マクロスDarkΔ   作:シロクロ団子

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いつの間にか、アニメ再放送してる・・・

久しぶりに続きを書いたので、色々文やキャラ設定がおかしいかもしれない・・・


戦場のプロローグ

「ここがアル・シャハル。温かいけど周りは砂漠か・・・」

 

「あら、暑いのは嫌い?」

 

「嫌いではないけど、砂漠にいい思い出がない。・・・なんでか知りたい?」

 

「ええ」

 

「・・・ある惑星で砂漠の上をアストレアで航空中、アストレアを飲み込むほどの巨大なワームが真下から現れた。間一髪飲み込まれずにすんだけど、あの時ワームの口から見えた針山のような歯の数々を思い出すだけで・・・」

 

両手で腕を掴み、身震いする。あの口から見えた闇に飲み込まれていたら、どうなっていたことだろうか。そんな俺を見て、美雲は微笑していた。

 

「ごめんなさい、貴方にも怖いものがあるって思ったら、つい」

 

「あるに決まってるじゃん。どんなに屈強な種族がいても、怖いものは必ずあるよ。もちろん、世間ではミステリアスレディって言われている美雲にも、セイレーン達にもね」

 

なにせ、セイレーンもワームの大口を見て、あわてふためいていたから。ということは、美雲にも何かあると俺は思っていた。

 

「あいにくだけど、私は今まで恐怖を抱いたことは「待った」」

 

「わかってる、美雲は強い人。だけどね、辛いときがあったら誰かに頼ってもいいんだよ。ワルキューレも、ラグナ支部の皆も美雲の仲間なんだから」

 

「・・・そうね。でも、そこは嘘でも『俺がいるから』って言って欲しかったわ」

 

「あはは・・・。それより、これからどちらに行けばよろしいですか、お嬢様」

 

俺は少し顔をひきつらせながら、逃げるように美雲に打診した。

 

「そうね。まずはあの子から逃げて、街を歩きましょう。私の執事さん」

 

「承知しました。(わるいな、ミラージュ)」

 

美雲の提案に乗ることにし、今はいないミラージュに心の中で軽く謝るとレンタカーを発進させた。

 

「お待たせしま、あれ?美雲さん?アイ少尉?」

 

そして、ターミナルにミラージュを置き去りにし、二人で街にくり出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいなあ、調査・・・。私もアイについていきたかった」

 

時を同じく、アイテールの格納庫で横になりながら、闇マキナはコンソールを叩いていた。

 

「・・・あ゛あ゛あ゛!さっきからウダウダ呟きやがって!口より頭を動かしやがれ!」

 

メソメソしている闇マキナに対し、振り上げた右手の中にハリセンを形成して思いっきり、頭を叩いた。スパァン!と軽く、気持ちよい音が響き、叩かれたマキナは頭を抑えながら、私を見ると泣き始めた。

 

「うぇーん!レイレイが、ぶった!」

 

マキナの目から涙が出るが、結局はデータにすぎないので、地に落ちても水分が地に貯まることはない。

 

「はぁ・・・。あなた達、喧嘩をするのもいいけど、ちゃんと仕上げなさい。事態は闇雲の予測より、早く起きてしまうかもしれないのよ」

 

そんな泣きわめくマキナにため息をつくと、後ろから闇カナメが現れ、進捗状態を聞いてきた。こいつ、メンタル担当だからと言って基本サボっているのに、何かトラブルが起きた後で姿を表すのだ。普通は起きる前に止めるのが、お前の仕事だろうが。

 

「わーってるよ。機体の調整はほぼ終わった。あとは実際に飛んで調整すればΔ小隊のジークフリートより、少しは機動性が高い機体になるだろうぜ。マキナはどうなんだよ」

 

「ぐすっ。アイからの要望にあった、Sv-303のような機動性を実現するには、やっぱりアレしかなくて。レイレイにお願いして、手配したけど・・・。今回は装備無しで我慢してもらうしかないよ」

