マクロスDarkΔ   作:シロクロ団子

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口喧嘩とデート(仮)

「え?俺の機体使えないんですか?」

 

「お前さんの機体、ワルキューレのライブには合わなくてな。カメラアイはギョロっとした1つ目、おまけにうちが使ってるバルキリーと並べると少し浮いているから、カナメさんから却下された」

 

「(カナメさん?)まあ、言われてみれば確かに合いませんね」

 

Δ小隊のバルキリーは白を基調色としている。その列にSvが並ぶシーンを想像してみたら、完全に場を乱している。

 

「安心しろ、昨日の時点でレディ・Mは既にお前の機体を手配してあるそうだ。だが、到着するまで時間がある。それまでにお前の腕を確かめさせてもらう」

 

手配されているのはいいのだが、我が儘を言わせてもらえるなら機体性能が同等な物がいい。以前試しに、別の機体を使ったことがあるのだが、機体の質の悪さに気分を悪くし、一度吐いたことがあるからだ。

 

「って事は演習ですか。それなら一回、Sv使ってもいいですか?乗るより誰かの全力見た方が性能がわかって、イメージしやすいので」

 

演習は別にいいのだが、最後に一回、愛機を使ってもバチは当たらないはずだ。あと、できるなら試してみたいこともあるし。

 

「いいぞ、ちなみにお前の教官なんだが」

 

「アラド隊長!」

 

スライド式のドアが開いた先には、ものすごい剣幕をした女性がいて、俺がいるのも見えていないのか、アラド隊長に掴みかかろうとする勢いで近づいた。

 

「美雲さんの警護担当から外すってどういう事ですか!」

 

「ミラージュ、落ち着けって。悪いがレディ・Mからの直々の指令だ、拒否権はない」

 

「ですが!まさかそこにいる人が新しい警護担当なんですか」

 

ヤバい、飛び火した。知らんぷりしとこ。

 

「そうだ。アイ、お前の教育係になるミラージュ少尉だ」

 

あ、駄目だわ。隊長、巻き込む気満々だわ。ハンドサインで『自・己・紹・介・し・ろ』って。俺は小さくため息をつき、仕方なく席を立って女性の前に出る。

 

「本日付けでラグナ第三航空団、Δ小隊に所属することになりました。アイ・カナリア少尉です。ご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします、ミラージュ少尉」

 

「ミラージュ・ファリーナ・ジーナス少尉です。あなた、あのマクロス級にいましたよね、なぜここにいるんですか」

 

ん?こいつ、俺が出頭した時、あの場にいたのか。じゃあ、嘘言っても無駄か。

 

「えーと、スカウトされまして、おまけに美雲さんのボディガードに任命されました」

 

「はあ?隊長、どういう事ですか。素性もわからない男をよりにもよってΔ小隊に」

 

「それは」

 

「あんたみたいなパイロットより利用価値があるから」

 

「なに?!」

 

めんどくさいから、隊長にとって傍迷惑な奴に客観的な意見を述べることにした。

 

「1つ、未知のバルキリーの機体データ、戦闘データが無料(タダ)で手に入る。2つ、登録されていないとはいえ、マクロス級を所持しているから機嫌をとれば、人材とマクロス級がついてくる。これだけうまい話を逃す奴はいないでしょ」

 

「最後に3つ、俺はあんたより戦場で地獄を見て、戦ってきた経験がある。つまりだ、下手したら戦場において、あんたは俺に勝てない。近いうちに除隊かクビになるんじゃないか」

 

取り消せ・・・今の発言を取り消しなさい、アイ少尉!」

 

生意気な態度をとるだけではなく、解雇宣言まで言われてミラージュ少尉は体を震わせ、怒りを露にした。

 

「取り消したければ俺に勝ってみせろよ、教官殿。俺の愛機は今まで相手にしていた奴らがかわいく見えるほど最凶(さいきょう)だ。生半可な覚悟で挑んだら食われるから気をつけろ」

