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魚の口より木の枝を深く刺し込んで、焚火のそばに突き立てた。
香ばしいにおいが立ち、空腹感がもたげてくる。
スキレットの上ではくるみが乾煎りの途中で、しばらくすれば、堅い殻が割れてそこより中身をこじあけて実を食べられるというわけだ。
デザートとしてザクロもあり、量は多くなかったけど、おおむね満足出来る食事内容だった。
「明日からどうするかだな」
ブルーノが誰に言うでもなく、そう呟く。
「そうだね」
と、ぼくは応じる。ミアは黙然と、ぼくとブルーノの顔を交互に窺うというポーズで、会話に慎ましく、傍観者的に、参加している。
「君は、ミアは、どうする?」
ブルーノが、確かそういう名前だったなぁ、という感じで呼びかける。
「わたし?」、と彼女は、自分に質問を投げられると思わなかったのか、意外という風に、ちょっと戸惑って、応じる。
「わたしは――よく分からないわ。帰る場所がなくなったから、あなたたちに付いていけばいいのかしら。でも、お父さんやお父さんをあの施設に残していくのは不安だし……」
「だけど、ぼくらだけの力じゃ、ミアの教えてくれた『真光教団』に対抗出来るとは、まず思えない。真っ向から対決すれば、あっという間に潰されるに違いない。属してる宗教騎士団がずいぶん強力そうだしね」
「なら、彼女がしたみたいに、入信する素振りを見せて、内側に忍び込んで、崩壊するのを狙うか?」
「そこまでする必要はないんだよ、きっと。シュトラウスさんと、ミアの両親さえ救えれば、取りあえずは」
「他の村人は、切り捨てる、ということか」
そう言われて、ぼくは自覚していなかった自身の薄情さに驚いて答えに窮し、ミアはと言えば、思い詰める様子だった。
「別に、フリッツ、お前を責めるわけじゃないんだぜ。むしろいいと思う。そういうドライなところがないと、情に流されて自分の立場を危ういものにするからな」
「本当は、全員、助けたいんだよ? でも、ぼくらの力は限られてる。出来ることと、出来ないことは、きちんと区別しないと」
「いいのよ、フリッツ。わたしはわたしで、ひとりでどうにか生きていくから」
「ミア……」
「あなたたちは旅をしているんでしょう。わたしのことで、煩わせるのは悪いわ」
「ダメだよ。君をひとりで行かせるのはとても怖い。外は危ないんだ。ひとまずぼくらと一緒に行動して欲しい。一緒に行動しながら、後のことは考えればいい」
ブルーノはクルミをつまみながら、焚火を見下ろしているばかりで、もう発言することはなかった。
段々と火力が落ちて、火が小さくなっていくのを、ぼくとミアも、どこか重々しい気持ちで見下ろしていた。
寝るか、とブルーノが言った。彼はぼくとミアに先に横になってよいと促した。彼はしばらく火の番をしてくれるようだった。ぼくらは彼の言葉に甘え、並んで横になった。
おやすみ、と言って、仰向けに横たわり、布を体にかけると、手に触れられた。ミアが触れたのだった。薄暗い城跡の屋根の下で、ぼくは彼女の目を見た。微かに、その瞳は、不安に慄いているようだった。
ぼくは彼女に頷きかけ、すると、彼女も同じく頷いて応え、手を離した。
ぼくは複雑な心境で目を瞑り、薪の爆ぜる音を聞いて、明日のことを案じた。どういう風に動けばよいか考えた。だが、好ましい結論とは程遠いところで行き詰って、逃げ込むように、眠りに落ちたのだった。
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