 

「・・・マキナ。あなたが頑張っていることは、アイもわかっているはずよ。だから、あなたを責めることはしない。だから、今はできることからやりなさい」

 

うん・・・カナメ。私、頑張る!と言って顔を上げたマキナは、いきいきとしながら、私達の前から姿を消した。個人のフォールド通信を切って、先程言っていた改良機のシミュレーションに集中すべく、アストレアに戻ったに違いない。

 

そして残された私は、あんなありきたりな言葉で、はしゃぐマキナに対してため息をついた。

 

「サボり魔のくせに相変わらず、飴と鞭を与えるのがうまいな」

 

「それはどうも」

 

カナメは小悪魔のような微笑を浮かべてから、姿を消した。私もアストレアに戻ろうとしたが、気になることが一つあった。私は周りに人の気配がないことを確認してから、アル・シャハルの監視カメラをハッキングする。

 

リアルタイムで写し出される映像には、あの(気にくわない)美雲に振り回されているアイの姿があった。私は映像越しにあるアイの顔を指で軽く突っついてから、自身の通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが軍の駐屯地か。話には聞いていたけど、本当に巨人がいるなんてな」

 

アル・シャハルに来る前に行ったブリーフィングで、少々気になったことがあった。それは、例のヴァールシンドロームが発症した人には、軍に所属している人が少し多かったことだ。

 

ヴァールは流行り病と同じはずなのだが、発症者全体の6割が軍の関係者となると、病原となる物が軍の施設にあるのではないかと思い、探りに来たのだ。ちなみに、現在美雲さんとは別行動。美雲さんはなにかを察してくれたのか、俺を護衛の任から解放してくれた。

 

この視察が終わったら、お礼の品をプレゼントしないと。

 

「すみません。私、こういう者ですが」

 

「なんだ?ケイオス、ラグナ支部・・・、まさかΔ小隊?」

 

「ご存じでしたか、なら話が早いです。この施設の責任者を呼んでくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

「いやー、あの噂になっているΔ小隊の隊員がお越しになるとは。すみませんね、外で。この時間帯は見回りをしなければならないので」

 

「こちらこそアポもとらず、申し訳ありません。なにしろ、極秘の調査なもので」

 

基地の責任者は人ではなく、まさかの巨人(ゼントラーディ)だった。これできつめの口調だったら、ちょっと気が滅入っていたかもしれない。

 

「いえいえ。おたくも銀河を転々としながら、ヴァールを沈静化するために仕事しているのです。市民を守るもの同士、協力を惜しむことはしませんよ」

 

「ありがとうございます。では、単刀直入に。このリストに載っているのは、この基地で働いていた人に間違いありませんか?」

 

「ふむ・・・。確かに全員、この基地で働いていました」

 

「この人達は、何か特別な作業を行っていたりは?」

 

「いえ。ここにいる隊員達は来るべき日に備え、訓練やリガードの整備を行っています。特別な作業を行うようなことはありませんね」

 

「・・・ちなみに基地で行っていることで、全員が共通するものは、他に何か思いつきますか?」

 

「ふむ・・・隊員達の友好を深めるために、毎日同じ時間に食事をしているだけですかね」

 

「そう・・・ですか」

 

だとすると、蛇や蚊等にによる動物を媒介した感染ではないのか。ヴァールになる前の感染者は健康体であるとも聞くし。ヴァールは本当にただの病気ではないのか。

 

俺はあれこれ考えて、頭痛を起こしはじめた頭を抑えながら、空を仰いだ。そんな時、基地の正門からエンジン音がしたので、横目で見てみるとコンテナを積んだ数台のトラックが俺の前を通過していった。

 

「今のトラックの積み荷はなんです?」

 

「あれは、食糧品ですよ。先程言いましたが、友好を深めるには食事が不可欠。なので、色々奮発しているんです。最近はウィンダミアのリンゴが旬なので、デザートはそれを使ったものを週に3回、隊員に出しています」