 

「言われなくても!」

 

ドカドカと歩きながら凄い剣幕でミラージュはその場を去っていった。そして仕掛けた俺はアラド隊長に顔を向けて一言。

 

「・・・やりすぎましたね」

 

「やりすぎだな。まあ、ミラージュにとって、いい刺激にはなるんじゃないか?」

 

「そうですかね。でもあの人、本当にバルキリーに乗って前線に出てるんですか?」

 

「ああ、まだ若手だが、腕は確かだからな」

 

「・・・もったいないかもな

 

「ん?」

 

「いえ、なんでもないです。それより模擬戦の日程は────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、一旦休憩にしましょう」

 

「「はーい」」

 

「あれ?クモクモ、休まないの?」

 

レイナとマキナが休もうとしているのに対し、美雲はまだ練習を続けようとしていた。しかし、当の本人は珍しく息が上がりつつある。休憩しなければもしかしたら倒れるかもしれないので、止めるべきだ。

 

「先に休んでいてちょうだい。今のところをもうちょっと詰めたいから」

 

「・・・美雲、焦っちゃ駄目」

 

そう考えている内に練習を再開しようとしている美雲を私が止める前にレイナが止めた。

 

「!なんの事かしら?」

 

「一部始終、見てた」

 

「───、そう」

 

「なんの事?」

 

二人の間でしかわからないことが気になるが、美雲の辛そうな顔を見るだけで、事態は深刻だと考えることができた。レイナは美雲に喋っていいかと美雲に視線を向け、美雲は静かに頷いた。

 

「さっき、新しく来た人に美雲が珍しく好意を抱いていた。だけど、美雲のそっくりな」

 

「私があの子の傍にいるのが気にいらなかったのよね」

 

「そう・・・?!」

 

目の前に美雲がいるのに、背後から美雲の声が聞こえた。レッスンルームの出入り口の方へ顔を向けると、美雲に似た誰かがそこにいた。

 

「駄目じゃない。人の純情を盗み見するだけじゃなく、人に言うなんて、それは人としてどうかと思うわ」

 

「セイレーン、私が見ていたのを気づいてたの?」

 

驚いているみんなを見て、クスクスと笑っている彼女がアラド隊長が美雲に似ていたと言っていたAI。容姿は似ているが、性格は美雲とは明らかに違っていた。

 

「ええ、私のそっくりさんとは違ってね」

 

「何のようかしら、ここはワルキューレのレッスンルームよ。アストレアの管理AIが来るような場所ではないわ」

 

セイレーンに対して威圧的な態度をとる美雲。いつもの彼女とは違う態度に対し、みんなが驚いていた。

 

「ふふっ、そんなに威嚇しなくてもいいじゃない。少しワルキューレの存在に興味があったから立ち寄っただけよ。・・・いい仲間ね、皆あなたの事を信頼し、あなたも信頼している」

 

「それはどうもありが」「だからこそ、貴方にあの子は不釣り合いよ」

 

「貴方が見ているのはあの子の表の部分だけ。だけど私は違う、あの子が心に(いだ)いているものを知っている」

 

「だから、彼の傍に立ち続けられると?あなた、自分の姿を鏡で見たことはあるのかしら」

 

「──それで優位に立っているつもりなら、随分危ういわね」

 

「なんですって?」

 

「それぐらいの事、私が対策していないとでも思っているのなら、この先痛い目を見るのは貴方自身よ」

 

「じゃあ私はこれで失礼するわ。練習、頑張ってちょうだい」

 

そう言ってセイレーンは姿を消し、レッスンルームには静寂が流れた

 

「な、何あの人?!クモクモにあんなひどいこと言うなんて!」

 

マキナがセイレーンに対して怒りを露にするが、美雲の方は元気がなく、今にも倒れそうだった。

 

「美雲、大丈夫?」

 

「ええ・・・ごめんなさいカナメ。少し風に当たってくるわ」

 

「美雲・・・」

 

