同じ頃。
[2体目の『トットムジカ』が!うわっ!うわあァァー!……ザーッ]
海軍は大混乱に陥っていた。
ただでさえ1体で手一杯のところに、新たな“2体目”が空間を割って現れたのだ。
『トットムジカ』が作り出した力場はエレジア全土を包み込んで広がり、沖合の軍艦までも飲み込んでいく。
飲み込まれた中は上も下も存在せず、軍艦は宙に浮いたまま『トットムジカ』の周囲を漂っていた。
ボルサリーノ「こりゃァ……まずいかもしれないねェ」
大量の音符兵が海兵の乗った船に近づこうとするのを光速移動しながら防ぐボルサリーノの額にも汗が浮かんでいた。
少将以下の海兵たちが救護に回る中、彼らの護衛に飛び回っていれば疲労も覚える。
イッショウ「ここは魔王を止めるのが先かもしれやせん」
救助の指揮を執っていたイッショウは、身をひるがえして『トットムジカ』に迫った。
イッショウ「"
イッショウの繰り出した横薙ぎの一撃が、2体の『トットムジカ』を同時に捉える。
しかし、当たった瞬間に消えてしまい、無傷の魔王がそこに聳え立つばかりだった。
* * *
カリファ「聞こえますか!ウタが召喚した『トットムジカ』とは別に、ウタと一体化した『トットムジカ』が新たに出現! 海軍は防衛で手一杯です」
一方その頃、エレジアの水道橋の上でカリファは吹き飛ばされないようにしがみつきながら電伝虫に報告を入れていた。
カリファ「至急救援を……えっ? わ、わかりました」
返ってきた指示に驚きながらも、カリファは乱れた髪を整えて仕事道具を入れた鞄を開いた。
カリファ「風向きは追い風、距離約20メートル、風速は……」
カチャカチャと組み立てたのは銃の形をした信号弾の発射装置だ。
用意したものを薬莢に詰めて装填し、狙いを定めて発射する。
パァン
撃った弾は『トットムジカ』からは逸れて、ライブ会場の観客席に向かって飛んで行く。
カリファ「……尋問用の覚醒薬なんて、何に使うの?」
カリファの疑問を他所に、ステージの真上で信号弾は弾けた。
もくもくと煙が上がる中、小さなきらきらとした粒が観客席に降り注いでいく。
それは、ネズキノコの胞子だった。
ステージにはウタに操られたままの海賊たちが手持ち無沙汰にふらふらと身体を揺らしていた。
近づけば攻撃してくるが離れれば無害のため、海兵は彼らを放置していたのだ。
そこに胞子がきらきら降ってくる。
寝息とともに胞子を吸い込んだ海賊たちの動きがぴたりと静止した。
次の瞬間、起こったことに驚きを隠せずカリファは口を開く。
カリファ「なっ…!海賊たちが、海賊たちが『トットムジカ』に攻撃を開始しました!」
“麦わらのルフィ”が他の海賊に先立ち、魔王に急接近する。
拳を“ゴムゴムの実”の能力で巨大化させると、武装色に染まった剛腕の連打を『トットムジカ』に向けて繰り出した。
しかし、一つとして効果がない。
無駄に思える攻撃がつきかけた時、遠方から何かが飛んできた。
「三叉槍“土竜”!!」
飛来した槍と“麦わら”の攻撃が同時に魔王に届く。
ドォン!
瞬間、魔王は体勢を崩し大きくのけぞった。
ギャアアアァァァ!
イッショウ「攻撃が効いた!?まさか……」
ボルサリーノ「あれェ~? 珍しい顔がいるねェ」
大将たちは攻撃が来た方向を見て驚く。
そこには“ビッグ・マム海賊団”の最強と謳われる将星・“カタクリ”が立っていた。
モモンガ「ビッグ・マムの息子が何の用だ!」
モモンガ中将の呼びかけに、カタクリは毅然と答える。
カタクリ「妹を、家族を助けに来た!!」
騒ぐ海軍を他所にステージに降り立つと、カタクリは立ったまま寝ているブリュレに近づいた。
カタクリ「ブリュレ! おい、ブリュレ!」
途端に鋭い蹴りが飛び出すが、難なく躱しながら妹に向かってカタクリは呼びかけ続ける。
カタクリ「ブリュレ……! オーブンお前がついていながら何事だ!」
見聞色で覗いてみても曖昧な事象しか見えない。つまり、未来がまだ確定していないということだ。
しかもどうやら自分はあの魔王と戦わねばならないらしい。一体どういうことだ!?
* * *
『トットムジカ』がのけぞったのを見て、ルフィはさらに攻撃をしようと拳を繰り出した。しかし、
ルフィ「ぐあっ!」
死角から伸びた鍵盤の腕に殴られて後方へ吹き飛ばされてしまう。
辛うじて制動をかけて踏みとどまると、前方からのんきな声が降りてきた。
シャンクス「おいおい、あれだけ大口を叩いておいてその程度か?」
ラッキー・ルウ「お頭だってさっきの一撃、大したことなかっただろ」
シャンクス「うっせェ、久しぶりの戦闘なんだ。肩慣らしくらいさせろ」
ナミ「あ、あんたたちは……?」
驚くナミに銃を肩に担いだベックマンがウィンクで答える。
ベックマン「詳細は省くが、加勢に来たと言ったら信じるか? この坊主とはさっき知り合った仲だ」
サンジ「増援か? なんだか知らんが助かったぜ!」
フランキー「あいつどっかで見覚えが……?」
年若いシャンクスを見てフランキーは首をひねっている。
ルフィ「……いいのか?」
じっと睨むルフィに気づいたシャンクスは笑って麦わら帽子を目深に被る。
シャンクス「おれたちがいた“あの場所”も魔王に飲み込まれちまった。だから出てこれたんだが……」
シャンクス「あいつの心に戻れないってことは、そういうことなんだろう。だったら勝手にやってやるさ」
シャンクス「それに……」
シャンクス「娘の窮地に駆けつけたくなるのが、親ってものだろう?」
ヤソップ「しっかし、夢と現実の同時攻撃が必要たァ驚いたぜ。知ってたらあの時どうにかできてたかなァ」
頭にバンダナを巻いた男が腕組みする姿をウソップは思わず二度見した。
ウソップ「……親父? ウソだろどうしてこんなところに?!」
ヤソップ「お?そこにいるのはもしや愛しの我が息子ウソップか? 大きくなったなァ!」
ウソップ「親父~!……ってそんな軽く挨拶されてたまるかァ!!今までどこにいやがった!?」
ヤソップ「はっはっは、すまねェが感動の再会は“本物のおれ”とやってくれ」
ヤソップ「今のおれたちの最優先は、『トットムジカ』を倒すことだ。分かるか?」
ウソップ「お、おう……」
ヤソップに諭され落ち着きを取り戻したウソップは、軽く深呼吸して戦闘態勢に戻った。
ヤソップ「十三年前にも相手したが『トットムジカ』はあの手足が曲者だ。あれをどうにか押さえつけてから本体を叩くしかねェ」
ウソップ「同時攻撃の連携が必要ってことだな。よし! おーいルフィー!」
振り返ったルフィに向かってぐっと親指を立てる。
意図を理解したルフィは頷き、仲間たちに呼びかけた。
ルフィ「野郎ども!今からおれたちは“偽赤髪海賊団”と協力してあいつを倒す!気合入れろォ!!」
シャンクス「偽者でもやりようはあるさ。野郎ども、こっちも気合いれろォ!!」
『おう!!!』