 

「リンゴか・・・そういえば、アストレアに置きっぱなしのリンゴ、どうするかな」

 

「アイさん、実は私も気になっている事があるのです」

 

「なんですか?」

 

「先程言ったウィンダミアは以前、鎖国状態にあったのですが一年程前に突然、貿易を再開しました」

 

「鎖国していた星が、ですか?」

 

「ええ。そしてその頃から各惑星でヴァールの発生が頻発しはじめたのです。私も最初は偶然だと考えていたのですが、軍の関係者がヴァールになっているとなると、ウィンダミアとヴァールには何かしらの因果関係があるのではないかと思うのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィンダミア。新統合軍に対し独立戦争を行い、今は停戦を維持。戦争が始まる前の主な輸出品は主にリンゴが多く、一時期はフォールドクォーツも輸出していた、か。これのどこにヴァール化の繋がりがあるんだ」

 

「あれ、アイアイ?どうしたのこんなところで。クモクモは?」

 

カフェテラスでキャラメルラテを飲みながら再び、うんうん唸っていると手にグラスを持っていたマキナさんがいた。あ、やべ。任務放棄しているところを見られた。

 

「美雲さんの許可をもらって別行動してます。マキナさんの調査は順調ですか?」

 

「うん。今のところ、特に異常は」

 

『こちら異常なし。マキナとレイナの方はどう?』

 

『こちらレイナ、複合センサー異常なし』

 

「こちらマキマキ。シャハルシティも異常なーし。あと、アイアイと合流したよ」

 

『なんですって?』

 

定期連絡をする時間をすっかり忘れていた。おまけに通信越しの彼女の声は少しご立腹だ。

 

「すみません、美雲さん。さっき調査が終って水分補給を兼ねた休憩をとるためにカフェテラスにいまして。偶然にもマキナさんと合流してしまいました」

 

『アイ。美雲の護衛が任務だったはずだ。勝手に持ち場を離れるな』

 

メッサーは怒ってそう、いや・・・完全に怒ってるに違いない。

 

「あー・・・すいません」

 

『あら。私が許可したのよ』

 

『だからといって、許可なく任務を放棄するな』

 

「ごもっともです・・・」

 

美雲が弁明してくれたが、事実なので謝るしかなかった。

 

『それで、何かわかったのか?』

 

「軍の駐屯地を調べましたが、特には。ただ、ウィンダミアのリンゴが今が旬らしく大量に納入されていました」

 

『銀河リンゴか、それは軍への納入品だ。ヴァールに関係があるとは思えないな』

 

「ですよね・・・。俺もそう思います。ところで美雲さん、あれからミラージュさんと合流しましたか?」

 

『さあ?アイはともかく、あの子と一緒じゃあ、潜入調査なんてできないわ。早く戻ってきなさい』

 

「了解しました。すぐに向かいます。じゃあ、マキナさん。お互い頑張りましょうね」

 

「うん。いってらっしゃい、アイアイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

「美雲さん!見つけましたよ!」

 

「あらあら。よりにもよって、あなたに見つかるなんて・・・」

 

「どうです?似てましたか?美雲さん」

 

振り向いた美雲さんは驚いた顔をしていた。それもそのはず、美雲さんが聞いた声は、ミラージュの声そのもの。しかし、その声を出していたのは、(アイ)なのだから。

 

「あなた、凄い特技を持っているのね」

 

「ありがとうございます。向こうの世界で、その手の師匠から学んだんです。おかげでちょっとしたアクシデントを解決できたこともありました」

 

「そう。だけど女神を騙すなんて、悪い子ね」

 

「うっ・・・。じゃあ、これで許してください」

 

近くの売店で買ったフルーツジュースを差し出す。

 

「残念だけど、さっきそこのカフェで飲んだわ」

 

しかし賄賂は失敗してしまった。

 

「嘘よ。ありがたく頂くわ」

 

そう言って、美雲は俺からコップを受け取り、ジュースを飲むのだった。

 