美雲は私が差し出した手をとることなく、部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

結局、あの後の私は最後まで練習に身が入らず、皆を心配させてしまった。

 

ラグナの夜の町を俯きながら歩いている私は周りの人から見たらどう見えるのだろうか。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

癪にさわるけれども、もう一人の私の言うとおりだ。一時の抱いた感情に柄にもなく、はしゃいでいたのは私だ。もしかしたら彼は、私が求めている人物ではないのかもしれないのに。

 

「あれ?美雲さん?」

 

そんな事を考えているのに、目の前の雑貨屋から彼が出てきた。そして変装している私に気づいたのか近づいて声をかけてきた。

 

「アイ?どうしてここに」

 

「どうしてって、Δ小隊の皆様に挨拶と資料受け取ったら、今日は終了ってアラド隊長に言われて。だからといって夕食まで時間もあるから日常品を買おうかと、美雲さんは?」

 

「私は・・・」

 

セイレーンの言葉が頭の中で横切り、声が喉の奥で詰まってしまう。セイレーンに対する文句をアイに言うべきか、それともアイから離れる口実を手短に話してこの場から逃げ出すべきか。

 

そんな事を考えている私を見て、アイは何か思い出したような顔をして私に問いかけてきた。

 

「美雲さん、もしよろしければ美雲さんがおすすめする場所、紹介してくれませんか?」

 

「え?」

 

「俺、ラグナに来て日が浅いので、おすすめの場所とか、どこで買い物したら得するとか知らなくて・・・、もちろん美雲さんに予定がなければ、ですけど」

 

「───本当に私でいいのかしら?」

 

「もちろんです」

 

「わかったわ。まずは───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう少しで着くけども、休まなくて大丈夫かしら?」

 

「大丈夫、まだまだ歩けます。それにしても随分高いところまで来ましたね」

 

美雲さんと一緒にいろんな所を見てまわった。いろんなお店や、観光名所等々。でも一番良かったのは美雲さんの表情が明るくなったことだ。

 

雑貨屋で会った時は朝と全く違い、暗い表情をしていたから、何事かと思い、必死に頭を使って出たのがこれだとは・・・。まあ、元気になってくれて本当に良かった。でも、最後にと言われてついてきたが、町からこんなに離れていいのだろうか。

 

「ええ、高くないと綺麗に見えないから」

 

「綺麗?」

 

「着いたわ、この上よ」

 

着いた場所には岩山があり、美雲さんは岩山を猫のように軽やかに登っていった。俺も負けじと登っていき、頂上にたどり着くと美雲さんは上を向いていた。

 

「わあ・・・」

 

つられて上を向くと数多の星達が光っていた。町の灯かりがなかったら、ここまで綺麗に光っているのか。確かにここは隠れた名所だ、教えてくれた美雲さんに感謝を伝えようとした時だった。

 

「♪~」

 

美雲さんが突然歌い始めたのだ。彼女は俺がいることも忘れているかのように、歌う事に夢中になっていた。

 

だけど、優しい歌を歌う彼女の姿に俺は魅入られていた。歌を歌う彼女の髪は月明かりに照らされ、空に映る星のように煌めいていて、横顔を見ただけでも心臓がはね上がるほどの美しさがそこにあった。

 

それに歌も俺の中に優しく入ってくる感じが心地いい。確かにこれなら、歌で病気を治す事ができるのも納得できる気がする。

 

俺は美雲さんの歌を止めることはできない、むしろ止めようとするものを()()してでも、この歌を聞いていたいと思っていた。

 

~♪

 

それを邪魔したのが俺の携帯の着信音だとは、自分に対して情けないと思った。

 

「あら、確認しなくていいの?」

 

美雲さんの気遣いで携帯を開くとアラド隊長から着信が来ていた。とりあえず美雲さんにも聞こえるようスピーカーモードに設定した。

 

「はい、もしもし」

 

『お前、どこの町まで買い物に行っているんだ?お前の歓迎会、もう始まってるぞ』

 

