つの部屋に差し掛かった。部屋はエアロックを行う部屋だったが、システムが正常なのかがわからないため、終わっても計測が終わるまで、ヘルメットは外さなかった。

 

そして今計測が終わり、俺と隊長はヘルメットを取ってから、格納庫の扉を開くとそこにはバルキリーが並んでいた。

 

「これはマキナとレイナが見たら、絶景って言うだろうな」

 

「そうですね。この独特な翼・・・Svの系統に間違いないでしょう。ですが」

 

()()()()()はデータベースでも見たことがないよな。!メッサー、コクピットの部分を見てみろ」

 

隊長に言われ、コクピットを見るとコクピットにあるはずの座席や操縦桿がなく、見たことのないユニットが付いていた。

 

「これはまさか」

 

「やっぱりお前も同じ事を考えたか。ここにある機体全て、()()()()の可能性があるな」

 

ゴースト、つまり無人機なのだが、もしここにある全てのバルキリーのリミッターが外されているのなら脅威でしかない。

 

「だとすると、この艦にいる人は少数ですね」

 

だがその分、パイロットが少ないことも教えているようなものだ。

 

「ああ。だが、油断はするなよ」

 

「了解」

 

 

 

 

格納庫から出て、次はブリッジに向かう。通路と通路を繋ぐ角の壁に背中を付け、銃を構えながら次の通路へ体を向け、敵がいないことを確認する。

 

「クリア」

 

「行こう。後ろは任せた」

 

「了解」

 

隊長の背中をカバーしながら、次の位置へ。今度は左右にわかれている道に差し掛かる。互いが壁に背を付け、ハンドサインを出してから確認する。

 

「クリ」

 

「メッサー、乗員を発見した。確認する」

 

「了解」

 

隊長の方向を向くとこの艦の乗員が安全帯を付けた状態で宙に浮いていた。隊長が乗員を抱え、安全帯をとってから乗員のヘルメットを外した。ヘルメットを外された事で乗員と思われる男はうめき声をあげる。生きてはいるようだが、この艦の乗員にしては妙に若いと俺は思った。

 

「ずいぶん若いな。脈はある、気を失っているだけだ」

 

「どうしますか?」

 

保護するのはいいが、任務はこなさなくてはならない。ブリッジに行き、この(ふね)の情報を持ち帰ることが最優先事項なのだから。

 

「俺が残る。メッサーはブリッジに向かいながら、他の生存者を探してくれ」

 

「わかりました」

 

隊長の甘さにはため息が出そうになるが、命令だから仕方ない。隊長に背を向け、ブリッジに向かおうとした時だった。

 

「!?グッ!?」

 

「?!アラド隊長!」

 

突如、隊長から呻き声が聞こえ、銃を向けると先程の乗員が気絶から回復し、隊長の首に刃物を突きつけていた。

 

「動くな、銃を捨てろ。こいつの命がどうなってもいいのか?」

 

「くっ!(なんだコイツ、俺より小柄なくせして、なんて力だ!)」

 

「お前こそ、銃を捨てて投降しろ!既にこの艦は包囲されている」

 

包囲しているのは二機しかいないが、少しでも分が悪いと相手に思わせ、交渉の余地があると判断させて少しでも油断したところを撃ち、隊長を救うしかない。

 

「黙れ海賊風情が、お前らに積み荷を奪われるくらいなら、最後まで抵抗してやる」

 

しかし、乗員は動じることなく隊長の首に刃物を更に近づけた。その動きにあわせて自分も前に出る。

 

「!待てメッサー、銃を捨てるんだ」

 

睨みあいの中、俺が引き金に力をこめようとした時、隊長から銃を放棄するよう命令された。こんな時に何を言っているんだ。あんたの生死がかかっているんだぞ。

 

「できません!」

 

「いいから!・・・捨てるんだ」

 

俺は歯を食いしばりながら、銃を相手の後ろに投げる。そして手を後ろに組み、ひざまついた。

 