「ねえ、アイ。あなたはこの世界に慣れた?」

 

「ええ、なんとか慣れてきました。と言いたいですが、まだ仕事の方がまだ」

 

「そうだったわね。まだΔ小隊としての仕事は、今回が初めてなのだから、当然ね」

 

「・・・不安なんです。Δ小隊の仕事は美雲さん達、ワルキューレと市民を守ること。だけど、誰かを守ることが俺にできるのか、って考えると」

 

「くだらないわね。誰かを守るのに、できるできないは必要ない。それにあなたはいつも他人を守っているわ」

 

「え?」

 

「あなたはアストレアを。セイレーンを長い間、守ってきたのでしょう。あなたが悩んでいるのは、その延長線にすぎないのよ。自信を持ちなさい。じゃないと、私の担当も勤まらないわよ」

 

「・・・そうだよな。俺がやろうとしているのは、変わらない。美雲さん。俺、頑張ります。皆の活躍に恥じないように、頑張ります」

 

「なら行きましょう。長い間留まっていると、もう一人のうるさい子が・・・」

 

話している途中で、突然美雲は何かを感じたのか、空を見上げた。

 

「どうしま・・・。なんだ、この声」

 

俺は心配して声をかけるが、違和感を感じ耳を澄ます。近くには美雲しかいない。なのに誰かが耳元で囁やいていて、気味が悪い。

 

『聞こえているか、アイ。ゼントラーディ駐屯地で、ヴァールが発生した。指定されたポイントでジークフリートを待機させる』

 

隊長の声が聞こえた瞬間、その声はもう聞こえなくなっていたが、おかげで気持ちを切り替える事ができた。

 

「了解、すぐに向かいます。美雲さん、行ってきます」

 

「ええ。ステージで待っているわ」

 

 

 

 

 

 

 

『アイ。ヴァール化した兵士による被害が大きくなりつつある。悪いがお前さんのデビューショーは延期する。離陸後は、ヴァール化した兵士を無力化してくれ』

 

「了解。これが俺のジークフリート・・・」

 

メインカラーが美雲さんの紫、サブがΔ小隊の白で仕上がっている機体を見て、改めて自分はΔ小隊の一部になったのだと実感した。

 

機体に上り、装甲内に隠されたボタンの操作でキャノピーを開ける。ふと、機体の中心部が気になり、顔を向けるとそこにはSvと同じ、青薔薇と爪のエンブレムがあった。

 

エンブレムについて、ケイオスの整備員に話していなかったので、おそらくセイレーン達が伝えたのだろう。

 

コクピットに入ると離陸する為の機体チェックを行いながら、機体のプログラムを組んだレイナを呼び出した。

 

「レイナ。操縦と装備に関して何か注意事項はあるか?」

 

『特にない。だけど、Svと同じ感覚で操縦したら、すぐにエンジンがイカれるからな!マキナが手配した追加装備が来るまで、機体に慣れとけ。あと、必ず帰ってこい』

 

「わかった。じゃあ・・・行くか」

 

俺は足元のペダルを踏み、ジークフリートと共に空へ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

高速状態を維持しながら、海面を滑るように進む。進行方向にはあの忌まわしきワルキューレがいる。すぐにワルキューレがいる地点をロックオンし、ミサイルを発射するボタンを指で押しこむ。

 

「くたばれ、ワルキューレぇえええ!」

 

俺の機体から放たれたミサイルが奴らの方向に進んでいく。これで我らの邪魔をする者はいなくなる。そう確信した、その時だった。奴らがいる方向の空から青い光が見えた瞬間、放たれたミサイルの一部が爆発し、周りのミサイルも誘爆していく。

 

「なにっ!?がぁっ!」

 

突然、コクピットに衝撃が走り、何事だと思った瞬間。画面に示された機体の図面には尾翼の一部が赤く染まっていた。状態を知るために目視で確認すると尾翼の一部が消し飛んでいた事がわかった。俺はすぐに機体を上手く制御し、急いでその場を離れる。