「え?歓迎会?そんな話、聞いてないです」

 

『うん?うちの歌姫からなにも聞いていないのか?』

 

「いや、今、美雲さんと一緒にいますけどなにも聞いてないです」

 

美雲さんの方を向くと首をかしげていた。美雲さんも知らなかったようだ。

 

『美雲さんと一緒に?なんだお前、見かけによらずプレイボーイなんだな』

 

「は、はぁー!?///んなわけないじゃないですか!生まれてこのかた、女性と遊んだ事なんてありませんよ!!──あ・・・」

 

突然のセクハラ発言により、俺は慌てて反論したが、余計なことまで喋ってしまったことに赤面する。向こうの世界では生きることしか頭になく、話し相手もセイレーンがいればそれでいいと思っていたから、尚更女性との交流がなかったのだ。

 

『ははっ、なら安心だな。なら、美雲さんつれて早く寮に戻って来い。皆、待っているからな』

 

「・・・美雲さん、さっきの会話」

 

電話をポケットに戻しながら、美雲さんの方を向くと美雲さんが口に手を添えて笑っていた。

 

「ごめんなさい。あなたの事で笑っていたわけじゃないの。そうね、まだ始まったばかり、これから知っていけばいいのよね」

 

「?」

 

「行きましょう。人を待たせてはいけないわ」

 

 

 

 

 

 

「これで良かったんですか、カナメさん」

 

「はい、ばっちりです」

 

先程の発言は全てカナメさんからの指示だ。なんでも美雲がアイに気がありすぎて、アイがそれにつけ入るのではないかとカナメさんは心配していた。そして一緒にいると言うのだから、更に心配になったようだ。

 

「でもこんなことしなくても、あいつは人を弄ぶような奴ではないですよ」

 

「ええ、話を聞いている限りは。ですが、うちのエースを困惑させているのは事実です。なら、それ相応の罰を与えてもバチは当たりません」

 

「そうですか。それにしても美雲が恋心を抱いているとは」

 

「意外ですよね。歌う事しか興味を持たなかった美雲が突然現れた男性に恋をするなんて」

 

「でも、ロマンチックだよね~。そう思わない?レイレイ」

 

「異世界転生物の主人公恋愛成就率は80%、期待値大」

 

「くそー!どうして俺はモテないんだ!」

 

「チャック!ネガティブな事を考えるな。飲め!飲んで忘れるんだ!」

 

「でもよぉ、あの美雲さんだぞ。次第にあいつと仲良くなっていって、会うたびに・・・あ゛あ゛あ゛!アイアイ!?チキショオオオオオオオオ!!」

 

「いや、それどっちかと言うとマキナ姐さんが先に言いそうなんだけど。というかチャック、お前そんなキャラだったか?」

 

主役がいなくても、裸喰娘娘内の笑い声は増していく一方だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、俺の歓迎会は延期になった。理由は主役が遅すぎたことにより、周りが酒によりダウン。俺は地獄絵図と化していた会場の入口をそっと閉じ、美雲さんをつれてディナーに向かった。美雲さんとの食事は楽しく過ごせたと思う。

 

あくまで自己評価だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モデルデータ『カナメ・バッカニア』『マキナ・中島』『レイナ・プラウナー』を抽出し、破損モデルデータと結合。結合の際に発生した余剰データは削除」

 

私の操作により、投影された三人の姿が少しずつ変わっていく・・・いや、()()()()()の間違いか。

 

カナメモデルはショートヘアからセミロングに、

 

マキナモデルには整えられた髪がボサボサになり、体には傷を思わせるような紫のラインが浮かび上がる、

 

レイナモデルはミディアムヘアからロングヘアに、そして額には角を思わせるようなインプラントが

 

 

完成したモデルデータに保存されていた人格パラメーターを埋め込むと、三人は目蓋を開けた。

 

 

 

 

「三人とも()()()()、かしら?」

 

 

 

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