「いい判断だ。さあ、他に何人いる?早く答えないと体に余計な穴が空くぞ」

 

乗員は刃物を突きつけ、隊長を脅す。もし隊長を傷つけてみろ。すぐに取り押さえてやる。

 

「待て、君は俺たちを誤解している」

 

「誤解だと?()()()に土足で踏み込んだ奴らが偉そうに言うな」

 

人の(ふね)だと?じゃあ、こいつが艦の最高責任者だったのか。それがわかっていたなら、こんな失態は起こることはなかった。そう思った俺は更に歯を食いしばっていた。

 

「俺たちは海賊じゃない、傭兵だ」

 

「傭兵?どこのユニオンだ?悪いが、正規のユニオンとは正式に不可侵契約を交わしている。デタラメを言うと命を縮めるぞ」

 

「(ユニオン?)ケイオスだ。俺達はケイオス・ラグナ支部に所属している」

 

「ケイオス?()()()()の間違いじゃないのか?」

 

「いや、ケイオスだ。そうだよな、メッサー」

 

「そうだ、俺達はケイオスの所属だ」

 

「・・・」

 

乗員は俺の方を向いてから、再び隊長を見た。

 

「嘘は言っていないようだな。もう一つ質問する。今、()()()()何年だ?」

 

「宇宙世紀?なんの」

 

「質問に答えろ」

 

「今は宇宙世紀じゃない、西暦2067年だ」

 

「・・・なるほど、だから認識が食い違うわけか。どうやら俺は勘違いをしていたようだ」

 

乗員は刃物を引っ込め、隊長を離した。解放された隊長が咳き込むのを、乗員は心配しているようだった。先程まで殺気立っていたのが嘘のように、奴は穏やかな雰囲気を纏っていた。

 

「すまなかった。ついさっき、海賊に襲われたばかりでね。殺気立っていたんだ」

 

「いや、こちらこそ無断で君の艦に入ってきてすまない」

 

まだ隊長はかすれ声だったが、奴の穏やかな雰囲気を感じたのか、いつもの気楽な隊長に戻っていた。

 

「いいや、気を失っていた俺が悪いから別にいい。それで?ケイオスの傭兵がこの艦に何の用があってきた」

 

「我々はこの艦の調査に来たんだ。できれば我々に同行して、状況を説明して頂ければ一番良いんだが、どうだろうか?」

 

「わかった。どこに向かえばいい?」

 

「惑星ラグナに向かってくれると助かる」

 

「了解した。セイレーン、セイレーン?」

 

誰もいない空間に向かって乗員は誰かの名を呼ぶ。しかし反応がなかったことに乗員は頭を抱えていた。

 

「あいつ、寝てるのか?悪いけど、セイレーンを起こさないといけないから時間がかかる。他に用があるなら急ぐけど、どうする?」

 

「いや、急ぎの用はないから、ゆっくりでいい。メッサー、外にいるあいつらに報告してくれ。この・・・」

 

隊長が艦名を教えてほしいと言わんばかりの顔を乗員に向けると微笑しながら教えてくれた。

 

()()()()()

 

「アストレアはラグナに向かうと」

 

「了解しました。隊長は?」

 

「彼に同行する。ブリッジについたら定期報告する」

 

「了解しました」

 

これは定期報告がなければ即刻()()()()という命令。その事に食い下がりたかったが、これ以上奴を煽ることはしない方が懸命だと自分に言い聞かせ、自分の機体に戻った。

 

 

 

 

「やっぱりスリープモードになってる。セイレーン」

 

システムをチェックし、セイレーンを起動させると中央のモジュールに灯が灯り、いつものあいつが出てきた。

 

「おはよう、アイ。あら、お客さんかしら?」

 

「ああ、今からこの人が言う惑星ラグナに向かう。あと、どうやらここは俺達が知っている世界じゃなさそうだ」

 

 

 

 

 

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