 

「申し訳ありません、白騎士様。やられました」

 

『わかった。急いで離脱しろ。まだ命を散らす時ではない』

 

「はっ」

 

通信を切り、奴らが近くにいるというのに背を向けるという屈辱を噛みしめていたが、俺は少し安堵していた。奴らを殺すことに迷いはない。だが、無理をして攻撃を続けていたら、あの狙撃の餌食になっていたのではないか、と

 

 

 

 

 

 

 

危なかった。ヴァール化した兵士を撃つ前に水面上から来た戦闘機に気づかなかったら、美雲達に被害が出ていたかもしれない。気分は乗らないがアンノウンを少しでも排除しないと鎮圧が円滑に進まないだろう。勝手だが戦闘に参加したほうがよさそうだ。

 

『こちらΔ5。鎮圧行動を一時中止し、戦闘に参加する』

 

メッサーが何か言ったが無視する。左手でデバイスを操作し、Δ小隊とのデータをリンク、キャノピーには機体を追尾又は追っている敵のタグが映し出された。

 

「Δ3、現在位置から9時方向に進め」

 

『9時方向?!』

 

「いいから行け。・・・ヒット。Δ4、反3時方向」

 

『っ、了解!』

 

それを見ながらチャックとミラージュに指示を出し、彼らを追尾していた敵のゴーストをマニュアル操作で次々と撃ち落とす。

 

流石、レイナ。マニュアル操作だというのに射撃にブレが少ない。だがレイナの奴、機体のプログラムを完璧に仕上げすぎだ。

 

それにしてもあのゴースト、少しだけ俺のSvに搭載されているゴーストに似ている。劣化版かあるいは・・・型落ちか?だとしても

 

「仮想敵として、いつもゴースト相手に練習してきた俺の敵じゃないな」

 

ファイターに変形し、その場から離れると警報が鳴り響いた。レーダーを確認すると2機の敵機が迫りつつあった。

 

「2機同時ってことは、コンビネーションがいいのか・・・()()だからか」

 

だとしたら、厄介なことになりそうだ。何せこっちの主武装は狙撃銃、牽制が効く代物ではない。しかし、ジークフリートには両腕部にガンポットがあるので特に問題はない。

 

だが、今は無性にドッグファイトはしたくはないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テオ。あれがボーグを追い込んだ奴だ」

 

『ザオ、気を付けて。あいつが纏う風、何かおかしい』

 

「わかってる。行くぞ!」

 

そう言って、ペダルを踏み込み機体を更に加速させる。向こうもこちらに気づいたようで、接近してきた。

 

奴は俺達の下を抜けたが、最小限の動きで反転し奴を追う。射程範囲に入った瞬間に機銃を放つが、左右の僅かな動きとバレルロールだけで回避される。

 

それでも、後ろに喰らいつかれているのには変わらない。このままプレッシャーを与え続ければ何かしらのミスが生まれるはず、そう思っていたその時、奴の機体に変化があった。

エンジンノズルから発せられている火が紫から赤に変わった瞬間、ものすごい速さで上昇していく。突然見せられた規格外の速さに呆気にとられながら、機影が消えた空を見上げていると一筋の光が見えた。

 

その光はテオの機体の右翼を貫通し、機体はバランスを崩された。

 

「テオ!」

 

『大丈、ッ!ザオ上だ!!』

 

「なっ!?」

 

視線を奴が消えた方を向く前に、強い衝撃がコクピットに伝わった。まさかと思いながら後ろを見ると、機体のエンジン部分にナイフを突き刺した奴の姿があった。

 

「くそっ!」

 

刺された部分から火が出ている以上、誘爆するのは時間の問題。頭で考えるより、反射的に体が脱出スイッチを作動させていた。キャノピーが吹き飛び、俺ごと座席シートが射出される。

 

しかし、状況は最悪だ。テオが俺を回収したとしても俺を抱えたまま戦闘ができるはずがない。だが、このまま捕虜になってしまったら、我々の計画が水の泡になるかもしれない。

 

俺は座席に付けられている短剣に手を伸ばした。これは最後まで敵に抗う為に、故郷の為に自害する事を選んだ者の剣だ。この場合は後者を選択するしかない。

 

 

 

 

すまない、テオ。俺は先に行く、お前は後から

 

 

 

 

 

『ザオ!しっかりしろ!今回収するから』

 

テオの声が突然耳に響き、俺は我に返った。短剣に伸ばしていたはずの手はだらりと下がっていて、腕を動かそうとすると刃で刺されたような痛みが走った。

 

どうやら、脱出はできたものの爆発に巻き込まれて意識が朦朧としていたようだ。そしてテオが回収に来たということはテオも奴に見逃されたのだろう。

 

だからこそ、奴と自分に対して怒りが湧く。二人で挑んだにも関わらず、機体を損傷され、敵に情けをかけられた。この屈辱は、いつか必ず返してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、調子に乗りすぎたか。これはエンジンが逝ったな・・・」

 

あの二機を倒すためとはいえ、機動力を確保するのにエンジンのリミッターカットは、やり過ぎたようだ。飛ぶのには問題ないようだが、推力があまり上がらない。色々な方法を試したが回復の兆しはなかった。

 

嫌な予感が的中したことにため息をつく。ジークフリートは万能機だが、今まで乗っていたSv-303に比べると動きに自由がなく、減速するにしても、一度ガウォークの形にならなければならない欠点がある。だから、後ろにつかれた時、あまりのもどかしさにしびれを切らしてしまい、リミッターカットをしてしまったのだ。

 

「Δ5からΔ1へ。エンジントラブルが発生、アンノウンとの戦闘は困難と判断し、ワルキューレの護衛及びヴァールの鎮圧を再開する」

 

『わかった。無理はするんじゃない『隊長』』

 

ミラージュの通信と共に、一つの映像が映し出される。それはヴァール化した兵士達が、機関砲を統合軍のバルキリーに向けて発砲しているのだが、バルキリーの動きは回避行動をしていると言うより

 

「マジか・・・。あいつ、戦場で踊ってるよ」

 

暴走状態とはいえ、暴れているのは軍人。正常な判断はできなくても武器を扱う技術は体に染み付いている。兵士は目の前にいるバルキリーの足を止めようと脚部を狙っているにも関わらず、地面すれすれを滑空、足の動きだけで全ての攻撃を回避し、反撃もした。

 

その姿に驚いているとその付近で美雲が歌っていた。映像越しの彼女は、とても興味をもっている様子で、そのバルキリーを目で追っている。

 

「・・・いいね」

 

あんな事、俺にはできない。だからこそ、あのパフォーマーを死なせてはならない。あのパイロットは才能がある。必ずΔ小隊に新たな風をもたらす切っ掛けにもなるはず。

 

と思っていた間に事態は急変した。どこからか飛んできたミサイルに対してバルキリーは上昇しながら回避。ファイターに変形してからすぐに、あっけなく撃ち落とされた。

 

「はぁ?!」

 

おまけに当たり所が悪かったらしく、左翼は破損、おまけに火が出ていた。それは機体の消火システムが働くはずだから問題はないだろう。しかし、墜落は免れない。

 

俺はペダルを踏み込み、速度を上げる。ボロボロな状態なのに無理をさせている機体に申し訳なく思うが、なんとか奴の落下先に先回りし、バトロイドに変形。そのまま機体を受け止め、自身の機体の推力が安定していることを確認してから俺は安堵する。

 

正直、この手の経験や訓練は無いに等しいので成功して良かった。

 

「あー、パイロットは・・・、後で事情を聞くので逃げないように」

 

おまけに俺が助けたのは軍人ではなく、まさかの一般人。これは隊長に推薦できるのだろうか?と俺は降下しながら考えるのであった。

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